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インフレ率8%とはどういうことか : Cody Collins氏

インフレというワードを頻繁に聞くようになってから、我々はある意味インフレした状態に慣れてしまいました。そんな時こそ、今一度インフレの指標と向き合って、世界で何が起きているのかを考えるタイミングではないでしょうか。今回の記事では特にエネルギー市場のインフレについて衝撃的な数字も紹介しながら考察しています。ぜひご覧ください。

本記事は、 Cody Collins氏の「8% Inflation Is a Joke」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。

アメリカのインフレ事情

インフレというキーワードを頻繁に耳にするようになってからすでに1年以上が経過しました。インフレについての記事も早いうちから出ているので、そこから考えるとインフレが話題になってから1年よりもさらに時間が経っているということになります。

米国政府の発表によると、2022年4月の(アメリカの)消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.3%上昇したとのことです。3月の伸び率が8.3%、2月の伸び率が7.9%なので、伸び率は3ヶ月連続で高い水準で推移しています。

このようなこともあって我々は残念ながら物価の上昇に慣れてしまっています。仮にCPIの伸び率が5.0%とであったとしても褒めそやしてしまうでしょう。しかし数年前のインフレ率は2.0%前後で推移していました。その頃の人々がもしも5.0%という数字を見たとしたら、相当警戒心を抱いたはずです。

そんな中、最近ではインフレが「ピーク」に達したという話もよく聞きます。しかしこれは実は非常に危険な議論です。懸念は2つあります。

まず1つ目は、ここ1年のインフレは「一過性のものである」と言われ続けてきましたが、インフレが今後どうなっていくのかは専門家でさえもよく読めていないという点です。

そして2つ目は、たとえ物価がこれまでほど上昇しなくなったとしてもまた元の水準まで下がることはあるのか、というのが不透明であるという点です。

筆者はもともと楽観主義的な性格ですが、それでも物価が前年よりも下がることはないと予測しています。

インフレとエネルギー危機

筆者はエネルギー産業に従事していましたが、この産業に携わることができたのはとても素晴らしい経験だったと思っています。特にここ2年あまりは本当に波瀾万丈で、非常に多くの気づきがあったように思います。

ちょうどこの記事を執筆する前の日も、大変気になる数字を目にしました。

それは全米の電力スポット市場に関する数字だったのですが、デイアヘッド市場(1日前市場)の平均電力価格のピークが前年同月比で「161.76%増」というものでした。

これは簡単にいうと、ピークの時間帯の電力価格(具体的には月曜日から金曜日の午前8時から午後11時の時間帯)が、前年比で160%以上も上昇したということです。

もしも、エネルギー、食料、水以外の商品が1年で160%も上昇したとしたら、消費者はそれでもその商品を購入するでしょうか?おそらく購入しないだろうと思います。

この電力の価格上昇は、何も電力会社が強欲だから価格を上げたとかそういうわけではありません。実は上昇したのは電力価格だけではありません。天然ガスの価格も前年比で平均173.45%跳ね上がっているのです。

天然ガスをエネルギー源とする発電所はアメリカのエネルギー市場の最大40%をも占めると言われていますが、もしも発電の原料となっている天然ガスの値段が上昇したのであれば、商品である電力の価格も上げなければ商売になりません。

また、40%というのはそこまで全体に影響を及ぼすほどの規模なのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、エネルギー市場の構造上、電力価格はこれら発電所の事情に基づいて決定されます。​​

エネルギー危機は国際的な問題

こちらではなんと、先ほどご紹介した気になる数字以上に衝撃的な数字が登場します。さっそくご覧いただきましょう。

「トルコの2022年5月のインフレ率は驚愕の73.5%増だった(前年同月比)」

何ということでしょう。私は今までアメリカの8%がひどいと思っていました。

しかも、トルコのインフレの大部分は生活に必要不可欠である食料とエネルギー価格の上昇によって引き起こされています。そして大変困ったことに、トルコのインフレ率は数ヶ月間は70%前後で推移するだろうと言うのが一般的な見方となってしまっています。

これほどの異常なインフレ率が出ている背景にはいくつか経済的な要因がありますが、その一部はロシアとウクライナの紛争のエネルギー価格への影響です。ロシアとウクライナの人々が紛争による打撃を受けているというのは言うまでもないことですが、この紛争の影響はそれだけにとどまらず、世界中の人々に何らかの影響を及ぼしている状況です。

エネルギー価格はどの国でも上昇していますが、世界的なインフレというものは存在するのでしょうか。

最後に

インフレはまだ続くのでCPIの上昇率が8%から下がっただけで喜ぶのは要注意です。というのも、CPIがプラス成長である限り、我々は必ず前の年よりも多くお金を支払っているからです。

デフレ反対派の言い分も理解できますが、エネルギーや食料といったモノは生活必需品ですので、人々が価格の如何にかかわらず購入しないといけないものになります。こういった必需品というのはたとえデフレになっても購入され続けるでしょう。そしてアメリカや世界の消費者は生活必需品の価格が下がることを望んでいます。

現在も進行中のウクライナの紛争はすでに100日以上戦闘が継続しており、すぐには終わりそうもありません。私が生きてきた時代の中で、これほど経済に影響を与える戦争というのはまだ見たことがありません。また、1年後の経済がどうなっているのかということも心配です。

翻訳: Nen Nishihara

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