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おすすめの金融ドキュメンタリー:アレクサンダー・フォークト氏

本記事は、アレクサンダー・フォークト 氏(Alexander Voigt)の「Best Stock Market Movies」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。

著者のアレクサンダー・フォークト氏(Alexander Voigt)はdaytradingz.comの創設者であり、20年間の金融市場での勤務経験を持ちます。彼はトレーディングと投資を誰にでもわかりやすく理解できるようにするということを目標に掲げており、彼の著述はBenzinga、Business Insider、GOBankingRatesといった数々のメディアで引用されています。

ウォール街というのは、実はイメージされているほど素晴らしいものではなく、ましてやウォール街関連の映画が魅せてくれるほど華やかなものでもありません。もしも株式市場の舞台裏をじっくりとみたいと思うのであれば、ドキュメンタリーという選択肢が最適です。

金融関連のドキュメンタリーの多くは、YouTubeで無料公開されているほか、NetflixやAmazon Primeでも視聴することができます。ここでは、おすすめ金融ドキュメンタリーをご紹介します。

1. Enron – The Smartest Guys in the Room (2005)

(邦題:エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?)
2006年アカデミー賞ノミネート作品。その他受賞3回、ノミネート10回

本作はアレックス・ギブニー監督がアメリカの大企業「エンロン」についての物語を語る金融ドキュメンタリーです。エンロンは1985年に設立されたアメリカで最大級のエネルギー企業で、2001年に経済破綻で倒産するまで私腹を肥やそうとする経営者たちの遊び場となっていました。

エンロンでは数々の不正会計や資金移動、そして起業家らによる危険を顧みないような冒険的な行動が原因となって、最終的には2万人以上もの人が職を失う事態となりました。それに加え、職員の年金基金20億ドルも奪われてしまいました。エンロンの総負債額は最終的には約300億ドルにも達しました。

本ドキュメンタリーの登場人物の1人であるジェフリー・スキリングの作中のセリフです。

「ああ…思いついてしまったからには言わすにはいられません。皆さんはカリフォルニア州とタイタニック号の違いを知っていますでしょうか。今ネット配信中ですので、後で後悔することになると思うのですが言います… タイタニックが沈んだ時には、少なくとも明かりが点いていました。」

2. Inside Job (2010)

(邦題:インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実)
2011年アカデミー賞受賞作品。その他受賞7回、ノミネート26回

2008年、近年最大のバブル崩壊が起きました。証券取引所での価格暴落があり、非常に短い期間の内に巨額の貨幣価値が消えました。そして何百万人もの人々が職を失い、貯蓄を失い、持ち家を失いました。

チャールズ・ファーガソン監督によるドキュメンタリー作品「Inside Job(インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実)」は、この金融危機を招いた問題に迫る作品です。問題を1つ残らず明らかにしているというわけではありませんが、興味深い点が多く取り上げられており、見ておいて間違いのない1作です。 

マット・デイモン氏がナレーションを担当している本作は、2011年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞しました。また、IMDB.comの金融映画ランキングでも上位にランクインしています。

映画の中の登場人物の1人、アンドリュー・シェンの作中のセリフです。

「なぜ『金融界の建設者(financial engineer)』たちは普通の建設者の4~100倍の報酬を得るのでしょうか。それは、普通の建設者は橋を建設しますが、金融界の建設者が建設するのは夢だからです。そしてその夢が悪夢となってしまった時、人々は代償を払わされるのです。」

3. Quants: The Alchemists of Wall Street (2010)

毎週いろいろなテーマが取り扱われているYouTubeチャンネル「VPRO documentary」では、様々な物事の背景を説明するレポートを公開しています。

本作、「Quants: The Alchemist of Wall Street」は、2010年3月4日に発表されたレポートで、ウォール街におけるアルゴリズムベースの取引判断に伴うリスクなどを取り上げています。次にご紹介する作品も「VPRO documentary」によるレポートです。

4. Money and Speed: Inside the Black Box (Flash Crash 2010)

2012年12月13日に発表されたレポート「Flash Crash 2010」(原題:Money & Speed: Inside the Black Box)は、サスペンス感満載のスリラー映画にも匹敵するおもしろさです。

2010年5月6日に起きた「フラッシュ・クラッシュ」(相場の瞬間的な急落)は、今日の株式市場の出来事の中でも最大の謎の1つとなっています。

なぜこのような謎の現象が起こったのでしょうか。VPROのドキュメンタリーチームはその原因について調査し、人々が透明性を探し求めている一方で、現代の法的枠組みはいかに透明性を欠いているのかということを示してくれています。

