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人気番組「カイザーレポート」司会者のマックス・カイザー氏にインタビュー (全インタビュー記事)

テレビ番組「カイザーレポート」の司会として有名なマックス・カイザー氏(Max Keiser)にインタビューさせていただきました。カイザー氏は、初期の頃からBitcoinに関する情報発信を続けており、これまで暗号通貨界隈に大きな影響を与えてきました。2020年には、新たなポッドキャスト「オレンジピル:ORANGE PILLを開始しました。今回は、現在の金融市場の情勢とBitcoin市場についてインタビューしました。ぜひご覧ください。 

インタビュー日 : 2020年8月4日

マックス・カイザー氏 インタビュー

どのように経済と株式市場を見ていますか?また株式市場は、1980年代からどのように変化してきたと思いますか?

1980年代から経済と株式市場の関係性が切り離され始めたという意味では、現在も変わっていないと思います。株式市場と経済の断絶はデリバティブ市場の誕生がもたらした影響ですが、1980年代以降デリバティブ市場の規模はますます拡大しています。
現在は2020年代ですが、市場と経済の間の断絶は致命的な段階まで来ています。経済の完全崩壊が見え始めています。株式市場を操作している人たちが、商品を持ち逃げしているからです。これは「強盗」と言えるような行為であり、世のトップの大富豪たちは世界経済から富を盗んでいるのです。

現在の市場の状況をどのように感じていますか?また、これからどのように変えていきたいと思いますか?

私のキャリアは1983年にウォール街ではじまり、それ以来40年間この道にいます。この道に40年間いられたことは幸運だったと思うと同時に、今の若い人たちは難しい状況に置かれているのでかわいそうだと思っています。
金融テロを阻止するためにすべきことは金利を上げることです。つまり、コストを高くして金融テロを起こしにくくするのです。しかし現状の金利は下がり続けています。これでは金融テロを助長してしまいますので、変えて行かなければいけません。

現在のキャリアをはじめられたきっかけやこれまでの道のりについて聞かせてください

私は1980年代に株のブローカーとしてウォール街で働きはじめました。1990年代はロサンゼルスにいました。そこで取引所を立ち上げ、その取引所で使うための通貨を発明したのですが、その一環でDigital Scarcity(デジタルの希少性)のための技術を開発しました。
私の立ち上げた取引所ではメディエイト・デリバティブ取引のサービスを開発し、後に予測市場産業として知られるようになりました。 
1990年代にこういったことを一通りやりました。その後2001年に事業を銀行に売却し、そして2011年に1ドルでBitcoinを始め、それからもう11年近く経ちます。BitcoinはDigital Scarcityの問題を解決するのにより適している完璧な技術だと考えました。

あなたにとってゴールドとは何でしょう?

ゴールドは進化し、世界中で最も優れたお金の形態となりました。ゴールドが世界中で通用する主要なお金となるまで何千年もの時がかかりました。ゴールドは世界の各中央銀行レベルで信頼されている唯一のお金であり、今でも中央銀行で取り扱われています。
中央銀行はゴールドを通貨として認識していないにもかかわらず、いまだにゴールドは基準として使われています。他の銀行との取引のバックアップとしてゴールドを使用しているのです。
何千年もの歴史の中で、全てをつなぎあわせているのはこの一つの統一された貨幣基準でした。そして、Bitcoinはデジタルのゴールドなのです。2009年にBitcoinは貨幣史の新たな章の幕開けをもたらしました。 

ゴールドとBitcoin間にどのような相違点がありますか?

Bitcoin界隈でゴールドを嫌っている人は、Bitcoinもゴールドも理解していません。これは教育や知識の問題です。Bitcoinerなのにゴールドについて理解していないのであればBitcoinについても理解していないことになります。
同じように、ゴールドが大好きなのにBitcoinについて理解していない、Bitcoinをよく思わないのあれば、ゴールドについても実は何もわかっていません。ゴールドやBitcoinの正体が何なのか、仕組みを本当に理解している人はあまりいません。

Bitcoinにおいて、まだ解決しなければならない問題点はありますか?

