2020年9月更新
ジェトロ(日本貿易振興機構)
ある日突然、まったく面識のない海外の人物や法人から「これは儲かる!」と思える話が舞込んで来たことはないでしょうか。近年、日本国内では「振り込め詐欺」が話題になっていますが、海外からはより巧妙な手口でアプローチしてくる無数の詐欺団が存在し、被害に遭われた方からの相談も年々増加しています。
ジェトロでも再三にわたって注意喚起を続けておりますが、詐欺の被害を防ぐためには皆さまご自身の冷静な判断、毅然とした対応が必要不可欠です。
以下、ジェトロに寄せられた相談の中から、代表的な事例とその対策を紹介します。
- 1. マネーロンダリング型など伝統的手法の詐欺
- 2. 架空貿易取引型詐欺
- 3. 国際入札勧誘型詐欺(一部NEW)
- 4. 投資型詐欺(一部NEW)
- 5. 査証取得型詐欺
- 6. 国際ロマンス型詐欺(NEW)
- 7. 送金先変更詐欺
- 8. ソーシャルネットワーキング(SNS)利用型詐欺(NEW)
- 9. 電子商取引サイト詐欺(NEW)
- 10. 企業広告掲載による高額料金請求
詐欺の手口は年々巧妙化しており、ここで紹介する手口とは異なる詐欺の発生も考えられますが、詐欺対策知識の一つとしてご活用ください。
また、海外との取引において疑問や不安があれば、 お近くのジェトロ 、あるいは 貿易投資相談からジェトロ貿易投資相談課にお問い合わせください。
1. マネーロンダリング型など伝統的手法の詐欺
典型的な例として、海外の政府関係者・軍の高官やその親戚を名乗る人物から、賄賂や資金流用、遺産相続等で得た秘密資金の送金のために貴方の銀行口座を貸してくれれば、資金の一部を謝礼として渡す旨持ちかけられ、手数料等と称して言葉巧みに金品を騙し取ろうとする手口です。
1980年代の発生当初、アフリカ西部のナイジェリアを舞台に世界的に広がり、通称「419詐欺事件(ナイジェリア刑法419条に抵触する犯罪)」や「ナイジェリア詐欺」と呼ばれています。情報の発信元は、ナイジェリアに限らず世界各地に広がっているため注意が必要です
【具体的な手口】
各国の政府・軍・公社の高官、元高官やその親族と名乗る人物が、秘密資金の海外送金のために、貴方の口座を貸してほしいと持ちかけます。謝礼として、送金資金の一部を提供すると続きます。
コンタクトの理由は、過去の先方国でのビジネス実績、自社を知る知人の紹介など。
資金移送のための手数料等と称して、資金(1回につき数千~数万ドル)を先方の指定する口座に振り込むよう繰り返し指示され、数回~十数回振り込むと連絡が途絶えます。
上記「マネーロンダリング型」と呼ばれる詐欺の他、以下のような派生手口も報告されています。
- 宝くじに当選し、当選金の受け取りには手数料が必要と称して金を騙し取ろうとする「インターネット宝くじ型」
- 黒く塗りつぶされた米ドル紙幣(黒紙幣)を目の前で元通りにする手品を見せて相手を信用させ、特殊塗料の洗浄液の入手を名目に多額の手数料や代金を詐取する「黒紙幣型」。
日本国内や在留邦人が多いアジア諸国での報告事例が複数あり。 - 海外の見知らぬ人物から、死亡した親族や知人、顧客が残した多額の遺産の相続や寄付、投資を持ちかけられ、その送金にかかる各種手数料や工作資金、税金の納付といった様々な名目で前渡金を詐取される「遺産相続型」。死亡者については実在の人物を騙り、亡くなった事故や事件、紛争のニュース記事を引用して信用させるなど巧妙な手口を取る。時には新聞やWebニュース等に掲載された死亡広告の引用や偽造も見られる。
上述の詐欺アプローチでは、従来からのレター、FAXやメールに加え、最近はSNSを介した接触が増加し、一般市民の方の被害事例も数多く報告されていることに注意を要します。
【対策】
むやみに誘いに対して反応・返答しないことが第一です。断りのメールも返信の必要はありません。むやみに反応すると、メールアドレスが有効なものである事を相手に伝え、「この様な誘いでも目を通して律儀に反応してくれる詐欺被害者予備軍」と認識され様々な詐欺メールが送られてくるようになります。
万一返答を送ってやり取りを進めてしまっている段階で詐欺であると気付いた場合、その後一切先方へ返信・連絡しないでください。理由をつけて断りを入れると、その理由を除去するため「詐欺ではない」と言葉巧みにアプローチが続きます。しばらく相手にしなければ、「時間の無駄」と相手からのアプローチも無くなります。
