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「衛星通信でのハッキング防止」スペースチェーンCEO ズィー・ジェン氏 ②

宇宙空間において人工衛星のブロックチェーンノードでネットワーク構築を目指すSpaceChain(スペースチェーン)CEOのズィー・ジェン氏にインタビューさせていただきました。宇宙産業とブロックチェーン業界を融合する企業として世界をリードするSpaceChainは、すでに3度のブロックチェーンノードの衛星打ち上げに成功しています。インタビューでは、宇宙に衛星を打ち上げる意味などについて語っていただきました。是非、ご覧ください。

ズィー・ジェン(スペースチェーン CEO・共同創設者)

インタビュー日 : 2020年3月23日

衛星通信でのハッキング防止

マルチシグ(マルチシグネチャー)は、私達が衛星で採用している最も重要な技術です。1つの秘密鍵ではなく、複数の鍵を使用することでセキュリティを強化できます。2019年12月に、私達はSpace Xで衛星の打ち上げを行い、ブロックチェーンのハードウェアウォレットを国際宇宙ステーション(ISS)まで送りました。このウォレットは、トランザクションを行うユーザーのデジタル署名に活用される予定です。トランザクションを行いたい2者がリクエストを送信すると、そのトランザクションを承認するためのデジタル署名が衛星から提供されるという仕組みになっています。ここでは、地上のインターネットとは全く異なる衛星通信を使用しています。この衛星通信においてハッキングを行いたい場合、ハッカーはSpaceChainのシステムを通り抜ける必要があります。通常、ハッキングはサーバー上で直接行われ、約99%が地上のインターネット経由で実行されるので、それを防ぐための代替の通信方法として衛星を活用しています。

非常に興味深い点は、私達がトランザクションを故意に遅らせることも可能ということです。例えば、通信データが地球上にある特定の地点を3回通過(数時間が経過)しなければトランザクションが承認されないというように、その処理時間を設定することができます。これは、ハッカーにとっては非常に不利な状況です。システムをハッキングするにはトランザクションをできるだけ早く実行することが必要で、何時間も遅延が発生してしまう状況は避けたいはずだからです。私のビジネスパートナーの話によると、ハッキング事件を阻止すること自体は不可能ではないが、そのトランザクションは非常に早いスピードで実行されてしまうそうです。仮に、ハッキングに数時間が必要な場合、それを防止することができ、問題が解決できるのではと考えられています。

通信インフラを変革

データの通信方式を変えることが、SpaceChainの強みであると考えています。私達はブロックチェーンの性質自体を変えるのではなく、データの転送方法を改善しています。Ethereumや他のコインが取り組んでいるスケーラビリティ向上の流れも支持はしていますが、彼らが行っていることには関与しません。誰かに電話する時、通常の地上インフラの代わりに衛星という方法が選択できるように、その根本にある通信方法、通信機能の部分を変革したいと考えています。これにより、基本的にはハッキングのリスクは軽減されます。また、使用しているインフラやトランザクションという概念を変えようとしています。例えば、即座に承認が得られる署名方法とは別に、「Approval Orbits:周回軌道承認」と呼ばれる方法もあります。衛星が地球の軌道を指定された回数だけ周回しない限り、そのトランザクションが承認されないという仕組みです。

既に非常に多くの革新的なブロックチェーンプロジェクトがあるため、私達は独自のブロックチェーンを構築したいとは考えていません。宇宙産業とブロックチェーン業界の橋渡しとして出来るのは、システムの改善です。ブロックチェーンを新たに構築するのではなく、それらを繋ぎ合わせるということを行っています。既にEthereumとBitcoin、Qtumをシステムに統合しており、システムのアップデートも継続的に行っています。Qtumは私達のパートナーの1つで、2017年に初めて生まれたProof of Stake(PoS)のスマートコントラクトプラットフォームです。宇宙企業が直面する最も困難な課題の1つは電力であり、衛星は大量のエネルギーと電力を消費するため、あまり効率が良くありません。 Qtumを知った時、スマートコントラクトを実行するために使用するエネルギーがはるかに少ないPoSという方法に感銘を受けました。

グローバルな分散衛星ネットワーク構築

スマートコントラクトの最大のリスクの1つは、特にビジネスで期待される役割という点で過大に評価されていることです。初期の頃は、誰もが興奮し、スマートコントラクトで全てを自動化したいと考えていました。ただし、データは非常に重いアプリケーションも多く、より複雑なインフラが必要となります。全てのデータをスマートコントラクトに入れてしまうと、問題を解決するどころか、それ自体が大きなリスクとなってしまう可能性があります。SpaceChainでは、スマートコントラクトを宇宙企業が人口衛星と連携を行う手段として活用することで、当事者間でトラストレスなネットワークを構築しようとしてます。従来の方法では、信頼関係を構築しビジネス関係を確立するために、多くの話し合いと会議が必要となっていました。ブロックチェーンのスマートコントラクトを使用することで、データ共有の契約をより簡素化し、ビジネスにおいては未来の契約の形になると信じています。

SpaceChainの最終的な目標は、ブロックチェーンだけでなく、他の多くの産業もサポートできるグローバルな分散衛星ネットワークを構築することです。宇宙産業で私たちが直面している最大の課題の1つは、多くの企業が自分達の集まりの中で互いに競争し合っていることです。2020年の初めには、大手の投資会社から出資を受けていた大きなプロジェクトが資金不足になりそうでした。多くの企業が互いに競合し合っているため、このようなことが宇宙産業で非常に頻繁に発生しています。各企業が独自のプロジェクトを進める代わりに、コミュニティに共同で貢献できるような集まりを構築することが私達の提案です。他の企業がこのアプローチを採用しない主な理由は、信頼の問題だと思います。宇宙産業は複雑で、機密情報がたくさんあるため、SpaceChainが異なる衛星間を繋ぐ信頼できるシステムにしたいと思っています。企業同士が相互に信頼でき、システムを信頼できることが最も重要なことだと考えています。

インタビュー・編集: Lina Kamada

     

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