Bitcoinの「マイニング」で世界シェアの大半を占めていた中国では、2021年5月に国内マイニング禁止令が出されました。これを受けて世界のマイニング情勢は一変し、アメリカがハッシュレートのシェアにおいてトップに立ちました。
中国のマイニング禁止から半年が経った今、どのようか分析ができるでしょうか。また、アメリカ国内のマイニングはどの州が中心となっているのでしょうか。本記事の著者は、中国のマイニング禁止はBitcoinにとってプラスに働くと考えています。今回はその理由についても詳しくみていきます。
本記事は、In Bitcoin We Trustに掲載されているシルヴァン・ソーレル 氏(Sylvain Saurel)の「5 Months After China Banned Bitcoin Mining, America Leads Network Hash Rate With 42.7%」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。
中国の国内マイニング禁止令はBitcoinにとって吉か
2021年5月初旬、中国は自国内におけるBitcoinマイニングを禁止しました。これによりBitcoinの価格は後の数週間で3万ドル前後まで急落し、市場は全体的にパニック状態に陥りました。
ところが私は当時すでに、中国の行動はBitcoinが将来的に極めて強気に動くように作用するだろう、という見解を示していました。なぜなら中国が国内におけるマイニングを禁止したことにより、当時Bitcoinの抱えていた2つの問題が同時に解決されたからです。
1つの問題はBitcoinネットワークのハッシュレートが中国に過度に集中していたということ、そしてもう1つはBitcoinのマイニングに伴う環境問題です。
マイニング主勢力の中国からアメリカへの大変遷
私はBitcoinのハッシュレートはじきに中国のマイニング禁止以前まで回復するだろうと考えました。2021年5月に中国がマイニングを禁止したことでビットコインのハッシュレートは5月と6月に大きく下落したものの、その後は力強く反発しました。
Bitcoinマイニングの中国からアメリカへの大変遷というのは、時を追うごとに確固たる現象となってきています。アメリカではRiot、Marathon、Foundryといったビッグプレイヤーたちが、中国が抜けたあとの穴を利用しようと常にマイニングマシンを増強しています。
中国によるマイニング禁止令以前の世界のマイニング情勢
ここで興味深いのは2021年4月頃までの、つまり中国がマイニング禁止令を打ち出す前までの世界におけるBitcoinのマイニング情勢はどうなっていたのかということです。
ケンブリッジ大学のデータによると、中国が2021年4月時点でBitcoinハッシュレートの世シェアの実に46%を占めているということがわかります。次点でアメリカが16.8%を占めています。アメリカのBitcoinハッシュレートのシェアは2021年開始時点では10.5%でした。したがってアメリカのハッシュレートシェアというのは、この時点ですでに上昇傾向にはありました。
アメリカ国内のマイニングは電気代が安い州が独占
2021年10月初旬にテキサス州の州都オースティンで、テキサス・ブロックチェーン・サミットが開催されました。ちょうど開催されたばかりのこのサミットでは、マイニングプール「Foundry USA Pool」のデータをもとに作成されたアメリカ国内のBitcoinハッシュレートの州でみた分布をリアルにイメージできるデータが発表されました。
発表されたデータによると、アメリカ国内におけるBitcoinマイニングの主力地域は、ニューヨーク州(19.9%)、ケンタッキー州(18.7%)、ジョージア州(17.3%)、そして最後にテキサス州(14.0%)となっています。
もちろんこれはあくまでもFoundry USAのデータだけを参照した時の分布図ですが、これをRiot BlockchainやMarathonといった他のアメリカのプレイヤーのデータと統合することも可能なはずです。
とはいえ、他のマイニングプールのデータと統合された結果においても、同じような州が上位に浮上してくるでしょう。マイナーの利益の最大化を考えるとどうしても電気代が安い州が非常に有利になるのです。
そう考えると、アメリカ国内のハッシュレートシェアを見た時にテキサス州が占めている割合というのは、実はこのデータよりも高い可能性があると予想することさえもできます。
テキサス州は自然を資源とした再生可能エネルギー由来の電力が安いため、Riot Blockchainが多くのマイニングマシンを設置しているということも知られています。
マイニング勢力の変化により向上したBitcoinのESG評価
再生可能エネルギーの安いテキサス州におけるBitcoinマイニングが盛んであるということは、Bitcoinのマイニングに使用されている電力の56%以上が再生可能エネルギーであったという説を裏付けるものでもあります。この56%という値は、ビットコイン・マイニング協議会(Bitcoin Mining Council)が出したレポートによるもので、2021年の6月末の傾向です。
つまり中国が国内におけるマイニングを禁止して以降、BitcoinはそのESG評価を大幅に向上させたということです。おかげで現在では優秀な成績以上の評価となっています。
Foundry USAのデータにおいてニューヨーク州が好成績を挙げているのも素晴らしいことです。というのもニューヨークは将来的に100%カーボンフリーの電力供給の実現を目標に掲げており、原子力発電による電力を使用しているからです。
また、ニューヨーク州はロッキー山脈以東のどの州よりも多くの水力発電を行っており、全米で3番目の規模を誇る水力発電による電力の供給地でもあります。
あれから世界のマイニング情勢は
次にご紹介するのは、ケンブリッジ大学による更新版の国ごとのハッシュレートのシェアです。データをみていただくと、想定通りの結果となっていることがおわかりいただけるかと思います。
アメリカは現時点でネットワーク全体におけるハッシュレートの42.7%のシェアを占めています。これは2021年の4月から見て、実に+60%の増加です。
アメリカは中国に取って代わり、世界におけるハッシュレートのシェアトップに立ちました。Bitcoinが発信する自由の価値というのは、どちらかと言えば中国の持っている共産主義的な価値観よりはアメリカの掲げる自由主義と親和性が高いと感じますので、これは素晴らしいニュースだと思っています。
マイニング情勢の変化から占うBitcoinの将来
今回アメリカがマイニングの覇権を握ったのは、ほんの始まりに過ぎません。アメリカは今後も引き続きBitcoinマイニングの主勢力であり続けるだろうというのが私の個人的な見解です。
また、アメリカだけではなく、たとえばHIVEやHut8といったようなプレイヤーを有するカナダも、Bitcoinマイニングの分野でより多くのシェアを占めていくようになるでしょう。
テキサス州はBitcoinに対して友好的な法律を施行しているだけでなく、電力系統も規制緩和されており、たとえば電力をリアルタイム・プライシング(時間別に形成される卸電力市場価格=1日前市場ないしリアルタイム市場を反映した電気料金)にて提供しています。このような魅力のあるテキサス州は、今後もより多くのプレーヤを惹き付けていくでしょう。
このように魅力的な環境というのはマイナー以外のプレイヤーたちも惹き付けるので、テキサス州は将来的にBitcoin業界で米国を代表するような州を目指していけるでしょう。
こういったあらゆる背景がBitcoinの将来を確約しているので、Bitcoinはこれからも世界で最も安全な分散型ネットワークであり続け、環境面においても、ESG評価を高めていくことができるでしょう。
翻訳: Nen Nishihara
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