先方から手数料を要求され、どうしても諦めきれない場合は、先方に手数料分報酬を減額してもよいのでこちらからは一切送金は行わないと突っぱねましょう。巨額の報酬の送金を持ちかけている人が、手数料の負担も出来ないと話しているのはおかしな事です。
先方から送金のために、口座番号とパスワード(暗証番号)等が必要と言われても絶対に教えてはいけません。教えたために自身の口座残高をすべて引き出されてしまったケースもあります。
2. 架空貿易取引型詐欺
ウェブサイトで貴社の商品を見た、知人に貴社のことを紹介されたと切り出す、あるいは各種ビジネスマッチング支援サイトやインターネットオークションサイトを通じて、ビジネス商談を持ち込み、手数料や税金、印紙代、弁護士費用等と称してお金を搾取したり商品を騙し取ろうとする手口です。貿易取引の経験が浅い人に、日本語で取引を持ち掛けられるケースもありますし、最近ではインターネット上の翻訳機能を利用して犯罪者、被害者双方がコミュニケーションを取るケースもあります。通常の商取引の様に巧みに偽装しているケースも多く、注意が必要です。
【具体的な手口】
Webやダイレクトリー、ビジネスマッチングサイトやオークションサイトで会社概要や製品を見た、人づてに貴社の評判を聞いたなどとして接触し、通常の貿易取引を装いつつ多種多様な製品の大量発注を持ちかけてきます。
決済手段としては、政府の為替規制を言い立て現金(電信為替)後払い、または先方国や欧米系の大手銀行の小切手を用いることがあります。後者については商品発送前に輸出業者に届きますが、 商品発送後に銀行に持ち込むと、偽造・盗難小切手と判明、決済不能となります。
荷足の速い国際宅配便利用を条件に、その送り状(Airway Bill)コピーをFAXすれば24時間以内に電信為替送金するとし、実際には送金せずに商品を詐取する事例も見られます。
さらに、当該国では国外輸出が禁じられている大量の中古レールの横流し売買など、違法性の高いハイリスク、ハイリターンの取引を持ち掛ける事例もあります。
いずれも、大型商談であることをエサに、輸入手続や決済外貨の準備、契約書作成時の印紙代等で当座の資金が必要と、前渡し金を繰り返し要求してきます。先方指定口座に数回~十数回振り込むと連絡が途絶します。
商談名目で渡航させ、拉致監禁して身代金を要求したり、渡航者が殺害された事例も過去にはあります。 引き合いに際し、「大量注文を検討したいので」、「見本市に出品するため」、「政府の外貨割り当てを受けるため」などと称して、サンプル送付を要求し、詐取するケースも見られます。対象となる商材は小型の高額商品(高級家電等)が多いのが特徴です。
最近では、インターネットオークションの出品物に対して、オークション場外での好条件の直取引を質問フォーム等から持ちかけ、代金を支払わず、個人から商品を搾取する事例も出ています。
【対策】
決済方法は現金前受け、前金の電信為替振り込みとします。
偽造・盗難小切手による被害もあるため、小切手での決済は避けます。
先方前払いでは交渉がまとまらない場合、信用状(L/C)を使用することとして、L/Cは「Confirmed Irrevocable L/C」(確認付き取り消し不能信用状)に基づき行い、開設銀行は信用ある欧米系大手銀行を指定します。さらに入金の確認は自分で行い、支払いが確実となってから商品を発送します。
先方から送金や契約等の手数料を要求され、どうしても諦めきれない場合は、先方に手数料分代金を割引するので、こちらからは一切送金は行わないと突っぱねましょう。
本物の貿易取引であるか真偽を判断するために、相手側の信用調査(信用調査会社の利用、メインバンクへの相談、国際的な企業データベースでの確認等)は有効な手段になり得ます。特に治安の悪い国に出向いて商談を行う際には、その必要性を十分に検討し、相手側の信用と現地治安情勢を慎重に確認し、日本外務省の旅レジにも登録の上で行うようにしましょう。また、詐欺団が信用のある企業名を語ってアプローチをしてくる場合もありますので、Web等で公開されている企業の本支社の所在地や電話番号等から本人にコンタクトが取れるかどうか、本人と名乗る人物が在籍するか、また商談途中で企業名や連絡先が変更されないか等を確認するなど、注意が必要です。
3. 国際入札勧誘型詐欺(一部NEW)
上記の架空貿易取引型詐欺と同様に政府機関や国際機関が実施する入札案件への共同参加等を呼びかけ、入札参加費用、弁護士費用や契約書作成費用等と称して前渡し金を搾取する手口です。
