最近はアメリカをはじめとする先進国の驚異的なインフレ率が騒がれていますが、実は世界の他の国々を見渡してみると、アメリカの8.5%というのはまだまだ序の口です。今回の記事では、インフレ率ワースト21カ国をインフレ率が高い順にご紹介しています。インフレ率が最も高い国は果たしてどこなのでしょうか。また、インフレ率が高い国々にはどのような背景があるのでしょうか。ぜひご覧ください。
本記事は、TheLatestBlock.comに掲載されたAlexandre Lores氏の「The Top 21 Countries Where Inflation Is the Worst」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。
米消費者物価指数が8.5%に到達
アメリカの消費者物価指数は8.5%に到達しました。アメリカで生活しアメリカで働いている人は、億万長者とかでもない限りインフレによるプレッシャーを感じていると思います。少なくとも私は感じています。
ではそんなアメリカの現状を踏まえた上で、今度は一歩引いて世界の状況整理をしてみたいと思います。
実はインフレ率8.5%というのは、他の国々と比べると大したことではなかったりするのです。これから世界各国のインフレ状況を紹介していきます。登場する数字はすべて年間インフレ率になります。それでは以下から、インフレが最も深刻な国21カ国です。
インフレが最も深刻な国21カ国(併記の順位はインフレが深刻な順に上位となるよう整理したもの)
ナイジェリア 15.7%(同率19位)
アフリカ最大の経済大国であるナイジェリアですが、2016年に2桁台のインフレ率を記録して以降インフレ率が1桁に戻ったことはありません。2021年の18%超えという記録がピークで、それ以降は緩やかなペースで低下を続けています。
リトアニア 15.7%(同率19位)
リトアニアは10年以上もの間、インフレ率が5%未満でした。しかしこの1年間(2021〜2022)で着実に上昇しています。
ガーナ 15.7%(同率19位)
ガーナもアフリカの振興経済で、Twitterのアフリカ拠点の建設地にも選ばれたほどです。インフレ率は2021年5月時点では8%を下回っていましたが、その後順調に上昇しています。
ベラルーシ 15.9%(第18位)
ベラルーシの経済はロシアによるウクライナ侵攻をめぐる制裁の影響を受け、インフレ率も急騰しました。それまでのベラルーシのインフレ率は過去1年にわたり安定的に推移していて、今回の高騰が起こる直前の2022年2月時点では9.9%でした。
ロシア 16.7%(第17位)
ロシアもベラルーシ同様、今回の戦争をめぐる制裁の影響を受けています。短期的にみると、制裁は効果を発揮してロシア経済を揺るがしインフレ率を2倍近くまで上昇させました。ロシアの経済規模は世界第11位で、今回ご紹介しているインフレ率上位21カ国の中では最大の規模です。インフレ率は2020年初め時点では2%程度でした。しかしすでに着々と上昇しており、2022年2月には9%超えを記録しました。
シエラレオネ 17.94%(第16位)
シエラレオネは西アフリカにある小さな国です。鉱物資源が豊かな国ですが、悪名高い「ブラッド・ダイヤモンド(血塗られたダイヤモンド、紛争ダイヤモンド)」の生産地の1つでもあり、1991年から2002年にかけて内戦に見舞われました。
シエラレオネのインフレ率は何年もの間下がり続けており、2011年初頭には10%を下回りましたが、その後は一転して着々と上昇を続けるようになりました。現在公表されている最新のインフレ率は、2021年12月の記録である17.94%です。
スリランカ 18.7%(第15位)
スリランカはインド洋に浮かぶ人口2200万人弱の小さな島国です。インフレ率はわずか1年前(2021年)までは4%以下でした。これはアメリカと同じです。しかしその後、着々と上昇しています。
モルドバ 22.2%(第14位)
モルドバは東ヨーロッパに位置する人口300万人以下の小さな国で、西はウクライナと国境を接しています。2021年までインフレ率は3%以下でしたが、その後着実に上昇しています。
キューバ 23.3% (第13位)
キューバは社会主義経済の国で、1960年代から欧米の制裁下にあります。この国のインフレ率は最近まで年1回しか報告されていませんでした。その公式発表によれば、インフレ率は2006年以降ずっと7%未満に抑えられていました。
しかし2021年に入ってから事態が変わり、インフレ率は報告のなされたすべての月において60%を超えるほど急高騰しました。2021年12月に報告されたキューバのインフレ率は77%でしたが、インフレ率はそこから下がり、最新の公表は2022年1月の23%です。
ハイチ 23.95%(第12位)
