暗号通貨界隈で人気YouTuberとして活動するラーク・デービス氏にお話を聞きました。インタビューでは、YouTubeコミュニティやインフルエンサーが暗号通貨市場に与える影響について解説していただきました。是非、ご覧ください。第三回目のインタビュー記事では、暗号資産詐欺に関する話や、各国の規制の違いについて語っていただきました。
インタビュー日 : 2020年4月15日
失われたBitcoin
Bitcoinの所有者が秘密鍵を紛失したことで犠牲になったことには、ある意味感謝しています。失われたBitcoinは価格の底値を生み出します。本当に秘密鍵が失われたかどうかは誰にもわからないので、失われたBitcoinは暗号通貨の全体的な時価総額の一部としてカウントされ続けます。
例えば、誰かが1万BTCの秘密鍵を無くしてしまったとします。それはもう市場に出ていくことがないので、Bitcoinネットワークの一部ではありながら、売買のためのスポット市場では、大きな希少性が生み出されます。
失われたコインは底値を作り出し、台帳には残り続けます。失ってしまった人にとっては確かに悪いことですが、ネットワーク全体にとっては悪いことではありません。
現在、Bitcoinの約4分の1がユーザーによって紛失されていますが、以前よりもはるかに安全で優れたウォレットが増え、資産を取り戻す方法も用意されるようになりました。
特に、初期の頃はBitcoinに価値があるとはあまり認識されていませんでした。たとえばコンピュータに1万BTCを持っていて、最初は何の価値もなかったので、その存在を忘てしまったとしましょう。
そうすると、自分のPCでマイニングした1万BTCに触れずに、そのまま置きっぱなしにして数年たち、Bitcoinの価値が数千ドルまで上がります。自分が持っていた1万BTCが突如として大金にばける。このようなことが実際に起こったのです。
なぜ詐欺に遭うのか
暗号通貨で詐欺が行われるのは、非常に残念なことです。例えば、クリプト・クイーンの事件は最も恐ろしい詐欺の1つです。新しいテクノロジーが出てくるたびに、それに対する理解の欠如を悪用しようとする人が現れます。
このようなことは数え切れないほど何度も起こっていて、昨年は、100万ドルを超える規模のOneCoinやPlustokenなどの詐欺が複数ありました。Bitconnectというプロジェクトでは、10億ドル以上ものお金が集められました。
このような詐欺が起こってしまう要因はいくつかあります。そのうちの1つは、速く多くのお金を稼ぎたいという強欲さが人々にあるからです。明らかに虫が良すぎる話に対しても、忠告を無視し、そこに飛び込めば、全てのお金が手に入ると思ってしまいます。
さらに、マーケットについて何も知らない人がいるのも大きな要因です。市場がどのように機能しているかも、毎日2〜3%の利息が得られるような保証はどこにもない、ということも理解していません。そういった非現実的な方法でお金がもらえることなど決してありません。
無知ゆえに苦い経験を味わう
多くの人が理解していないのは、投資が未経験で慣れていない、または何でもすぐに信じてしまうのであれば、最終的に全てのお金を失ってしまうということです。
Bitcoinを始めようと思い、1000ドル分を購入したとします。そして、魔法のBitcoinマイニングで1日40%のリターンを約束するとある男にFacebookで誘われたとします。
この誘いを信じて、お金がたくさん手に入ると思い、全てのお金を失ってしまうのです。こうして苦々しい教訓を得るのです。
このような罠に引っかかってしまう人いるのは理解はできます。こういった詐欺を見分けられるようにする、金融に関する教育はほとんど行われていないからです。
詐欺師は、信頼できると見せかけるために多くのテクニックを使います。詐欺でもソーシャルプルーフ(社会的証明)によって、まともなものに見えるようになっています。
詐欺に遭ってしまった場合は、諦めるできではありません。非常に腹立たしいことで、お金を失うことは辛いことであると理解できます。本当に腹立たしいことではあるのですが、多くの人が経験していることなので、きっと立ち直れるはずです。