我々がBitcoinについて知らないことが問題だと思います。今のところ、我々がBitcoinについて知っていることよりも知らないことの方が遥かに多いです。
これは私がいつも言っていることですが、Bitcoinが我々を変えることはあっても、我々がBitcoinを変えることはありません。Bitcoinはハッシュレートが上がるにつれ、より安全になり、価格が上がるにつれ、人間の行動や社会を変えていきます。
多くのことがまだまだ明らかにされていません。Bitcoinは我々人類を未来へと導く存在で、立場の異なった人たちの間で起きている誤解や争いは、その上では取るに足らない些細なことばかりです。

Bitcoin市場の動きは株式市場と連動しているのでしょうか? 

Bitcoinが株式市場に追随しているいうのは正しくないと思います。一歩下がり、過去10年間のBitcoinと株式市場の動きを見てみるとわかると思います。
Nassim Talebという著者が書いた「Fooled by Randomness(無規則性に騙されて)」という本がありますが、Bitcoin市場と株式市場の状況をよく説明できると思います。
時々、2つの資産の間に相関性があるかのように見える瞬間がありますが、これはランダムであり、騙されてはいけません。10年チャートを見てみると、Bitcoinは独自の道を歩んでおり、どの資産とも相関関係がないことがわかるでしょう。

FRB(連邦準備銀行)は株式市場にお金を入れていますが、Bitcoinの価格も何らかのものによってテコ入れされているのでしょうか?

Bitcoinの価格を押し上げているのは需要に他なりません。どんな市場の末端にも、短期的な動きを誘発するようなノイズや取引が常にたくさんあります。
しかし、長期的には、需要に基づいて価格は上昇します。世界中の不換紙幣が崩壊し続ける中で、Bitcoinの需要は増え続けています。

暗号通貨市場において、自由市場は存在するのでしょうか?

Bitcoinにおいては、自由市場は存在します。しかし、他の暗号通貨においては、存在しないと思います。Bitcoin以外の暗号通貨が、自由市場で取引されているとは全く思えません。

多くの人がご自身の番組からBitcoinについて学んでいる点についてどのように感じますか?

サトシ・ナカモトについて多くの人に広めることができているのは光栄です。我々の番組「カイザー・レポート:Keiser Report」のおかげで、世界中の多くの人々がBitcoinについて知ることができているのも嬉しく思います。我々は推定で10万人もの億万長者を生み出した思います。 

Bitcoinの本質とは

Bitcoinでは過去に3度、バブルの崩壊が起きています。1回目は2011年から2012年にかけてで、価格が30ドルから1ドルまで下がった時です。2回目は1000ドルから250ドルに下がった時、そして最後は20000ドルから3500ドルに下がった時です。

通常、新しく出現した資産のボラティリティは高くなると予想できます。ですのでボラティリティに惑わされてはいけません。Bitcoinで本当に重要なのは、急激に上昇し続けているハッシュレートです。コインが発行されていくというBitcoinの金融政策において、大事なのはボラティリティではなく、10分おきに行われているコインの発行の方なのです。

つまり、Bitcoinにおいて大切なのはその基礎部分であり、価格は重要ではないのです。価格はBitcoinの中で最も重要ではない部分なので、もしも価格に焦点を当てているのであれば、Bitcoinのが何であるかその本質を見逃していることになります。

拒まれたBitcoin

新しいものというのは人々に悪く思われ批判を受けます。人々は変化だったり、新しいものだったりを好まない傾向があるのです。

新しいものが好き、と口では言ったりするものの、実際には慣れ親しんだ生活や社会に変化が訪れることを嫌います。人間は変化に抵抗する性質を持っているので同じ日常を続けるのが好きなのです。

2009年に、より優れた形のゴールドが新しく登場した際、多くの人々はそれに怯えて買うことを恐れました。

人々は心に抱いた恐怖を怒りという形で表現しました。これは十分予想できたことです。飛行機にしろ印刷機にしろ火の発明にしろ、革命はいつも同じ運命をたどります。

人間の生活は非常にルーティン化していて、そのルーティンをひっくり返すことは怒りや反感を買います。しかしいくら怒っても事実は変わりません。

カイザーレポートはBitcoin関連の情報収集におすすめ

カイザーレポートはBitcoinに関するテレビ番組の中でも影響力が大きく、10年の放送歴史があります。コンテンツも最高で視聴者数も最大級です。

最高のプロデューサーであるStacy Herbertは、最高のライターでもあり、最高のディレクターでもあります。だからこそ我々は最高の番組を提供できるのです。我々は番組を通して、Bitcoinという存在を世界地図の上に載せたのです。

