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「暗号学の授業にもBitcoin」マサチューセッツ工科大学 DCI タデウス・ドライジャ氏(全文インタビュー記事)

マサチューセッツ工科大学のDCI(デジタルカレンシー・イニシアティブ)で、暗号通貨の開発と研究を行うタデウス・ドライジャ氏(Tadge Dryja)にインタビューさせていただきました。ドライジャ氏は、2015年にLightning Networkのホワイトペーパーを共同で執筆しました。Bitcoinの開発を行う企業Lightning Labsの共同創設者としても知られ、様々な場所で開発のサポートを行っています。

タデウス・ドライジャ氏

インタビュー日 : 2020年6月9日

タデウス・ドライジャ氏(全文インタビュー記事)

日本でBitcoinと出会う

私が初めてBitcoinについて触れたのは、2011年に日本の三重県の大学で働いていた時です。本当に素晴らしいものだと感じ、Bitcoinの技術に夢中になりました。Bitcoin Coreをインストールするためのコンピューターを用意し、それを2011年からBitcoinストレージとして使用しています。私は、これが最も安全なBitcoinの管理方法だと考えています。

当時は、Bitcoinが違法だろうと思っていたので、怖くて誰にも言えませんでした。2011年から12年の間にBitcoinに関する多くの文献を読み、この分野でのキャリアを始めたいと感じました。

Tadge Dryja

2013年にアメリカに帰国してから、暗号学の博士号を取りました。博士課程では1年間だけ過ごし、その後にサンフランシスコに引っ越してLightning Networkとデジタル通貨の開発を始めました。

2017年には、恵比寿にあるデジタルガレージという企業で開発のサポートをしていたこともあります。デジタルガレージにはBitcoinの研究グループがあり、Bitcoinのソフトウェアだけでなく、スマートコントラクトなどの開発も行われています。東京では、Bitcoin関連の仕事やイベントを支援している唯一の会社だと思います。デジタルガレージには素晴らしい人がたくさんいるので、できるだけ一緒に協力していきたいと思っています。

MITで働き始めたきっかけ

DCI(デジタルカレンシー・イニシアティブ)という組織ができる前には、Bitcoinコア開発に資金提供を行うビットコイン財団という機関がありました。今は無くなってしまいましたが、その財団にいた伊藤穰一氏やJeremy Rubin氏など、多くの人達がBitcoinの技術開発に資金提供を行う場所を作ることを決定し、そこでDCIは誕生しました。

その少し後に、MITの博士号を取得したばかりのNeha NarulaもDCIに参加しました。DCIの当初のミッションは、Bitcoin開発者に資金を提供することでしたが、しばらくするとそのミッションは更に大きくなり、マサチューセッツ工科大学に統合されることとなりました。MITには、UROP (Undergraduate Research Opportunity Program)と呼ばれる仕組みがあり、様々な学部生が私達と一緒に研究を行ったり、ソフトウェアのリサーチをサポートしたりしています。

私は、リサーチを行う中で、デジタルカレンシー・イニシアティブについて知りました。少し驚かれるかもしれませんが、私の様にBitcoinの開発に取り組んでいる人はそれほど多くありません。Blockstreamで働いている人達の中には多くの知り合いがいて、正式にDCIに参加する前からマサチューセッツ工科大学で働いていた人達とも話したことがありました。

私がMITにたどり着いたのは本当に偶然だったと思います。2016年の終わり頃に、当時ボストン近郊に住んでいた両親を訪ねて、暇な時間があったので、MITに行ってみることにしました。そこで、DCIのディレクターであるNeha NarulaとDCIのグループの人達に出会いました。

MITでどのような事をしているのか興味があったので、2日間ぐらい見学しても良いか彼女に聞いてみました。Nehaから許可をもらったので、私は自分のPCを持ち込み、数日間そこで過ごしました。

その間に、学生達とディスカッションを行い、私が取り組んでいた研究について説明しました。Bitcoinについて話し合い、彼らが取り組んでいる研究について知ることができたのは本当に素晴らしかったです。そこで2日目を過ごした後、Nehaから一緒に働かないかと尋ねられました。これには少し驚きましたが、非常に嬉しかったです。その後、サンフランシスコからボストンに引っ越し、MITで働き始めました。

