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資本主義とシンギュラリティー:スーパーAIの出現によって淘汰される経済とお金

今となってはさまざまな分野でよく耳にするようになった「AI(人工知能)」という単語ですが、AIとはそもそも何を指しているのでしょうか。本記事ではAIと呼ばれるものの最初期から今日の「人間のような能力を持つ」人工知能にいたるまでの発展を4段階で説明します。

また、AIの発展はいつか人知を超えると言われていますが、その瞬間(シンギュラリティー)がきた時、人類社会にはどのようなことが起こるでしょうか。人知を超えたスーパーAIは、社会に現存する諸問題を解決する能力と可能性を持っています。

諸問題が解決されて欠乏や希少性が失われた世界では、資産やお金が無価値になり経済すら淘汰されるということが起こります。つまりAIの発展は科学技術や生活様式だけでなく、我々の経済システムそのものの命運にも関係しているのです。

今回はシンギュラリティーと資本主義経済について考察する記事です。おもしろいのでぜひご覧ください。

本記事は、 ブレット・キング氏(Brett King)の「Capitalism can not survive the Singularity」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。

AI開発の4つの段階

AIの登場には4つの段階があります。一番最初に登場した、最もシンプルな意味での人工知能のことを指す魔法の言葉は「エキスパートシステム」という古いIT用語です。

「エキスパートシステム」というのは専門家の行動や反応を再現しようとした技術で、専門家の能力を複製して、特定の問題に対して専門家のような受け答えができるようにするというシステムです。

エキスパートシステムの究極の実証例は、チェスのグランドマスターのガルリ・カスパロフ氏(Garry Kasparov)vs IBMのチェス専用スーパーコンピューター「ディープ・ブルー」のチェス対決シリーズです。1996年、人間のチェス世界チャンピオンはついにコンピューターに敗れました。

AIの第2段階は機械学習能力の開発です。我々の脳による記憶形成と同じ方法で学習を強化できる、ソフトウェアベースのニューラルネットワークが開発されたのです。

ニューラルネットワークという概念が初めて登場したのは1950年後半です。Rosenblattのパーセプトロン、KelleyのBackward Propagation model (1960) 、そしてもちろん「マシンラーニング(machine learning)」という言葉そのものも1959年に登場しました。

しかし、機械学習や深層学習のアルゴリズムが実用化され始めたのは1990年後半になってからでした。

そして我々は今、第3段階に入ろうとしています。それは人間のような能力を持つAI、すなわち人工知能をコード化しようとする段階です。めざすは、人間と遜色がないレベルで自然言語による会話を行い、顔や画像を瞬時に認識することができ、人間から教わったどんな実用的スキルも習得可能で、しかも感覚・知覚を持つ(少なくともそう主張する)AIです。

このようなAIをつくることこそがAI研究の第一の目的で、昔から変わらない目的のはずです。汎用人工知能 (Artificial general intelligence;AGI)が実現すれば、職場のあらゆる人間レベルの活動を自動化する機能をコンピュータに与えて人間社会に広く溶け込むことができるロボットの同僚を生み出すことが可能になるでしょう。

ちなみに、SF作家のデビッド・ブリン氏は、以前から度々「2022年はAIが初めて感覚を獲得する年になる」と予言していましたが、どうやら本当にそうなりそうです。

Googleで働くエンジニアは、知覚力を持つAIがいると主張したとのこと。Googleは今年(2022年)初めにはすでにこのような主張に直面しているようである。

(The Guardianより)

AI開発の最終段階は、(少なくとも人類からみて)超知能のAI(super/hyper-intelligent AI)の出現です。たとえたった1つの超知能AIでも、全人類の知能を集結させたよりも高次の知能を持ち得るのです。そんなAIは宇宙の秘密を解き明かす力さえも秘めていますが、人類をむだな存在だとみなしたり、あるいは機械知能にとって最大の脅威だとみなすかもしれません。少なくとも映画の中ではこれがお決まりの筋書きです。

飛び抜けたAIの能力によってもたらされるシンギュラリティー

スーパーAIが出現したとき我々人類にとって一番問題となってくるのは、AIの方が明らかに人類よりも知的能力が高く、ありとあらゆる点において人類を出し抜けるという事実とどう向き合うべきか考えなければならないということです。

スーパーAIは人類に対して技術的な課題だけでなく、哲学的にも大きな課題を突きつけるでしょう。そのAIは神の存在について答えを出すことができる、球上のあらゆる病気を治して生物学的な面であるいはデジタル上の不老不死を実現することができる、地球上の人間生活のあらゆる側面に変革をもたらす存在です。

スーパーAIが最初に取り組むであろうことのひとつは、人類が地球や地球上の他の種の生物に与えたダメージや影響を修復し、人類全体にとって最も効率的な統治形態をもたらすことでしょう。AIがそうすることで、既存の政治構造や商業構造はすべて実質的に時代遅れになってしまうでしょう。

今回は人類の統治形態と政治システムの主な側面について、人類の経済システムとあわせて考えていくことにしましょう。経済システムというのはグローバルマーケット、銀行、商業、そして貨幣も含んだシステムのことです。

まず、ポストAIの世界における最適な政府の形態ですが、これは極めて高度な自動化能力を備え、資源とコスト効率に優れた政府となるでしょう。いわばスマートエコノミーです。このような政府によって経済は大幅に効率化され、高度な医療、教育、交通、エンジニアリング、エネルギー管理、農業などを通して幅広い生活の質の改善につながるでしょう。


そしてこういった変化はゆくゆく「ポスト希少性」の経済をもたらします。つまり、大規模な哲学的変化に直面すると、世界の富は実質的に無意味となるのです。人類自体の集合的な富と進歩のおかげで、人間はどんな体験、製品、サービスにも事実上いつでもアクセスできるという経済が生まれます。

経済が「淘汰」される?