5. The Wall Street Code (2013)

本作「The Wall Street Code」は、YouTubeチャンネル「VPRO documentary」のBacklightシリーズと呼ばれるシリーズものの第3弾として、2013年11月4日に公開されました。

先ほどご紹介した2012年公開の「Money & Speed: Inside the Black Box」もシリーズの一環で、本作「The Wall Street Code」と合わせて、高頻度取引(1秒に満たないミリ秒単位のような極めて短い時間の間に、コンピューターでの自動的な株価のやり取り戦略を実施するシステムのこと)について説明する内容となっています。

具体的なストーリーとしては、金融業界で長年働いてシステムの不正を発見したHaim Bodek氏という人物の話です。専門的な内容を多く含むため、初見では内容を完全に理解するのが難しいところもあります。

しかし、もしも今日の証券取引における透明性の欠如や、年々重度になっていくコンピュータープログラムへの依存についてよりよく理解したいと思うのであれば、この金融ドキュメンタリーは繰り返し見る価値のある作品です。

6. Too Big to Fail (2011)

2012年ゴールデングローブ賞3部門にノミネート。その他受賞5回、ノミネート28回

本作はアンドリュー・ロス・ソーキン氏のベストセラー本『Too Big to Fail : The Inside Story of How Wall Street and Washington Fought to Save the Financial System – and Themselves』を原作とする映画で、リーマン・ブラザーズの破綻につながった2007年の金融危機を取り上げています。

政治というのは今も昔も、経済の無邪気さに対して無力でなすすべがないようです。本作は危機の背後にあるメカニズムを説明し、なぜそのような事態に至ってしまったのかということを視聴者に理解してもらおうとしている作品です。

しかしここで残された一番大切な問題というのは、この経験から何を学べたかということと、次の危機(もしあれば)をどうすれば回避できるのか、ということです。作中には次のようなセリフも登場します。

「皆が知っての通り、米国経済はもう少しで崩壊させられそうです。しかしそれでも我々は金融機関に対して(資本注入される)1,250億ドルの使い道を制限することができません。もしも使い道を制限しようものなら、お金を受け取ってすらもらえないかもしれないからです。」ーミシェル・デイビス

7. Floored (2009)

本作はジェームズ・アレン・スミス監督(James Allen Smith)による金融ドキュメンタリーで、シカゴの先物取引所の喧騒が実に生き生きと描かれています。

1980年代には500人もの従業員がPITで売買注文を受け付けていましが、現在ではデジタル化・コンピュータ化が進み、機械がかつて取引の王者であった株式仲介人たちに取って代わりました。そのため現在では数人の従業員で事足りています。この金融ドラマはシカゴの取引所の実に奇妙な株式仲買人たちの運命にスポットライトを当てています。

8. The Corporation (2003)

(邦題:ザ・コーポレーション)
2004年EMA賞受賞作品。その他受賞11回、ノミネート1回

本作はカナダの金融ドキュメンタリーで、大企業による経済的な取引による影響について検証する内容となっています。

作中ではナオミ・クライン氏、マイケル・ムーア氏、そしてノーム・チョムスキー氏が、現代経済の複雑性について網羅し、批判的な視点から語っています。

この映画では8つの異なるテーマが取り扱われており、特集映画の抜粋やアーカイブ記録なども織り交ぜながら作品が進行して発展していきます。作中には次のような言葉も登場します。

「我々は政府を変えることができます。そしてそれこそが、資本と財産でできることについて再考し、再設計する唯一の方法です」ーリチャード・グロスマン

9. The China Hustle (2017)

(邦題:チャイナ・ブーム 一攫千金の夢)
2017年Golden Starfish賞ノミネート作品。その他ノミネート3回。

2008年の株式市場の大暴落を経てもなお、高度な金融操作は終わりを迎えませんでした。銀行家たちは中国企業の協力を得て、投資家たちを新たな戦略で騙し続けたのです。そうして得られた利益は大きいものでしたが、同時に世界経済の安定性に大きな脅威を与えることとなりました。

この記事でもご紹介しているドキュメンタリー映画「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか」の製作者は、また新たな株式市場のスキャンダルを明かしました。そして規制が拡大しているにも関わらず投資家たちがお金を得続けている仕組みを、なかなかぞっとする手法でみせてくれています。

10. Capitalism: A Love Story (2009)

(邦題:キャピタリズム〜マネーは踊る〜)
2009年セントルイス映画批評家協会賞受賞作品、その他受賞3回、ノミネート12回

本作ではマイケル・ムーア監督が、金融危機はどのようにして起こったのということと、金融危機を引き起こした人々を政府は最終的にどのようにして救ったのかということを、独自のスタイルでユーモアを交えて描いています。

