数多くのブロックチェーンカンファレンスで司会を務め、テレビプロデューサーとして活動するナオミ・ブロックウェル氏にインタビューさせていただきました。また、これまでにアメリカの全国テレビで、テクノロジー、ビジネス、政治など世界中の様々な分野の専門家にインタビューを行い、ブロックチェーンやプライバシーなどの問題をYou Tubeで発信されています。
インタビュー日 : 2020年5月21日
私達はどれほど脆弱か
キプロスでは、2013年に多くの人々の銀行口座が凍結され、政府はそれらの資産を差し押さえる決定を下しました。自分自身で財産を管理するべきという経済的な権利を信じる全ての人にとって、このような出来事は警鐘になったと思います。
同様の出来事がポーランドでも起こり、アルゼンチンとベネズエラではハイパーインフレが起こりました。マネーサプライをコントロールしている人達を前にして、私達がどれほど脆弱であるかがあまり理解されていないと考えています。お金が銀行口座にある限り、私達は自分の生活をコントロールする術を失うことになるのです。
しかし、Bitcoinがあれば、自分の銀行を持つことができます。これは、好きな時に世界中に価値を移転できる力を与えてくれるものであり、持ち主の許可なしに制限を設けたり、資産を押収したりすることは誰にもできません。
Bitcoinの始まり
私は、主意主義(ボランタリズム)を信じていて、人を傷つけたり、物を奪ったりせずに、個人に可能な限り多くの選択肢を与えるべきだと考えます。この界隈に初期の頃からいる多くの暗号通貨愛好家も同じように感じているはずです。
Bitcoinは最初、Cypherpunkから派生したCryptographyメーリングリストから始まりました。そこでは、プライバシーが重要なテーマとなっていて、代替となるデジタルマネーを作ることにも大きな関心が集まっていました。彼らはコードを使って世界をより良い場所にできると信じていました。個人の権利と自由を信じる人々にとって、Bitcoinは非常にエキサイティングな存在になっています。
当初、Bitcoinは技術オタクの間で人気になりました。数学とコードをよく理解していた彼らは、Bitcoinの仕組みを見て素晴らしいと感じました。また、Bitcoinは「いいね」のような機能として使われていました。例えば、誰かのブログの投稿が気に入ったら、Bitcoinを投げ銭として使うことができました。
当時は金銭的価値がありませんでしたが、より多くの人々に知られるにつれてBitcoinのコミュニティは成長していき、2010年に行われたピザの購入で、Bitcoinは初めて実際の商品との交換に使用されました。
それが大きなターニングポイントとなり、ある意味でBitcoinの時代が到来した時期にもなりました。その後、多くの分野に影響が広がり、ウィキリークスが政府から閉鎖に迫られた際には、Bitcoinによる寄付が行われました。
ダークマーケットでも、Bitcoinで商品が購入されるようになりました。だたし、中国のダークマーケットで売買されていたものの中には、食品や衣類、薬品などの商品があったことも留意すべきです。
YouTubeやPatreonなどの強大なプラットフォームから追い出されたコンテンツクリエイターへの寄付も、Bitcoinによって可能となり、彼らは世界中からの支援で生計を立てることができるようになりました。
Bitcoinが、世界中の多くの人々にどれだけの力を与えたのかを理解していない人もいます。「インターネット・マネーって何?」「あまり理解できない」「何の価値があるのか」というようなコメントを依然としてもらうことがあります。
暗号通貨について教えるのは長い道のりですが、お金が何であるか、また主観的な価値ついて、大部分の人が理解していないのだと思います。なぜ、Bitcoinが重要であるかという理由を理解するためには、これらの問いを考えることが大切になります。
インターネットの消滅でBitcoinは無くなる?
