「史上最大の経済危機」の著者であるドイツのエコノミスト、マーク・フリードリヒ氏(Marc Friedrich)に再びインタビューさせていただきました。今回、フリードリヒ氏は新たに「史上最大のチャンス(The Biggest Chance of All Times)」という新著を刊行しました。パンデミックが経済にどのようなダメージを与えたか、またこの経済危機がどうしてチャンスなのかといったことについてお伺いすることができました。
インタビュー日 : 2021年3月22日
- マーク・フリードリヒ氏(全インタビュー記事)
- 新著について
- システムが崩壊していく中で何に投資すべきか
- 政府とシステムの崩壊
- 政治はどう変わるべきか
- 人類に欠けているものとは
- パンデミックを乗り切る最高のチャンスはBitcoin?
- 危機は重要な存在
- 人類の愚かさと可能性
- システムの腐敗でダメージを受けるのは誰か
- ドイツを待ち受ける暗い未来
- ドイツ以外の国々にも迫る危機
- コロナで加速するEU経済の分断
- 欧州委員長選出の不透明性
- インフレ進行で貧困化する核家族
- 変革が必要なドイツの政治体制
- 実質インフレ率の衝撃
- Bitcoinを恐れ始めたECB
- Bitcoinについて書くと批判されるワケ
- Bitcoinとその他の実物資産
- Youtubeの新シリーズ「コロナ禍の投資」
マーク・フリードリヒ氏(全インタビュー記事)
新著について
新著の一つ前に『The Biggest Crash of All Times(史上最大の経済危機)』というタイトルの著作を出しています。そして今回出した新著は『The Biggest Chance of All Times(史上最大のチャンス)』というタイトルです。
すべての危機はチャンスでもあります。私が人々に伝えたかったのは、将来に向けての展望をはじめとする、様々なポジティブなことです。将来に向けて、楽しみだと思えるようなことを提供したいと思いました。
この新型コロナウィルス感染症によって引き起こされたパンデミックの危機の中で、私は前向きなことを考えはじめました。たとえばこの危機の中で人々が達成できることや、隠された可能性やチャンスはどこにあるのか、といったことなどです。
現在の我々の通貨システムは完全に崩壊していますし、同じように政治システムも完全に崩壊しています。今こそ、この危機を生涯最大のチャンスだと捉え、投資するべきです。政治家は人々をロックダウンによって閉じ込めて監視する以外に手段はないようです。すべてが腐敗している我々のシステムは、もはや人道主義的なシステムだとは言えません。
システムが崩壊していく中で何に投資すべきか
新著では様々な投資の選択肢を紹介しています。それから通貨システムの話だけではなく、政治システム、新しい社会システムの可能性についても紹介しています。
今はBitcoinに投資をするチャンスでもあります。なぜなら我々の通貨システムにはいずれ全体的な崩壊が訪れるからです。あらゆる機関に対する信頼も政治家に対する信頼も粉々に崩れて消え去ります。
その時には、誰にも止めることのできないパラダイムシフトが起こるでしょう。中央銀行のお金を印刷する機能やロックダウンなんかでは到底とめられないでしょう。
人々は自分のお金や投資方法について新たな決断をしていかなければなりません。正しい決断をすればすべてが変わってくるでしょう。Bitcoinは、我々の法定通貨システムよりもはるかに優れていて強力です。したがってBitcoinはいずれすべてを吸い込んでしまうと思います。
政府とシステムの崩壊
日本も含めた色々な国において、政治家は国民への共感を得られなくなってきています。人々は抑制されて、車輪を回しつづけるハムスターとなることを強いられています。現在のシステムは、死ぬまで働かされても仕事の対価も老後の年金すらも見えないような仕組みになっています。
現在のシステムには様々な疑問があります。例えばシステムのゴールはどこにあって、政治家はこのシステムで一体どこへ向かおうとしているのか、そして今日における人生の意味は何なのか、といったことなどです。
人々は死ぬまでひたすら働き続けますが、人生の意味はただ働き続け、そして働くためにエネルギーを消費し続けることではないはずです。人生がこのような奴隷サイクルであってはいけないと思います。
自分の人生を振り返った時に「何かを達成した」と思えたり「偉大なことを成し遂げられた有意義な一生だった」と言えるような人生を送りたいものです。現在の危機的状況こそ、この崩壊しかけているシステムから抜け出す最大のチャンスです。このチャンスを活かすことで、我々は再び自由を獲得できると考えています。
