人気ポッドキャスター、スコット・メルカー氏(Scott Melker)のインタビューです。メルカー氏は、トレーディングをはじめて暗号通貨業界に入るまではDJや演奏者として数々のステージで活動してきました。今回のインタビューでは、音楽活動やトレーディング、ポッドキャスト番組のコンセプトなどについてお伺いしました。
インタビュー日 : 2020年9月30日
暗号通貨は詐欺の温床か
別に暗号通貨がなくても詐欺被害は起こります。たとえばですが、私の元には1日にだいたい3~4件、アメリカ合衆国内国歳入庁を名乗る電話がかかってきます。これらの電話は「捜査令状がある」といったようなことを言ってきます。
こんなことが日常茶飯事なのです。詐欺師ははるか昔から様々な手段であらゆる人々を食い物にしてきたのです。
詐欺は決して暗号通貨固有のものではありません。しかしソーシャルメディア上にインターネットに精通しているやり手の人々がいるため、詐欺を行うことがより容易になっているというのは事実です。現代ではありとあらゆるものが技術的なことに依存しているため、突破するのがより簡単になっているのです。
私は、詐欺の可能性があると思われるものには手を出さないようにしています。新興のプロジェクトには細心の注意を払わなければなりません。またDeFiプロジェクトの多くについては、価値が0になることも想定してポジションのサイズを決めています。したがってポートフォリオに対して損失を小さく抑えることができまるのです。
ハッキングされた経験
私はハッキングをされたこともありますし、SIMスワップ詐欺被害を受けた経験もあります。それらは私の人生の中で最悪の経験でした。
私はツイッターのプロフィールに顔と実名を載せている数少ない人間のうちの一人です。暗号通貨業界に入る前は公人として活動していたため、匿名でいることができませんでした。そんな私は、多くのハッカーたちにとって狙いやすい格好のターゲットになってしまったのです。
詐欺師から過激な脅迫や電話を受けるようになったため、私は自分の家族と自分自身、そして自分の資産を守るために思い切った措置をとりました。この措置のおかげで、現在誰かが私の資産にアクセスすることはほぼ不可能です。
私はアメリカの大手携帯キャリア会社から方向転換して現在はEFANIという会社で働いています。私の友人でもあるハセブ・アワン氏はそこで、SIMカードを確実に保護したいという人向けのサービスを運営しています。
従来は、ハッカーは私の携帯キャリアに電話して私に成りすましさえすれば詐欺ができました。しかし今では私をハッキングしようと思ったら、ハッカーは12段階の認証プロセスをクリアして、しかも自分の顔をビデオに映す本人確認を突破しなければなりません。
SIMスワップ詐欺に遭う可能性
Charlie Shrim氏という方は、過去には3回もSIMスワップ詐欺に遭ったという経験の持ち主です。
また、アンソニー・ポンプリアーノ氏とジェイソン・ウィリアムス氏も同様に、SIMスワップ詐欺に遭った経験があります。彼らのケースでは状況がエスカレートして、FBIや治安部隊も巻込むまでになりました。
ジェームソン・ロップ氏も同様の脅迫を受けた経験をもつインフルエンサーです。彼はサイファーパンクでもあります。
詐欺師たちは常軌を逸脱していて、彼らの行動はとどまるところを知りません。しかし彼らは自分たちの行動を常軌を逸脱したものだとは思っていません。しかも彼らにとって暗号通貨というのは、ドルよりもアクセスしやすい手段となってしまっているのです。
携帯キャリアの従業員を買収する詐欺事例
私はハシブ・アワン氏をゲストとしてポットキャストにお招きし、詐欺の世界について色々と教えてもらいました。そして、個人情報にアクセスすることがどれだけ簡単かということや、SIMスワップ詐欺を行うことがどれだけ簡単なことなのかということを知り、大変恐ろしく思いました。
SIMスワップ詐欺を行う詐欺師はダークウェブ上で何百もの電話番号と名前情報を入手することができます。こういった基本的な情報を詐欺師たちは、ほんのわずかな小銭で買うことができるのです。あとは少し小細工さえすれば、名前やメールアドレスや電話番号といった情報を全部入手することができます。
詐欺師が次にすることは、ターゲットが暗号通貨取引をしているかどうかを見つけ出すことです。これも非常に簡単に分かってしまいます。さらに詐欺師はターゲットのFacebookなどから家族情報を収集します。こうして詐欺師が被害者に成りすますのに使う、偽プロフィールが出来上がっていくというわけです。
詐欺師はソーシャルメディアからより多くの情報を集めるべく、被害者の電話番号を乗っ取ろうします。したがって携帯キャリアの会社に電話して、被害者に成りすましてSIMを切り替えてもらうのです。これが詐欺師の手順ですが、これは数多くある詐欺手段のほんの一例に過ぎません。
もう一つ詐欺師の詐欺手段をご紹介します。これはよりシンプルですが大変恐ろしい方法です。これは携帯キャリアの従業員を買収するというやり方で、たとえば詐欺師は、携帯電話会社で時給10ドルで働いている従業員に1000ドルといった賄賂を渡すのです。
そしてこの従業員を説得して顧客の情報を売ってもらいます。詐欺師はこうして1000ドルのお金をかけてSIMスワップ詐欺を行います。たとえ詐欺が10回中9回失敗したとしても、10回目のトライで100万ドルを盗めたりするので、詐欺師にとってはやる価値があるのです。
これが詐欺師の仕事のやり方で、大抵の場合は詐欺のために情報を売ってもらう人、つまりインサイダーを会社に配置しているのです。
金融リテラシー教育の重要性
自分の周囲に頭の良い人達がいるということは個人的な資産だと思っています。たとえば私のよき友人であるSahil Bloom氏は、私のビジネスアドバイザーのような存在でもあり、いつも私の金融人生を良い方向に導いてくれます。
我々は教育に情熱を持っていて、人々に金融教育を行い、リテラシーを持ってもらうことを目指しています。他の国々の状況についてはわかりませんが、アメリカに関して言えば、金融リテラシーは全くといっていいほど注目されていません。教えるほど重要視されていないのです。
