数多くのブロックチェーンカンファレンスで司会を務め、テレビプロデューサーとして活動するナオミ・ブロックウェル氏にインタビューさせていただきました。また、これまでにアメリカの全国テレビで、テクノロジー、ビジネス、政治など世界中の様々な分野の専門家にインタビューを行い、ブロックチェーンやプライバシーなどの問題をYou Tubeで発信されています。
インタビュー日 : 2020年5月21日
スノーデンはヒーロー
私はエドワード・スノーデンの大ファンで、彼の本やポスターを部屋に飾っています。彼は政府の違法行為を暴いて社会に大きく貢献しました。
2013年のスノーデンの暴露以来、NSAのような組織が、違法な監視の罪を犯していることが、訴訟を通して明らかになっています。何が起きているのか知らなければ、これらの組織に責任を問うことはできません。
スノーデンはヒーローだと思います。彼は本当に難しい決断をして、世界に情報を提供するために莫大な犠牲を払いました。しかし多くの人は依然として監視社会に非常に満足していて、その社会は私たちを暗黒の道へと導いています。
幸いなことに、多くのハイテク企業がその道から助けてくれようと動いています。プライバシーの尊重とはかけ離れたところにいたような企業もです。 スノーデンの暴露以前は、インターネットを通じて送受信される情報のごく一部だけが暗号化されていました。しかし暴露以降はGoogleやAppleなどの企業が、暗号化を標準化する取り組みを率先して行うようになりました。 スノーデンの暴露により、多くの人々が利用していたサービスそのものが変化したため、個々人が行動せずとも、社会全体のセキュリティは向上しました。
多くのテック企業が、個人のプライバシーを取り戻せる技術をつくりたいと声をあげているものの、正直なところ道のりはまだまだ果てしないです。
しかも情報の暗号化を脅かす「EARN IT法案」のようなルールが、企業にとってユーザーのプライバシーを保護することをますます困難にしてます。
改訂されより悪化した愛国者法
アメリカ合衆国憲法の修正条項第4条は、アメリカで、無実の人を不当な捜索から守るために作られました。法執行機関は、具体的な容疑と捜索する事柄が書いてある正当な令状がないと、捜索ができないのです。
しかし修正条項第4条はなぜかデジタルの世界には適用されません。電子端末は常に押収され、インターネットを通る情報はすべて監視されています。アメリカ政府の監視能力は、当初はテロに対する緊急措置であった、愛国者法という法律によって大幅に強化されました。しかしその緊急措置はついに終わりを迎えることなく、今となっては、常に監視されている状態が普通になりました。しかも最近では愛国者法の権限がさらに強化されて、FBIは令状なしですべての人の検索エンジン履歴をみることができるようになりました。
「捜査に役立つ」とさえいってしまえば、大捜査網が敷いて情報を見ることが許されているのです。裁判官はこの情報閲覧の手順には関与していないため、本当に「捜査に役立つ」かどうか、一体誰が判断するのでしょうか。改正版の愛国者法は、人々のデータを検索する完全なる捜査権限を司法権に与えています。これは今までに前例のないスパイ的権限であり、非常に恐ろしいことだと思います。
24時時間年中無休の監視体制
スノーデンは私たちのために、自分の人生さえあきらめました。彼はガールフレンドとハワイで本当に素敵な生活を送っていて、お金もたくさん稼いでいまし、彼の指先には、文字通り世界中の情報がありました。しかし彼は自分の快適さよりも、世界で何が起こっているのかを知らせることの方が大事だと思い、全てを手放したのです。残念ながら、世界中の人々は、未だに何が起こっているのか正確に把握できていないようです。我々のオンラインの行動は全て、永久にデータベースに保存されます。そして政府など、情報へのアクセス権限をもつ人は誰でも我々の行動を検索することができるのです。
NSAの最大の目的は、永久的にデータを収集し続けることと、完全な監視体制を敷くことです。はたして、権力者たちの考えを変え、データの収集をやめさせることができるかは、私にはわかりません。
したがって私としては、テクノロジーがプライバシーをより高めるように発展し、個人として主権を取り戻せることを望んでいます
最も人気のあるYoutube動画
私が作成した中で一番人気があった動画は、デジタル端末のプライバシー問題につい論じているものです。スノーデンのツイートに影響を受けてつくりました。
ツイートは次のような内容でした。「私は自分の家でWi-Fiを使いません。なぜならグローバルマップ上のすべての無線アクセスポイントの特定IDは、無料で提供されていて、常に更新されているからです。私は電話のイーサネットを使用します。」驚くべきことに、人々は自分が使っている端末についてほとんど理解していません。端末を使用することでどれだけ自分の情報を流出しているか、それが我々の立場をどれだけ弱めているか、本当に驚くべきことばかりです。この動画を作る前は、Wi-Fiがどのように機能しているのかあまり知りませんでしたが、公に送信する情報には、もっと注意を払う必要があるのだと学びました。そしてたくさんの人が、この動画の内容を有意義だと思ってくれました。
WiGLE.netで自分を検索
WiGLE.netといったウェブサイトがあり、このサイトの主な目的は、公開されているネットのデータをまとめることです。このようなウェブサイトを利用すると、たとえば、Wi-Fiに接続するたびにスマートフォンからどれだけのデータが流出しているかというようなことを認識できます。
WiGLE.netで確認できることは氷山の一角にすぎません。GoogleやFacebookのような企業は、さらに多くのデータを収集しています。これらのデータは、人を追跡し、住んでいる場所を特定し、参加している会議や、その人のスケジュールの把握を可能にするものです。我々は文字通り、追跡装置を常に持ち運んいるようなものです。もっと用心深くならなければいけません。
