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「ドージコインに対する期待と懸念」本質的な価値について考える:Toby Hazlewood氏

数ある暗号通貨の中でも有名人のツイートなどインフルエンサーによる影響をひときわ受けやすいと考えられているDogecoinですが、Dogecoinの価格は本当にインフルエンサーたちに操作されているのでしょうか。Dogecoin自体に価値があるとすればそれはどのような価値なのでしょうか。今回の記事では、筆者がなぜ一時は敬遠していたDogecoinを購入したのか、またDogecoinのどのような点を懸念しているのか等について説明しています。ぜひご覧ください。

本記事は、 Toby Hazlewood氏の「Does Dogecoin Have Any Genuin Merit Besides Demonstrating the Power of Memes?」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。

Dogecoinに対する懸念とFOMO

Dogecoinについてはもうご存知のことと思います。冗談から始まったアルトコインですが、現在の時価総額は781億ドルです。(記事執筆時点=2021年5月7日)

2021年の2月中旬にもDogecoinについての記事を執筆しましたが、その時の時価総額はまだわずか80億ドルでした。3ヶ月弱で10倍近くになっているということに、勘のいい方はお気づきでしょう。

暗号通貨界隈周辺にいる人たちがこの暗号通貨を懐疑の眼差しでみるのも不思議なことではありません。そういった人たちはここぞとばかりに「ボラティリティ」や「バブル」という言葉を好き放題に口にしています。

私が前回の記事を書いたのは、イーロン・マスク氏やラッパーのスヌープ・ドッグ氏といったインフルエンサーたちが、タイミングよく数回つぶやいただけで価格に影響を与えられるということが奇妙に思えたからです。彼らはなぜ暗号通貨の価格に対して不均衡とも言えるほどの影響力を持っているのでしょうか。

私にとっての懸念点は、Dogecoinをはじめとするアルトコイン関連の巨額な資金が、BitcoinやEthereumのようなより確立された正統な暗号通貨の評判を貶めるのにつながってしまうのではないか、ということでした。

私はいつもBitcoinのマキシマリストたちを遠くから賞賛してきました。そのマキシマリストたちの考えを追うように、Dogecoinというのは目新しくてつまらない迷惑な存在で、カルト的な信者たちにとって魅力的であるに過ぎず、それ以上の何でもないと見下したいという感情に駆られていたのだと思います。

つまり取るに足らないものだと、そう思っていたのです。しかしそれから2ヶ月と少しが経過し、Dogecoinはまた高値を更新しました。

私の考え方は当初から変わったわけではありません。今でもDOGEはただ楽しむためのものだと思っています。しかしそう思うのと同時に、Dogecoinの価格が現在の1/6以下だった時に買っておけば、と後悔しています。私のこの状態はいわゆるFOMO(取り残されることへの恐れ)だと思います。どうやら私は深刻なFOMOに陥ってしまったようです。

FOMOから晴れて隠れDogecoinホドラーに

ここで1つ告白しなければいけないことがあります。実は2週間ほど前に、もういてもたってもいられなくなり、ついにDogecoinをいくらか購入することにしたのです。

土曜日の夕方のことでした。妻と子供たちは。退屈なリアリティーショーを見ていました。私が購入したのはほんのわずかで、100ドルにも満たない額でした。時期は2021年の4月中旬、暴落があった直後のタイミングで、コインあたりの価格は0.30ドル程度でした。

投資家の宿命

私が買ったDogecoinの価値は2倍になったので含み益がでたということになります。しかしそれでも、Dogecoinについて最初に記事を書いた時に買っていれば今頃は10倍になっていたのに、という思いを拭いきれません。

絶望、後悔、もしもあの時ああしてたら、こうしてさえいれば….という感情を抱えて生きる私は、まさに暗号通貨投資の本質を体験しているようです。なぜ最初に知った時に買わなかったのか。もっと多く買っていたらどうなっていただろうか。そもそももっと早いうちから暗号通貨に関心を持っていれば今頃大金持ちになれたのではないか…。

もしや最高利益を逃してしまったのではないか、ピークで買ってしまったのではないか、といった心配も尽きません。だからこそ我々は常に投資をすることについて悩み、議論し、そして先延ばしにしたりするものです。

しかし、このように心をFOMOにつけいられてしまうと、投資人生が左右されてしまいます。こういった感情は何も暗号通貨投資家だけが抱えているものではなく、あらゆる種類の投資に常につきまとってきた感情です。

株式でも不動産でも年金運用でもそれ以外の商品でも、市場が好転して相場が上昇している時には、なぜもっと早く手をださなかったのかと自責の念に駆られるものです。そして価格が急落すると今度は、なぜもっと早く現金化しておかなかったのか、と思うのです。

