世界各国の政府の中で、暗号通貨に比較的理解を示して積極的に受け入れているのはどこの国の政府でしょうか。今回は暗号通貨に友好的な国についてまとめました。よくニュースに上がってくるような国もあれば、少し意外な国もあります。ぜひご覧ください。
本記事は、Titan Miningに掲載されたサンティアゴ・シュヴァルツシュタイン氏(Santiago Schwarzstein)の「These are the most friendly (and hostile) countries for crypto」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。
暗号通貨の人気が高まるにつれ、各国の政府は暗号通貨に対して様々な立場を取るようになりました。急成長している暗号通貨産業の可能性を利用しようと歓迎する国もあれば、脅威を感じて全面的に禁止しようとする国もあります。
友好的な国々
友好的な国々の中には、マイニングを合法的なビジネスだと認める声明を出しているような国もあります。それだけにとどまらず、Bitcoinを法定通貨化した国もあります。ここでは暗号通貨産業を歓迎することを選択した国々について紹介します。
ベネズエラ
ラテンアメリカの国ベネズエラでは、電気代の安さと国内のとんでもないインフレ率が相まってBitcoinマイナーが激増しました。ベネズエラ政府はBitcoinマイニングを禁止せず、それどころかSUNACRIPと呼ばれるBitcoinマイニングとマイニング関連活動の法整備を担当する特定部門を設立しました。
以来、SUNACRIPは声明文等の公的文書を複数発表し、マイニングを合法的なビジネスとして認めるとともに、暗号通貨業界の規制を明確化するような法的枠組みを確立しました。SUNACRIPによる規制の中にはたとえば以下のようなものがあります。
- すべてのマイナーは義務として事業者登録(operation license)が必要である。
- ハードウェアメーカーを評価対象とする評価が実施され、基準を満たしたメーカーには品質保証書が付与される
- 「マイナー統合登録簿」を作成し、暗号通貨マイニング活動を行う全ての者に関連ライセンスの申請義務が課す
- SUNACRIPが運営する国営マイニングプールを創設しベネズエラ領内のマイナーに国営マイニングプール内でのマイニングを義務づけ、反則者には処罰を科す。
以上の取り組みからもわかるように、ベネズエラは暗号通貨の導入に関して先進的な国の一つとしてあげられます。政府による友好的な政策は、主にマイナーたちに利益をもたらしました。
ところが、国内で急増している暗号通貨利用に対してはあまり法整備が進んでおらず、特に規制が設けられていません。ベネズエラの人々が今後もずっと自由に暗号通貨を使用し貯蓄できるようであって欲しいと個人的には願っています。
ベネズエラ国内の事情についてもっと詳しく知りたいという方はぜひこちらの記事もご参照ください。
ラオス
ラオスの政府もまた、暗号通貨のマイニングおよび取引を認める声明文を出しました。同国の中央銀行が暗号通貨に対する警告を発した1ヶ月後のことでした。
ラオスは共産党政権の支配下にある国ですが、コロナウイルスのパンデミック後大きな打撃を受けました。国の観光産業が深刻な苦境に陥ったことにより、水力発電の消費量が減少したのです。ラオスは水力発電が盛んな国で、その電力生産量は国内需要を大きく上回っています。
ラオス政府の暗号通貨に対する姿勢の変化は、2つの要因が組み合わさった結果により起こりました。1つ目の要因は、パンデミックによる打撃からの回復が急を要したということです。そして2つ目の要因は、国内のクリーンエネルギー供給が余ってしまっていたということです。
この2つの要因によって生じてしまったラオスの苦境を解決するのに最適なソリューションが、暗号通貨のマイニングでした。そこでラオスの首相は6社の事業所に暗号通貨のマイニング事業と取引事業を開始する許可を出しました。
さらにラオス政府は国の中央銀行や国営電力会社と協力し、全てのことがスムーズに運ぶよう注意深いフォロー体勢をとりました。そしてこの国内初となる試みの成果に従って法的枠組みをさらに発展させるための作業に取り組みはじめています。