暗号学の授業にもBitcoin

マサチューセッツ工科大学はアメリカで最も優れた研究大学の1つであり、教育システムが多くの研究と新技術の開発から成り立っています。私はそこで正式に働き始める前から、毎日のようにDCIに通い、クラスに参加するために教室の後ろに座っていました。一部のクラスは非常に開放的で、そこに座って勉強していたとしても何の問題もありません。

私が授業で教えている時も、学生ではない参加者が多くいることがわかりました。彼らはただ興味を持っていて講義に参加しているだけなので、特に悪いことはないと思っています。MITは非常に開放的な環境であり、学生の中にも暗号技術のトップレベルのエキスパートが多くいます。MITで行われる全講義の動画と音声がMITのホームページにあるので、誰でもそれを視聴して学習することができます。

暗号学の教授は何名か在籍していて、全ての学生がBitcoinに興味を持っているので、彼らのクラスでもBitcoinについての講義が行われています。Bitcoinについて説明することで、より多くの学生を暗号学の授業に集めようとしています。学生達には既に大きな興味と関心があるので、なぜブロックチェーン技術や分散型システムを学ぶべきかという理由を説明する必要さえありません。興味深いことに、教員よりも学生の熱意の方が強く、イベントでも元気な高校生が多く集まってきています。

Bitcoin開発とコミュニティ

Bitcoinのコミュニティにいる人達は、既にお互いのこと知っています。Bitcoinの後ろにあるのは、トラストレスで非中央集権であるべきだという考え方ですが、実際にはコミュニティのメンバーがお互いを知り合い、交流を行っています。

Bitcoinがトラストレスであり続けるように、匿名の人達が受け入れらやすいように努めてはいますが、暗号通貨界隈の様々なコミュニティで集まったり、交流したりすることも人間的なことだと思います。それは、友達や職場の同僚と交流し、お互いのことを知り合って信用を築くことと同じだからです。なので、コミュニティの様々な人々と付き合うことには、良い部分と悪い部分の両面があるのだと思います。

2年前、私はNehaと一緒に暗号通貨とブロックチェーンについての授業を行い、全ての動画をオンラインで無料で視聴できるようにしました。私達はBitcoinのコア開発や、その他の技術開発、論文の執筆に取り組んでいますが、授業などで学生をサポートとするということもMITで行っています。

一部の学生はEthereumの開発に取り組んでいて、DCIの他の研究者達はZcashのチームと一緒に暗号化に関連するプロジェクトに取り組んでいます。銀行が発行するデジタル通貨を検討している規制当局と協力を行っている人達もいます。現在、このようなコミュニティは間違いなく成長しており、様々な研究分野に広がっていると言えると思います。

Bitcoinを軽量化

現在、私が取り組んでいるのが、Utreexoという技術です。完成した論文はe-printで公開されていて、ソースコードはGithubにあります。最初はUtreexoに取り組んでいるのは私だけでしたが、現在は多くの人が参加していて、私が主導して一緒に作業を行っています。 

Utreexoは、Bitcoinを更に効率的にする技術で、ハードフォークやソフトフォークなどではなく、現在のBitcoinと完全な互換性があります。Utreexoは、Bitcoinを動かすのに必要な容量サイズを大幅に削減するためのアイデアです。現在、Bitcoinを動かそうとすると、何GBもの大きな容量が必要となりますが、Utreexoによって、それが数KBだけで実現できるようになります。これにより、軽量化と高速化、そして同じ水準のセキュリティを実現することができるようになります。

政治的立場を主張しないBitcoinコア開発者たち

TwitterやRedditなどのSNSをみていると、Bitcoinerは銃を持っているだとか、肉食だとか書かれていて、みんなリバタリアンばかり、という印象を受けます。たしかにそういう人もいるのかもしれませんが、私は出会ったことがありません。

私が一緒に仕事をしている開発者たちは、全くそのようなイメージに当てはまりません。正直言って、政治やイデオロギーの話をすることはありません。IRC(インターネット・リレー・チャット)ではBitcoinのコア開発に関することだけを話すので、政治やイデオロギーについて話しても追い出されるだけです。

時には話が少し白熱し、一部の開発者たちの間で議論になります。こういった議論は、Bitcoinをより良くするには何を優先すべきかについて考えていくことにつながります。また、政治的なイデオロギーについての感情をかき立てることにもつながります。