おすすめの本

どんなことに興味があるかにもよりますが、Saifedean Ammous氏の『The Bitcoin Standard』は非常に良い本です。

もしもより技術的なものを探しているのであれば、アンドレアス・M・アントノプロス氏の著書も非常に良いです。そこからはじめるのがいいかと思います。

尊敬している人物

ナシム・ニコラス・タレブ氏は、現在活躍中の知識人で、最も魅力的な思想家の1人だと思います。彼は通貨に関するの話題も含め、様々な話題について話してくれます。

シェフとしての腕前も素晴らしく、イカ墨パスタのようなレバノン料理もつくっています。彼は各地で美味しいものを食べてまわり、そして物事に対して自分の意見を言うのが好きなのです。この上なく素晴らしい生き方だと思います。

国の経済状況が悪いほどBitcoinを知っている人は多い

Bitcoinは有名ですが、国の経済状況の悪ければ悪いほど、Bitcoinを知っている人の数は増えます。たとえばレバノンは、通貨の暴落が起きたばかりで存亡の危機に瀕しているため、Bitcoinを知っている人の数は増え続けています。

Bitcoinについての知識はこのようにしてどんどん広まっています。ベネズエラやアルゼンチン、ジンバブエなどでも同じです。ハイパーインフレによる通貨崩壊や経済破綻を経験している国は、すぐさまBitcoinについての知識を習得しはじめるのです。

アメリカとBitcoin

アメリカは世界通貨である米ドルを保有していて、これにより世界を支配しています。アメリカは世界の基軸通貨である米ドルの第一の受益者なのです。ですのでアメリカがハイパービットコイン化(Hyper-Bitcoinization)を経験することは当分ないでしょう。

またアメリカは格差大国でもあり、トップにいる人と底辺にいる人との間には信じられないほどの格差があります。そしてアメリカの底辺にいる人々は、他の国と比較してシステムを変える能力が著しく低いのです。

世界経済の今後の動き

我々は現在、第二次世界大戦以来アメリカの支配下にあったグローバル化した世界から脱却しつつあると思います。つまりアメリカ一強のグローバル化した世界から抜け出して、より多様化した世界へと向かいつつあると思います。

今後はロシア、中国、イラン、ドイツの台頭があり、それらの国がおそらく経済の支配者となっていくでしょう。アメリカは第二位の国となります。

日本はおそらく現状とさほど変わらない立ち位置にいるのではないかと予想します。トップになることもなければ最下位になることもないと思います。

新しいポッドキャスト

2020年8月16日に「The Orange Pill Podcast」という名前の、新しいポッドキャスト番組をはじめました。多くの人は「真実に目覚めた」という意味で「赤い錠剤(Red Pill)を飲んだ」と言います。

このポッドキャストのコンセプトは、「赤い錠剤(Red Pill)」を飲んだ後、つまり真実に目覚めた後に、一体何が起こるのか、そこを明らかにしていこうというものです。真実に目覚めたのはいいが、次はどうするのか?ということです。

赤い錠剤(Red Pill)を飲んだ後は、オレンジの錠剤(Orange Pill)を飲まなければいけません。このオレンジの錠剤というのは、つまりBitcoinの錠剤のことです。

この錠剤は、Bitcoinを包括する全てのもののことで、Bitcoinの経済面、宗教面、精神面、社会学な面、心理学的な面、そして普遍的なこと全てです。ですので絶対に飲み忘れてはいけません。

カメラに映っていない時の活動や話題について

最近は食べ物の話をすることが多いです。ロックダウンの影響もあり、家でたくさん料理をしています。特にお菓子やパン作りの腕が上達しました。

ケトン食に力を入れていて、ケトン食のチーズケーキだったり、ケトン食のクレームブリュレやケトン食のチョコレートケーキ、タルト、パンなどを作ったりもしています。

ケトン食はとても満足感があります。デザート作りは生クリームや卵、牛乳をを用いるにも関わらず、ケトン食で許されているというのは面白いですね。ケトン食用に砂糖の代替品が必要になるのと、全粒粉の代わりにアーモンド粉を使用します。これは全部良いものです。

我々は日常をいつも楽しんでいますし、もちろん番組も楽しんでいます。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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