多くの人にとっては、60歳以上になると資産を形成するのは難しくなるので、詐欺でお金を失うことは本当に辛い教訓となります。しかし懲りずに投資をまたもう一度やり直してみましょう。
投資をやめるべきではありません。歴史的に見ると、市場に費やした時間の経過とともに報われることもあります。Bitcoinを50ドルだけ購入し、ウォレットに入れたままにしておくのが良いでしょう。
株式市場に投資する場合にも言えることですが、長期的な投資を継続することが勝利の秘訣です。
私は主に暗号通貨への投資を行っています。しかし、暗号通貨以外の事業にも多くの投資を行っています。株式やゴールドなどへの投資にも前向きです。
しかし暗号通貨に関しては、やはりBitcoinについての話題が一番多く、Bitcoinが最先端だと思っているので、そこにフォーカスしています。
私は、Ethereumや他の何種類かの暗号通貨にも投資を行っていて、これらのマーケットにも素晴らしい可能性があると思います。
Bitcoinだけに固執している人々の多くが、そこには何も重要なものはないとよく言っていますが、私はそう思っていません。
現在、暗号通貨業界全体で、数々の本当に素晴らしいイノベーションが起こっています。Ethereum上で構築されている素晴らしいものもあり、これからの10年間で本当に革新的なテクノロジーが生まれる可能性があります。
暗号通貨以外への投資
私は最近、ゴールドへの投資を検討しています。実はしばらく検討して、まだ決心はしていないのですが、ゴールドをすこし買おうと思っています。
ニュージーランドで、実際にゴールドと交換することができる暗号通貨を探していますが、この国では、そういう暗号通貨が作られる可能性はないようです。だから海外に行かなくてはなりません。
それとは別に、私はパートナーと一緒に、ニュージーランドの食品事業に投資してナッツとチーズの事業を行っています。
地元ニュージーランドの、エネルギー会社の株式をいくらか購入しようとも思っていますが、まだ機会がありません。
ニュージーランドの暗号通貨コミュニティ
ニュージーランドにも暗号通貨コミュニティがありますが、小国なので、シンガポールや香港のような、同じくらいの人口の場所に比べると、ニュージーランドの暗号通貨コミュニティが市場へ与える影響ははるかに小さいです。
シンガポールと香港は、国際的なビジネスのハブの1つであり、暗号通貨ビジネスも盛んですが、活気のある暗号通貨コミュニティがあります。
ニュージーランドにも多少のビジネスはありますが、規制当局は、ニュージーランドでの会社設立を誘致するために、もっと色々な取り組みをするべきだと思います。
スイス、シンガポール、香港といった場所は、人を集めるのに非常に良い法整備がされていて、たくさんのビジネスを誘致しています。
また、ニュージーランドでは暗号通貨決済が非常に少ないです。たとえば私の町にはBitcoinを使用して決済が行える場所は1つしかありません。
こういった点の改善は、ニュージーランド政府が推進すれば絶対に可能です。ニュージーランドには革新的なアイデアや取り組みがたくさんありますが、暗号通貨に関しては遅れをとっていると思っています。
先をゆくフランス
企業の誘致にもっと本腰をいれればニュージーランドはこの業界において、リーダーになりやすいと思います。
フランスは暗号通貨業界の起業家に、ビザを与える法律を可決しました。フランスで暗号通貨の企業を設立したい場合はビザが発行され、多くの国で問題となっている、銀行へのアクセスが保証されることとなります。
シンガポールは全体的に暗号通貨に好意的です。しかしそのシンガポールでさえ、政府が暗号通貨が違法でないことを明確にしたとしても、銀行は暗号通貨業界の企業に対して、大歓迎という態度ではありません。
しかしフランスでは銀行へのアクセスが保証されており、銀行から金融サービスの提供をうけることができます。
一部の銀行には「暗号通貨の企業に、なぜ銀行口座が必要なのか」と疑問視する人が依然としていますが、暗号通貨業界の企業も税金や給料、電気代を支払う必要があるのです。
フランス政府はこのような政策を打ち出して安心感を与えることで、暗号通貨の普及において優位に立っています。
