SH

「貧困地域ではプライバシーの権利が贅沢なものに」アニタ・ポッシュ氏 Bitcoin ポッドキャスター②

Bitcoin専門のポッドキャストを運営し、様々な場所で教育を行っているアニタ・ポッシュ氏(Anita Posch)にインタビューさせていただきました。是非、ご覧ください。

アニタ・ポッシュ氏

インタビュー日 : 2020年7月1日

人々は新しいものを怖がる

新しいものに対して人々があまり心を開いていないような時は、状況が複雑になりやすいです。新しい発展を怖がる人もいます。Bitcoinの仕組みを理解するためには、Bitcoinについて学ぶ必要があります。

Bitcoinを狙って発生した数々の詐欺は、Bitcoinには色々な可能性があるということを教えてくれたと同時に、Bitcoinを扱うには責任が伴うという教訓にもなりました。

取引所にBitcoinなどの資産を預けている場合は、Bitcoinを自分で保有しているわけではなく、銀行に預けているようなものです。しかし、資産を自分で管理するとなると、怖くてできないという人が多いです。あるいは単純に、自分で管理する方法を知らない場合もあります。

Bitcoinを保有する際は自分で秘密鍵を管理しなければなりません。Bitcoinを保有することは、あまりにも責任が重いと感じるかもしれません。またBitcoinの信頼性の問題もあります。Bitcoinは非常に信頼性が高く安全性も高いです。しかし我々は200~300年前から銀行システムを使用しています。ゴールドに至っては、1000年以上前から使われています。

このような状況の中で、ほんの11年くらい前から使われ始めたものに乗り換えるのは難しいのです。実際にBitcoinを使う前に、このような新しい形態のお金を本当に信頼できるのか、肌身で感じて確認する必要があります。

アフリカ諸国の問題点

ジンバブエを訪れた後は、ボツワナの首都ガボローネに行きました。Bitcoinについての教育者であり、ボツワナ・Bitcion・ミートアップの創設者でもあるAlakanani Itirelengさんに会うためです。彼女は2012年〜13年頃から、Bitcoinに関する教育を行っていて、アフリカではかなり知られている人物です。

私の経験上、ボツワナの政治システムはジンバブエよりもはるかに優れています。ジンバブエはおそらく、アフリカ諸国の中で最も深刻な問題を抱えている国だと思います。人権に関しても、ボツワナの方がジンバブエよりも状況が良いです。ボツワナは汚職も比較的少ないです。しかしそれでも国民の仕事が不足しています。ボツワナには、大学を卒業しても就職できない人々がいます。

また、ジンバブエやボツワナもそうですが、多くのアフリカ諸国は観光業に重く依存しています。アフリカ諸国の収入は、新型コロナウイルスの世界的な流行により大きな打撃を受けました。この状況が何とか収束してほしいものです。

貧困地域ではプライバシーの権利が贅沢なものに

プライバシーの権利は誰にでも等しくあるべきなので、企業や政府は無断で個人情報の収集を許されるべきではありません。どの情報を誰が見れて、どの情報の使用を許可するかなどの個人情報に関する決定権は、ユーザーや国民側にあるべきです。

ところが貧困地域に住む人々は切実にサービスを必要としているため、プライバシー対策には関心がありません。彼らにとってプライバシーとは贅沢なもので、それを確保するために割ける余力などないのです。

それから、貧困地域に住む人々には選択肢がありません。例えば、ジンバブエにおけるデジタル決済は、99%がEcoCashという通貨で行われています。これは単純に現金以外の選択肢がEcoCashしかないからです。

だからこそ、ユーザーがプライバシーついて考える必要のない、自動的にプライバシーを保護する仕組みが組み込まれているような、Bitcoinのようなシステム、Bitcoinのようなお金を持つことが重要なのです。

Bitcoinの特性

ブロックチェーンの技術だけが、Bitcoinをはじめとする数々のイノベーションを生み出したわけではありません。ブロックチェーンは、すべてのトランザクションをタイムリーに、正しい順序で記録するためのデータベースにすぎません。

サトシ・ナカモトが天才とされる理由は、ゲーム理論、数学理論、暗号技術、IT技術といった複数の科学分野を組み合わせ、それをさらにプルーフ・オブ・ワークのマイニングシステムと組み合わせることで、二重支払いの問題を防ぐ仕組みを作りだしたからです。

しかしブロックチェーンの周辺には、混乱を招くような技術がたくさんあります。例えば、プルーフ・オブ・ワーク・マイニングのないブロックチェーン、許可制のブロックチェーン、分散型台帳のないブロックチェーンなどです。Bitcoinはその性質によって、特別な存在となっています。Bitcoinの基本的な性質は、オープンソースであること、検閲されないこと、透明性があること、中立であること、インフレしないこと、そしてトラストレスで機能することなどです。

これらの特性の意味するところが分かれば、様々な種類の暗号通貨や決済システムの違いについて、より理解を深めることができます。

ライトニングネットワークが作り出すBitcoinの未来

ライトニングネットワークはBitcoinの未来だと思います。Bitcoinとライトニングネットワークの間の区別は、将来的にはなくなると思います。Bitcoin、あるいはSatoshiを送れば、それが貧しい国にとってBitcoinを使えるようになる入場券となるのです。ライトニングネットワークを使うことでプライバシーも強化できますし、なによりも、マイクロトランザクションを行うことが可能になります。