【具体的な手口】
ナイジェリア、ガーナ、トーゴ、コートジボアール等のギニア湾岸諸国から、NDDC(ニジェールデルタ開発委員会)やECOWAS( 西アフリカ経済共同体 )など、この地域の国際・地域機関等が行う国際調達入札への参加勧誘がメール等で突然入ります。詐欺団は、これら機関の具体的部署名と幹部を知り合いとして語り、共に入札に参加すれば落札は確実であると誘惑します。
さらに偽造文書や架空の連絡先を示して自ら確認するよう仕向けるなど、話を信じ込ませるため様々な手段を講じてきます。
入札後、落札を伝えてきた詐欺団は、契約書を早急に作成するべきであり、弁護士選任費用や契約書の公証・印紙費用等と称して数千ドルを送金するよう要求します。また、前述の架空貿易取引型に見られるように、入札に際し必要などとして高額のサンプル(各種機材)を詐取する事例も生じています。
【最近の新たな手口】(NEW)
日本企業がアフリカに所在する国際機関の幹部を騙るものから、国際入札に係る案件を持ちかけられました。ジェトロが調査した結果、当該団体は当該国に存在しないことを確認しました。
今回の手口は、United Nations Economic Commission for Africa(国連アフリカ経済委員会)、ECOWASなど国際機関との関連を思わせる名前を騙る集団/人物から日本企業に対して入札参加を誘い、その後落札したので前払いしたいとオファーするものです。
まずは詐欺主体から前払いするということで安心させようとしますが、その後に資金移送に必要な手数料として数千ドルを振り込ませるなど、金銭を騙し取ろうとするものです。
【対策】
対策は上記「架空貿易取引型詐欺」「マネーロンダリング型詐欺」と概ね同じです。入札期間が不自然に短い、過度に有利な条件が付いている、自社を応札者として指名する理由が唐突で不自然など、案件が持ち込まれた時点で疑うべきことです。また、非公開型の指名競争入札や随意契約を騙る案件の持ち込みも見られます。通常の国際入札は官報や政府のウェブサイト等を通じて広く公開、あるいは過去に類似案件の受注実績を有す企業が入札に招請されることが多く、国際機関等から資金を借り入れて実施される途上国のプロジェクトの多くは公開型入札が条件とされています。
さらに言えば、巨額の商談を持ちかけている者が、契約手数料や諸税も負担できずに商談が先へ進めないとしている時点でビジネスパートナーとして如何なものでしょうか。こちらからは一切送金は行わないと突っぱねましょう。しばらく相手にしなければ、「時間の無駄」と相手からのアプローチも無くなります。
4. 投資型詐欺(一部NEW)
安全、高利回りの投資収益を約束したり、利幅の大きい金取引をもちかけ、約束された元利の不払いや代金、各種手数料の詐取を試みる詐欺グループの魔手が、日本国内のみならず海外からも伸びてきていることに注意を要します。
【具体的な手口】
海外での不動産投資や開発、高利回りの投資スキームなど、架空の投資話を持ち掛け、出資金を騙し取ろうとする手口が典型例です。日本国内でも時々架空の出資話を持ち掛け巨額の詐欺被害を生じさせる事件が報道されています
長年にわたり投資資産対象とみなされてきた金の取引を対象にした詐欺も依然として後を絶ちません。金取引を持ちかけられアフリカに渡航し、金地金を現地で現金払いにて購入したものの、 日本の税関で申告時に検査をしたところ金ではない別の鉱物であったという事案がありました。また、メールやSNS、ビジネスマッチングサイト等を通じて、金を国際相場より安く販売するなどと持ち掛け、その加工や移送、諸手続きにかかる費用の名目で数十万~数百万円の送金を繰り返し要求するのも常套手段の一つです。
最近では、クラウドファンディングなどインターネットを通じた新たな資金調達手段が普及する中で、資金を募る起業家に対し多額の投資を持ち掛け、出資金の手配や送金にかかる手数料等の名目で前渡金を詐取する事例も生じており、注意が必要です。
【対策】
総論としては、日本国内でこれまでに発生した投資型詐欺事案同様、誰もが飛びつくような高利益・高配当・巨額投資の話には裏があると警戒して慎重に判断することです。
金(あるいは貴金属)取引に関しては、日々の国際相場に基づき取引される商品であることに留意し、まずは最新の国際相場を確認しましょう。相場より不自然に安い売値を持ち掛けてくる場合には偽地金の販売や各種前渡し手数料の詐取を疑ってください。また、産出国によっては金地金の売買が専売制や許可制になっており、当該取引が産出国の法制度に抵触しないかも確認のポイントとなります。