私は何世紀も前にアメリカが行った戦争について学びましたし、その時学んだ知識というのは今でも覚えています。しかし小切手の使い方やクレジットカードの使い方については誰も教えてくれませんでした。こういったシンプルな経済の知識こそが必要な知識であり、教えるべき知識だと思います。
たとえばお金に関するリテラシーや投資の仕方などの知識を教えてくれる学校に1年でも通えば、将来が大いに変わるかもしれません。実際に「株の買い方」を教えてもらえれば、個人的な経済状況が変わるかもしれません。
また税金についても、皆理解しているはずのことなのに、実は誰も理解していません。
金融リテラシー基礎入門というのは、我々の教育システムの中心カリキュラムの一部であるべきです。これは非常に明白な事実だと思っています。
金融リテラシーに関する教育を少しでも受けたことのある人はより多くの貯蓄があってより良い財政状態の人生を歩んでいるということは、統計情報からも分かります。
銀行はショート、Bitcoinはロング
Bitcoinは犯罪行為に使われていると言われています。しかし一番犯罪行為に使われているものは米ドルです。そして銀行家たちはこのことをよく知っています。だからこそフィンセン文書の事件のようなニュースも私にとっては「空は青い」と言われているようなもので、何も驚くようなことではありませんでした。
銀行は犯罪に関与しています。政府も同様です。アンソニー・ポンプリアーノ氏も以前述べているように、Bitcoinersたちが「銀行はショート、Bitcoinはロング」と言っているのには理由があるのです。
現在の銀行は腐敗しています。銀行システム全体の構造というのは、富裕層を富ませて貧乏人を押さえつけ、貧富の差別をするようにできてしまっているのです。
SNSはトレードに影響するか
私はトレーダーとして、自分で分析を行い、そして自分で判断をしています。したがってSNSに掲載されているものに影響をうけることはありません。
Twitterは情報を素早く見つけるのに適したSNSです。しかしTwitterに限らず、どのSNSにも言えることは、良い情報と悪い情報を見分ける必要があるということです。
だからこそ、Twitter上でトレーダーのコミュニティに参加する前に、基礎レベルの知識を習得しておくことをお勧めします。トレーディングの方法を分かっていないという人は、その方法を学ぶためにTwitterに行くべきではないと思います。
方法がわかっていないままでTwitterに行けば、ほとんどの人は資産に関する知識もなければ計画もなく、そして説明責任も果たされないままで何かを買ってしまい、そして結局は損をしてしまうことになるからです。
私はTwitterを通して自分のニュースレターやポッドキャストを成功させることができましたので、そういった面では大変恵まれていました。このようなことも含めて、暗号通貨業界の一員として活動してこれたのは大変素晴らしいことです。
しかし、この業界にはじめて参入した時のこともよく覚えています。その時は周囲で一体何が起こっているのか全くわからず、そんな中で自分の進路をみつけて上手く切り抜けていくということは本当に大変でした。
避けられない派閥闘争
現在のアメリカは「王国の崩壊」のように見えます。これは政治が国に影響を及ぼしている限り避けることはできません。しかもこれはまるでサーカスのように滑稽な見せ物で、だからこそとても熱中することができません。
人間の核心には部族性というものが生まれつき備わっていると思います。人間は集団的生き物であり、自分と同じ属性をもつ集団と関わりを持ちたがります。
たとえば同じ宗教、同じ国の国民や同じ国民性を分かち合う人、同じスポーツチームの支持者、同じ政治的見解を持つ団体、といった人々と付き合いたがります。
この性質からくる問題点をまさに象徴している例が二大政党制だと言えます。どちらの言い分にも100%賛成することはできません。中絶に反対で一律の税率に賛成であれば、共和党支持ということになります。
しかしそういった考えを持ちつつも、移民を認めるべきという考えを同時に持つこともありえます。このように、認知的不協和や歪みが発生するのです。
しかも2020年までは、どちらの政党にも上手く収まらないトランプのような大統領もいました。共和党員は皆、党の政策の原則とは対照的なトランプの政策に染まってしまいました。
事実に基づかない意見が蔓延するディストピア
我々は問題に対して、建設的な議論をしていく必要があります。私は事実と教育に基づいた自分の意見を持っている人や、教育された感覚を持ち合わせている人を尊敬しています。たとえ自分とは対極的な意見を持っている人がいたとしても、正当な理由と説明があれば尊敬します。
しかし我々の生きる世界では、事実に基づかない意見が蔓延しています。しかもさらに危険なのは、こういった意見を、言った本人は事実だと思っているということです。
このようなことが、我々を資本主義の存在しない破綻した経済へと突き落とすのです。現在の我々の世界にあるのは「企業のためだけの福祉」そして「お金持ちしか救わない社会主義」です。
お金持ちは社会主義の悪さを説く一方で、自分たちが救済措置やフリーマネーからの恩恵を受けているのです。
我々の世界にはもはや合理的な言説はありません。我々は事実で構成されていた世界の、その先にあるディストピア的世界にいます。この世界では誰も彼もが何でも言いたい放題で、聴衆は言われたことを信じてしまいます。
フェイクニュースは本物のニュースの何倍もの速さで読まれ、ソーシャルメディア上ではどんなことを唱えることもできます。そして十分な数の人にリツイートされれば、それが事実になるのです。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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