「Ethereumを活用したネームシステムで可能になること」ENS ブラントリー・ミレガン氏 インタビュー

ENSでオペレーションディレクターを勤めるブラントリー・ミレガン氏(Brantly Millegan)にインタビューさせていただきました。Ethereum Name Service(ENS)とは、ブロックチェーンを活用した名前解決サービスであり、これを使用することにより、長く複雑な暗号通貨のアドレスを使うことなく、簡単な名前でやりとりができるようになります。今回のインタビューでは、ENSの利点やサイバースクワッティングの問題などについてお話を伺いました。ぜひご覧ください。

インタビュー日 : 2020年12月4日

はじめまして、ENSでオペレーションディレクターを担当しているブラントリー・ミレガン(Brantly Millegan)と申します。アメリカオレゴン州のスプリングフィールド出身です。

ENSとはどのようなサービスか

ENSは、人間の使用する名前をコンピュータの識別子に変換することを目的につくられました。コンピュータにとって意味のある識別子とは、たとえば暗号通貨のアドレスや IP アドレスのように、自動的に生成された数字と文字からなる長い羅列です。

このようなアドレスはソフトウェアには適していますが人間には不向きです。ところが我々の使う言語で書いてしまうと、今度は人間にとってはいいのですが、コンピュータが識別できなくなってしまいます。

ENSはこのギャップを埋め、人間は人間の読める名前、コンピュータはコンピュータが生成した識別子を使用することを可能にします。

ENSはEthereumブロックチェーン上のスマートコントラクトです。プログラミングやコーディングの知識がない普通の人でも、ENS上のデータを操作することができます。

ENSは一般的なネーミングシステムで、名前を付けてあらゆる情報を保存することができます。主な用途は、暗号通貨のウォレットに名前を付けることです。

例えば、友人が私にDogecoinを送りたい場合、私のDogecoinアドレスを教えなくても、私のENSの名前さえあればそこに送ることができます。これはBitcoinやその他の暗号通貨のウォレットにも適用できます。

友人がBitcoinとDogecoinという2種類のコインを送りたい場合でも、友人に両方のコインのアドレスを教える必要がありません。どちらも私のENSの名前あてに送ればいいのです。

ENSが互換性のあるウォレットに統合されている限り、例えば「brantly.xyz」などのように私の名前を入力して送ってもらえば、どんなコインでも受け取ることができます。名前の後ろにつくの文字(サフィックス)は例えば「.xyz」「.kred」「.luxe」「.club」「.art」などです。

Ethereumアカウントの重要性とENSの安全性について

ENS名の所有者は、Ethereumアカウントの所有者と同一です。したがってもしもEthereumアカウントがハッキングされてしまうと、ENS名をのっとられ記録をいじられてしまう可能性があります。

そうなってしまった場合、誰かがそのENS名あてにコインを送ろうとすると、トランザクションが全く別のアカウントにいってしまいます。つまり主なセキュリティ上のリスクは、Ethereumアカウントがハッキングされる危険性だということです。

Ethereumアカウントが危険にさらされれば、ENS名が危険にさらされるだけではなく、Ethereumのエコシステム上で行われるすべての行動が危険にさらされるのです。

なお、Ethereumアカウントのセキュリティに関しては我々のプロジェクトの範囲外で、そこはEthereumプロジェクトとウォレットの問題になります。

Ethereumアカウントのセキュリティを確保しているのはMetamaskまたはTrust Walletなどかと思いますが、いずれにしても我々の行っていることではありません。

ENSのスマートコントラクトに関しては、何年も前から監査を受け続け、何年もの間研究されています。そして何年も前から稼働しています。私はスマートコントラクトを非常に信頼しています。

ENSとDNSの違い

ENSは分散型のWebサイトも提供できるのですが、我々はネーミングの部分だけを提供しています。

BluehostやWixといった会社はウェブサイトサービスを提供していて、これらの会社のサービスを使うと、ENSとよく似たDNS(ドメイン名システム)上で、名前を取得することができます。