インターネットが止まれば、多くのサービスが使えなくなってしまいます。その様なことが起きれば、Bitcoinも止まってしまうのかという懸念が生まれてくると思います。
多くの場面で、私達の生活は完全にインターネットに依存していて、現在は外出制限によるリモートワーク、オンラインでの社会活動、eコマースが不可欠になっているので、この問題は更に現実味を増しています。また、クレジットカードでの支払いにもインターネットが利用されています。
しかし、Bitcoinコミュニティには、冗長性(障害に対して予備機能があること)の強化に取り組んでいる開発者がいるので、これらの機能は特定のシステムに依存しすぎることがなくなっています。Bitcoinを可能な限り、堅牢で安全に保つ冗長性をあらゆるレベルで高めておくことが重要になります。
Blockstreamは、Bitcoinのための人口衛星を準備することによって、その冗長性を更に高めました。これにより、Bitcoinネットワークに繋がるために、インターネットだけに依存する必要はなくなりました。また、トランザクションを行うのに、SMSを使用することもできます。
インターネットが崩壊すると多くのサービスは停止してしまいますが、Bitcoinが消滅することは必ずしも起こらないのです。日常生活の多くの分野で、その冗長性を更に高めていくことはできますが、それでもインターネットが止まってしまうことがないように願っています。
議会で最も人気のない最高の人
私は、アメリカの元下院議員であるロン・ポール氏に数回インタビューを行ったことがあり、彼を非常に尊敬しています。彼は反戦主義者であり、またFED(連邦準備制度)の廃止を主張し、金融政策決定の透明性を求めています。
例えば、2008年に行われたTARP(不良資産救済プログラム)の状況はあまり明らかにされず、様々な汚職が起きています。ポール博士は、恐れることなくそれに抗議し続けているので、私は彼が大好きです。
彼は、自分の信念に基づき真実を語り、最も素敵で誠実な方です。人気取りではなく、自分の主張を実行するためそこにいます。彼は、利益誘導のための全ての補助金に対して反対票を投じてきたので、他の政治家の間では非常に不人気でした。
彼は、強い信念を持ちながら真実を話しています。周りで起こっている腐敗を目の当たりにし、その一部になるつもりはないと主張する、そんな彼を非常に尊敬しているので、もっと多くの人に支持されることを願っています。
未来は監視社会か楽園か
トランスヒューマニズムという考え方があり、人間は生物学的な限界を超え、前に進んで行くべきというものです。私は、人間が想像した境界線は飛び越えられるという楽観主義が大好きで、大きな希望を持っています。
スマートフォンは右腕の延長のようなものなので、私達は既にサイボーグのようなものだと思います。自分の知識を拡張するために情報を検索したり、世界中の人と瞬時に繋がることができるレシーバーとしても使用できます。
よくSF小説では、人間のように擬人化されたロボットが出てきますが、私たちの生活には既に多くのロボットが存在し、昔のロボットのイメージで捉えられることはありません。身の回りで多くのイノベーションが起こっているこの時代に生きることができるのは、本当に楽しいことだと思います。
生物学だけでなく、日常のあらゆる分野で起こっている技術革新が大好きです。私の最大の懸念は、イノベーションが鈍化し、限界を超えられずに衰退が始まってしまうことです。
多くの人が新しいテクノロジーに対して恐れを抱いているのは、そこから発生する可能性のある悪い部分だけに目を向けているからです。しかし、視野を広げることをやめれば、多大な利益と機会が失われてしまいます。
新しいテクノロジーの悪用にも対処すべきですが、社会として前進し、学びながら成長し続けていく必要があります。テクノロジー自体は中立なものであり、善と悪の両方に利用することができます。多くの場合、そのような方向性は、そのテクノロジーが生まれた文化によって異なります。
ジョージ・オーウェルの描いた悪夢のような監視社会となってしまう可能性もありますし、もはや病気が存在せず、誰もが基本的欲求に満たされたユートピアの楽園となる可能性もあります。
未来は、これらのシナリオの組み合わせになるかもしれませんが、どの道を選択するか注意が必要だと思います。テクノロジーがもたらす良い面は全て受け入れ、私達を支配しようとするテクノロジーに注意を支払い続ける社会であることを願っています。
インタビュー・編集: Lina Kamada
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