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「なぜBitcoinは生まれたのか」ナオミ・ブロックウェル氏(全インタビュー記事)

数多くのブロックチェーンカンファレンスで司会を務め、テレビプロデューサーとして活動するナオミ・ブロックウェル氏にインタビューさせていただきました。また、これまでにアメリカの全国テレビで、テクノロジー、ビジネス、政治など世界中の様々な分野の専門家にインタビューを行い、ブロックチェーンやプライバシーなどの問題をYou Tubeで発信されています。

ナオミ・ブロックウェル

インタビュー日 : 2020年5月21日

ナオミ・ブロックウェル氏(全文インタビュー記事)

Bitcoin Girl

私は、テレビプロデューサーのナオミ・ブロックウェルと申します。アメリカのトークショース「Stossel:ストッセル」でプロデューサーを務めています。また、プライバシー、テクノロジー、ブロックチェーンなどの話題を取り扱うNBTVという自分のチャンネルも持っています。現代のデジタルな生活においては、安全に使用できるデジタルマネーが不可欠だと考えています。

日本には二度行ったことがあり、非常に好きです。数年前には、「ビットコイン 月に行く」という日本語の歌も作りました。

 

Naomi Brockwell

日本語も勉強していて、これまでにひらがなとカタカナを習いました。漢字はできないので、まだまだ頑張らなければいけないと思っています。今のところ私が知っている日本語は、自己紹介や「いただきます」などの基本的なフレーズ、そして「Bitcoinは未来のお金」など少し変わったフレーズだけです。

自由なお金との出会い

私が最初に暗号通貨について聞いたのは2012年頃で、周りにいた多くの友人がそれに興味を持っていました。当時、私はニューヨークに住んでいて、特にプログラマーや数学者の友達が暗号通貨に強い興味を持っていました。

私は以前から、フリードリヒ・ハイエクが唱えた通貨間の自由競争という考えに非常に大きな興味があったので、Bitcoinについて知ったときは強く惹きつけられました。政府によって発行されることがないお金という考えが気に入りました。そして、Bitcoinが匿名で作り出され、誰もコントロールできないという点が好きになりました。

2013年頃、様々なプラットフォームでBitcoinに関する動画を作り始めました。そこから、界隈にあったサービスを色々と試してみましたが、当時のウェブサイトは造りが悪く、ユーザーにとっては使い勝手が良いものはありませんでした。しかし、暗号通貨のあらゆる全ての世界を見てみたいと思ったので、技術を開発している人達にも会うようになりました。世界中の多くの人達にとって、Bitcoinこそが自由のための強力なツールになり得るということに気付いたので、かなり夢中になりました。

世の中では、マネーサプライをコントロールできる人が全てを管理できます。他の誰かがあなたの資産をコントロールし、差し押さえることも可能であり、もし資産の凍結が可能であれば、彼らは何かしらの行動を強要することもできます。お金をコントロールする手段は、あなた自身をコントロールするためのツールにもなり得ます。

私は、自由という視点から暗号通貨というものに興味を持ちました。また、テクノロジー、オタク、イノベーションに関わるものが大好きで、今ある最新技術を追いかけることに夢中になっています。

これまでは、マネーサプライの独占があまりにも長く続いており、イノベーションを行うことに対してのインセンティブがなかったため、技術革新があまり起こらなかったと思います。現在、Bitcoinの世界では、信じられないほど頭の良い人達が常に新しいテクノロジーを開発し、お金をより良くするために努力しています。なので、私も非常に楽しませてもらっています。

楽しく伝えることが重要

数学、テクノロジー、暗号通貨、Bitcoinの話題は非常に退屈になってしまうこともあります。例えば、ミュージックビデオの様なものを作ることで、その話題をもっと楽しいものにできると感じました。

私は経済学、数学、ゲーム理論に興味がありますが、ほとんどの人は関心を持っていません。どこが面白いのかを説明できる方法を探す中で、楽しめて理解しやすいものを作れば、人々にもっと伝わりやすくなるのではと思うようになりました。そして、ミュージックビデオというものが、このような話題を理解してもらい、関心を集めるための非常に良い方法になりました。

また、エンジニアの人達は、複雑な概念を一般の方達に説明するのにあまり合っていないという考えもありました。エンジニアは技術的な専門用語を理解している他の技術者に説明することは得意です。しかし、それ以外の人達も届くような世界的なムーブメントを作り出したいと考えています。物事をより簡潔にし、理解しやすい話題を通して、多くの人々と繋がっていくことが非常に重要だと思います。

