SH

Dogecoinに関する分析批評〜すべての暗号通貨を同列に語るべきではない理由〜

暗号通貨愛好家のインフルエンサーたちの中には、BitcoinもDogecoinも一緒くたにして語る人もいます。しかし、Bitcoinがより確立した立場をもつ暗号通貨である一方、Dogecoinはもともと冗談から誕生したミームコインです。Dogecoinのそんな性質を利用してBitcoinの信用を弱めようとする懐疑派もいます。暗号通貨は非中央集権的だからこそ、その普及・宣伝を担う1人1人がよく勉強し、注意深くなる必要があります。今回の記事はDogecoinに関する分析を通じて、暗号通貨界隈全体のあり方についても考察しています。ぜひご覧下さい。

本記事は、 Toby Hazlewood氏の「Deconstructing Dogecoin — Not All Cryptocurrencies are Equal」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。

有名人や大企業の影響力

イーロン・マスク氏と言えば、いつも暗号通貨について多くのことを語っています。マスク氏がたった1回ツイートすれば数百万人に届くほどの影響力があります。彼の影響力というのは、世界中のインフルエンサーに憧れる人々から相当な羨望を集めていると思います。

マスク氏はBitcoin界隈でも類い稀なほどの影響力を持つキーパーソンであり、彼の名前は常にニュースの見出しを賑わせています。

マスク氏は一時期、自分のTwitterのプロフィール欄に「Bitcoin」と書いていた時がありました。ちょうどその時期にマスク氏の行動に呼応するかのようにBitcoinの価格が上昇し、2021年2度目の40,000ドル超えを記録しました。

マスク氏の一連の突飛な行動とおどけた態度により明らかとなったのは、実は当時、彼の会社であるテスラが15億ドルをBitcoinに投資するプロセスの最中にいたということでした。テスラの投資がメディアで報道された後Bitcoin価格はさらに上昇し、50,000ドル近くまでいきました。

私自身のようなBitcoin投資家にとって、こういった形の影響力というのは歓迎すべきことです。大規模な企業の支持によりBitcoinが世間で話題に上るようになれば、人々もこの話題に関する知識について勉強しようとするからです。

これはBitcoinの普及に直結することで、結果としてBitcoinは現状よりももっと人々に受け入れられるようになるでしょう。こういった価値の向上につながることはBitcoinを長期的に保有している人々にとっても歓迎すべきことです。

マスク氏の暗号通貨に対する熱意はBitcoinだけにはとどまりません。彼はBitcoinのみならず、Dogecoinに対する愛もちょくちょくツイートするようになったのです。

おふざけポジションのコインが時価総額80億ドルに!?

仮にBitcoinを自動車にたとえるなら、テスラの「モデルS」といったところでしょうか。そうするとDogecoinは、ディズニー映画『ハービー/機械じかけのキューピッド』に登場する意志を持ったVWビートルの車「ハービー」になるかと思います。

この車はDogecoinと一緒で、新しいものを作ろう、とか、本当に役に立つものを作ろう、という真剣な思想から誕生したものではなく、もともとクリエイターたちの娯楽として誕生しました。

Dogecoinの定義について説明するために、ウィキペディアからの一節を直接引用します。

Dogecoinはソフトウェアエンジニアのビリー・マーカス氏とジャクソン・パーマー氏によって考案されました。両氏は、動作がはやくて、楽しめて、しかも手数料不要の決済システムの開発を目指していました。DogecoinはDogeというミームの柴犬にちなんで名付けられ、その柴犬の顔がロゴになっています。

Wikipedia

Bitcoinはデジタル通貨の新パラダイムを確立するために考案され、規制のない分散型の金融システム、そしてインフレ耐性のあるデジタルの貯蓄手段を提供してくれる存在です。一方Dogecoinはというと、もともと冗談として考案されたものなのです。

単なるミームではすまないDogecoin

DogecoinはBitcoinと同様に、登場してから急成長を遂げています。時価総額こそBitcoinの約100分の1ですが総量はBitcoinよりはるかに多く、現在の総数が1270億、そのうちすでにマイニングされているのが1130億という規模です。一方Bitcoinは総数が2100万でそのうち1960万ほどがすでにマイニングされています

もともと冗談から生まれてミームにちなんで命名されたDogecoinですが、このコインにも間違いなく真剣な領域が存在しているということはもう明らかでしょう。

Dogecoinは2013年の構想から進化を遂げました。ユーザーの間ではP2Pの決済が可能になり、最近では暗号通貨取引所でも広く取引されるようになりました。

2021年の1月にはマスク氏と彼の数々の“問題ツイート”の影響(およびGameStopをめぐる一連の騒動の影響)のおかげでDogecoinの価格は800%も上昇しました。Dogecoinを支持する熱狂的な所有者やユーザーたちが多い上、マスク氏のツイートも相まって、ブームに乗じて購入・売却した人々もたくさんいるのです。

Dogecoinは数多く存在しているアルトコインの一つにすぎませんが、相対的な価値と信頼度を考えるとBitcoinやEthereumにも匹敵すると思います。

概念的なレベルの話をすると、アルトコインはユーザーベースで価値が認められていて、P2Pでやりとりができる通貨トークンに類似していると思います。

つまりBitcoinがドルやユーロやポンド等のいわゆる「本物の通貨」的なものであるのに対して、アルトコインはごく限定的な範囲内で通用するトークンであり、より独占的側面を持つお金であり、ドワイト・シュルート氏がつくった通貨「シュルート・バック(Schrute Buck)」のデジタル版や暗号化版のようなものだと思うのです。