それから、分散型ネットワーク上で通信アプリとして機能するライトニングアプリを作成することもできます。これもプライバシーの強化につながります。このように、ライトニングネットワーク上には活用事例がたくさんあります。

2017年には多くの人々がBitcoinを売買したがり、Bitcoinに関するデマなんかもたくさん出回りました。この時トランザクションが多すぎるとどうなるかということを経験しました。当時システム内では非常に多くのトランザクションが行われていました。待ち時間が大変長くなってしまい、時には数日間かかることさえありました。取引手数料も上昇しました。

しかしライトニングネットワークを使うと、数千件のトランザクションを同時に、そして瞬時に実行できます。待ち時間がなくなり、大きな改善となりました。これはさらなる発展への重要な一歩だと言えるでしょう。

Bitcoinは全ての始まり

Bitcoinには深くて強力なルーツがあるため、今後も最も優勢な暗号通貨であり続けると信じています。

Bitcoinは一部の人々によって自発的に発明され、成長してきました。はじめの2、3年間は一部のテックマニアによって使われ、そこから世界的に有名なデジタルマネーになりました。その背後には大企業の援助もマーケティングも投資もなかったにもかかわらず、Bitcoinがここまで成長できたのは大変なことです。

また、Bitcoinのコードをコピーして少しいじれば、新たなアルトコインを作成することができます。このようにBitcoinは、あらゆるアルトコインをつくりだすためのオープンソース的な存在なのです。

Bitcoinは進化し続ける

「Bitcoinに替わる新しいコイン」だとか「より速くてコスパのいい、電力消費の少ないコイン」などと主張する新しいコインが登場するたびに、私は懐疑的な気持ちになります。

Bitcoinはこの11年の間に、自らの安全性を証明してきました。一方その他のコインの多くは価値を失っています。アルトコインは色々とありますが、その活用事例はほどんど聞きません。

そして、これはBitcoinに関しても言えることなのですが、多くのアルトコインは実験的なものですしたがって、もし何らかの形でアルトコインにBitcoinよりも優れた革新的な技術や発展があれば、Bitcoinの開発者たちは間違いなくそこから学んで、その技術革新をBitcoinにも実装するはずです。Bitcoinは進化し続けるテクノロジーで、他の技術からいい点を取り入れて順応することもできます。

お金は自由な存在であるべきで、企業や国家、政府などによってコントロールされるべきではありません。

情報の収集と取捨選択

私がこの界隈で出会ってきた人たちは、歓迎感をもって接してくれる謙虚でいい人たちばかりでした。博識な人や、複雑な概念を簡単な言葉で表現できる人たちがたくさんいて、そのような人たちに感化されました。界隈の中では常に最新の議論を追うようにしています。

最近では、2012年からコミュニティミートアップを行っている、NPO法人Bitcoinオーストリアのメンバーと色々な議論をしています。そこで友達をたくさんつくることができました。Telegramのグループにも参加できるものがたくさんありますし、色々と参考にできるYouTuberもいます。

アンドレアス・M・アントノプロス氏は、Bitcoinに関してビデオコンテンツをはじめとして多くの情報を発信しているので、彼のことをフォローして、活動を支持しています。このように、我々はたくさんの情報に取り囲まれていますので、頭の中に情報のフィルターがあるようなイメージで、必要な情報を残して不必要な情報を排除すればいいのです。

これから先の見通しについて

私は常に新しいインタビューを企画していて、インタビューは週に一本のペースで公開しています。それから近々、Bitcoin初心者向けにドイツ語のオンラインコースをリリースする予定です。オーストリアでは、新型コロナウイルスの流行を受けて、3月中旬からロックダウンを開始しました。

7月に入ってから、ほぼ全ての規制が解除されましが、現在でも公共交通機関ではマスクの着用義務があります。ただ、感染症数が再び増えてきているので、これからどうなるか分かりません。オーストリアでは、初動が厳しすぎたのだと思いますが、今になって全規制を緩めるというのもまた極端な話だと思います。

ヨーロッパでは現存の銀行システムが有力

人々を教育してすぐに活用事例を理解してもらえれば、これに越したことはありません。しかしヨーロッパでは、今のところ現存の銀行システムや決済システムがうまく機能しているので、難しいと思います。

もちろん、ヨーロッパの銀行にも腐敗や詐欺などの問題はあります。それは先日起きてしまったWirecard事件からも分かります。しかしそれでも普通は、現存のシステムで何の問題もなくお金を扱うことができます。ヨーロッパでは、年間のインフレ率は1~2%なので、インフレはしているものの、ナイジェリアやジンバブエのように深刻な問題になることはありません。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

    

【免責事項】

本ウェブサイトに掲載される記事は、情報提供を目的としたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。また、本記事は執筆者の個人的見解であり、BTCボックス株式会社の公式見解を示すものではございません。