エンジニアの人達は、システムの分散性や基盤となるテクノロジーなどを重要視していますが、一般の人はそうではありません。なぜこのようなことを理解しなければならないのかと思う人もいます。なので、このような話題において繋がりを保つためには、それぞれの価値観も理解する必要があると思います。

暗号通貨界隈のインフルエンサー

暗号通貨の界隈で影響力のある人は非常に多いですが、私は新しい技術を作り続けている開発者をフォローするのが好きです。同時に、ワイオミング州において暗号通貨のユーザーを保護する法律制定に尽力されたケイトリン・ロング氏のように立法側で働いている人達にフォーカスするのも好きです。

また、業界からメッセージを発信し続ける素晴らしいコミュニケーターの人達もいます。最初にBitcoinが出てきたときは、大手メディアはそれを無視し続けていました。その後、全ての主要メディアがBitcoinを「ドラッグ・マネー」と呼び、犯罪者のものだと報道し始めたのです。

現在、最も著名なベンチャーキャピタリスト、投資家、ビジネスパーソンなどが、暗号通貨ついてポジティブな視点から話をしているという事実は、非常に大きな変化だと思います。

このような全ての変化は、数え切れないの人達の努力の結果なのです。結果として、私達皆が、代替となるお金を別の選択肢として持ち、その恩恵を受けることができているのです。

なぜBitcoinは生まれたのか

ここ数年の間に新しく暗号通貨の世界に入って来た人達は、Bitcoinというものがなぜ生み出されたのかをあまり理解していないように思います。Bitcoinは、人々が金融危機の真っ只中にいるときに生み出されました。

当時、人々はマネーサプライの仕組み、そして超巨大企業への救済策に対して非常に憤慨していました。この世界で起こっている腐敗を目の当たりにする中で、お金の代替システムが新しく生まれたことにより、多くの人がその可能性に気付き、参加するようになりました。

その後、初期ユーザー達のこのような精神をあまり理解していない新しい人々が、金銭的利益のために暗号通貨の世界に入り始め、多くの人がお金を稼ぐためだけにこの業界にいます。

しかし、私達は再び金融危機を迎えており、企業への救済は数兆ドルにも上っています。FED(連邦準備制度)が全てのお金を発行していて、選ばれたごく少数の人達がマネーサプライをコントロールするという腐敗を、再び目の当たりにしているのです。なので、私はBitcoinが好まれるという状況がもう一度起こり始めると考えています。人々は、初期ユーザー達のメッセージを理解し始め、Bitcoinがなぜ重要なのかということに気付き始めるのだと思います。

誰もコントロールできないお金

今日、あらゆる種類のデジタル通貨がありますが、全てが良いというわけではありません。例えば、政府によって発行、管理されるデジタル通貨は、既存のシステムと何の違いもありません。私達が使っているお金のほとんどは、既に1と0のデータで存在しており、ボタンをクリックするだけでコントロールできてしまいます。

私は、選ばれたごく少数の人々によってコントロールされる如何なるシステムも支持するべきではないと考えています。Bitcoinのように、誰にもコントロールできない分散型のオープンソースのシステムは、希望を与えてくれます。好き勝手に増やすことのできないBitcoinという存在が、お金を民主化し、人々に力を取り戻してくれるのです。

選挙で選ばれたわけではない官僚グループが莫大な金額を思いのままに発行できるという状況は好ましくありません。お金が大量に発行されることで、私達の貯金の価値が目減りしていくということに対して、憤りや無力感も覚えています。

長い間、人々はゴールドで裏打ちされたお金など、代替となる通貨の発行を試みてきました。政府は権限を集中させるために、そのような通貨を止めてしまいましたが、Bitcoinを使用することで、中央サーバーの電源が切られたり、金庫が押収されるという状況がなくなるのです。

Bitcoinを止めることはできません。もし政府が望めば、動きは大幅に遅くなる可能性はありますが、完全に止めることはできないのです。Bitcoinがエキサイティングな理由はここにあります。

私達はどれほど脆弱か

キプロスでは、2013年に多くの人々の銀行口座が凍結され、政府はそれらの資産を差し押さえる決定を下しました。自分自身で財産を管理するべきという経済的な権利を信じる全ての人にとって、このような出来事は警鐘になったと思います。