(※訳者補足 Schrute Buck:シュルート・バック。アメリカのテレビドラマシリーズ『The Office』に登場する架空のキャラクターであるドワイト・シュルート氏が自身の会社であるDunder Mifflin Paper Companyの地域マネージャーを一時的につとめた際に作り出した、社員のモチベーション向上を目的とした通貨の基本単位。ドワイト・シュルート氏によると、1シュルート・バックは0.0001米ドルの価値があるそうで、1,000シュルート・バックは、昼休みの5分延長と交換することができる。)

今後アルトコインにとって、現行の世界金融システムの内部構造を置き換えるような活躍の場というのは少なくなるかもしれません。しかしそれでもアルトコインの居場所はあると思います。我々の世界は何百年もの間、単一の通貨に依存することなく今日までやってきました。多種多様な暗号通貨のための場所がないはずがありません。

私はDogecoinやその他の暗号通貨に対して何か不平や不満を持っているというわけではありませんが、暗号通貨投資については比較的初心者なので、BitcoinとEthereumが主流だという多くの人からのアドバイスに従いました。そして通貨の仕組みについて自分でも勉強したりしてみた結果、結局のところ安心して投資できるのはこの2つだけだと思いました。

しかし、だからといって決してアルトコインの可能性(および必然的に高くなってしまう詐欺のリスク)が目に入らないというわけではありません。

多くの投資家たちがDogecoinといったコインへの投資を通じて大きな利益をあげることができたという事実は、今後の金融システムにおける暗号通貨の立ち位置をより確立させることにつながるでしょう。

暗号通貨懐疑派に利用されてしまったDogecoin

Dogecoinに対して唯一不満があるとすればそれは、イーロン・マスク氏やスヌープドッグ氏、ミュージシャンのジーン・シモンズ氏といったそうそうたる有名人たちがDogecoinに関することをBitcoinと同じようなテンションや文脈で言及しているがゆえに、暗号通貨の真剣な側面についての世間一般の理解がなかなか進まないという点です。

暗号通貨界隈の全体的な理解度や相互受容の現状はとても十分とは言い難いレベルです。そもそもBitcoinに対する理解・関与レベルは言ってしまえば低水準です。多くの人々はBitcoinの欠点や弱点にのみ着眼し、それらの短所にかこつけて、だからBitcoinは一時的なブームで信用に値しないのだと語気荒く述べ立てるのです。

暗号通貨懐疑派の間では恐怖や不信感が蔓延しており、権威ある立場にいて知識もあるはずの論客たちが、「冗談みたいな暗号通貨」であるというDogecoinの性質を利用してBitcoinの信用をも貶めて弱体化させようと躍起になっています。

最後に

マスク氏からは、彼の暗号通貨コミュニティーに対する並々ならぬ愛とBitcoinの将来性に関する信念が明らかに見てとれます。マスク氏の思想というのはテスラがBitcoinによる支払いを受け付けようとしていることからも汲み取ることが出来ます。彼はTwitterで人気者になろうとしているだけではないということです。


私自身の暗号通貨投資家人生はまだ短いものですが、これまでの限られた経験の中だけでも、この分野には非常に多くの意見の対立があるということを実感しています。

暗号通貨を愛し信じている人たちは、自らの熱意を声高に主張します。しかしその一方で暗号通貨に不信感を抱き将来性がないと考えている人たちも、同じように声を荒げているのです。

暗号通貨は非中央集権的であるという性質上、その管理運営は1人の人間や1つの団体の手には委ねられていません。この特質は通常プラス面であるととらえられています。

しかし非中央集権的であるということは、暗号通貨を世間一般に普及させるための中央マーケティング部門のような役割のものも存在しないということです。

したがって我々は皆、暗号通貨をよりよく理解するために助け合わなければならないという既得権益を持っています。しかしながら、Dogecoinというコミカルな性質の暗号通貨をBitcoinと同列に扱うことが果たして有益かどうかは、私にはわかりません。

とはいえ、この度の記事の執筆を通してDogecoinについて多くのことを学んだのも事実です。マスク氏、シモンズ氏、スヌープドッグ氏らの多少物議を醸すようなツイートでも、私自身や他の人たちにとってDogecoinについてもっと勉強するように促すきっかけとなったのであれば、彼らの強力な発言力といういのもそんなに悪くないものなのかもしれませんね。

注意:この記事は情報提供のみを目的としています。金融や法律に関するアドバイスではありません。重要な財務上の決定を行う際には必ず専門家に相談してください。

翻訳: Nen Nishihara

暗号資産に係る留意事項 

1.弊社が取り扱う暗号資産は、弊社の説明に基づき、金融庁・財務局が資金決済法上の定義に該当することを確認したものにすぎません。

2.金融庁・財務局並びに弊社が、これらの暗号資産の価値を保証したり、推奨するものではありません。暗号資産は、必ずしも裏付けとなる資産を持つものではありません。

3.暗号資産の取引を行う際には、以下の注意点にご留意ください。

(1)暗号資産は、日本円やドルなどのように国がその価値を保証している「法定通貨」ではありません。インターネット上でやりとりされる電子データです。

(2)暗号資産は、価格が変動することがあります。暗号資産の価格が急落したり、突然無価値になってしまうなど、損をする可能性があります。

(3)暗号資産交換業者は金融庁・財務局への登録が必要です。弊社は暗号資産交換業者(関東財務局長第00008号)です。

(4)暗号資産の取引を行う場合、弊社のWeb上の説明書面(利用規約等)をお読みいただき、取引内容をよく理解し、ご自身の判断で行ってください。

(5)暗号資産や詐欺的なコインに関する相談が増えています。暗号資産を利用したり、暗号資産交換業者の導入に便乗したりする詐欺や悪質商法にご注意ください。

なお、弊社が取り扱う暗号資産は、弊社の暗号資産交換業の登録に当たり弊社の取り扱う暗号資産として金融庁・財務局に申請したものです。