5. 査証取得型詐欺
貿易取引等を装ってコンタクトをしてきた外国人が、商談目的での渡航を申し出、ビザ取得のための推薦状(招へい理由書・身元保証書等)を取得して日本に不正入国を図るものです。通常取引との判別は難しいものですが犯罪行為に悪用される恐れもあり、取引先企業の信用や、業界事情に詳しいかなどを確認し、取引の持ちかけが架空のものでないか事前に出来る範囲で確認することが望まれます。
6. 国際ロマンス型詐欺(NEW)
インターネットの出会い系サイトやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを通じて知り合った欧米系や紛争発生国に在住などと名乗る異性(軍人、医師、国連職員、船員、資産家等)から、交際や結婚を申し込まれ、その後、多額の秘密資金や資産、第三国での投資資金、贈答品、家財の送金費用・手数料、あるいは本人・家族の生活費や渡航経費の送金など様々な金銭的要求が出てくる「詐欺」と思われるケースが多発しており、被害事案も含めてジェトロへの相談が急増しています。
また、最近は恋愛問題に止まらず、年配のご婦人を「ママ」と慕う振りをして懐に飛び込む、あるいは架空の波乱万丈な身の上話を作り上げて相手の同情を買う等の手口も見られます。
【最近の具体的な手口】
婚約者や恋人を装った犯人の金品詐取の手口は巧妙かつ多種多様ですが、ここでは幾つかの事例を紹介します。
・自身の資産や高額の贈り物、家財を日本に送付するための費用や手数料の支払い要求。
・現金や高価な贈り物が、積み替え港、到着港の税関で差し押さえられ、その関税や解除金、罰金を当局に支払う必要があるとして金銭を要求。
・任地(紛争発生国)から日本に渡航するための航空賃を要求。
・送った貨物の保険料として金銭を要求。
・出張先で至急現金が必要となる緊急事態が生じ、送金を要求。
・新たなビジネスのための機械を購入したが、持っていたカードが使用できないため、機械代金の立て替えを要求。
・別れた前妻との間の子供が重病で、その入院費用と治療費を要求。
・弁護士と名乗る者から、あなたの婚約者が海外の当局で拘束されたといって、その解放のための弁護士費用を要求。
【対策】
上述の例と類似のケースが発生した場合は、慎重に対応し、金銭を要求されたときには安易な送金を絶対に行わないでください。最初は少額の場合でも、一度支払いに応じると、次々に要求され、要求額が次第に高額になるというパターンが多く発生しています。また日本で多発する「振り込め詐欺」同様に、「すぐにお金が必要だ」という相手のセリフに惑わされないよう注意願います。
積み替え港で税関から関税を要求されるということは絶対にないので、この手の支払いには絶対に応じないでください。
7. 送金先変更詐欺
継続的に取引をしている相手(企業)の担当者のメールと非常によく似た(あるいは同一の)メールアドレスから、自社の銀行口座が変更されたため振込先を変えて欲しいと連絡を受け、取引代金を搾取されたケースがあります。ウイルスメールを開いた為、両者のやり取りを抜き取られたケース、取引先のメールサーバーがウイルスを通じ乗っ取られたケース、もしくは内部犯行が想定されます。
【具体的な手口】
継続的に取引をしている相手から代金の送金口座を変更して欲しい旨の連絡が届きます。但し、一見しただけでは分らぬ程非常によく似たメールアドレス(1文字違う等)、あるいはまったく同一のメールアドレスであるために気づくのが遅れます。
指定された口座に送金するも、実際の取引先からは入金がなされていない旨の連絡があり、支払代金詐取が発覚します。
入金直後に送金額全額を引き落とされてしまうため、回収はほぼ不可能です。
【対策】
送金先の変更といった「重要な変更事項」はメールではなく、必ず相手のサインのある書面で確認しましょう。また、同様の連絡を受けた際には実際の取引先担当者へ電話で確認を行ってください。
8. ソーシャルネットワーキング(SNS)利用型詐欺 (NEW)