同様の出来事がポーランドでも起こり、アルゼンチンとベネズエラではハイパーインフレが起こりました。マネーサプライをコントロールしている人達を前にして、私達がどれほど脆弱であるかがあまり理解されていないと考えています。お金が銀行口座にある限り、私達は自分の生活をコントロールする術を失うことになるのです。

しかし、Bitcoinがあれば、自分の銀行を持つことができます。これは、好きな時に世界中に価値を移転できる力を与えてくれるものであり、持ち主の許可なしに制限を設けたり、資産を押収したりすることは誰にもできません。

Bitcoinの始まり

私は、主意主義(ボランタリズム)を信じていて、人を傷つけたり、物を奪ったりせずに、個人に可能な限り多くの選択肢を与えるべきだと考えます。この界隈に初期の頃からいる多くの暗号通貨愛好家も同じように感じているはずです。

Bitcoinは最初、Cypherpunkから派生したCryptographyメーリングリストから始まりました。そこでは、プライバシーが重要なテーマとなっていて、代替となるデジタルマネーを作ることにも大きな関心が集まっていました。彼らはコードを使って世界をより良い場所にできると信じていました。個人の権利と自由を信じる人々にとって、Bitcoinは非常にエキサイティングな存在になっています。

当初、Bitcoinは技術オタクの間で人気になりました。数学とコードをよく理解していた彼らは、Bitcoinの仕組みを見て素晴らしいと感じました。また、Bitcoinは「いいね」のような機能として使われていました。例えば、誰かのブログの投稿が気に入ったら、Bitcoinを投げ銭として使うことができました。

当時は金銭的価値がありませんでしたが、より多くの人々に知られるにつれてBitcoinのコミュニティは成長していき、2010年に行われたピザの購入で、Bitcoinは初めて実際の商品との交換に使用されました。

それが大きなターニングポイントとなり、ある意味でBitcoinの時代が到来した時期にもなりました。その後、多くの分野に影響が広がり、ウィキリークスが政府から閉鎖に迫られた際には、Bitcoinによる寄付が行われました。

ダークマーケットでも、Bitcoinで商品が購入されるようになりました。だたし、中国のダークマーケットで売買されていたものの中には、食品や衣類、薬品などの商品があったことも留意すべきです。

YouTubeやPatreonなどの強大なプラットフォームから追い出されたコンテンツクリエイターへの寄付も、Bitcoinによって可能となり、彼らは世界中からの支援で生計を立てることができるようになりました。

Bitcoinが、世界中の多くの人々にどれだけの力を与えたのかを理解していない人もいます。「インターネット・マネーって何?」「あまり理解できない」「何の価値があるのか​​」というようなコメントを依然としてもらうことがあります。

暗号通貨について教えるのは長い道のりですが、お金が何であるか、また主観的な価値ついて、大部分の人が理解していないのだと思います。なぜ、Bitcoinが重要であるかという理由を理解するためには、これらの問いを考えることが大切になります。

インターネットの消滅でBitcoinは無くなる?

インターネットが止まれば、多くのサービスが使えなくなってしまいます。その様なことが起きれば、Bitcoinも止まってしまうのかという懸念が生まれてくると思います。

多くの場面で、私達の生活は完全にインターネットに依存していて、現在は外出制限によるリモートワーク、オンラインでの社会活動、eコマースが不可欠になっているので、この問題は更に現実味を増しています。また、クレジットカードでの支払いにもインターネットが利用されています。

しかし、Bitcoinコミュニティには、冗長性(障害に対して予備機能があること)の強化に取り組んでいる開発者がいるので、これらの機能は特定のシステムに依存しすぎることがなくなっています。Bitcoinを可能な限り、堅牢で安全に保つ冗長性をあらゆるレベルで高めておくことが重要になります。

Blockstreamは、Bitcoinのための人口衛星を準備することによって、その冗長性を更に高めました。これにより、Bitcoinネットワークに繋がるために、インターネットだけに依存する必要はなくなりました。また、トランザクションを行うのに、SMSを使用することもできます。

インターネットが崩壊すると多くのサービスは停止してしまいますが、Bitcoinが消滅することは必ずしも起こらないのです。日常生活の多くの分野で、その冗長性を更に高めていくことはできますが、それでもインターネットが止まってしまうことがないように願っています。

議会で最も人気のない最高の人

私は、アメリカの元下院議員であるロン・ポール氏に数回インタビューを行ったことがあり、彼を非常に尊敬しています。彼は反戦主義者であり、またFED(連邦準備制度)の廃止を主張し、金融政策決定の透明性を求めています。