私のDogecoin投資の戦略は(退屈なテレビから気を紛らわすためにDogecoinを購入しているということ以外に戦略と呼べることがあるとすれば)すでに購入した分を保持しつつ、時々少しずつ買い足していく、ということになるかと思います。

Dogecoinをある程度保有し続ければ、利確で売却した後に価格が売却時をはるかに上回ってきたなんて時に、利確した時のことを振り返って悔しがらずに済む保険になります。

もちろんDogecoinがメルトダウンしたり消滅したりしてしまうというリスクもありますが、少しずつ買い足すという戦略でいけば、最悪の事態でも最小限の賭け金しか失わずに済みます。

Dogecoinの価値はどこにあるのか

以前執筆した記事の中でDogecoinを酷評した私ですが、偽善者ぶるのは避けたいので敢えてはっきり言います。私は自分が執筆した内容について、今でも真実だと思っています。たとえばイーロン・マスク氏が自身のTwitterを通してDogecoinの価格に不均衡な影響を及ぼしているということは疑いようがないと思っています。

マスク氏は最近、「サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)」という番組への出演に先立ち「The Dogefather SNL May 8(2021年の5月8日のサタデー・ナイト・ライブにDogeファーザーが来る)」というツイートをしました。

マスク氏のタイムラインにはこれ以外にもDogecoinへの熱意をうかがわせるツイートが散見されます。

マスク氏のように自らの行動によって市場に影響を及ぼすことができる人というのは珍しい存在ではありません。

しかしそういった人々の中でも特にマスク氏は5300万人近い数のTwitterフォロワーを持っているため、そんな彼の一挙一動はDogecoinの値動きを説明する上で非常に重要な要素となっているように思います。むしろ、彼の挙動以外の要因を見つけようとする方が難しいのではないかとさえ思います。

したがって私の考え方は当初から変わっていません。私の思う最も根本的な懸念点は、Dogecoinの例が数十億ドル規模の資産でも簡単に操作可能であるということを示してしまい、暗号通貨全体の権威や信用を失墜させてしまうのではないか、ということです。

この懸念点というのは、ここ最近のBitcoinとEthereumの目覚ましい値上がりにも暗い影を落としてしまうことであり、著名人による熱心なツイート、というだけではすまされない問題なのです。

たとえばBitcoinのような暗号通貨の場合は、金融機関等がBitcoinをもっと取り扱うようになりその存在がより広く受け入れられるようになったため値上がりした、といった具合に、価値が高まるにいたった正当な要因があります。しかしその点Dogecoinはどうなのでしょうか。

Dogecoinの利点とは

「The Breakdown」というポッドキャスト番組のホストを務めるNathaniel Whittemore氏は最近、Dogecoinの価格上昇に関する素晴らしい番組を放送し、その際に「Is Dogecoin at $0.57 a triumph or a F U to the crypto industry?(0.57ドルに到達したDogecoinは勝利をつかんだ通貨なのか、はたまた暗号通貨界にとっての盛大な侮蔑なのか?)」という自身のツイートに寄せられた反応もいくつか紹介しました。

そこで紹介された「Dogecoinは勝利をつかんだ」側の反応の中から、私の心に響いた選りすぐりのものを、ここで簡単にまとめたいと思います。

これらの意見というのは、Dogecoinの背景にある真の利点について考えるためにも、それからDogecoinに暗号通貨界隈を代表する「親善大使(ambassador)」的な役割を見出そうと試みるためにも、多少の意味合いを持つような類いの視点だと思います。

  • Dogecoinは暗号通貨に投資するためのいわばゲートウェイドラッグのような存在で、人々が暗号通貨の世界に足を踏み入れられるように親しみやすくて脅威のない顔をみせてくれる。人々はやがて自分で学習して、よりリテラシーが高く賢明な投資を行うようになるだろう。(Twitterユーザー:Prayerabolic氏)
  • Dogecoinはインターネット上のミームの力を利用し、その力を現実世界の形あるものへと変換した。人々のエネルギーが今や文字通り「通貨」となったのだ。我々が団結すれば、何もないところから富を生み出せる。これは素晴らしいことである。Dogecoinは、主流派からの支持を得ずとも素晴らしいことを実現できるということを教えてくれた。(Twitterユーザー:LATX91氏)
  • Dogecoinは2011年のBitcoinのコピーのコピーであるにも関わらず、しかも2年間も特にメンテナンスのなされていないコードに基づいているにも関わらず、未だに稼働を続けており、安全性を保っている。このことは、Bitcoinブロックチェーンの安全性の基礎が極めて強固であるということを示唆している。(Twitterユーザー:Nathan_Rudman氏)