6.国際ロマンス型詐欺の章でも説明しましたが、SNSを通じて知り合った外国人から、これまで紹介してきたような様々な名目で送金を依頼され、送金をしてしまい、その後連絡が取れなくなるというケースも増えています。また、見知らぬ海外の人物から突然大口の注文が入り、サンプル送付や取引にかかる各種手数料等の送金を依頼される、SNSを介在した架空貿易取引型詐欺の手口も増えています。まずは相手の身元調査を可能な限り行うとともに、ジェトロや当該企業・法人が所在する在京各国大使館に相談する、Web上で類似の詐欺事案が投稿されていないか確認するなど慎重にご対応ください。
9. 電子商取引サイト詐欺 (NEW)
2.架空貿易取引型詐欺の章でも触れていますが、海外との電子商取引(越境EC取引)でのトラブルが増えています。支払い後に商品が送られてこない、あるいは商品発送後に代金が支払われず、相手先と連絡が取れなくなるといった相談が多く寄せられています。
購入する前に出店者の身元をHPや企業DB等で確認する(法人の場合)、ジェトロや当該出店者が所在する在京各国大使館に相談する、Web上で類似の詐欺事案が投稿されていないか確認するなど、慎重にご対応ください。
10. 企業広告掲載による高額料金請求
見本市関連の企業ダイレクトリー出版社などから自社広告の掲載を求められ、先方作成記事の校正フォームや企業情報フォームに記載して返送すると高額の広告掲載料金が請求されます。これを拒否すると裁判に訴えるとする通知書が届き、支払いを行う事例が報告されています。詐欺事案ではありませんが、悪質なビジネス手口として海外消費者団体等が注意喚起しています。
【具体的な手口】
過去に出展した見本市のパンフレット(出展企業紹介)、あるいは、自社英文HPを基に作成したとみられる企業紹介記事が、見本市関連の企業ダイレクトリー出版社(欧州や中南米が多い)からFAXやメール添付ファイルで送られてきます。
指示に従い、内容を修正して返送すると、広告掲載に同意したので、掲載料数万円~数十万円を指定口座に振り込むよう要請されます。確認すると、返送した記事修正用フォームの下部に「返信をもって有料広告掲載を受諾する」旨、見えにくい小さな文字で記載されています。
これを無視、放置していると、現地で訴訟を起こすとの警告書面が送られ、不安に駆られて先方の言い寄越す延滞料を含む高額な料金を振り込んだ事例が報告されています。
【対処法】
同種勧誘が入った場合、まずは自社情報のダイレクトリー掲載がマーケティングの観点で有用であるかを検討ください。何らか効果が期待できる場合でも、料金発生の有無や金額、利用条件を念入りに確認するとともに、出版社の業容やクライアント、評価をHPやインターネット情報等で確認することも併せて実施してください。
仮に先方の言うままに校正記事を返送し、請求書や警告文が送られてきた場合には、これを無視してください。EU域内では、加盟国消費者団体の訴訟結果等をふまえ、消費者を惑わす悪質なビジネス手口として同種勧誘手口を違法としています。また、過去に警告を無視して告訴された事例も報告されていません。
詐欺に遭われてしまったら
詐取等の被害に既に遭われてしまった場合、残念ながら事後に取れる対策は殆どありません。日本の行政権は海外では通用せず、仮に相手国政府に対策を求めたとしても、海外においては、警察の力が末端まで及ばない地域も存在し、詐欺対策よりも強盗殺人などの凶悪犯罪の軽減と治安回復が先ず求められる地域もあるのが実情です。詐欺団を肥え太らせて新たな被害を生まないためにも、まずは詐欺に掛からないことが重要です。
万一詐欺被害に遭ってしまった場合、自社の資金繰りを確認しこれ以上被害を拡大しないために早目の検討が必要となります。資金繰りに問題を来たしてしまった場合は、弁護士等に相談し法的整理を含めた検討が必要となる場合もあります。万一この様な苦境に遭遇しても、同じような苦境を経験しその後再起している人も大勢いますので、再起に向けて何が出来るのか、前向きに落ち着いて考えることが大切です。
他方で、詐欺グループの国際展開は目覚ましく、日本国内にも拠点を構え、協力者を置くケースがあり、メディアで摘発事例が報道されることもあります。また、「振り込め詐欺」同様に、貿易取引を装った金品詐取を目的とする日本人(個人、グループ)がアジアなど海外に拠点を置き、日本国内の法人・個人に直接、間接に魔手を伸ばす事例も報告されています。日本国内の指定口座への資金振り込みや関係者との接触を求められた場合には、日本国内での犯行グループ協力者の捕捉、次いで海外での拠点捜査やグループの捕捉・日本送還に道を拓く可能性もあります。このため、犯人との一連の交信記録や交換書面、送金関連書類等を持参し最寄りの警察署にご相談ください。