政治はどう変わるべきか
政治のシステムに関して言えば、国民があらゆることに対する決定権・投票権をもつような直接民主主義が必要だと思います。国民による決定が必要な問題には様々なものがあります。例えば幼稚園を建設するべきか、あるいは橋を建設するべきか、といったような問題もあれば、新しい政治プログラムが実行されるべきか、というような問題もあります。
政治家に関して言えば、権力が制限されるべきだと思います。それから政治家が実際に仕事に就く前に取得しなければならない資格が定められるべきだと思います。政治家の選び方については、国民が直接投票して選ぶような仕組みが望ましいです。
そして最後に、もしも政治家が重大な間違いを犯した場合は、自分自身で責任を負い過ちに対する償いを支払うべきだと思います。現在の政治家は、例えばミスをして何百万ドルものお金を無駄にするようなことがあっても、まるでそれが大したことではないかのように振る舞っています。
ドイツのブランデンブルク州のベルリン空港についての失敗も、政治家による重大なミスのいい例です。2011年に開港する予定だったベルリン空港は、当初は国際的なハブ空港となることを想定して作られました。
ところがこの空港のインフラ整備には、国民のお金が大量にかかり、しかも計画の内容はあまりにもひどいものでした。したがって国民からも鉄道会社や他の空港といった機関からも、苦情が寄せられました。
現在この空港にはほとんど旅行者がいません。このような大失敗が起こったにも関わらず、誰も何の罪にも問われず、誰も罰せらませんでした。このようなことは、変えていかなければなりません。個人や民間企業が自らの過ちに対する代償を支払わなければならないのと同じように、政治家もそうあるべきです。
人類に欠けているものとは
我々の現在生きているシステム、そして我々の政治に欠けているものは、知能だと思います。政治家をサポートするAIが必要だと思っています。人工知能は数学的思考やプログラミングを通じて、社会にとって有用な結果を算出して導きだすことができます。
AIは政治や教育の長期的な安定を達成することができますし、環境により悪影響の少ない対策をサポートすることができます。国民はこれらのことをふまえて、AIを選択するべきです。現在ほとんどの政治家は、国民へのアピールを成功させて当選したいという欲望にかられて短期的な計画に基づいて行動しています。AIにはこういった欲望はありません。
AIに決定をゆだねることで、我々にとって論理的に優れたシステムを手にいれることが目標です。我々の政治システムの弱点となっているのは我々の人間性です。人類は腐敗しているのです。
現在の社会に関しては、身の周りで何が起こっているのかということを考えれば、いかに歪んでいて問題があるかということが分かります。我々は互いに争い続けることで環境を破壊してきました。互いに争い戦争やテロを行うような種族を、私は人間以外に知りません。
パンデミックを乗り切る最高のチャンスはBitcoin?
Bitcoinは政府や中央銀行とは全くの別物です。Bitcoinはデフレ的で、希少価値があるからです。Bitcoinは購買力を蓄える絶好の媒体であり、そして現在の法定通貨システムや政治家に対する最高の反抗勢力です。
Bitcoinや貴金属やマイニング事業などに投資する人は、購買力を維持するチャンスを掴んだ人です。今賢い投資を行こなった人は、将来富のピラミッドの頂点に立つことができるでしょう。現在の富のピラミッドは、今時点で下層にいる人々や中間層にいる人々にとって有利となるようにひっくり返る可能性があるということです。
危機は重要な存在
サイクルにおける危機というのは、一連のサイクルを完了させるものです。だからこそ危機というのは重要な存在なのです。一旦危機が訪れてから次の危機が訪れるまでに、我々は自身の認識のレベルを高めることができます。
認識に関して言うと、我々は自分の文化圏に存在する馬鹿げた迷信を乗り越えていかなければなりません。つまり人を判断する時は、何処からきたのかということではなく、その人の美徳や行動に基づいて判断をするべきだということです。
ユダヤ人だからどうとか、白人だからどうとかは、関係のないことです。傲慢で自己中心的な人なのか、あるいは良い人なのか、重要なのはこれだけです。アジア人だろうとヨーロッパ人だろうと、女性だろうと男性だろうと、どんな宗教だろうと、こういったことは個人の人となりとは一切関係ありません。
人類の愚かさと可能性
人類は愚かな存在です。紛争地域を見てみると、いわゆる宗教指導者たちが人々の間にプロパガンダを広め、憎しみや分離を生み出しています。
