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「議員としての暗号通貨との関わり方」台湾のクリプト議員 ジェイソン・シュー氏にインタビュー ②

台湾の元国会議員であり、ブロックチェーンの世界では「クリプト議員」としても知られているジェイソン・シュー氏(Jason Hsu)にインタビューさせていただきました。議員時代はブロックチェーン技術を推進する一方で、LGBTQの権利を守るための立法にも力を注ぎました。また、TED×Taipeiの発起人としても知られ、台湾の多くの起業家から支持を集めています。今まで手がけてきた数々の法律についてのお話や、台湾とブロックチェーンの関係などについてもお伺いすることができました。ぜひご覧ください。

インタビュー日 : 2021年3月17日

クリプトの発展には取引所の協力が不可欠 

政府は管轄区域内に存在するあらゆる暗号資産取引所について真剣な調査を行い、マネーロンダリング防止法やサイバーセキュリティ法などの法律を遵守しているかどうかを確認する必要があります。しっかりとした調査と確認を行うことで、人々が安心して将来への投資ができるよう、後押しすることができます。

マネーロンダリングといった非倫理的で違法な活動のための手段をを提供する取引所もあります。こういったことを防ぐためにも、信用力のある大規模な取引所は法律当局と積極的に協力し、違法な取引等を検知した場合には正しい情報提供をすべきです。

この業界が繁栄して長期的な成功を収めるためには、必ず光の照らす下で運営される必要があります。暗闇やグレーゾーンの道を歩むべきではありませんし、地下産業として取り扱われるべきではありません。

台湾の自主規制団体 

台湾には、暗号通貨事業者ガイドラインというものがあります。また、私が議員だった頃に自主規制組織(SRO)を設立し、現在は50社以上のブロックチェーンと暗号通貨関連業者が加入しています。

SROは政府と積極的に連携をとり、ヒアリングや規制の策定、そして業界セミナーなどを行っています。このように、法的な枠組み自体はあるのですが、まだまだ改善が必要だと考えています。

台湾にいる暗号通貨業界の有名人

台湾ではJeffrey Huang氏というラッパーの方がいますが、彼は非常にアクティブな有名人です。彼はいくつかプロジェクトを立ち上げていて、かなりの成果を上げていることでよく知られています。

それから、台湾初の暗号資産取引所であるMaiCoinの創設者兼CEOであるAlex Liu氏も業界で非常に有名です。彼はブロックチェーンと暗号通貨業界の様々な分野で活躍しています。

議員としての暗号通貨との関わり方

私は議員として、暗号通貨を所有しないということを明確に宣言していました。議員だった時は、できる限り中立的な観点でこの議題と向き合っていました。

議員として在任中の時に暗号通貨の売買をするのは間違っていると思っていたので、議員時代は暗号通貨の売買をしていませんでした。しかし退職して一民間人となってからは、Bitcoinをいくらか購入しました。

現在、暗号通貨とこのように関わっているのは、在職中にあれほど情熱的に推進したテクノロジーとシステムに対する自分の信念を示すためでもあります。

暗号通貨の売買には注意が必要です。しかし個々人にとっては、暗号通貨という現在の経済の代替システムの仕組みを知り、理解していくことが重要だと考えています。

暗号通貨とは何か、そしてどうすればアクセスできるのかということを、これから人々は自ら学び、自分で自分を教育していかなければなりません。

たとえば代理店や中間業者といった仲介者から購入をする際は、プラットフォームの説明を確認したり、透明性を確認したりする必要があります。

同性婚合法化までの長い道のり

台湾におけるLGBTQコミュニティーの平等な権利を確立していくための旅路は大変感慨深いものでした。色々な感情なしには語れません。

私が議員だった頃、LGBTQコミュニティに法的権利を与えることは最優先事項でした。その中において、ブロックチェーンや暗号通貨の推進は二の次でした。

台湾におけるLGBTQ関連の問題はずっと前から存在していました。最初の問題提起があり、問題の存在が明るみに出てから、実に30年もの月日が経っていました。

しかしこういった問題に関して、一人の一般人に過ぎない我々が影響を及ぼせる機会はめったにありません。多くの人々にとっては、出口の見えない、非常に長く暗いトンネルの中を歩きつづけるような旅でした。