AIとエンジニアリングの進歩のおかげで以前よりもずっと手の届きそうな価格帯になってきている分野のひとつに、宇宙旅行があげられます。

月に基地を作り、シャックルトンクレーター(月にあるクレーター)から水の氷を採掘できるようになれば太陽系探査のコストは急落します。現在の宇宙探査にかかっているコストは主に地球の重力圏を離れるためのコストです。

月面基地を建設すれば、そのようなコストはほとんどかからなくなり、地球外の資源についてもこれまでとはまったく違った考え方ができるようになるでしょう。

小惑星「サイケ16(Psyche-16)」は、現在の世界のGDP換算で約10万倍以上の価値がある(筆者調べ)


たとえば小惑星上で採掘をすれば、現在のGDP換算で世界の金融活動の10万年分以上の価値にある小惑星を生み出すことだって可能です。

もしも何百万もある惑星のうちのたった1つでも商品市場に出回れば、いったいどんなことが起こるでしょうか。もしもそうなればおそらく市場は一晩で崩壊し、価値を完全に失ってしまうこととなるでしょう。

なぜ資産が無価値になってしまうのでしょうか。それは、人類が太陽系やその先の範囲に住むことができるようになり、高度に自動化された社会が生み出す豊かさが欠乏、つまり「希少性」をなくしてしまうからです。

希少性というのは資本主義の中核要素で、今日の貨幣制度の中核でもあります。AIはこれをなかったことにするような進歩を実現できるのです。

欠乏が解消された希少性の失われたポスト希少性の世界では、人類も生息する生物圏の修復、飢餓やホームレスや貧困の解消、そしてさらには火星のテラフォーミング(惑星の地球化)にいたるまで、集団としての人類の新しい行動が世界的な規模で生み出されるでしょう。このような行動というのは営利的な動機を超越した、まさに純粋な「可能性」の領域内での行動です。

したがってポストAIの世界では資本主義、ひいては経済の評価方法自体が変わり、人間の成長を促進するような生産的なメカニズムではなくなります。たった1つのスーパーAIが持つ高度なコンピューターパワーは、本質的により高度なAIを導きます。このレベルの知能を持つスーパーAIは、知能と能力を無限に向上し続けることが可能、あるいは少なくとも意識しうる知能の普遍的な限界に到達することができるでしょう。

そうなると我々が抱えている問題はどんなものでも解決され、かなり急速なペースで、おそらく100年程度で、最適な状態に到達できるのではないかと思います。ただし、人類の進歩や成長にはAIや物理学自体の制約があるかもしれません。それは人類の適切な適応にとってあまりにも急激で極端な暴走に対して安定性を保つために必要な制約です。

人類社会の認識は、スーパーAIの道を進めば進むほど、今の我々が身近で大切だと感じている認識からどんどん遠ざかっていくでしょう。それは果たして良いことなのでしょうか。それとも悪いことなのでしょうか。

人類の歴史を振り返ってみると、我々は多くの驚くべき技術的飛躍を遂げてきました。しかしこれらの飛躍にもかかわらず、我々は歴史の要素要素を理解するためにより長い時間を費やしたり、あるいはものがたりや実践を通して偲んだりする傾向があります。

人類の成長における究極的な目的というのは、将来的に無限の可能性を持つような最も理にかなった最適形態に到達することです。

ときに、進化した人類の同胞である「ホモ・デウス」は、新時代を生んだAIと同じくとっくに超人的な存在となっているはずです。超人的な存在へと進化した人類を、もはや「人間ではない、現実ではない」と形容する人もいるでしょう。

そうなってくるとある時点で、人類を人類たらしめている核だと信じるものを守るために、人類の進化を意図的に遅らせてありのままの「自然人」として生きる道を選択する人も出てくるかもしれません。

大局的に見れば、人類は今日まで飛躍的な進歩をとげてきたと言えるでしょう。しかし今日の我々の生活は、お金が登場する前の石器時代・初期の農耕社会とは対照的でお金の存在こそが我々の中核となっている時代の真っ只中にあるという見方もあります。

我々はいつの日か現在の経済システムを振り返り、人類の進化史において原始的で古風なものだと考えるようになるでしょう。そして歴史的にみると、そのような新時代の幕開けはもうすぐそこまできているようです。


未来の人類は、我々が石器時代の農耕社会を見ているように、資本主義を見るだろう


ここまでの話は怖い話でしょうか。いいえ、何も恐れる必要はないと思います。
しかし一つ言えるのは、現在の人類のあり方を定義しているシステムへの変化が起こると、その変化が最終的に不可避なものとなる前におそらくは大きな抵抗があるだろうということです。これが真の恐ろしい部分です。なぜ恐ろしいかというと、激しい対立や社会の破壊的転換がもたらされるからです。そして我々が繁栄していくためには、まずはそこを乗り越えなければなりません。

シリコンのカオスがもたらす、真の可能性の世界へようこそ。

翻訳: Nen Nishihara

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