DNSがインターネット全体の主要な命名システムであるのに対し、ENSは現在のDNSを補完する新しいプロジェクトだと考えています。

BluehostやWixのサービスを利用すると、DNS名を取得してホームページ作成したりすることができます。それに対してENSが提供しているのはあくまでもドメイン名の部分だけです。当社はコンテンツレコードでENSドメイン名を管理しています。

DNSはすでに、Webサイトのドメイン名を提供するという重要な役割を担っています。したがって我々は、さらに新しいサービスや機能を提供したいと思っています。

まずは人々にIPFS(InterPlanetary File System)を作成してもらいます。IPFSは、分散ファイルシステムでデータを保存・共有するためのプロトコルで、P2Pネットワークです。

これにより、従来のウェブサーバーを使うのではなく、ウェブサイトをIPFSでアップロードし、そしてIPFSハッシュをENS名のコンテンツレコードに接続しておくことができます。

互換性のあるブラウザや、互換性のある拡張機能のあるブラウザであれば、IPFSハッシュでENS名を入力することで通常のWebサイトとして機能させることができます。例えば、Metamaskを搭載したブラウザをお持ちの場合、IPFSハッシュでENS名を入力すると通常のWebサイトとして表示されます。

Brave、Opera、Status、Metamask、Unstoppable、といったいくつかのブラウザは、ENSとIPFSのウェブサイトをネイティブ統合しています。特にMetamask拡張は、他のほとんどの通常ブラウザで動作します。

なぜENS-IPFSのサイトなのか

ENSのウェブサイトは仕組み上、従来のウェブサイトよりも検閲に強いという特徴があります。IPFSも同様の特徴があり、この2つの技術を掛け合わせることで、検閲に強い分散型のウェブサイトが作れます。

検閲に強いウェブサイトは、他者からの影響を受けにくく、ダウンさせたりするのも難しくなります。全くハッキングが不可能というわけではありません。この点はDNSウェブサイトと同様です。

しかし、ハッキングされる可能性はあるものの、ハッカーはENSでは大したことはできません。これに対して、機関や政府はよくないと思ったコンテンツがあればDNSシステムでDNS名を剥奪することができます。これには良い面と悪い面があります。

良い面というのは、悪質な行為をする人を、中央集権的な方法で阻止できるということです。逆に悪い面というのは、たとえ良いことをしていても、当局に承認されていなかったり、気に入られていなかったりすると、中央集権的なシステムを悪用されてしまう可能性があるということです。

これはウェブホスティングサービスのサイトとよく似ています。コーディングとプログラミングによってゼロから作成した自分のコンピュータを使ってウェブサイトをホストしている場合を除いては、サービスプロバイダがコンテンツを不承認にしたり、ホスティングを中止したりすることができます。

現在では、ほとんどの人がウェブサイトのサービスプロバイダを利用しています。場合によっては行政から圧力をかけられて、ウェブサイトを廃止させられてしまうこともあります。しかしENSウェブサイトは検閲に対して耐性があるため、特定のコンテンツを削除するのがはるかに困難になります。

なお、あくまで検閲に対して耐性があるというだけですので、決して検閲が一切できないというわけではありません。この世界には、検閲できないものというのは存在しません。

EthereumとENS

ENSは、任意のデータに対応させることができます。Ethereumアドレス、Bitcoinアドレス、IPFSハッシュなど、様々なデータに対応できます。

ENSのメカニズムは全てEthereumブロックチェーン上で動作しているのでEthereum Name Serviceと呼ばれています。しかしEthereumのエコシステムだけでなく、その先にあるあらゆるものにもサービスを提供することができます。

Ethereumは最高のセキュリティと分散化機能を備えていて、ブロックチェーンのネーミングシステムを運営するのに最高の場所だと考えています。ENSはこのインフラの利益があるおかげで、Ethereum上にある他のものとも相互に作用することができるのです。

もしも我々がNameCoinやFIO、Handshakeといったプロジェクトのように独自にブロックチェーンを構築していたら、ENSほど安全なサービスはつくれなかったと思います。

ネーミングサービスのために独自のブロックチェーンを作るのは間違いだと思います。なぜなら、セキュリティと分散化が弱くなってしまうので、それをまた一から構築していかなければならないからです。

