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「秘密鍵は自分で管理すべきか」David Bitcoin・Wallet Recovery Services インタビュー ②

失われた秘密鍵を復元する「ウォレット・リカバリー・サービス(Wallet Recovery Services)」の創業者であるDavid Bitcoin氏にインタビューしました。ウォレット復元の成功率や今後の復元ビジネスの可能性、復元プロセス、詐欺対策などについてお話していただきました。ぜひご覧ください。

インタビュー日 : 2021年2月25日

良いウォレットの見分け方 

ウォレットには優れたチーム、そして安定性とセキュリティの面で確かな実績が必要です。 とはいえ、それを見極めるのは難しいことだと思います。

最先端のコインや新しいブロックチェーン技術に投資をしているような場合は、ウォレットの選択にあまり拘る必要がないので心配いらないのですが、それでもリスクを認識した上で慎重に投資することをお勧めします。

より主流のコインに投資をする場合は、レビューを読んで歴史が比較的長くて多くの人に使用されているウォレットを選ぶのがよいいでしょう。

秘密鍵は自分で管理すべきか 

第三者管理型のウォレット(カストディアル・ウォレット)と自己管理型のウォレット(ノンカストディアル・ウォレット)のどちらがより良いかというのは、常に議論のテーマとなっています。

カストディアルウォレットというのは、第三者(多くの場合はウェブサイト)がウォレットの秘密鍵を保持するものです。それに対してノンカストディアルウォレットは、所有者が秘密権保持の全責任を負います。私は残念ながらどちらも欠点があると思います。

よく、プロバイダーやウェブサイトにウォレットの秘密鍵の管理を任せているというお客様から問い合わせをいただき、多くの方がお金を失っています。

どういうことかというと、管理サイトが潰れてしまったため、サイトのログイン情報はあっても秘密鍵にアクセスできないのです。秘密鍵は廃業してしまったサイトによって保管されていたものなので、私にはどうすることもできません。

一方、自己管理をしているお客様からは、自分の秘密鍵を紛失してしまったという相談を受けます。そして、ウォレットの提供者が何のサポートも提供してくれないので驚いている、という内容の相談もよく受けます。しかしウォレットの提供者というのは顧客情報を保管しているわけではないので、助けてはくれないのです。

妥協案としては結局カストディアルウォレットを使うというのがベストだと思います。カストディアルウォレットでは、サイト運営者が秘密鍵を保管してくれます。そしてウォレットの所有者は所有権を証明できれば、秘密鍵の復元が可能です。

さらに、サイトが倒産してしまった時でも、アクセス方法を提供してくれます。例としては、たとえば標準的なリカバリーフレーズ(復元用の情報)を配布しているようなウォレットがあります。

このようなウォレットでは、所有者が他のプラットフォームを用いて自分の秘密鍵を復元することが可能です。これが現在望める最高級のポータビリティだと思います。

リカバリーフレーズの役割

リカバリーフレーズというのは、ウォレットのファイルやパスワードがなくてもウォレットを復元することができる、素晴らしい革新的な機能です。

それにもかかわらず、多くの人は確認事項を無視してリスク警告を読み飛ばし、リカバリーフレーズを書き留めなかったり、間違った管理をしてしまったりしています。

しかし、わずかな問題があったとしてもリカバリーフレーズを書き留めてれば、通常であれば正しいフレーズを復元する手助けをすることができます。

有料ウォレット vs 無料ウォレット

何重にも保護されたアカウントを安全に保持するというカストディアンサービスを使わない限りは、お金を払う必要はないと思います。

たとえば、数十万ドル相当の暗号通貨を保管する場合は、長期的な保管と各取引に潜む危険性の両方を懸念する必要があるでしょう。そういった場合には、絶対に安全に保管してくれて安全に取引を行ってくれるようなカストディアンサービスを探してもよいと思います。

カストディアンサービスを探す際には、高額な価値をしっかり安全に保管してくれるようなサービスから探すのがよいと思います。

特別なケースを除けば、無料ウォレット、またはかなり安価なウォレットで十分だと思います。

私は個人的にハードウェアウォレットを使っています。これは、ハッカーが自分のコンピュータに侵入してきても、鍵を保護することができるからです。毎日取引を行う私にとっては、最適の選択肢だと思っています。

ウォレット・リカバリー・サービスの需要

ウォレット・リカバリー・サービスの需要は確かにあります。最近では競合も登場してきました。一言で競合といっても、堅実なビジネスを展開しているところから、私とよく似た名前を使ったなりすましまで、本当に様々です。

お客さまが安心してウォレットの秘密鍵を預けて、お金を失ったりする心配のないようにするためには、高い信頼性が必要です。これが私の目指しているところです。最も信頼されるサービスを実現していきたいです。

秘密鍵を紛失する人は減る傾向にあるか

Bitcoinの価値がどんどん上がってきて、人々が自分の情報やパスワードを大切にするようになればこのビジネスは衰退するのではないか、といつも心配していました。しかしどうやらそういうわけでもなさそうです。

初期の頃と比べれば、ウォレットの性能は上がりました。初期のウォレットはリスクについての警告がかなり不十分でした。中にはセットアップ時にユーザーがパスワードを正しく入力したかどうかさえ確認しないものもありました。

最近のウォレットには「リカバリーワードをメモしてください」といった警告が出てきます。しかしそれでもなお失敗する人はいます。 ユーザーが秘密鍵を持つウォレットがある限りは助けを求める人が必ず出てくるので、サービスの需要があるのだと思います。

テクノロジーに精通している人とそうでない人

連絡を取ってきた人がテクノロジーに精通しているかどうかというのは間違いなく分かります。でもそれで人を判断するようなことはありません。どんな人であろうと喜んで手助けをします。

よくお客様がウォレットファイルを探すのを手伝います。テクノロジーに精通しているお客様は、すべてのものの保存場所をよく把握しています。彼らは問題を調査したりもしていますし、自分のウォレットのバージョンも把握しています。それからオープンソースソフトウェアを試したりなんかもしています。

おもしろいのは、テクノロジーに精通しているお客様の方がある意味ではお手伝いするのが難しいということです。なぜならこういったお客様は大抵の場合、より難しいパスワードを設定しているからです。

テクノロジーに精通している人はパスワードの重要性がよく分かっているので、他の人に「複雑なバリエーションを持った長いパスワードが必要だ」と言います。そして自分も、復元しにくい非常に複雑で長いパスワードを考え出して使っているのです。

一方テクノロジーに精通していないような人は、どのサービスでも似たようなパスワードを使い回していたりします。したがってパスワードの最後に「!」をつけたりすれば、案外復元できたりするのです。こういった人たちの方が、結果として無事に自分のコインを取り戻せたりするのです。

様々なお客様 

お客様のエピソードは面白い話が多いのですが、中にはとても悲しいお話もあります。たとえば、家族が重病でどうしてもお金がいる、というような相談も過去にありました。助けになりたいと思って仕事するのですが、助けられた時は本当に嬉しいものです。

誰かの人生を変えてしまうような素晴らしい助けを提供できたこともありますし、それは本当に素晴らしい瞬間です。しかし反対に助けられない時もあります。そういう時には全く逆の気持ちになります。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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