例えば、2008年に行われたTARP(不良資産救済プログラム)の状況はあまり明らかにされず、様々な汚職が起きています。ポール博士は、恐れることなくそれに抗議し続けているので、私は彼が大好きです。

彼は、自分の信念に基づき真実を語り、最も素敵で誠実な方です。人気取りではなく、自分の主張を実行するためそこにいます。彼は、利益誘導のための全ての補助金に対して反対票を投じてきたので、他の政治家の間では非常に不人気でした。

彼は、強い信念を持ちながら真実を話しています。周りで起こっている腐敗を目の当たりにし、その一部になるつもりはないと主張する、そんな彼を非常に尊敬しているので、もっと多くの人に支持されることを願っています。

未来は監視社会か楽園か

トランスヒューマニズムという考え方があり、人間は生物学的な限界を超え、前に進んで行くべきというものです。私は、人間が想像した境界線は飛び越えられるという楽観主義が大好きで、大きな希望を持っています。

スマートフォンは右腕の延長のようなものなので、私達は既にサイボーグのようなものだと思います。自分の知識を拡張するために情報を検索したり、世界中の人と瞬時に繋がることができるレシーバーとしても使用できます。 

よくSF小説では、人間のように擬人化されたロボットが出てきますが、私たちの生活には既に多くのロボットが存在し、昔のロボットのイメージで捉えられることはありません。身の回りで多くのイノベーションが起こっているこの時代に生きることができるのは、本当に楽しいことだと思います。

生物学だけでなく、日常のあらゆる分野で起こっている技術革新が大好きです。私の最大の懸念は、イノベーションが鈍化し、限界を超えられずに衰退が始まってしまうことです。

多くの人が新しいテクノロジーに対して恐れを抱いているのは、そこから発生する可能性のある悪い部分だけに目を向けているからです。しかし、視野を広げることをやめれば、多大な利益と機会が失われてしまいます。

新しいテクノロジーの悪用にも対処すべきですが、社会として前進し、学びながら成長し続けていく必要があります。テクノロジー自体は中立なものであり、善と悪の両方に利用することができます。多くの場合、そのような方向性は、そのテクノロジーが生まれた文化によって異なります。

ジョージ・オーウェルの描いた悪夢のような監視社会となってしまう可能性もありますし、もはや病気が存在せず、誰もが基本的欲求に満たされたユートピアの楽園となる可能性もあります。

未来は、これらのシナリオの組み合わせになるかもしれませんが、どの道を選択するか注意が必要だと思います。テクノロジーがもたらす良い面は全て受け入れ、私達を支配しようとするテクノロジーに注意を支払い続ける社会であることを願っています。

スノーデンはヒーロー

私はエドワード・スノーデンの大ファンで、彼の本やポスターを部屋に飾っています。彼は政府の違法行為を暴いて社会に大きく貢献しました。

2013年のスノーデンの暴露以来、NSAのような組織が、違法な監視の罪を犯していることが、訴訟を通して明らかになっています。何が起きているのか知らなければ、これらの組織に責任を問うことはできません。  

スノーデンはヒーローだと思います。彼は本当に難しい決断をして、世界に情報を提供するために莫大な犠牲を払いました。しかし多くの人は依然として監視社会に非常に満足していて、その社会は私たちを暗黒の道へと導いています。

幸いなことに、多くのハイテク企業がその道から助けてくれようと動いています。プライバシーの尊重とはかけ離れたところにいたような企業もです。

スノーデンの暴露以前は、インターネットを通じて送受信される情報のごく一部だけが暗号化されていました。しかし暴露以降はGoogleやAppleなどの企業が、暗号化を標準化する取り組みを率先して行うようになりました。

スノーデンの暴露により、多くの人々が利用していたサービスそのものが変化したため、個々人が行動せずとも、社会全体のセキュリティは向上しました。

多くのテック企業が、個人のプライバシーを取り戻せる技術をつくりたいと声をあげているものの、正直なところ道のりはまだまだ果てしないです。

しかも情報の暗号化を脅かす「EARN IT法案」のようなルールが、企業にとってユーザーのプライバシーを保護することをますます困難にしてます。

改訂されより悪化した愛国者法

アメリカ合衆国憲法の修正条項第4条は、アメリカで、無実の人を不当な捜索から守るために作られました。法執行機関は、具体的な容疑と捜索する事柄が書いてある正当な令状がないと、捜索ができないのです。