批判の矛先は、グローバルに活動している銀行や企業による、利益を最優先してリスクを回避しようとしない無節操な行動に向けられています。銀行や企業のこういったリスクを顧みない無節操な行動のせいで、回避されなかったリスクが国民にのしかかることになってしまっているのです。

マイケル・ムーア監督は映画の中で、利益を得ているのは誰なのかという点を指摘しており、また、商売と政治の潜在的なつながりについても述べています。そんな本作「Capitalism: A Love Story(邦題:キャピタリズム〜マネーは踊る〜)」は映画レビューサイトのIMDBのスコア7.4点と、映画視聴者による評価の高い作品です。

マイケル・ムーア監督は以下のように述べています。

「これが資本主義です。資本主義は奪うシステムでもあり与えるシステムでもあります。ただほとんどは、奪うシステムです。」

11. The Ascent of Money (2008)

2009年国際エミー賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品

本作は歴史学者でジャーナリストのニーアル・ファーガソン氏(Niall Ferguson)が世界中を旅する内容のドキュメンタリーです。彼の旅はウォール街から南米、そしてヨーロッパにまでおよび、旅の中で各地の金融業界の仕組みについて検証しています。2008年に公開された金融ドキュメンタリーで、視聴者からも非常に高い評価を得ている1作です。

12. Wall Street Warriors (Season 1-3 | 2006)

(邦題:ウォール・ストリート・ウォリアーズ シーズン1~3)

本作はウォール街で活躍する様々な人物の人生を細かく探る内容のリアリティーTVドラマシリーズです。全3シーズンある作品で、エピソード数にすると26作あります。

YouTubeの「Wall Street Insider」チャンネルで公開されているエピソードもあるので、さまざまなエピソードを楽しむことができます。

とにかくハリウッド業界の枠を超えた良質のエンターテイメントが保証されている作品で、トレーダーや投資家や企業の金融生活事情を赤裸々に描いています。

13. Million Dollar Traders (2009)

本作はヘッジファンド・マネージャーのLex van Dam氏によって生み出されたイギリスのリアリティTVシリーズ(全3部構成)です。

金融市場で資産の売買を成功させる方法を全くの初心者トレーダーたちに教える内容で、これを架空ではなく実際の環境下で行います。つまり、実際に100ドルの予算をトレーダーたちに与えて、6週間にわたって活発に取引を行ってもらうのです。

そうすると、初心者のグループ全体の成績がプロのトレーダーたちを上回るという驚くべき結果になりました。しかしグループの成績内訳をみてみると個々人の成績には差がありました。そしてグループのベスト3の成績に輝いたのはなんと学生、軍人、そして2児の母でした。

金融業界の複雑性と映画の関係

金融業界は何しろ複雑なので、あまり詳しすぎる説明というのはむしろ逆効果です。たとえばクレジット・デフォルト・スワップについて説明しようとしても、それについて知りたいと人なんてそうそういないでしょう。とはいえ、金融業界の人々は金融の複雑さゆえに、内部の人間にしかわからないような金融商品をつくりがちだというのもまた事実です。

そこで、自宅のソファーや映画館の椅子でくつろぎながら、銀行家や株式仲介人といった金融界の大物の人生についての物語を見るというのはちょうどよく、難しい金融世界に浸る最も楽しい方法だと思います。映画や作品の中であれば、デフォルトのリスクなしに大金で遊ぶことの魅力を体験して楽しむことができます。

しかし1つ言えるのは、映画は観客にみせることを前提として演じられているため、あまりにも美くしいシナリオであることがが多いということです。そもそもハリウッドの狙いは何度もくり返し見られるような大衆受けする株式市場の映画を制作することなので、それもそのはずです。

ハリウッドという巨大なスタジオも株主に義務を負う株式会社なので、金融業界のリアリティーを追求しすぎると逆効果になってしまうかもしれないということを考えながら映画を制作しているのです。

金融関連映画が人々を魅了し続ける理由

株式市場、莫大な富、起業家の人生といったテーマをとりあげた映画は、一般の人々にとって非常に興味深いものです。何百億という大金を手にしてこの世のすべて手に入れることができたらと夢見ない人はいないでしょう。だからこそ株式市場関連の映画は、大金の動く世界を舞台にしています。そしてそのような映画を見る人々は、大金を稼ぐ映画の主人公の目に映る風景を見ることができるのです。

翻訳: Nen Nishihara

     

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