銀行による暗号通貨業者へのサービス提供を禁止したインド準備銀行(RBI)との裁判において、勝訴を勝ち取ったアシム・ソード弁護士にインタビューさせていただきました。
インタビュー日 : 2020年3月12日
禁止ではなく規制を
2017年11月、インド政府は暗号通貨による具体的な問題と規制を検討する委員会を設置しました。その委員会には、政府高官、財務省、準備銀行、証券取引委員会、および税務当局の代表が出席しました。 2018年の2月頃には、財務省が暗号通貨を禁止すべきではないという立場を非常に明確に出していました。インドは技術革新の国であるため、それを禁止するのではなく規制に努めるべきであり、暗号通貨を使用することで起こる悪影響を軽減する必要があるという主張でした。しかし、その1か月後、何らかの理由で委員会のメンバーであった準備銀行が暗号通貨の禁止を決定してしまいました。
私達は法廷で、禁止ではなく規制を行うべきであると述べてきました。禁止というのは法律の中で最も極端な措置です。暗号通貨は、可能性を秘めた非常に初期段階の技術であり、それに起因するリスクは確かにありますが、悪いことは全てのテクノロジーにおいて発生する可能性があります。テクノロジーだけでなく、あらゆる経済活動について言えることで、銀行がオンラインのハッキングに遭うこともあります。暗号通貨を適切に規制できれば、それに伴うほとんどのリスクは軽減できるので、インド政府がこの考えを積極的に理解してくれることを願っています。今後、仮に暗号通貨に対して新たな禁止事項が出てきた場合は、それに対する研究を行い、実現可能であれば異議申し立ての準備を行いたいと思っています。
暗号通貨は悪ではない
私達は最高裁判所で、マルタには暗号通貨交換所やICOに対する非常に包括的な法律があることを引用しました。最高裁判所で引用した他の2つの法律には、ニューヨークとウィスコンシンの州法がありました。これとは別に、ほとんどの民主的で自由な国が暗号通貨に対して禁止ではなく規制を行うというアプローチをとっていることも説明しました。これらの法律を真似する必要はないが、世界中の国々が暗号通貨を手に負えない悪質な商品としてではなく、通常の経済活動の一部として取り入れていることを裁判官に伝えました。
さらに、ハッキング被害に遭った数多くの銀行の事例を見せ、株式市場のボラティリティの高さも示しました。一見するとわかりませんが、完全な詐欺だった株式もいくつかあります。今日、株式市場は世界中で下落しており、そこにはボラティリティがあります。銀行に関しても世界中に詐欺事件があり、多くの詐欺師がメールを送信し、銀行口座は毎日のようにハッキングされています。しかし、詐欺発生の可能性はその商品を禁止してしまう理由にはなり得ません。しかし、詐欺の発生を阻止するため、それ自体が禁止された商品は暗号通貨が初めてでした。なので、これを聞いた裁判官も対策の見直しが必要であると考えたと思います。
最高裁判所からの判決
少なくとも暗号通貨の取引所には透明性があり、通常の場合、彼らは可能な限り法律を遵守しようとします。これらのプラットフォームで行われる全ての取引に関する情報を取引所は持っているので、この情報により多くの取引を実名化することができます。したがって、取引所が利用できないとなった瞬間、ほとんどの取引が地下で行われるようになり、法律の執行や利用者の問題、投機的な問題などを監視する貴重な機会が失われてしまうのです。
私達の裁判官は非常に柔軟な考え方を持っていて、2019年8月には何日間も私達の話を聞いてくれました。裁判所は準備銀行に多少の敬意を払い、禁止の決定について再審議を行うように要請を出していました。しかし、それから2か月も経った後の準備銀行の返答は決定を変える考えはないというものでした。その後、裁判所は2020年1月に再び12日間にわたり私達の意見を非常に忍耐強く聞いてくれました。この約1ヶ月半後に、裁判所から結果が発表され、私達に有利な判決が下ることとなりました。非常に喜ばしいことでした。ここインドには、非常に大きな暗号通貨コミュニティがあり、彼らもこの決定を非常に熱心に見守ってくれていました。
裁判の判決のときに、非常に稀ではありますが、裁判所の方が私を賞賛してくれたので、弁護士としては非常に光栄なことでした。「巧妙で博学な弁護人としての能力を活かし、準備銀行の通達に対する異議を唱え、手に汗を握る戦いを続けたシュリ・アシム・ソードに感謝の意を示す」と裁判の最後の方で言っていただきました。弁護士だけにしか理解されないと思いますが、最高裁判所からそのような言葉が聞けたのは、訴訟に勝つことよりも更に意味があることでした。インドの暗号通貨業界、そしてそれを信じる一般のユーザー、多くの方達がこの裁判に注目してくれました。裁判の中継はツイートされ、多くのメッセージを受け取りました。一部には、私にBitcoinを送って感謝を示したいと言う人までいました。勝訴した後は、喜びが溢れ、とても心温まる思いでした。コミュニティ全体のために戦ったことを誇りに思っています。
インタビュー・編集: Lina Kamada
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