私が子供の頃、身の回りには同性愛者の友人が普通にいて、私はそのような友人に囲まれて育ちました。したがって起業して自分のビジネスを始めたときも、同性愛者の人も雇い入れ、彼らにとって優しく働きやすい環境をつくりました。

やがて彼らとの親睦が深まり個人的な話もするようになりました。その中で彼らの身の上話や苦労話、仕事に関することや友人と家族に関すること、そして彼らが今までの人生の中でどれだけ虐げられてきたかという話を聞くようになりました。

私は声を大にして、これらの問題について訴えました。ところが保守派からは「憲法で同性婚を保護してはならない」という意図を含んだ抗議をうけました。このような経緯があり、LGBTQの問題はさらに数年の間放置されたままとなりました。私はLGBTQの権利を守るための法律を作ろうと、自分の心に誓いました。

議員として過ごした最後の1年間、私はたまたま法と正義を司る委員会に所属しました。我々の議員としての任期は4年です。しかし我々の作る法律は、何世代も長きにわたって、世の中に影響を与えつづけます。

2016年の10月21日に私は国会でスピーチを行いました。政府は同性婚を合法化する法案を可決して台湾がアジアで初めて同性婚を合法化するべきだということをスピーチの中で訴えました。

私は自分の党以外の様々な異なる政党とも協力をし始めました。そして非常に長く厳しい戦いの末、最終的に2019年に法案を押し通し、悲願を成し遂げることができました。

TEDxTaipeiの発起人として

私は常日頃から、新しいアイデアを聞くことで刺激を受けてきました。

2005年から2007年にかけて私はサンフランシスコのシリコンバレーでスタートアップを立ち上げようとしていたのですが、この時にTEDTalksに出会いました。シリコンバレーでは様々なことが行われていて、そこの人々は素晴らしいアイデアを持っていました。

サンフランシスコから台湾に戻り、私は台湾でも何らかの形でTEDを始められたら素晴らしいだろうと考えていました。そして幸運なことに、ちょうどこの頃TEDは世界的な展開を推し進めようとしていました。

私は好運に恵まれ、アメリカ以外の地域でイベントを行うことのできる初のライセンス保有者となることができたので、TED×Taipeiをはじめました。たった1つの支部からはじまった試みでしたが、現在の支部数は32まで拡大しました。

また私は2011年から2015年にかけて、アジアにおけるTEDTalksのTEDアンバサダーも務めました。

台湾のジェネレーションギャップ 

台湾はとても適応力が高く、基本的には新しいトレンドを簡単に受け入れるという傾向があります。
 
そんな台湾における上の世代と下の世代の唯一の違いは、自分のアイデンティティをどう認識しているか、ということだと思います。

若い世代の人々はアイデンティティーに関して、自分たちは台湾人だと考えています。若い世代の考え方は、台湾は主権国家であり、自分たちは台湾人であるというものです。

彼らは台湾のために行動したいと思っています。そして台湾が中国の一部としてではなく、台湾として存在することを望んでいると思います。

一方、もっと上の世代はというと、彼らは紛れもなく中国とのつながりを持っています。多くの人は中国出身で、中国に親戚がいます。中には、戦争のときに中国のために戦った人もいます。上の世代の人々は、中国との感情的なつながりや中国への思いがあるのです。

多様性のある社会で生きるということ

アイデンティティーの捉え方には様々な違いがあります。しかし正しい捉え方と間違っている捉え方というのは決してありません。多様性のある社会に生きるというのは、まさにこういうことだと思います。

様々な違いがあってもいいのです。しかし政治家は時に人を巧妙に操り、己の利益のために、異なる民族間の間に憎しみを誘発したりすることがあると思います。だからこそ我々はもっと教育を受け、批判的な視点を持ち、自分自身で考えられるようになる必要があると思います。

世界における台湾の立ち位置

台湾は世界の中でも非常に重要な立ち位置にあると思います。それと同時に、歴史的にみて不安定な立ち位置にもあると思います。台湾の人々はこのような不安的な時期を生きてきたと言えます。

台湾には、多くの安全保障上の懸念があります。だからこそ、近隣諸国を刺激しないように賢く立ち回るべきだと思います。もっと言えば、むしろ周りのことよりも、台湾内で色々な改善し続けていくべきだと思います。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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