若い世代は教育が鍵だと認識していて注目もしていますが、これはごく限定的です。つまり教育が実施されている規模も、そして行われている教育自体も不十分なのです。
権力者やいわゆるリーダーと呼ばれるたちは、人々に教育を受けさせたくないのだと思います。なぜなら、自分たちの時代遅れで保守主義的なやり方を貫き通したいからです。また、現代の日常にはびこっている腐敗や貪欲さも大きな問題となっています。
純粋な宗教はどれも人生の重要性について考えるもので、高潔な人生を生きる上で何が許され、何が許されないのかを説いています。例えば、どの宗教にも大罪という概念があります。私にとっては大変興味深いことです。
有名な7つの大罪と言えば、傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、淫蕩、貪食、そして怠惰です。しかし解釈する人々は、自分にとって好都合なように言葉を付け加えたりして、解釈をねじ曲げてしまっています。
しかしそれでも世界各地には大罪の概念のように、人類が平和に暮らすための共通の規範や法律が確かに存在してきました。共通の法律は人類が平和に共存するための基礎となるものです。我々は今こそこういったものを振り返らなければばならないと思います。
さらに一歩踏み込んだことを言うと、国境は必要ないと思っています。なぜなら我々は分かれている状態よりも、一緒にいたほうがより多くのことを達成できるからです。
例えば中国は、約14億人もの人口を抱える広大で多様性に富んだ国です。その経済成長には、目を見張るものがあります。我々人類が国境という垣根を持たず、一丸となってこのような成長を成し遂げられたら素晴らしいことだと思います。
システムの腐敗でダメージを受けるのは誰か
システムの腐敗というのは常に、最も弱い者を直撃します。我々の通貨システムはもう壊れていて、システムを長く維持するためだけに毎年の負債を増やさなければならないという状況です。民主的で公平で人道的な、新しい通貨システムが必要です。現在の西洋は戦争や紛争状態でこそないものの、その通貨システムはまさに現代的奴隷制です。
私は著書の中で歴史上のシステムの色々なサイクルについて紹介しています。システムのサイクルを理解すれば、未来を予測することができます。例えば古代ローマ帝国ではハイパーインフレによって通貨システムが崩壊し、これがローマのシステムのサイクルの終わりとなりました。
ローマ帝国には、健全な通貨システムがありました。アウレウスやソリダスと呼ばれる金貨を使ったシステムです。しかし帝国が拡大すればするほどシステムは腐敗して崩壊していきました。
ローマ帝国の約2割は、当時のいわゆる社会福祉である「パンとサーカス」つまり権力者から無償で与えられる食料と娯楽に依存していました。たとえ高くついても、食料と娯楽を人々に与えなければ革命が起こるということを帝国の支配者は知っていたのです。
だからこそローマ帝国は、パンとサーカスを人々に与えつづけるしかありませんでした。そして最終的にそれが出来なくなった時に、帝国は崩壊してしまったのです。
これと同じようなことが、まさに現在の通貨システムにも起ころうとしています。政治家たちはユニバーサル・ベーシックインカムについて、そしてこの静かで暗い時代に人々を楽しませる安価な手段である「ネットフリックス・アンド・チル(Netflix & chill)」について話しています。
現在の政治家たちはパンデミックを口実に、ロックダウンにより我々を閉じ込め、お金を増刷し、そしてさらに課税しようとしています。彼らはシステムを維持するために、ロックダウン期間をさらに延長しようとしています。
これらはすべて愚行ですが、彼らは他にいい手段を知らないのです。しかし一つ忘れてはいけないのは、お金の印刷というのはパンデミックの危機よりもずっと以前からなされていたことだという事実です。
現在の貨幣システム、つまり何もないところからお金が生み出されるという仕組みは、一つの投機的局面からまた次の局面へとどんどんつながっていくようになっています。現在我々はこのバブルという投機的局面にいます。このバブルがはじた時、万事休すとなるでしょう。
ドイツを待ち受ける暗い未来
ドイツはデフォルトに陥ると考えています。なぜなら現在のドイツは、今までで類を見ないほど大量にお金を印刷しているからです。
現在のドイツは強く見えるかもしれませんが、これもまたサイクルの一環に過ぎません。ドイツには非常に暗い未来が待ち受けています。我々があらゆる可能性をふいにしてしまったからです。
我々の本来持っていた富は結局無能な政治家たちが行ってきた数々の愚行によってすべて浪費されてしまったのです。彼らは社会的なインフラや、経済的なインフラに一切投資してきませんでした。