ニュージーランドでは中央銀行のデジタル通貨についてあまり議論されていませんが、他の国の動向を観察しています。今のところ、中央銀行の発行するデジタル通貨というアイデアに着目している国のほとんどは、巨大な経済大国です。
フランスは計画段階であり、米国は間違いなくすぐに実行段階に入ると思います。おそらくは主要国の中では中国が、最初に中央銀行によるデジタル通貨を発行するでしょう。
マーシャル諸島はすでに中央銀行の発行するデジタル通貨が導入されており、アルゴランド(Algorand)という技術に基づく独自のデジタル通貨が開発されています。
しかしこれは非常に小さな事例なので、我々はもっと影響力を持った大国にフォーカスするべきだと思います。ヨーロッパ諸国、中国、ロシア、米国などの大国が、世界の他の国々が向かう先を決定します。
この先ニュージーランドの中央銀行がデジタル通貨を発行することは大いにありえますが、それはアメリカや他の国が発行した後だと思います。
Bitcoinを長期的に保有すること
現在のこの経済危機の中では、中央銀行が行っている紙幣の乱発は、暗号通貨に良い影響を与えるでしょう。世界は、主要な経済国が機能しなくなってメルトダウンが発生してしまう状況へと急速に移行しています。
メルトダウンが起こるのは数年後のことだと思いますが、今回の危機は、経済がいかに深刻な病にかかっているかを、改めて認識させてくれるものだと思います。
2008年の後は何も解決されていませんし誰も逮捕されていません。経済を破壊したことで罰をうけた人はいませんでした。実際には、2008年の金融危機を引き起こした多くの人々が、ボーナスをもらっているような状況です。
現在は2020年ですが、経済の構造的な欠陥がそのまま残っており、状況はさらに悪化しています。政府がしていいることは、企業に可能な限り多くの救済金を与え、ウォール街に無限のお金を、そして株式市場に無限の流動性をもたらすことです。
現在政府はジャンク債を購入しています。ジャンク債は、破産する可能性のある企業や、債務不履行の企業の社債であり、誰も欲しがらないような債券です。
中央銀行は、誰も欲しがらない債券の最後の買い手となり、市場でダメなものを受け入れると述べています。これは資本主義ではありません。
もしも会社が生き残れず失敗した場合は、他の誰かが取って代わる、という構図こそが資本主義です。
中央銀行が行っていることは、金持ちに対しては社会主義であり、貧しい人に対しては資本主義、というシステムになっています。このシステムは崩壊しており、今行われている紙幣の乱発は、長期的には非常に悪い影響を及ぼすことになるでしょう。
ごく短期間の場合は、大きな問題にはならないかもしれません。しかし10年単位の長期間で考えると、どれだけのインフレが発生するでしょうか。
15〜20兆ドルが、世界経済に投じられています。そのすべてが新しく印刷されたお金というわけではありません。こういったお金は、帳簿上では一見ちがった動きをしているように見えたとしても、結局のところは新しい借金です。
多くのお金を印刷すればするほど経済がより機能不全になり、そして最終的にこれらすべてが不換紙幣の将来に負の影響を与えるのです。
現在大量の借金を抱えている中央銀行の将来にも負の影響が及んで、次の10年間のどこかの時点で、借金の利息の支払いが、国の税収を超える可能性がでてくるでしょう。これは特に米国に当てはまります。
これは大災害的な状況ですが、Bitcoinにとってはいい影響となります。Bitcoinは2,100万コインしかありません。インフレが始まりドルの価値が下がっていくほど、Bitcoinを長期保有するしかありません。
Bitcoin市場に参入してから、1週間または2、3か月経って動揺しはじめた人たちは、目先のことではなくもっと全体像を見る必要があります。
当初Bitcoinを100ドル以下で購入した人たちも、今日のような日がやってくるとは思ってもいなかったでしょう。長期的な戦いなので、長期的に我慢した人が、最も報酬を得られるのです。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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