しかし修正条項第4条はなぜかデジタルの世界には適用されません。電子端末は常に押収され、インターネットを通る情報はすべて監視されています。アメリカ政府の監視能力は、当初はテロに対する緊急措置であった、愛国者法という法律によって大幅に強化されました。しかしその緊急措置はついに終わりを迎えることなく、今となっては、常に監視されている状態が普通になりました。しかも最近では愛国者法の権限がさらに強化されて、FBIは令状なしですべての人の検索エンジン履歴をみることができるようになりました。

「捜査に役立つ」とさえいってしまえば、大捜査網が敷いて情報を見ることが許されているのです。裁判官はこの情報閲覧の手順には関与していないため、本当に「捜査に役立つ」かどうか、一体誰が判断するのでしょうか。改正版の愛国者法は、人々のデータを検索する完全なる捜査権限を司法権に与えています。これは今までに前例のないスパイ的権限であり、非常に恐ろしいことだと思います。

24時時間年中無休の監視体制

スノーデンは私たちのために、自分の人生さえあきらめました。彼はガールフレンドとハワイで本当に素敵な生活を送っていて、お金もたくさん稼いでいまし、彼の指先には、文字通り世界中の情報がありました。しかし彼は自分の快適さよりも、世界で何が起こっているのかを知らせることの方が大事だと思い、全てを手放したのです。残念ながら、世界中の人々は、未だに何が起こっているのか正確に把握できていないようです。我々のオンラインの行動は全て、永久にデータベースに保存されます。そして政府など、情報へのアクセス権限をもつ人は誰でも我々の行動を検索することができるのです。

NSAの最大の目的は、永久的にデータを収集し続けることと、完全な監視体制を敷くことです。はたして、権力者たちの考えを変え、データの収集をやめさせることができるかは、私にはわかりません。

したがって私としては、テクノロジーがプライバシーをより高めるように発展し、個人として主権を取り戻せることを望んでいます

最も人気のあるYoutube動画

私が作成した中で一番人気があった動画は、デジタル端末のプライバシー問題につい論じているものです。スノーデンのツイートに影響を受けてつくりました。

ツイートは次のような内容でした。「私は自分の家でWi-Fiを使いません。なぜならグローバルマップ上のすべての無線アクセスポイントの特定IDは、無料で提供されていて、常に更新されているからです。私は電話のイーサネットを使用します。」驚くべきことに、人々は自分が使っている端末についてほとんど理解していません。端末を使用することでどれだけ自分の情報を流出しているか、それが我々の立場をどれだけ弱めているか、本当に驚くべきことばかりです。この動画を作る前は、Wi-Fiがどのように機能しているのかあまり知りませんでしたが、公に送信する情報には、もっと注意を払う必要があるのだと学びました。そしてたくさんの人が、この動画の内容を有意義だと思ってくれました。

WiGLE.netで自分を検索

WiGLE.netといったウェブサイトがあり、このサイトの主な目的は、公開されているネットのデータをまとめることです。このようなウェブサイトを利用すると、たとえば、Wi-Fiに接続するたびにスマートフォンからどれだけのデータが流出しているかというようなことを認識できます。

WiGLE.netで確認できることは氷山の一角にすぎません。GoogleやFacebookのような企業は、さらに多くのデータを収集しています。これらのデータは、人を追跡し、住んでいる場所を特定し、参加している会議や、その人のスケジュールの把握を可能にするものです。我々は文字通り、追跡装置を常に持ち運んいるようなものです。もっと用心深くならなければいけません。
Wi-Fiで居場所が特定できる

Wi-Fiのネットワーク探索機能についてお話します。Wi-Fiがオンになっているというのは、スマートフォンが数秒ごとに「以前に接続したネットワークが範囲内にあるかどうか」を探っている状態です。

これはいわば指紋検査のようなものです。実は一人の人が過去に接続したことのあるWi-Fiネットワークのリストというのは、例えば「ビルのオフィス」、「work001」、「ジェニーのiPhone」、「Blockchain2020Conf」…といったようなリストですが、これはその人特有のリストで、世界中を探しても全く同じリストをもつ人はまずいません。

受信機を使いWi-Fiのネットワーク探索をスキャンするのは簡単です。このようにして誰かの特有の組み合わせを見つけることで、その人が家にいるのか、それともどこか別の場所にいるのか、居場所を追跡することができます。