カリブ諸島にあるハイチは、世界で最も貧しい国の1つです。ハイチのインフレ率は2021年9月まで下降を続けていて、同年の8月には11%を割りました。ここでご紹介している23.95%というのは2022年1月に公表された数字です。
アンゴラ 27.28%(第11位)
アフリカの国アンゴラですが、インフレ率がかなり高い状況が続いており、2015年からは常に10%を超えています。しかし2022年2月の公表によると、この度インフレ率が1年ぶりに下降したとのことです。
エチオピア 33.6%(第10位)
エチオピアでは貧困が日常です。インフレ率は2021年の初め頃から着実な上昇ルートに入りましたが、この時にはすでに20%前後のインフレ率が普通でした。またエチオピアでは2020年の10月くらいから紛争が続いており、BBCの報道によると紛争による死傷者は約1万人にものぼるとのことです。
イラン 34.7%(第9位)
イランもまた、アメリカによる制裁を経験した国です。今回ご紹介している国々の中ではロシアに次いで2番目の経済規模を誇り、名目GDPも1兆ドル超えということでロシアと肩を並べています。
アルゼンチン 52.3%(第8位)
アルゼンチンは南米第2の経済大国でありながら、数十年間にわたりインフレに悩まされてきました。インフレ率は2020年後半に一時的に40%を切りましたが、その後は着実に上昇を続けています。
トルコ 61.14%(第7位)
トルコの経済事情はよくない意味で注目を浴びるようになってきました。通貨問題を抱えていて、国の中央銀行の金利は14%に達しています。ところがこれほどの高金利にもかかわらず、インフレは一向に沈静化する気配がありません。インフレ率は2021年の11月には20%を超えるほど急騰し、その後も毎月上がり続けています。
スリナム 61.5%(第6位)
スリナムは南米にある小さな国です。2020年初め頃のインフレ率は10%以下でしたが、そこから大幅な上昇に見舞われるようになり、通年で40%を超えるようになりました。
ジンバブエ 72.7% (第5位)
ジンバブエのインフレ率は実はこれでもかなり下がった方で、2020年はなんと800%に迫る勢いでした。そこから一旦は下がったものの、2021年の8月以降は50%前半からまた徐々に上昇し、現在に至っています。
シリア 139% (第4位)
シリアは度重なる戦争で荒廃していて、過去10年の間にインフレよりも深刻な数多くの問題を経験しました。インフレ率の情報を入手するのも困難で、2021年にインフレ率の公表があったのはわずか3回でした。ここで紹介しているのは最新の公表である2021年8月のデータです。
レバノン 215%(第3位)
レバノンはシリアのすぐ南にある民主主義国家です。シリアは2020年以降、大規模ストライキの勃発、新型コロナウイルス感染症の流行、主要港での大爆発事件といった相次ぐ問題や災害に見舞われました。
これらの災害に加えてさらに不運なことに、2021年の12月、サウジアラビアとその同盟諸国は、イランの支援を受けている「ヒズボラ」というイスラム教シーア派の政治・軍事組織の影響を理由に、シリアとの国交を断絶しました。これらの問題の中、レバノンの副首相は国家及び中央銀行の破綻を発表しました。
インフレ率はというと、実は2022年1月に240%くらいでピークを迎えた後はやや低下しています。
スーダン 260%(第2位)
スーダンも国としてさまざまな問題を抱えてきました。特に南北間の悲惨な内戦では約150万人もの命が奪われ、結果として2011年に南スーダンが独立することになりました。スーダンのインフレ率は2021年7月に422%というピークを迎え、その後は着々と低下しています。
ベネズエラ 284%(第1位)
ベネズエラは国の経済状況の苦しさのあまり、もはや経済破綻やインフレといった言葉の代名詞になりつつあります。せめて、状況がこれ以上悪化することはないと思いたいです。
ベネズエラの政府による公表の信憑性は今ひとつといったところですが、公式発表によるとインフレ率は2019年に350,000%というピークを迎えたということです。ただ、個人的にはもっと数字が大きかったという報告も目にしたことがあります。
しかしベネズエラのために弁護をしておくと、実はベネズエラのここ1年間のインフレ率というのは着実に下がり続けています。独裁政権によって統治されている社会主義経済のベネズエラですが、石油資源が豊かなこの国は、世界的な原油価格高騰の影響をあまり受けずに済んだのです。
最後になりますが、ベネズエラのインフレ率の推移に関する情報はTradingEconomicsというサイトから入手することができます。この記事が面白かったという方にぜひおすすめしたいサイトです。
翻訳: Nen Nishihara
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