我々は未だに、充実したインターネットのインフラを持っていません。インターネットでさえ充実していないのに、物理的な設備の充実など到底望めません。今の我々にあるのは、二流で時代遅れのものばかりです。
たとえば、鉄道用の橋、それから電車といったインフラは、平均しておよそ100年前のものです。道路、橋、学校、幼稚園、それにより良いインターネットといったものが必要です。
ドイツ以外の国々にも迫る危機
ドイツだけではなく、北欧全体、そしてG20諸国にも、この先非常に暗い時代が待ち受けていると思います。これは人口統計を見れば分かることです。
人口動態の変化は、ドイツでも日本でも、そしてほとんどのヨーロッパ諸国でも起こっています。少子化が進行する一方で、人々の寿命はのびました。しかし我々は国に尽くしてくれた高齢者に恩返しする余裕もありません。
今回の危機で我々は既に、直近の危機3回分をまとめたよりも多くのお金を刷りました。新型コロナウイルスによって引き起こされたパンデミックの危機は、政治家がいかに脆弱で無能な存在であるかということを教えてくれました。また、我々が信用負債の死のスパイラルに陥っているということも教えてくれました。
ドルは現在まだ使用されており、信用されている通貨です。しかしこのドルもいつか崩壊するだろうと私は予想しています。
コロナで加速するEU経済の分断
パンデミックはすぐには終わらないと思います。しかも政治家たちはパンデミックを口実に、議会を通さず国民の意見も聞かず統治ができるということにとても魅力を感じているようです。これは非常に危険な特権だと思います。今回のパンデミックで、違憲判決が下されたケースがいくつかありました。
例えばイタリアでは、ECBの前総裁であるマリオ・ドラギ氏が選挙プロセスを経ずにイタリアの新首相に就任しました。選挙なしで就任したので、これはれっきとした共産主義、あるいはファシズムだと言えるでしょう。そしてドイツでも現在、議会を通さずに政治的決定が行われています。
EUが設立される前にマーストリヒト条約というものがありました。この条約の中でユーロという単一通貨を作ることが合意され、これがEUのバックボーンとなっています。
しかしこの条約もパンデミックのどさくさに紛れて破られました。イタリアのコンテ元首相がパンデミックを「経済的・社会的緊急事態」だとして経済支援を呼びかけ、合計5,000億ユーロの緊急融資を行う「コロナ・ボンド」が合意されました。
この一件で、北欧諸国はEUに裏切られたと感じています。苦境に立たされている南欧諸国が、資金を賢く使ってきっちりと債務の返済をしてくれるとは思えないからです。債務が返済されないにも関わらず、ECBは南欧諸国に約束した融資のためにさらにお金を印刷し続けているという状況なのです。
現在の状況は、我々の民主主義に対する脅威です。我々は今、非常に社会主義的な問題を抱えています。これは非常に危険な道です。政治家たちは,国会を通さなくても自分たちのやりたいことができると思っています。
選挙もしなくていい、お金をもっと刷ってもいい、そしてもっと増税してもいいと思っています。これらの政策を全てパンデミックという状況のせいにし、正当化することができるからです。
欧州委員長選出の不透明性
フォン・デア・ライエン氏というドイツの政治家が欧州委員長に選出されましたが、彼女は委員長には適していないと思います。また、彼女がどのようにして選出されたかという点も問題になっていて、テレビでもニュースでも声を挙げる人が後を絶たない状況です。
フォン・デア・ライエン氏は正式に委員長に選出されてはいない、という声が挙げられています。EU委員長の選挙には2人の候補者がいました。マンフレート・ウェーバー氏とフォン・デア・ライエン氏です。ウェーバー氏は正攻法で当選しましたが、フランスがウェーバー氏を選出したくないと拒絶したのです。
そして選挙手続きを経ずにフォン・デア・ライエン氏を選出し、委員長の座に就任させました。これはイタリアの首相が選出された時と同じで、共産主義的であり、民主主義に反しています。
インフレ進行で貧困化する核家族
私の父は家を建てたり修繕したりする便利屋でした。父の収入は月1000ユーロ程度でしたが、当時の稼ぎで我々家族を養い、アパートを購入し、そして休日は色々な場所へ連れていってくれました。本当に驚くべきことです。
しかし今ではたとえ月に5000ユーロ稼いだとしても、突出したお金持ちにはなれません。高い家賃や食費、そして様々なサービスにかかるお金のことを考えれば、たちまちお金は消えてしまいます。