ほとんどの人が、通貨には高度なプライバシーが必要だと考えているため、プライバシーの部分について話をすると面白くなります。「プライバシーを強化すれば、連邦準備制度は終わりだ」という意見も必ず出てきます。

しかし普通は政治的イデオロギーをめぐって話すよりも、かなりビジネスライクな話の方が多いので、Bitcoinが安全で使いやすいものであってほしいという意見が、全ての人に共通する考えです。

法定通貨の価値は一握りの人が決めている

我々の現在の貨幣システムは、一応機能しているとは思います。人々はインフレについて不満を言いますが、インフレ率はそれほど高くないので、現時点では大きな問題ではありません。

しかし、システムは不公平だという声もあり、私も直接的に不公平な経験をした身ですので、この点はよく理解できます。私の経験をお話しします。

日本からアメリカに戻る前、私はかなりの金額を貯金していました。しかし国を跨いだ送金はとても難しくかなりの費用がかかります。だからまずは送金しないでおいて、アメリカに帰国する直前に送金するのがいいかなと思っていました。

しかし、2012年に非常に円高が進行したため、2013年にはいると日銀は為替レートを変えたがりました。私にとっては、円高はありがたいものでした。全てのものが安くなり、給料も上がり、嬉しく思いました。

しかし、日本にとって円高はよくないことでした。為替レートが1ドル80円から100円になりましたが、それはあっという間の出来事でした。このレートの変更は、数千ドルの損失のようなもので、ほんの一握りの人間が我々のお金の価値を決定しているのだということを実感しました。

私はBitcoinについて考えさせられました。Bitcoinはボラティリティが非常に高く、アメリカや日本の法定通貨よりも上り下がりすることは周知の事実です。しかし少なくともBitcoinにおいては、1人の人が価値を決定できるというようなことはありません。

現金とBitcoinどちらが生き残るかは分からない

とりわけDCIで働いていると、人々のためにシステムを機能させようと努力している、とてもいい人たちに囲まれています。私は、Bitcoinが世界を乗っ取って現金システムを壊すとは思っていません。しかしいざという時のバックアップとしては、大変役立つものだと思っています。

貨幣システムが存続できるかどうかはわかりませんし、Bitcoinも、存続できるかどうかわかりません。今の時点ではどちらとも言えなく、将来的に銀行がなくなり、Bitcoinが必要になるかもしれませんし、逆にBitcoinがなくなり、銀行預金が必要になるかもしれません。

100ドル紙幣を見た時に、この紙幣にちゃんと価値がある、ということを考えると現金はすばらしいものです。しかしBitcoinを好む人の多くは、インフレが起こっているから連邦準備銀行が悪いだとか、何の裏付けもないままお金を印刷しているから連邦準備銀行は悪い、というように考えがちです。

確かにそれはそうですし、インフレで現金の価値が下がるという可能性も考慮すれば、現金をたくさん保有したくはありません。とはいえ、インフレ率は年に数%なので、それほど有害なものではありません。

我々の社会でBitcoinが機能するようになれば、トランザクションは格段によくなりますが、はたしてすぐにコストが安くなるでしょうか?
Bitcoinの目的は、物事をより効率的にすることですので、やがてBitcoinが一般的になれば、現金を処分し、銀行や古い技術は必要ない、と言える日がくるかもしれません。

我々はBitcoinをはじめとする新技術を用いて、物事をより効率化し、そしていつの日か、コストをより安くすることができるでしょう。しかし、今の私たちはまだその段階まで至っていません。そしてBitcoinは現金と比較すると、まだまだかなり使いづらいです。

たとえば、通貨が完全に管理されていないアルゼンチンのような状況であれば、現金を信用できないというのも理解できます。

国の通貨の価値が下がったために、何の価値もないお金のために何年も努力して働いたあげく、大きな損失を経験することになったかもしれません。

そうなったら人々が怒るのはよく理解できます。しかし、例えば日本やアメリカならばそうはならないでしょう。そこまで極端ではありません。

開発者と愛好家の違い

Bitcoinは完璧ではありません。私はBitcoinを保有しているし、レートが変動するのも見てきました。Bitcoinが機能しなくなった場合はどうするか、ということついて考えなければいけません。

これは十分ありえることです。ここを考えているかどうかが、Bitcoinを開発して毎日向き合っている人と、愛好家との違いです。

我々Bitcoinと日々向き合っている者は、Bitcoinの多くの問題点を目にして、一体どうすればBitcoinを確実に機能させることができるのか、ということを毎日考えています。