我々は既存のEthereumネットワークを利用しているわけですが、このネットワークはすでに、安全なブロックチェーンとしての多くの機能を備えています。しかもEthereum上にある他のものと相互的に作用することもできます。

我々のスマートコントラクトは、ブロックチェーン上にある他のすべてのスマートコントラクトと相互作用できます。例えば、EthereumベースのDAO(自立分散型組織)やマルチシグウォレットを持っていれば、ネイティブな相互作用が可能です。独自のブロックチェーンではこれができません。

Ethereumのエコシステム上では膨大なインフラがすでに構築されていて、その上Ethereumはコーディングも容易です。ENSを使えば、UniSwapや他のほぼ全てのDeFiプロジェクトとのやりとりも可能です。

UniswapというのはEthereumブロックチェーン上のDeFiプロジェクトです。CEX(Centralized Exchanges)とは異なり、中央集権的存在を介さずに、Ethereumベースのトークンを取引できるスマートコントラクトのセットです。

サイバースクワッティングとは何か

サイバースクワッティング(ドメイン名居座り)とは、希少なデジタル資産としてのドメイン名を、使わないのに利益を得るために保有することをいいます。中には、将来的に他の人が欲しがるだろうと考えて、ビジネスのために価値のありそうな名前を取得する人もいます。

全てのサイバースクワッティングを止めることはできませんが、我々は一般的に、サイバースクワッティングは悪いことだと考えています。

ENSが成功するためには、人々が実際にENSを利用する必要があります。使えそうな名前を登録しておいて居座りしていると、名前を高額にしたことで人々がシステムから離れていき、システムの首を絞めることになりかねません。

ENSの目標

ENSは昨年から非常に好調です。1年半前はシステム統合の件数でいうと20件ほどでしたが、現在では171件となっています。我々が目標としているのは、暗号通貨アドレスでのやりとりが必要なくなり、そしてこれが当たり前になることです。

皆がENS名を使って交流できるようなネットワークを作りたいと考えています。UniswapにはENSの面白い使い方がいくつかあって、たとえば ENS名を自動的に検出してくれます。これにより、私がUniswapにMetamaskからログインすると、私のENS名をユーザー名として表示してくれます。

ENSとNFT

ENSにおけるデフォルトのサフィックスは「.ETH」ですが、他のサフィックスもサポートしていて、DNS名をシステムに統合できるようになっています。

あらゆるサフィックスの中で「.ETH」だけがNFTで、これはどのNFTシステムにも自動的に適応可能です。例えば、OpenSeaというNFT専用のマーケットプレイスで、CryptoKittiesのコレクションやゲーミングカードなどを売買できるのと同様にENSも売買出来ます。

システムの構造上、他のサフィックスはNFTではありませんが、他のサフィックスもNFT化できたら素晴らしいことだと思います。

サイバースクワッティングの対策

2017年にリリースされたENSの古いバージョンでは、EthereumをロックアップすることでENS名を取得するという方式をとっていました。しかし2019年に変更が加わり、ENSバージョン2では永久登録(Permanent Registrar)というシステムが使われています。

ENS名を所有するには、登録して毎年更新をします。つまりこの新しいバージョンでは、ENS名に対して維持コストがかかるということです。ENSはEthreumのインフラを使うため、インフラコストがかかりません。ENSの登録費用を開発チームの維持費に充てることができるのは有用なことではありますが、登録コストがかかるようにした本当の理由はENS名のサイバースクワッティング対策のためです我々は人々に名前を登録してもらい、実際に使ってもらいたいと思っています。そうでないとシステム全体が混雑し、何千もの名前を保有する人に乗っ取られてしまいます。

コストは一般の人にとっては無視できる程度のものです。しかし、ちりも積もれば山となるので、何千もの名前を登録しようとする行動を抑止できます。2017年のデポジットシステムでは、名前を返せばデポジットを取り戻すことができるので、名前の居座りに対する抑止にはなりませんでした。

現在のシステムでは、名前に対して年間5ドルの維持手数料がかかります。年間5ドルというのは一般の人にとっては無視できるほど安いものだと思います。ところが1000個の名前を保有した場合は、年間5000ドルを支払わなければならないことになります。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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