そして忘れてはいけないのが、所得税も払わなければならないということです。ドイツは、世界の中でも最も所得税が高い国の1つで、税率は最大で40%にもなります。
1980年代、子供が2人いる核家族の家庭では片方の親だけが働きに出れば家族を養えました。通常は父親が働きに出ていました。
父親が働いて家族を養い、家といった財産を購入し、そして年に2、3回は家族旅行に行く、という生活が可能でした。しかもこれらに加えて老後の貯金さえも可能でした。40年前の豊な生活とはこのような形でした。
現在の家族はというと、まず両親は共働きをしなければいけません。そして共働きをした上でなお、子供を持つ余裕があるかどうかということについて考えなければなりません。このような状況なので、人口問題が発生しています。つまり、インフレが人口の健全な増加を妨げているのです。
しっかり職にも就いている高学歴な大人が「子供はお金がかかりすぎる」と言うのは信じがたいことです。しかも、たとえ子供がいなくても、まともな生活をするには四六時中働き続けなければなりません。
例えば欧米で2人の子供に恵まれた両親が、自分たちの勤務地に近い大都市の郊外にマンションを購入したい、と考えていたとします。そうすると、マンションの購入がこの夫婦にとっての最終目標になります。
この家族は旅行になんて滅多に行けないでしょう。さらには、下がり続ける通貨の価値や無利子政策、それにインフレの進行といった要素が相まって、老後のための貯蓄をする余裕もないでしょう。
通貨システムは放物線を描くように動き、最終的には貧困を生み出します。だからこそ人々はBitcoinといったものに投資をして自由を得なければなりません。システムは超富裕層の人にとってしか有利に働かないのです。
変革が必要なドイツの政治体制
人類に訪れた危機は全て進歩のためだったと言っていいでしょう。第二次世界大戦後のドイツの話をします。戦争が終わった後のドイツは壊滅的な状況でした。ほとんどの建物が爆撃を受け、あらゆるものが再構築を必要としていました。
当時は誰もドイツに未来があるとは思っていなかったでしょう。無意味な戦争のために何百万人もの人々の命が失われました。そして男性の大半が亡くなったのです。
しかし戦後の壊滅的な状況を克服した後、ドイツは最も繁栄した時代を迎え、世界で最も豊な国の一つとなりました。戦争でぼろぼろになった街や建物からは予想すらできない繁栄です。当時の誰にも信じられないことでしょう。
ところが現在、我々は再び繁栄の時代を終えようとしています。我々の通貨システムは大惨事に向かいつつあります。そして日本をはじめとする多くの国々が、ドイツと同じ状況にあります。
私が政治体制の変化を望んでいるのは、現在の体制があまりにも耐え難いものだからです。白髪が増えてしまうほど、本当に耐え難いです。
変革には困難がつきもので、改革による被害を被る人もたくさん出てくると思います。しかしそれでも、最終的にはよい結果が待っていることを切に願っています。
政府が国民のために政治をしている限り、右翼的な政治体制でも左翼的な政治体制でも問題はありません。とにかく新しい政治システムが必要です。私は常に通貨システムと政治システムは進化すると信じています。
現在の議会制民主主義というのは機能していません。遅すぎるし、腐敗しきっているのです。現在ドイツの最大与党は自由主義・保守主義政党のCDU(ドイツキリスト教民主同盟)で、メルケル氏が首相を務めています。メルケル首相は2021年に16年の任期を終えてその地位を退く予定です。
ドイツでは長い間、何もかもが行き詰まっている状態です。したがって現存の政党、例えば他の野党や緑の党といったような政党とは全く異なる、新しい政党が必要だと思っています。
実質インフレ率の衝撃
世の中の公式的なインフレ率は1%前後だと皆思っています。中央銀行はインフレ率が低いということでインフレを起こそうとやっきになっています。もしもデフレを放置すると、大恐慌になってしまいます。だからこそ中央銀行が大量にお金を印刷しているというわけです。
私は本を執筆するにあたって欧米諸国の実質インフレ率を計算してみたのですが、結果をみて大変ショックを受けました。公式発表の数字よりも高いということは知っていたのですが、それにしても衝撃的でした。昨年の実質インフレ率は、ドイツだけとってみても14%という驚きの結果でした。
マイケル・セーラー氏は「資本のインフレ率は15%~20%である」と言っていましたが、彼の言葉の通りでした。アメリカの実質インフレ率はドイツよりもさらに上を行きました。これは、アメリカの経済成長がドイツよりも弱かったからです。