Bitcoinの問題に取り組んでいる人は、それが楽しいからです。Bitcoinは仕事、そして人生そのものです。多くの難題にぶつかることもあります。壊れるかもしれないし、何かよくないこと起こるかもしれない。何ごとも100%確実なものはないというのが現実です。

私はCory Fields氏という人と一緒に仕事をしているのですが、彼は数ヶ月前に、すべてのものは壊れている、という内容の話をしました。コンパイラもコンピュータも、もう何も信用できない、と彼は言っていました。

ではどうやってBitcoinの機能を保証していけばいいのか。これこそが、我々開発者が考えて、改善して、うまくいくように取り組みを続けていかなければいけない部分なのです。

資金調達の難しい業界

この業界の規模は大きくなり、10億ドル規模の業界まで成長しましたが、業界自体は変化していません。この業界で働いても、大きなお金を稼ぐことはできず、オープンソースのプロジェクトであることに変わりはありませんし、無償で働いている人もいます。

幸いなことに、Bitcoinのコア開発に取り組んでいる研究者のための資金源はいくつかあります。例えば、ニューヨークのChain Code labsは、いくつかのBitcoinコア開発者に資金提供をしています。

Blockstream、MIT DCI、Square Cryptoなどは、ライトニングネットワークに取り組んでいる人が最も多く、東京のDigital Garage、そして他にも、非常に多くの企業がエンジニアリングリソースと資金提供に貢献しています。

BITMEXもとても素晴らしいですし、他にも素晴らしいところがたくさんあります。2011年にはMIT Digital Currency Initiativeで働くことができました。このオープンソースのプロジェクトで働いていて、こんなにもよい給料がもらえるとは思ってもみませんでした。

オープンソースは一般的に資金調達が難しいため、オープンソースのソフトウェアで、いい条件の仕事に就けることはとても稀です。

開発者の収入

開発に資金提供する会社はあると思うかもしれませんが、数十億ドルというわけにはいきません。実は開発者は数百万ドル単位で稼いでいるわけではなく、むしろ普通の基準以下の稼ぎです。

たとえば、オーストラリアで「Fanquake」という名で知られるMichael Ford氏は、BITMEXと契約し、年間10万ドルという値段でBitcoinのコア開発に取り組んでいますが、これは驚くべきことです。

Fanquakeのために言っておきますが、彼はテック企業で働けばきっともっと稼げるでしょう。より多く稼げる手段は他にあるのです。

ICOによって生み出された数百万ドルは、コア開発者やその仕事から切り離されています。私たちはICOの動きを見ていましたが、それは、デジタル通貨と一体何の関係があるのだろうかといった有様でした。私たち開発者からすればBitcoinとは無関係に思えました。

アルトコインの可能性について

市場に出てくる新しいコインは目立たなく、将来性もあまりないのは事実ですが、面白いと思うものもあります。

例えば、ZcashはBitcoinの後に生まれたアルトコインのひとつですが、Zcash自体はそこまで魅力的なものでなかったとしても、研究や論文の執筆に資金を提供したり、暗号通貨の技術を進歩させたりといったことに役立っています。

もしもZcashが完全に消滅したり、崩壊したりしても、研究の成果であるソフトウェアや論文、発見された数式、といったものが残されますので、無意味なコインだったというわけではないです。

MimbleWimbleのコインやMoneroといったコインなど、私たちがその詳細を知らないものは他にもたくさんあり、様々な憶測が飛び交っています。その中には新しいアイデアも色々とまじっているのです。

こういった新しいアイデアが動きだしているのは素晴らしいことです。あまり詳細に追っているわけではないのですが、こういった分野での研究がどんどん進んでいます。

多くのBitcoinの開発者は、Ethereumの開発者がとった数々の選択に反対していると思いますが、私はそういった選択に注目しています。私は今でも、Ethereum開発のシステムの問題点を見たりしています。

そうすると、どうすれば同じような問題を回避できるか、ということについて考えさせられます。時には派閥の間で争いになってしまうこともありますが、争うような必要はないと思います。

他の開発者のかかえる問題や、その進展を見ることには意味があると思います。とはいえ、研究が行われていないようなコインもたくさん出回っているので、注意深く確認していく必要があります。