これらの反応とは逆に、DogecoinはBitcoinに対する「盛大な侮蔑だ」という声もたくさんあったのですが、ここでは比較的健全でより共感しやすいと思われる反応を選びました。

インターネットの世界、ミーム、インフルエンサーの投稿に由来する不均衡な影響力、これらはすべて今日の我々の文化において重要かつ不可避な力です。

Dogecoinが素晴らしいのは、今までの伝統や進化がこれらの重要かつ不可避な力の上になりたっていて、これらの力に根ざしているという点です。とても安心感を与えてくれるとまではいかなくとも、大変素晴らしい特徴だと思います。

イーロン・マスク氏と暗号通貨

イーロン・マスク氏はDogecoinでいろいろと楽しんでいる一方、Bitcoinにも個人的に投資をしていたり、自らの会社であるテスラを通してかなりの量のBitcoinを保有していたりと、Bitcoinの支持者としても知られています。

つまりマスク氏は暗号通貨界隈に対する注目を集めるのにDogecoinを用いている一方で、テスラの行っていることを通して分散型金融ツールとしての暗号通貨の確かな有用性と価値を実証するのには、Bitcoinを用いているのです。暗号通貨をめぐるマスク氏の行動は、信仰が飛躍しすぎているというわけでもないと思います。

まだ残るDogecoinに対する懸念点

私はDogecoinに対してまだ懸念を抱えています。それは、Dogecoinの価格が上昇し、市場が膨張し、より多くの投資家が大幅な利益を期待して果敢な購入を行うようになってくると、暗号通貨に対して懐疑的な人々、そしてそれ以外の大衆にまでも懐疑的な意見が拡大するのではないかという懸念です。おそらくは「バブル」という言葉が頻繁に飛び交うようになるだろうと思っています。

もしもこのような出来事がくり返されれば、ますます多くの人が暗号通貨はすべてミーム由来なのかと考えるようになってしまうでしょう。そうなってしまうと人々はBitcoinやEthereumやその他のブロックチェーン技術の正当性のある利点をも疑うようになってしまいます。後はもう、人々の心にともった疑心暗鬼の火種にどんどん燃料がくべられるだけです。

そして一部のラッキーな人たちが一財を築いた後に、ある日価格が暴落すると、多くの人々は自分の許容範囲を超える損失を出すこととなるでしょう。暴落は史上最安値に達する前に止まるかもしれません。別にお金が全部なくなってしまうと決まっているわけではありません。しかしそれでも、自分の許容範囲を超えるようなリスクを負った結果としてひどい痛手を負う人たちが出てきて、その人たちの話が広まるでしょう。

WallStreetBetsやGameStopのケースでは同じようなことが実際に起こっています。これ以外にも同じような例は尽きません。とは言え、暗号通貨界隈でまた同じようなことが起こったとなると、また暗号通貨のせいで多くの人々がひどい目にあったと思われてしまうでしょう。

暗号通貨の自治性が失われるリスク

最後に少しだけ法規制の観点にも触れておきます。暗号通貨は規制されていない自治的な分野であってほしく、この状態ができるだけ長く続いて欲しいと思っています。ところが現在のようなDogecoinをめぐる情勢により経済的な被害を被る人が出てくると、政府が介入してくる可能性が高まってしまいます。

たとえばですが、イーロン・マスク氏のような人物が価格を意図的に操作して自らの利益を膨らませていた、といった類いのことが判明すれば、規制導入等の法的な反発は避けられないでしょう。熱狂的なツイートに引きこまれて多くの小口投資家が資金を失ったとなればなおさらです。

一般の人々が繰り返し自衛に失敗するようなことがあれば、その時は政府が代わりに介入してくるという厳しい教訓を、暗号通貨を購入する人々はよく心に留めておく必要があります。

最後に

自分の心の内を赤裸々に綴れたのはいいことでした。自分がDogecoin保有者であることを公にすることができ、罪悪感のようなものもいくらか薄れました。

しかしDogecoinを買ったからといって決してBitcoinやEthereumに対して浮気をしたというわけではありません。(実を言うとRippleもいくらか買ったこともここで白状します。)他の通貨を購入はしても私のBitcoinとEthereumに対する信頼は絶対です。

暗号通貨投資に関わることで、技術や歴史に関することだけでなく、投資の感情的・心理的側面についても多く学ぶことができました。特にFOMOやDogecoin関連の誇大広告への対処を通じて得た経験というのは、学びの中の大きな部分を占めていると感じています。

私はこれからも今までと同じように、最悪失ってもいいと思えるリスクのみを負うことを肝に銘じていきます。皆さんも、投資対象のコインが何であれ、同じような心づもりで投資することをおすすめします。(もちろん金融に関するアドバイスではありません!)

翻訳: Nen Nishihara

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