通貨システムと政治家の間には、不健全な依存関係があります。政治家は選挙に当選するために公約を掲げます。そうするとどうにかして公約を果たすべく、お金を用意しなければなりません。税金だけでは足りないため、公約を果たすためにはさらに借金をしなければなりません。
さて、金融システムにおける借金のキャパシティーがなくなると、銀行は政府に救済を求めるようになります。もしもここで政府が救済しなければ、通貨システムは崩壊してしまいます。したがって、通貨システムが政府よりも優位に立っている状態だとも言えます。
Bitcoinを恐れ始めたECB
欧州中央銀行(ECB)はBitcoinを恐れています。なぜならBitcoinがどれだけ強力になり、支配的になってきたかを目の当たりにしているからです。
ガンジーは「はじめに彼等は無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろう。そうして我々は勝つのだ」という言葉を残しています。
確かにBitcoinは初めの頃は無視され、そして笑われました。今はこの第3段階で、戦っているところだと思います。そして私には、その先にある勝利が見えます。
Bitcoinは政府にとって圧倒的すぎる存在でした。人々が想像していた以上に強力で、廃止することも禁止することも出来ないからです。
政府にとっての最終手段は規制を行うことであり、ブラックリストにのせ、プロパガンダを広め、人々が取引を控えるようにすることしか出来なかったのです。
Bitcoinについて書くと批判されるワケ
2020年の秋にドイツの大手ニュース雑誌「Focus」にある記事を書いたのですが、その記事の中でBitcoinの相場に関する予測をしました。
私の立てた予測というのは、数ヶ月の間に信じられないほどの強気相場が起こるというもので、これは実際に起こりました。
一部の人々はこの予測にポジティブに反応し、投資もしました。しかし一方では、批判や否定的な意見もありました。こういった反応は恐れからくるものです。
私は記事の中で、我々の生きるシステム全体に対する疑問を投げかけました。しかしこういった問いかけは人々に好まれないのです。疑問を持たずに、自分の今いる壁の中から外に出ようとしない方が快適なのです。
しかし、今進んでいるこの道をこのまま突き進んでも、行き止まりになってしいます。したがって我々は今まで「当たり前」だと思っていた生き方を変えざるを得ません。しかしこう言うとどうしても対立的に聞こえてしまいます。だからこそ人々は批判してくるのです。
Bitcoinとその他の実物資産
実物資産とは自然やアルゴリズムによって制限されているものです。例えばゴールド、シルバー、ダイヤモンド、不動産、土地、森林、美術品といったものが当てはまります。一部の株式なども実物資産に含めることができます。実物資産は自分の購買力の保険のような役割を果たすもので、必ず保有しておくべきものです。
例えばBitcoinは、コードによって制限されています。今のところBitcoinには、他の資産に比べて優位な点が1つあります。それは存在する量が正確に分かっているということです。ゴールドやシルバーといった資産は、正確にはどれくらいあるのか知ることはできません。
ゴールドには5000年以上の歴史があります。また、あらゆる中央銀行がゴールドを保有していると見て間違いないでしょう。
日本の中央銀行もゴールドを保有しているでしょうし、中国はかつてないほど大量にゴールドを購入しています。ロシアやトルコもゴールドを購入し、所有しています。我々人類には、ゴールドを富をバックアップする価値のあるものとして受け入れてきたという歴史があります。
Bitcoinはまだ実験段階なので最終的にどうなるかわかりません。もしも成功すれば私にとってはプラスです。しかしもしも成功しなければ,その時には他の選択肢を取りたいと思っています。
たった1枚のカードに全てをまとめようというのは無謀だと思います。色々なものを少しずつ所有して、ポートフォリオを分散させる必要があると思います。
Youtubeの新シリーズ「コロナ禍の投資」
私はYouTubeで「Invest during the Pandemic(コロナ禍の投資)」というシリーズを作り、サイクルや経済、政府などについて、さまざまな知識人と話をしました。
グラント・ウィリアム氏(Grant William)、プレストン・ピッシュ氏(Preston Pysh)、それにリチャード・ワーナー氏(Richard Werner)といった、ゲストの方々との会話はとても楽しいものでした。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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