スマートフォンは、接続したことのあるネットワークを探索しているだけでなく、範囲内に他にどのようなWi-Fiネットワークがあるのかも感知しています。したがって特定のネットワークの組み合わせに囲まれている場合、簡単に居場所をピンポイントで特定できます。 
スマートフォンの位置情報サービスが、Wi-Fiを有効にして精度を高めるように要求する理由はここにあります。

電子端末がどのようにして我々のプライバシーを奪っているのかについて学んでいく中で、この学びを他の人とも共有し、生活の中でより賢明な選択ができるようにしていきたいと思っています。

自発的な行動のすすめ

選ばれた少数の人だけが、人々に何が教えられるべきかを決めるような世界は好きではありません。このような中央集権的なシステムでは、簡単に全員を洗脳できます。歴史を通してみてみても、幾度となく、全体主義社会におけるプロパガンダが市民の世界観を歪めてきたことがありました。実は大学で経済学を学んでいた時、私はシカゴ学派やオーストリア学派について聞いたことがありませんでした。皆から同意された単一のものとして、経済学を教えられました。しかし後になって、私が学んでいたのはケインズ派であったことを知りました。しかも今ではこれは信じられないほど非建設的な思想だと思っています。

アメリカに移住して初めて、オーストリア派の経済学の本をたくさん読むようになり、経済学のカンファレンスにも出席し、書籍を通じて感銘を受けた尊敬すべき指導者たちの教えを学ぶようになりました。こうして今では経済学の研究は私の人生において重要な部分となっています。

習ったことを鵜呑みにするのではなく、さらに追求を深め、独自の研究を行うことをお勧めします。熱心になれるテーマを見つけ、できる限り様々な視点から理解するようにしてください。自発的に学ぶことが重要です。

お金とはなにかについて考えることの重要性

私が初めて金融政策に興味を持ったのは、マレー・ロスバードの「政府はわれわれの貨幣に何をしてきたか(What Has Government Done to Our Money)」を読んでからでした。それまでは、連邦準備制度とは何なのか、お金がどのように機能しているか、そして価値とは何なのかについて知りませんでした。

私はもっと深く知りたいと思い、ジョージ・セルギンの「Good Money」など、お金に関する多くの本を読みました。社会における貨幣の歴史、初期の貨幣形態、政府が貨幣供給量を増加させることを可能にした金本位制からの移行、連邦準備銀行の役割などについて学びました。

信じられないほど強い力をもった機関が生活の中心にあるのに、ほとんどの人はそれについて何も知りません。これは危険信号です。価値とは何か、お金とは何かを把握することは、私たちの日々の生活にとって大変重要です。さらに、価値とは主観的なものであるということを理解するのも非常に大切です。

この技術を広めることが我々の義務

Bitcoinを普及させたいのであれば、人々とつながる方法を見つけて、人々が何を重用視しているのかを理解しなければなりません。暗号通貨がどう重要なのかについては、自分の価値観を人に押し付けるのではなく、価値観は人それぞれであることを認識する必要があります。

このようにして、違う価値観をもつ人にも、暗号通貨は自分たちが重用視するものにとって役立つかもしれない、と思ってもらえます。価値観は人それぞれだということを受け入れれば、より簡単に人とつながりをもつことができるし、価値観の違いから生じる衝突を避けることができます。

同意できる点をみつけてそこに集中することが大切です。多くの人は、数学的な観点からの話や、暗号化の技術など、テクノロジーに興味があってブロックチェーン業界に引き寄せられています。

しかしこのような話題に興味がわかない人もいます。我々はそういった人たちにむけて、なんとかして他の切り口で手を差し伸べることができます。

例えば人助けに興味があって、銀行に預金できない人に助けを提供したいと思っている人もいるのではないでしょうか。このような切り口から暗号通貨に興味をもつ人もいるかもしれません。または、自身の作品を広めてお金を稼ぎたい、と考えているアーティストにとっても、暗号通貨にはお金を稼ぐのにいいプラットフォームがたくさんあるので、興味深いものを見つけられるかもしれません。事業のために、クレジットカードの手数料を節約したいと思っているにとっても、暗号通貨が役にたつかもしれません。
暗号通貨業界に対しては、皆それぞれ独自の視点を持っています。視点は多ければ多いほどいいと思います。他人が何を重要視しているか、どんな需要があるのかを知ることができれば、この技術がすべての人に役立つ方法を見つけられる可能性が上がります。
この有力な技術を、できるだけ多くの人々の手に届けることが、我々の義務だと考えています。


インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

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