ライトニングネットワーク誕生のきっかけ

2014年私はBitcoinとスマートコントラクトの仕事をするためにサンフランシスコで暮らしていました。Bitcoinのミートアップがたくさんあり、そこで出会った仲間と交流して一緒にピザを食べたり、テクノロジーについて語りあったりしていました。

Joseph Poonと出会ったのもそこで、我々はマイクロペイメントとBitcoinについて語り合いました。彼はHDLC(データ伝送制御の手順)に関するアイデアを持っていて、とても素晴らしいものだと思ったので、彼とそのアイデアに一緒に取り組むことにしました。

私はデータが継続して更新し続けられるチャネルというアイデアを思いつきました。それが今日のライトニングネットワークです。2014年の終わりから2015年の始めにかけてそのアイデアを一緒そのアイデアをまとめて、サンフランシスコのBitcoinイベントで発表しました。

反応はとてもよく、聴衆の間で話題になりました。その時Elizabeth Stark氏(Lightning Labs 現CEO)が我々のもとにきて「これをただの論文で終わらせるわけにはいかない。これは必ず実現するべきなので、スタートアップを立ち上げましょう」と言ってくれました。

それで我々は会社を立ち上げてソフトウェアを開発しました。今では、ライトニングネットワークの企業やアプリがたくさんあり、多くの人が取り組んでいます。

サトシ・ナカモトが現れるとどうなる?

これは私もすごく気になっていることなのですが、サトシ・ナカモトがどこへ姿をくらませたのか、その行方を知る人は誰もいません。

しかしBitcoinの開発者たちは、サトシ・ナカモトの行方を追ったり、サトシ・ナカモトとは誰なのかを気にしたり、詮索したりはしません。

サトシ・ナカモトが自分自身の身分を証明するのはとても簡単です。その気にさえなれば、ネット上で何通かメッセージを送るだけで済みます。しかしその気はないようですし、今も行方をくらまし続けています。

行方をくらまし続けた期間があまりにも長いので、もし仮にサトシ・ナカモトが戻ってきてBitcoinは自分が発明したと主張し、正式な書類なんかに署名したりしたとしても、誰もその話に耳を傾けたり従ったりはしないでしょう。たとえばサトシ・ナカモトがBitcoinに変更を加える話をしても、みんなノーと言うでしょう。

私はJoseph Poonと一緒にライトニングネットワークを考案、開発しましたが、今となっては誰も私の言うことなど聞くことはありません。それと同じです。

私が何か提案したとしても、現在それに取り組んでいる人は他にもたくさんいますし、誰が最初に発明したかとか、誰が開発者なのかとかはもはや関係ないのです。Bitcoinとサトシ・ナカモトにしても同じです。

Bitcoinを必要とする国、必要としない国

日本は、Bitcoinへの関心が低下している国の1つです。

逆にBitcoinへの関心が高まっている国もあります。詳しい理由はわかりませんが、国の現状のシステムがうまく機能していないような時には、Bitcoinやその他のテクノロジーが使われやすい傾向があります。

しかしその観点でいくと、アメリカは大変興味深いです。アメリカにはしっかりと機能している金融システムがあって、クレジットカードや銀行振込、小切手といった仕組みも機能できているので、Bitcoinがそれほど必要なわけではないと思うからです。これは日本も同様です。

他の国は、おそらくもっとBitcoinを必要としていると思います。

Bitcoinへの関心が薄れた理由

Bitcoinが日本でいまいち人気がない理由としては、2017年以降市場に面白い新技術があまり出てこなかったからということもあるかもしれません。2017年は突然ICO案件がたくさん出てきので、メディアはこの業界が放っておきませんでした。それでBitcoinが流行りすぎてしまい、業界は仕事になりませんでした。

マサチューセッツ工科大学にいる人でさえも皆インタビューを受けていました。テレビでも業界のことがたくさん取り上げられ、誰もがBitcoinについて知りたがっていました。

ICOに数十億ドルのお金が投入されましたが、特に何も生み出されませんでした。誰もが次にくるBitcoinの波に乗りたいと思っていたからこそICOが推し進められたのですが、その波は来ませんでした。

2017年と比較すると関心は減少したかもしれません。しかしそもそも一時的なバブルのような関心だったので、そこが本当に関心のピーク地点だったのかどうかもわかりません。

