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「白昼強盗と呼ばれた窓税」英国コメディアン ドミニク・フリスビー氏 インタビュー ②

ドミニク・フリスビー氏(Dominic Frisby)はロンドン出身のファイナンシャルライター、コメディアンとして活動されており、投資や税金問題について扱った数々の著作を出版しています。「死と税は避けられない」というのがフリズビー氏の主張です。また彼は、現代人が生きているのは、戦後の奴隷制の時代であると語ります。インタビューでは、税制度の社会でのあり方ついてお話していただきました。

インタビュー日 : 2021年3月17日

Bitcoinとの出会い

私は金融コラムを書き始めたことがきっかけでBitcoinとの出会いを果たしました。「Bitcoinについて調べてみたほうがいい」といった内容のメールをもらうこともよくありました。また中にはBitcoinを送金してくれた人もいました。

ある人は私に176BTCを送ってくれました。しかし残念ながら私はハッキング被害に遭ってしまい、その時に受け取ったBitcoinは盗まれてしまいました。2014年のことだったのですが、当時の私はインターネットのセキュリティをきちんと確保できていなかったのです。

Bitcoinはその時よりもはるかに高価になりました。しかしたとえ今日のBitcoin価格でも、誰もがBitcoinについて理解してそして少しでも保有しておくべきだと思います。Bitcoinは法定通貨と共存していくようになると私は考えています。

私は、例えば近所に牛乳を買いにいくような時なんかはまだ法定通貨を使いますが、貯金をしたり、または国際送金を行ったりする際にはBitcoinを使用します。

デジタル経済に対応できない税制

現行の税制というのは物理的な経済を中心に設計されたものなので、グローバル化したデジタル経済にはもはや対応できていません。確かに、その昔、富は物理的なものでした。富として挙げられるものは、例えば土地や鉱山や農場、そして工場などでした。

しかし今となっては、Bitcoin、データ、商標、知的財産、インターネット企業の株式、といったように、富はデジタル化しています。大部分の富はもうデジタル経済の中に存在していると言っていいでしょう。 

例えば多額の税金を課しているような国家があれば、企業は「我々は他の国を拠点にします」と言ってもともとの国家に収める税金をほぼゼロにするでしょう。

グーグル、アップル、アマゾン、それからバイナンスなどように、各国に拠点を置いている企業もあります。これらの企業というのはいずれも税金の低い地域を選んで拠点を設置しています。企業はこのように、あの手この手を使って税金をあまり払わなくていいようにしているのです。

しかし一般の労働者というのは企業とは異なり、基本的に1つの国に居住しているため、このような選択肢はありません。したがってより多くの税金を支払うことになってしまうのです。

世界最古の納税記録

現在発見されている最古の文字の中に、7~8000年前の古代メソポタミアの石板に刻まれている文字があります。実はこの石板に刻まれていたのは納税記録です。文字の一番初めの用途は納税記録をつけることだったのです。

このことから、税金は文明と同じくらい古い歴史を持っているということが分かります。また、歴史家が社会の歴史について研究する時は、よく納税記録を参照します。これらの記録は比較的保存状態がいい傾向にあるからです。

狩猟採集社会においても、自分の所属するより大きな集団に対する義務のような概念が存在していたのではないかと思います。

しかし文明が形成されて成長しはじめたばかりの頃というのは、税金は必ずしもお金で支払われていたわけではありません。なぜかと言えば、当時の一般人はお金を持っていなかったからです。貨幣のかわりに、労働力の提供や作物の提供という形で納税が行われていました。

文字を習得した徴税人

最古のお金というのは、円盤や円錐のような形をした小さな粘土片で、それぞれ羊や麦を表していました。

これらのお金は土器の中で焼かれて作られ、借金が返ってくるまでその代わりとして手元で保存されていたのです。どういうことかと言うと、決済が終わると土器が叩き割られて、これが債務が決済されたということを象徴するのです。

このように、初期の頃のお金は、いわば小さなトークンのようなものだったのです。初期のブロックチェーンのようなものだと言ってもいいかもしれません。

その後は土器の中で粘土片を焼く方法ではなく、粘土に表したいものの絵を刻むという方法が発見されたため、その方法が使用されるようになりました。こうして文字によるシステムが誕生したというわけです。

このように、技術と文字、お金、納税記録の間の関係というのは大変古い時代から存在していました。文字を習得した人々は、scribes(書記、筆記者、あるいは律法学者)というように呼ばれていました。この人たちが、最初の徴税人だったというわけです。

政府は巨大化しすぎているか 

現代の政府は大きくなりすぎていると私は思います。それに税制も時代遅れですし、法定通貨システムも崩壊しています。

しかも日本は欧米と比べるとずっと長い期間、金利を抑えて通貨価値を低く保ってきました。通貨の価値をこのように操作することで負債の相殺を目指すというゲームをを長い間ずっとしている状況です。

これは早かれ遅かれ悪い結果を招くでしょう。おまけに、Bitcoinが法定通貨に終焉が訪れるのをより加速させている状況です。

『白昼強盗』と呼ばれた窓税

「税金は文明社会の代償である」と考える人がいる一方で、「税金は窃盗そのものである」と考えている人もいます。このような理由から私は最新作の著書にこの題名を付けました。この2つの主張はどちらも間違っていないと思いますが、全ては課税の度合いと課税の仕方によると思います。

極端な例だと、北朝鮮なんかでは人々は100%課税されています。誰も自分の労働力を所有していません。全員が国家のために働いていますが、その対価としてお金を受け取ることはありません。

しかし一方で、無政府状態であれば自分の労働力は100%自分のものです。誰にも税金はとられません。

Daylight Robbery (白昼強盗)という表現は窃盗を連想させますが、実は16~18世紀にイギリスをはじめとするヨーロッパ各地で行われていた「窓税(家の窓の数に基づく固定資産税でした)」が起源となっている表現です。

家に窓があると「窓税」がとられるということで、人々は徴税を免れるために窓を塞ぎました。当時は電灯もガス灯もまだなかったため、人々は主に明かりをとるのにろうそくを使用していました。

したがって、昼間の光がなくなってしまうのは大きな問題ではあったものの、税を払いたくないという人々が窓を塞ぐという行為に出たため、結果として日の光が失われてしまったのです。

このような背景から「窓税」は「Daylight Robbery (日の光のどろぼう)」という名前で知られているのです。

現代はもう「窓税」はありません。しかしそれでも、我々のお金は強制的に奪われ続けています。もしも税金を払わなければ、刑務所行きになってしまいます。だから「税金は窃盗」と言われるというわけです。

ブロックチェーンと税制

ブロックチェーン技術が課税や経済の規制に使われるという可能性は、どんどん現実的なものとなってきています。これをよく示唆しているのが中央銀行の発行するデジタル通貨や、中央銀行のウォレット等の登場だと思います。

そうなってくると、税から逃れることは今までよりもはるかに困難となります。つまり我々の自由の度合いも、それだけ失われていくということです。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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