2020年にBitcoinファンドを立ち上げたアメリカの投資会社「SkyBridge Capital」の創業者であるアンソニー・スカラムッチ氏(Anthony Scaramucci)にインタビューさせていただきました。スカラムッチ氏はウォール街で30年以上のキャリアを持ち、かつてはアメリカホワイトハウスの広報部長に指名された経歴もあります。インタビューでは、Bitcoinに対する考え方や、世間を騒がせたロビンフッド事件、トランプ前大統領について思うことなどについてお話を聞かせていただきました。
インタビュー日 : 2021年2月3日
トランプ前大統領の下で働いた経験と後悔
私は以前、共和党のための資金調達の仕事をしていました。この仕事はとても気に入っていました。私は社会人生活を通して、ずっと何かしらの形で政治に関わっていました。しかし、自分が政治に対して積極的になる日がくるとは思っていませんでした。
トランプ氏が大統領選に勝利した時、私はジェブ・ブッシュ氏と一緒でした。ジェブ・ブッシュ氏は結局大統領選からは撤退しました。
トランプ氏とは以前からの知り合いで、選挙戦の時期は1年ほどの彼の下で働いていました。彼は大統領の役を引き継ぐにあたって、その準備のためのチームの一員に私を指名しました。我々は選挙戦に勝利したトランプ氏に対して、大きな期待を抱いていました。
しかし残念なことに、彼の行動にはよくない徴候が垣間見えていました。これらの徴候について無視したことを私は今でも後悔しています。たとえば、彼がメキシコ人コミュニティに対して言ったことや、イスラム教徒の入国を禁止したことは、決して無視するべきではありませんでした。
ところが当時の私は、自分の行っていることは共和党への忠誠的な行動であると信じていたのです。
その後トランプ氏に頼まれてホワイトハウスで彼のために働くことになりましたが、失態を犯しクビになってしまいました。しかし私にとっては、クビになっても何の問題もありませんでした。むしろそれでいいとさえ思いました。
私がいつも若い人たちに教えていることは、何か間違いを犯してしまった時や、クビになるほどの失態を犯してしまった時は、その失敗とそれに伴う責任と向き合うようにしなさいということです。私もそのようにして来ました。
一連の発言について
トランプ氏のことを肯定的に捉えて支持する努力をずっと続けてきましたが、うまくいきませんでした。
彼は移民の家族を分離させるような政策をとったり、諜報機関を糾弾したり、マスコミを国民の敵呼ばわりしたりしました。
さらには白人でない4人の女性下院議員のことを「分隊」と差別しました。そして彼女らに「自分の来たところに戻って、犯罪にまみれた場所の修復に勤しむべきだ」と人種差別この上極まりないことを言いました。
弾劾裁判の行方
自分が間違っていたことに気がついたのは2年ほど前です。トランプ氏の行動をみて、彼を支持するべきではなかったということに気がつきました。大統領として在籍していた間に、彼は弾劾裁判に送られました。そして昨年、彼のコロナ政策は悲惨でした。
彼の下で働いた日々は、私にとっては痛みを伴う長い旅でした。私だけでなく私の家庭も混乱に陥ってしまい、妻とは離婚しそうになったくらいでした。
私が2年前に感じた、彼を支持するべきではなかったという勘は正しかったことが証明されました。
彼は1度のみならず2度も弾劾裁判にかけられました。まだ支持者はいるものの、彼の支持率は大幅に下落し、20%~30%をさまよっています。弾劾裁判の結果はみものだと思います。
トランプに投票した有権者
私は自分の経験から多くのことを学びました。おかげでとても謙虚な気持ちになることができました。そして結果として、より精神的な観点から物事を考えられるようになりました。
アメリカは現在まさしく危機に直面しています。多くの人々が社会に対する不満を抱いています。7400万人もの人々がトランプ氏に投票しました。この事実は重く受け止める必要があると思います。
このような人々に手をさしのべる方法を考えなければなりません。彼らの願いを叶えてくれるような、もっと普通の候補者と繋がれるようにしていかなければいけないと思います。私はこういったことに今後も貢献していきたいです。
トランプ氏が再選されなかったことには安堵しています。彼がもう4年間大統領を務めようものなら、さらに大きな被害がもたらされたと思います。彼が選ばれなくてよかったです。
コロナには科学的な対策を
政府の役割はいたってシンプルだと思います。安全を保証すること、外国からの侵略されるのを防ぐこと、雇用機会を創出すること、そして人々の仕事を妨げるような官僚主義がないようにすることです。
もう1つ大事なのは、たとえばパンデミックといった国際的な危機が発生した場合に、公衆衛生や安全部門の専門家と連携して対応をとるということです。
トランプ氏の支持者が何と言おうとも、トランプ政権の経済はほどんどオバマ政権の延長線上にあっただけです。
彼の支持者にとっては耳の痛い話かもしれませんが、彼の悲惨なコロナ対策により、1300万人もの国民が失業し、40万人以上の国民が亡くなり、そして1000万人以上もの国民がウイルスに感染しました。
感染者数は減りつつあるとはいえ、彼がいなくなってくれて本当によかったと思わざるをえません。
少なくともオバマ政権では科学に依拠した政策をとっていましたし、戦略を立てる際には専門家の意見を聞いていました。
どんなビジネスをするにしても、一番大切な前提となってくるのは健康と安全です。パンデミックが一刻も早く収束し、家族から引き離されたり、隔離生活を余儀なくされたりする日々が早く終焉を迎えることを心から願っています。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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