実はBitcoinマイナーとエネルギー産業が連携することにより、大規模な電力系統の均衡をとることが可能になります。詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ポルトガル
EU加盟国の中でも最西端にあるポルトガルは世界中の暗号資産投資家にとって人気の高い投資先となっており、ヨーロッパ大陸おける暗号資産業界の活動拠点とも言える場所です。
ポルトガルの税務当局は暗号通貨投資に対して懐柔策をとっており、友好的なアプローチで取り組んでいます。
たとえば暗号通貨から暗号通貨の取引であっても暗号通貨から法定通貨への取引であっても、キャピタルゲインに対する課税はありません。このキャピタルゲインへの税率0%という政策により、暗号通貨のトレーダーたちは取引の利益を存分に享受することができるのです。
また、フリーランス含む個人事業主や請負業者で、ポルトガルを拠点として暗号通貨による報酬を得たいと考えている人については、追加の税徴収はありません。ただし企業の場合は通常のキャピタルゲインのルールが適用されるため、個人の人と同じメリットは享受できません。
ポルトガル政府は技術革新において先導者となることを目指しています。そのため国内に複数台のBitcoinATMを設置しており、また民間企業が人々に暗号通貨で支払うというオプションを提供できるようにもしています。
最後に、ポルトガルにはゴールデンビザプログラム(投資や不動産購入により個人に対して発行される長期居住ビザ)もあります。このゴールデンビザプログラムと政府の暗号資産に対する友好的な姿勢が相まって、投資家はポルトガル国内における居住権と市民権、ひいてはヨーロッパのパスポートすらも取得することが可能となります。
エルサルバドル
暗号通貨に友好的な国を語る上では、もちろんエルサルバドルをラインナップに含めないわけにはいきません。エルサルバドルはBitcoinを法定通貨として採用した国であり、これは言わずもがな暗号通貨普及の歴史の中で最も重要な出来事です。
エルサルバドルは、Bitcoinの最大限の普及(go full-Bitcoin)に向けた一連の取り組みを行っています。その取り組みの中には以下のようなものがあります。
- 国内の火山の地熱を利用したBitcoinマイニング施設の建設
- 国民が手数料ゼロでBitcoinを利用できるウォレット「Chivo」の開発
- 国内に200台以上のBitcoinATMの設置
- 法定通貨化に伴うBitcoinのキャピタルゲイン税0%
- 国の準備金としての750BTCを購入
Chivoウォレットのユーザー数は現段階で210万人を超えていますが、これはエルサルバドルのどの銀行をも上回るユーザー数です。なお、国民はChivo以外のウォレットも使用できるため、エルサルバドル国内のBitcoinユーザーはさらに多いと考えるのが自然です。
さらにエルサルバドルの大統領は、現在の傾向が続けば、Chivoの利用者数は国の銀行システム全体の利用者数を上回るだろうと考えています。エルサルバドルでBitcoinの法定通貨化を推し進めたナイブ・ブケレ大統領のプロフィールについては、こちらをご覧ください。
そもそもエルサルバドルでBitcoin普及に向けての取り組みがはじまったのは、多くの人々が家族からの送金に依存しているものの、銀行システムへのアクセスがなかったからです。
エルサルバドルにおけるBitcoinの採用は、採用した日が価格の急落と重なったりChivoアプリでバグやエラーが発生したりと荒れたスタートを切ったものの、これまでにご紹介した様々なデータからみても、徐々に軌道に乗ってきているようです。
個人レベルではChivoのバグやエラーといった数々の困難もあった一方で、エルサルバドルの企業は驚くほど簡単にBitcoinを取り入れています。ライトニングネットワークのおかげて人々はQRコードをスキャンするだけで即座にコーヒーを購入し、Bitcoinで支払いをすることができます。
エルサルバドルのBitcoin導入は長期的な試みではありますが、既に多くのメリットが見られます。特に国民にとっては、全体で最大4億円ものお金が節約できると言われています。エルサルバドルにおけるBitcoin構想についてはこちらの記事で知ることができますのでぜひご覧ください。
翻訳: Nen Nishihara
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