Bitcoinをはじめとする暗号通貨が出現したばかりの頃は、一部の人だけが注目している影の存在でした。しかしそこから時を経て、今や世界経済フォーラムという国際機関の議題にあがるほど存在力を持つようになりました。今回の記事では世界経済フォーラムの暗号通貨に対する見解を分析しています。経済について話し合う国際的な場で、暗号通貨はどのように受け取られているのでしょうか。ぜひご覧ください。
本記事は、 「World Economic Forum’s take on cryptocurrency」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。
世界経済フォーラムと暗号通貨
暗号通貨というのは一攫千金を狙う詐欺のようなもので、複雑な仕組みを理解できない単純な人々を餌食にするものである、と考えられてきた過去もあります。
しかし暗号通貨はそんな過去から抜け出し、特別なブラウザがないとアクセスできないような闇のマーケットプレイスに属する存在から、世界経済フォーラム(WEF)で脚光をあび、その世界的な普及が評価されるほどの存在にまで成長しました。
WEFでは、特に関心が寄せられている通貨というのも何種類か示されました。しかし、実はWEFで注目されている議題はこれだけではありません。
少し意外かもしれませんが、WEFでは暗号通貨の活用に伴う痛点、つまりマイナス面についてもかなりの学識をもって取り組んでいます。今回の記事では、議論された痛点の中でも特にコンセンサス・メカニズムについて取り上げています。
WEFは2021年の6月に、暗号通貨やブロックチェーンの世界に入るにあたってのガイダンスを提供する目的の暗号通貨のコミュニティペーパーを発表しました。このコミュニティペーパーには、WEFの実施しているスケーラビリティテストに合格した暗号通貨も掲載されています。
中にはこのテストに合格した暗号通貨一覧を、WEFが勝つと判断した暗号通貨プロジェクトのリストと同義であると解釈する人もいます。これはつまり、もしもWEFの報告書に参照されれば、そこに掲載されているプロジェクトが将来的に大規模な資金提供を受けるということも出てくるということです。
暗号通貨に対する悪い見方や問題点
まず、暗号通貨とその社会的役割について様々な中央集権的な当局やその広報担当者たちが矛盾したメッセージを発信しているという問題があります。
その中には、Bitcoinがマネーロンダリングを助ける「おかしなビジネス」であると非難したECB(ヨーロッパ中央銀行)のラガルド総裁や、ラガルド氏と同様に、Bitcoinの決済システムとしての限界や犯罪資金調達手段としての機能を強調したアメリカのイエレン財務長官なども含まれています。
イエレン氏のBitcoinに対して以下のように述べています。
「現状の使われ方をみていると、不正な資金調達に利用されることが多いのではないだろうかと懸念しています。取引を行うには極めて非効率的な方法であり、取引処理に膨大なエネルギー消費を要します。」
暗号通貨に対する支持
しかしポジティブな見方もあります。たとえばスイスに拠点を置く国際官民協力機構(International Organization for Public-Private Cooperation)は、最新の報告書でBitcoinを支持する姿勢を示しています。
全22ページに及ぶこの報告には、個人と企業の専門家の双方に向けた、トランザクション、dapps、ガバナンスシステム、スケーラビリティ、そして規制に関する実用的な助言が掲載されています。
WEFのコミュニティペーパーの中から、関連の記載を一部引用します。
「暗号通貨が我々の取引方法、トランザクション形式、オンラインでの交流のやり方を変えていくにつれ、技術のリーダーたちにとっては、これらのイノベーションの経験が今までにないほど重要性を増してきている。」
報告書の中では、予想通りBitcoinとEthereumの二大巨頭が登場します。Ethereumにいたっては、まるまる1章を割いて、プログラミングの可能性や技術革新を促進する働きについて解説されているほどです。
また、報告書のスループットとスケーラビリティに関する箇所では、Algorand、Cardano、Celo、XRPL、Solano、Stellarという6つの暗号通貨プロジェクトを取り上げて、膨大な量のトランザクションを処理する能力について言及しています。
暗号通貨の規制やエネルギー利用など
WEFでは、プライバシー、匿名性、仮名性、そしてブロックエクスプローラーといったブロックチェーンを探求する上で有益な機能やツールについても議論しています。
各金融機関は、ブロックチェーンの技術に対して全体として中立な姿勢を保ちつつ、法律やエネルギー利用やプライバシーの観点からの複雑性を強調しました。
このような話題をめぐる議論の中であがってきた論点は、暗号通貨の法規制は金融犯罪の政治に影響されるということでした。中でも多くの国々の政府にとっての議題、および国際的な議題の中心となっているのが、Bitcoinの基本原則と矛盾するKYCとAMLです。
WEFの見解としては、暗号通貨の規制は遅れており、したがってこれは世界中の規制当局が問題視しているテーマであるということでした。以下、WEFの報告書からの抜粋です。
「現在までのところ、ブロックチェーン及び暗号通貨に関する国際的に連携のとれた規制は存在しません。しかし、FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)、金融安定理事会、証券監督者国際機構、国際決済銀行などの国際機関は、国際的な規制の確立に向けた基準や指針づくりを目指しています。」
また、エネルギー面の考察についてですが、WEFの研究はBitcoinのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)が環境に有害であるという主張はしていない点において、多くの主流メディアよりもエネルギー消費についての優れた仕事をしていると言えます。WEFによると、エネルギー消費はネットワークの安全性を保証するために必須である、とのことです。
つまり、PoWは計算処理の負荷が高くエネルギー消費が激しいものの、ネットワークを攻撃するのにコストがかかるため二重支払いの問題を解決することができ、ブロックチェーンの安全性確保の鍵を握っているのです。
報告書の中では、たとえばプルーフ・オブ・ステーク(PoS)といったPoWに対する代替的な方法との比較も行われています。ただ、Ethereum2.0を動かすビーコンチェーンコンセンサスシステムについては、「あまり実戦歴のない」システムである、という見解のようです。
最終的には、暗号通貨を支えている基礎技術を理解するにはBitcoinやEthereumをはじめとする暗号通貨を実際に自分自身で試してみるのが一番いい、というアドバイスもありました。
翻訳: Nen Nishihara
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