銀行による暗号通貨業者へのサービス提供を禁止したインド準備銀行(RBI)との裁判において、勝訴を勝ち取ったアシム・ソード弁護士にインタビューさせていただきました。今回は、暗号通貨と世界経済の関係、コロナウイルスの影響などについてお話ししていただきました。
インタビュー日 : 2020年3月12日
チャンスを掴むインドの若者
少し哲学的な表現になりますが、この国から恐れを取り払い新たなイノベーションをもたらしてくれるのは、新しい世代の人達なのだと思います。彼らは失うものが遥かに少ない若者達で、前の世代の人々とは異なる生活を送っています。若者は何かを目にすると、その可能性に注目しますが、私のように40代の人達が最初に考えるのは、それらのリスクなのです。つまり、可能性に注目する世代がいる一方で、リスクに焦点を当てる世代がいるということです。
私が裁判所に伝えたのは、「新しい技術への理解が足りないことは全ての技術に対して言えることだが、理解の欠如がそれを禁止してしまう理由であってはならない」ということです。今から10年後のブロックチェーン技術や暗号通貨は、現在とは全く異なるものになる可能性があります。仮に先を見通せなかったとしても、この技術に可能性を感じ、リスクを取りたいと考える若い世代の人達が多くいます。彼らは、自分自身や周りの人の生活を改善したいと願っていて、技術を使ってどこまで出来るのかを試したいのでしょう。これは暗号通貨、人工知能、またその他の発明などに関わらず全てに当てはまることです。インドは人口の50%以上が30歳以下という非常に若い国であり、そのような精神があります。両親と穏やかな環境で育った夢のある若者が非常に多いです。彼らは、世界中の人達と相互に交流し、そこに広がっている可能性に完全に接することができる最初の世代なのです。いま、彼らはそのチャンスを掴んでいるのです。
更なる禁止措置の可能性
私は、暗号通貨で失敗した経験があるので、その後は何にも投資していません。なので、Bitcoinの価格をあまりフォローできてはいませんが、既に多くの方から連絡をいただいています。現在は暗号通貨にポジティブな印象も持っている方が多くいるようです。先週は、少なくとも2、3団体のアメリカの方達、またインドの方達からも更に多くの連絡をいただきました。彼らは、インドで暗号通貨の交換所や関連ビジネスを始めたいと思っているスタートアップの方達です。非常に嬉しいことですが、暗号通貨の禁止が解除された後でも、新たな形での禁止は避けることができないので注意が必要だと思っています。今回はインド準備銀行による禁止でしたが、インド政府も暗号通貨の禁止を検討しています。今回の判決により、禁止してしまう代わりに政府が規制を設けるという可能性もあります。「準備銀行の暗号通貨禁止措置が撤廃されたことが気に入らず、もう一度禁止措置を行う」とインド政府が言い出す可能性もあります。そのため、嬉しさもありますが、注意も必要なのです。
コロナウイルスの影響
2月から3月までの経済の落込みには2つの原因があったと思います。 1つはコロナウイルスによるもので、もう1つは突然の原油価格の引き下げで市場が混乱状態に陥ってしまったことです。しかし、今後数か月で何が起こるかに関しては、まだ氷山の一角の所にいると思います。インドでは、外交官および他のいくつかの業種を除いて、世界中の全ての人へのビザ発行を一時停止しています。つまり、航空会社、ホテル、国内の観光産業などでは、うまく適応できた者だけが存続し、その他多くの者は次の2〜3か月までに消えてしまうということです。私達の経済がどうなるのかわかりませんが、法定通貨の経済と繋がりがあれば、深刻な影響を被るだろうということが言えます。そして、これがグローバル時代の有り様なのです。より大きな支援が必要となる分野もありますが、私達は皆が非常に脆弱であると言えます。
もしビジネスが止まり続けるならば、経済にとっては壊滅的なものとなります。インドで最も影響を受けるのは小売業者で、完全に閉鎖してしまうでしょう。近年は、日本でも観光が大きな収入源となり、東京オリンピックにも多くの人が多額の投資をしてきたと思います。また、同様に多くの企業も多額の投資を行なってきたと思います。多くのビジネスが航空会社から生まれるので、この市場の下落がすぐに回復しない場合、壊滅的な事態になります。航空会社が閉鎖されると、それによって支えられているビジネス、ホテルなどが閉鎖され、確実に失業が起こります。
暗号通貨と価格変動
経済の浮き沈みと暗号通貨を結びつける見方や、暗号通貨の投資家がこのような経済の変動に対して非常に脆弱であるという考え方がありますが、恐らくどちらも正しくないと思います。暗号通貨は、投資可能なコモディティとして見られる必要があります。他のコモディティと同様に、暗号通貨は長期的には金のような商品になり、価格変動の基準、モデルになると考えます。そして、世界中で価値の貯蔵手段と見なされるようになります。暗号通貨の価格は上下していますが、時間とともにボラティリティは低下します。金融システムとの統合が進むほど、価格変動サイクルはより正常化されていくからです。まだ長い道のりになると思いますが、最終的には法定通貨と暗号通貨の経済、両方が統合され、同じような動きになる日が来ることでしょう。同時に、未成熟なユーザーが過熱しすぎてしまうリスクを軽減することも検討する必要があります。これは、株式と同じように、ブローカーに規定を設け、警告を出すことなどが必要になります。
株式市場は既に危機に直面しており、それはインド、日本、どこでも同じ状況だと思います。このような状態から回復するには何年もかかると思います。そのような点で、暗号通貨に投資していようがいまいが世界経済は衰退するという教訓になったと思います。世界的な経済危機を暗号通貨と結び付けてしまう考えは間違いだと思います。ただ、私達も何らかの形で影響を受けると思います。皆さんがこの危機の反対側にソフトランディングできることを願っています。
インタビュー・編集: Lina Kamada
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