Wi-Fiで居場所が特定できる
Wi-Fiのネットワーク探索機能についてお話します。Wi-Fiがオンになっているというのは、スマートフォンが数秒ごとに「以前に接続したネットワークが範囲内にあるかどうか」を探っている状態です。
これはいわば指紋検査のようなものです。実は一人の人が過去に接続したことのあるWi-Fiネットワークのリストというのは、例えば「ビルのオフィス」、「work001」、「ジェニーのiPhone」、「Blockchain2020Conf」…といったようなリストですが、これはその人特有のリストで、世界中を探しても全く同じリストをもつ人はまずいません。
受信機を使いWi-Fiのネットワーク探索をスキャンするのは簡単です。このようにして誰かの特有の組み合わせを見つけることで、その人が家にいるのか、それともどこか別の場所にいるのか、居場所を追跡することができます。
スマートフォンは、接続したことのあるネットワークを探索しているだけでなく、範囲内に他にどのようなWi-Fiネットワークがあるのかも感知しています。したがって特定のネットワークの組み合わせに囲まれている場合、簡単に居場所をピンポイントで特定できます。
スマートフォンの位置情報サービスが、Wi-Fiを有効にして精度を高めるように要求する理由はここにあります。
電子端末がどのようにして我々のプライバシーを奪っているのかについて学んでいく中で、この学びを他の人とも共有し、生活の中でより賢明な選択ができるようにしていきたいと思っています。
自発的な行動のすすめ
選ばれた少数の人だけが、人々に何が教えられるべきかを決めるような世界は好きではありません。このような中央集権的なシステムでは、簡単に全員を洗脳できます。歴史を通してみてみても、幾度となく、全体主義社会におけるプロパガンダが市民の世界観を歪めてきたことがありました。実は大学で経済学を学んでいた時、私はシカゴ学派やオーストリア学派について聞いたことがありませんでした。皆から同意された単一のものとして、経済学を教えられました。しかし後になって、私が学んでいたのはケインズ派であったことを知りました。しかも今ではこれは信じられないほど非建設的な思想だと思っています。
アメリカに移住して初めて、オーストリア派の経済学の本をたくさん読むようになり、経済学のカンファレンスにも出席し、書籍を通じて感銘を受けた尊敬すべき指導者たちの教えを学ぶようになりました。こうして今では経済学の研究は私の人生において重要な部分となっています。
習ったことを鵜呑みにするのではなく、さらに追求を深め、独自の研究を行うことをお勧めします。熱心になれるテーマを見つけ、できる限り様々な視点から理解するようにしてください。自発的に学ぶことが重要です。
お金とはなにかについて考えることの重要性
私が初めて金融政策に興味を持ったのは、マレー・ロスバードの「政府はわれわれの貨幣に何をしてきたか(What Has Government Done to Our Money)」を読んでからでした。それまでは、連邦準備制度とは何なのか、お金がどのように機能しているか、そして価値とは何なのかについて知りませんでした。
私はもっと深く知りたいと思い、ジョージ・セルギンの「Good Money」など、お金に関する多くの本を読みました。社会における貨幣の歴史、初期の貨幣形態、政府が貨幣供給量を増加させることを可能にした金本位制からの移行、連邦準備銀行の役割などについて学びました。
信じられないほど強い力をもった機関が生活の中心にあるのに、ほとんどの人はそれについて何も知りません。これは危険信号です。価値とは何か、お金とは何かを把握することは、私たちの日々の生活にとって大変重要です。さらに、価値とは主観的なものであるということを理解するのも非常に大切です。
この技術を広めることが我々の義務
Bitcoinを普及させたいのであれば、人々とつながる方法を見つけて、人々が何を重用視しているのかを理解しなければなりません。暗号通貨がどう重要なのかについては、自分の価値観を人に押し付けるのではなく、価値観は人それぞれであることを認識する必要があります。
このようにして、違う価値観をもつ人にも、暗号通貨は自分たちが重用視するものにとって役立つかもしれない、と思ってもらえます。価値観は人それぞれだということを受け入れれば、より簡単に人とつながりをもつことができるし、価値観の違いから生じる衝突を避けることができます。
同意できる点をみつけてそこに集中することが大切です。多くの人は、数学的な観点からの話や、暗号化の技術など、テクノロジーに興味があってブロックチェーン業界に引き寄せられています。
しかしこのような話題に興味がわかない人もいます。我々はそういった人たちにむけて、なんとかして他の切り口で手を差し伸べることができます。
例えば人助けに興味があって、銀行に預金できない人に助けを提供したいと思っている人もいるのではないでしょうか。このような切り口から暗号通貨に興味をもつ人もいるかもしれません。または、自身の作品を広めてお金を稼ぎたい、と考えているアーティストにとっても、暗号通貨にはお金を稼ぐのにいいプラットフォームがたくさんあるので、興味深いものを見つけられるかもしれません。事業のために、クレジットカードの手数料を節約したいと思っているにとっても、暗号通貨が役にたつかもしれません。
暗号通貨業界に対しては、皆それぞれ独自の視点を持っています。視点は多ければ多いほどいいと思います。他人が何を重要視しているか、どんな需要があるのかを知ることができれば、この技術がすべての人に役立つ方法を見つけられる可能性が上がります。
この有力な技術を、できるだけ多くの人々の手に届けることが、我々の義務だと考えています。
翻訳: Nen Nishihara
インタビュー・編集: Lina Kamada
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