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「ルツェルン応用科学芸術大学のブロックチェーン課程」SEBA Bank マルセル・ハーマン氏 ②

スイスSEBA Bankが運営する暗号通貨・デジタル資産の教育プラットフォーム『SEBAversity』で責任者を務めるマルセル・ハーマン氏(Marcel Harmann)に、スイスの暗号通貨教育についてお話を伺いました。ハーマン氏は、スイスで史上初めてブロックチェーンのコースを開講したルツェルン応用科学芸術大学でも、講義内容の策定などを行われています。

マルセル・ハーマン

インタビュー日 : 2020年5月13日

ルツェルン応用科学芸術大学のブロックチェーン課程

IT部の学士課程では、ブロックチェーン、コンセンサスアルゴリズムがどのように機能するかといった仕組みや、分散化、分散型台帳、そして計算に関連するあらゆるメカニズムについて深く掘り下げます。

このような内容を教えている大学は実は他にもあり、数年前からこういったコースを取り入れるようになってきました。他の大学では、この分野はビジネス的な観点からアプローチされることが多いです。

教育課程の構成要素は大きく分けて4つあります。まず1つ目は、ブロックチェーン技術の基礎です。ブロックチェーン技術について深く掘り下げ、参加者が基本的なことを理解できるようにします。

2つ目は、ブロックチェーンのプラットフォームおよび実践です。ここでEthereum、Hyperledger(ハイパーレジャー)、Tezosといった大きなプラットフォームを見て、ブロックチェーンのプロジェクトは、どういった実践が最適なのかを学んでいきます。

3つ目は、ブロックチェーンのビジネスモデルについてです。従来の学び方は、業界ごとに分けてビジネスモデルをみていくものでした。たとえば医療業界のビジネスモデルを見たり、政府や金融などのビジネスモデルを見たりといった感じです。しかし、この課程においては、特に発展が進んだ分野に重点がしぼられています。

金融業界は、非常に目まぐるしい変化を遂げています。それにあわせて、教える内容も迅速なアップデートが必要です。我々のエコシステムの改善に直結するような、有益なことを中心に取り入れていかなければいけません。

最後の要素は法とコンプライアンスです。ここでは、シンガポールやニューヨーク、ヨーロッパ、そして日本などのグローバルなハブにおける、参加者として重要な規制システムについて学びます。

分散型の世界をつくるためのブロックチェーン技術

デジタル通貨は素晴らしい決済手段だと思いますが、Bitcoinがこの手段となれるのかはわかりません。Bitcoinは通貨というよりは、価値の保存手段に向いている思います。

Bitcoinは大幅に値上がりする可能性があります。誰も、ピザを100万ドルで買いたいとは思わないでしょう。家など、大きい買い物の場合は、良い支払い方法だとは思いますが、ガムを買ったりするのなんかには全く向いていません。

私はブロックチェーン技術そのものに注目しています。ブロックチェーン技術は、個々人が権力を取り戻せる、分散型の世界をつくるのに役立つ可能性を秘めていると思います。

権力分散型の世界では、政府は無期限にお金を印刷し、空虚なバブルを作り出すことができなくなります。私は、世界がより分散化された方向に進んでいくのを望んでいます。

いまだに現金が人気

現金は未だに、最もよく用いられる支払い方法です。現金が最有力だと証明する数々の研究も存在します。そして、スイスには未だに、1000スイスフラン札という高額紙幣があります。ユーロ圏における最高額紙幣は500ユーロ札です。

現金が最も有力な手段で、次いで有力なのは銀行カードを使った支払いシステムです。これには世代の違いもあるでしょう。若い世代はほとんど現金を使わないのに対して、年配の世代は現金しか信用していません。

スイスで普及するデジタルバンキングライセンス

スイスのFINMA(金融庁)は、非常に早い段階で規制を作り、異なる種類のトークンをどのように扱うべきかについてのガイドラインを発表しました。FINMAはとても前衛的でオープンマインドでしたが、これは国家として非常に良いことだと思います。

これは各種業界、特に金融業界に、これらの技術について本格的に検討し始めるための基盤を与えました。政府によって支援されている明確なガイドラインやルールの存在により、恐怖心が緩和されたのです。

スイスでは、設立されて間もない、デジタル資産と暗号通貨に特化した2つの銀行に本格的なデジタルバンキングのライセンスが与えられました。Sygnum Bank AGとSEBA Bank AGです。

この2行は、他行からも注目されています。UBSグループ、クレディ・スイス・グループ、EFGインターナショナルなど、現時点でデジタル通貨システムを提供していない大手銀行は、非公開で新しい戦略に取り組み、テストを行っています。

大手銀行は、この新しい技術を理解する必要性を分かっています。さらに、約4000人の従業員を抱えているジュリアス・ベア銀行のように、新しいアイデア対してより積極的な銀行もあります。

ジュリアス・ベア銀行はSEBAと提携し、現在BTCやETHなどのデジタル資産をSEBAを通じて顧客に提供しています。このように、異なる種類の金融機関が、様々な努力や取り組みをしています。今後1〜2年の間に、より多くの銀行がこの技術を導入していくようになる思います。

暗号通貨界隈のインフルエンサー

私はアンドレアス・M・アントノプロスの本が好きです。彼はインターネット・マネーやBitcoinに関する達人で、この業界のことについて知るためには、欠かすことのできない人物の1人です。

もう1つおすすめしたいのが、ウィリアム・ムーゲイヤー氏の著書『ビジネスブロックチェーン(The Business Blockchain:Promise、Practice、and Application of the Next Internet Technology)』です。面白い本が続々でてきていますので、常に目を光らせておくべきです。

私はポッドキャストとYouTubeを視聴しています。この業界は大変ダイナミックなので、トップを目指したいという人には、様々なタイプのポッドキャストやYouTubeを視聴することをお勧めします。

Ivan on TechとCarl The MoonというYouTuberが今のお気に入りです。市場分析をしている人たちなので、取引や投資に興味がある人には面白いと思います。見るべきものは他にもたくさんあります。

Youtubeの以外だと、ブロックチェーンと暗号通貨についてのTEDトークは見る価値があります。あと私は昔から、家で料理などの家事をしながら、ピーター・マコーマック氏の「What Bitcoin Did」というポッドキャストをよく聞いています。

それからTwitterは、様々な異なる視点からの多くの情報を収集するのにもってこいの場所です。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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