個人的な見解としてはこれから先に、新しいテクノロジーに取り組んでいる学生や、現在論文を執筆中の学生たちから、どんどん面白い発表があると思っています。ですので2017年よりも、今後の方がより面白いものがたくさん見られるのではないかと考えています。

Bitcoin活用のポテンシャルを秘めている国

Bitcoinで決済システムが改善される可能性がある国としてはインドが挙げられると思います。インドは何度か訪れたことがありますが、インド人の多くはゴールドが好きであるということに気が付きました。

最初にインドに行ったとき私はすぐに、どうやらこの国ではゴールドが重要視されているようだ、とピンときました。インドで訪れた店の中で一番良かったのも、ゴールドを取り扱う店でした。インドの人たち曰く、「私たちは政府や通貨を信用していない」とのことでした。

インドには技術と可能性があります。インドのベンガルールのような場所にはたくさんのテック系のスタートアップがあり、膨大な労働力を生み出しています。国の更なる発展と安定のためにBitcoinが導入されれば、非常にいいエコシステムになるのではないかと思います。

マウントゴックスの悲劇から学べること

私はマウントゴックス事件による暴落が起こった少し前に日本を離れました。多くの人が多額のお金を失ったため大変残念に思いましたが、それと同時に、自分のお金を何に投資しているかについては知っておかないといけないとも思いました。

明らかにダメだとはじめからわかりそうなものに投資するべきではないのです。たとえば、マウントゴックスのあるトランザクションでは2608BTCが失われ、このことはネットでも騒がれました。やがてマウントゴックスのトップがでてきて、「ユーザーには埋め合わせをする」と述べました。

そもそもこの時点で、マウントゴックスはお金を預けるのには適していない取引所だということを示すサインがたくさんあったのです。

2011年に日本にいた時、私は自分のアパートの部屋でBitcoinをマイニングしていました。しばらくしてから「日本は電気代が高いのに、なぜ私はアパートでマイニングしてるんだろう」と思いました。

しかしマウントゴックスを見て「あんなところにお金を送るつもりはない」と思いました。

そして2013年の夏になると「出金できない」「自分のBitcoinもお金も引き出せない」と人々が文句を言いはじめました。マウントゴックスはこれに対して、何ヶ月にもわたって言い訳を続けました。

これはちょうどBitcoinの価値がだんだん高まってきた頃の事件でもあり、皆が興味を持ちはじめていました。

私はマウントゴックスを使うなと皆に伝えようとました。こういったことは技術的な側面から注意深く観察すればリスクが見えてくるものです。

信頼できる取引所とは

取引所のGeminiに一度お邪魔したことがあり、その際にスタッフの方の様子を拝見しました。スタッフの方たちはスーツを着てネクタイを締め、その雰囲気からも、真剣に仕事をしているということが感じてとれました。

彼らは人から預かったお金を大切にしていましたし、自分たちがもしもヘマをすれば何百万人もの人のお金に響くのだということを知っていて、だからこそ責任を持って仕事をしているのだと感じました。

詐欺師やあくどい取引所の従業員もネクタイをつけることはできますが、私が
訪れたオフィスの雰囲気は、そういったものや、多くのスタートアップなんかとも一線を画していて、明らかに異なって見えました。

私の見たオフィスとそこで働くスタッフたちは、早まって物事を台無しにしてしまうようなタイプの会社には全くみえませんでした。

しかしほとんどの人は、実際に取引所に行ってみてみることはできません。ですので取引所のことを知るのは難しく、自分で色々と調べる必要があります。ただ取引所にお金を置いておけばいいというわけではないのです。

友人にどの取引所を使えばいいかと聞かれた時はGeminiと答えています。彼らは自分の仕事をしっかりと分かっているからです。

取引所の信用性を検証するためには、その取引所の所在地や、どこの国の取引所なのか、インターネットのページが更新されているかどうかを必ず確認してください。そこのスタッフを見てみるのも良いでしょう。

選択肢が限られている場合もあります。例えば特定のアルトコインを購入したいのに怪しげな取引所でしか買えない時などです。そのような時はどうすればいいのでしょうか。

一つだけ言えるのは、投資しすぎないように注意すべきだということです。注意深く見極めて、仕事に対する姿勢が真剣で専門家や弁護士も関わっているような、信頼性のある取引所を使用するようにしてください。

インタビュー・編集: Lina Kamada

     

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