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「ブロックチェーンという言葉はなぜ流行り始めたのか」トーン・ベイズ氏 インタビュー ③

JPモルガンの元アナリストであり、ビットコイン・マキシマリストとしても知られる著名トレーダーのトーン・ベイズ氏(Tone Vays)にインタビューさせていただきました。

トーン・ベイズ氏

インタビュー日 : 2020年7月14日

「ブロックチェーン」という言葉はなぜ流行り始めたのか

ブロックチェーンという言葉は大変有名になりましたが、実はこの用語はサトシ・ナカモトのホワイトペーパーには登場しません。ホワイトペーパーを隅々まで読んでも、ブロックチェーン(Blockchain)という言葉はでてこないのです。

ブロックチェーンという用語は、サトシ・ナカモトが書いたBitcoinのコードの中にあるコメントに登場します。サトシ・ナカモトはプルーフ・オブ・ワークの仕組みについて説明するためにブロックチェーンという用語を使いました。

サトシ・ナカモトによる、分散型データベースというイノベーションの最終的な産物がBitcoinです。分散型データベースは電力を消費して数学の問題を解きます。そして数学の問題というのは、非常に大きな数字を当てるだけのものです。

プルーフ・オブ・ワークとは、この数学の問題を解く一連のプロセスのことです。プルーフ・オブ・ワークでは、電力を使って問題を解くのに十分な数を推測して方程式を解き、そして解いたことを証明しなければなりません。

このように、プルーフ・オブ・ワークによってBitcoinが機能するようにできているのですが、サトシ・ナカモトはこのプロセスのことを、ブロックチェーンと表現しました。だから実際には、ブロックチェーンなどというものは存在しおらず、実はただ単にBitcoinのことなのです。

ブロックチェーンという言葉が流行したのは、Blockchain.info(現在はBlockchain.com)という会社が社名に使ったからです。そしてこの会社のウォレットは、Bitcoin用の最初のウォレットの一つでもあります。

ところがBitcoinは、犯罪者の使うお金というレッテルを貼られてしまいました。このレッテルは事実ではありません。米ドルにしろBitcoinにしろ、お金が実際誰によって使われているのか知ることはできないので、ただの疑いに過ぎなかったのですが、Bitcoinは嫌われてしまいました。

そこで投資をしたい企業は、各方面にクリーンなイメージをもたせるためにBitcoinという言葉をさけてブロックチェーンという言葉を使うようになったのです。現在ではもはや全てのものがブロックチェーンです。エクセルのスプレッドシートもブロックチェーンと呼ばれています。こうしてブロックチェーンという言葉は薄っぺらで無意味なものになってしまいました。

一番重要なのはBitcoin

何かをブロックチェーンと名付ける時は、それは果たしてBitcoinなのかどうか、プルーフ・オブ・ワークなのかどうか、必ず確認が必要です。もしもプルーフ・オブ・ワークでないならば、それはブロックチェーンとは呼べません。

ブロックチェーンという言葉はもともと、プルーフ・オブ・ワークを説明するために使用されたものです。しがたってプルーフ・オブ・ワークが使われているものは確かにブロックチェーンです。

しかし、そのブロックチェーンは、果たしてどれくらい重要なのでしょうか。Bitcoin以外のブロックチェーンを見てみると、重要なブロックチェーンはBitcoinだけだということに気づくでしょう。私にとっても、一番大事なのはBitcoinだけです。

分散型ネットワークの本質

例えて言うなら、インターネットと同じです。無数のインターネットの会社が存在していても我々は結局、皆同じ1つのインターネットを使っています。たくさんのインターネットがあってそれらをつなぐ架け橋があるわけでもないし、国によって別々の異なるインターネットが存在するわけでもありません。

中国や北朝鮮のように、自国のインターネットの周りに壁をつくっているような地域はあるものの、それぞれの国が個別のインターネットを持っているわけではないのです。巨大な分散型ネットワークを持つというのは、つまりこういうことで、他のことは実はどうでもいいことなのです。

Bitcoinに関するおすすめの本

私は人生の中で、物理や化学などの教科書ぐらいしか本を読んできませんでした。地質学と数学の学位を持っているので、より技術的な内容の教科書もたくさん読みました。金融工学の学位も持っていますし、コンピュータサイエンスの知識もあります。

しかし私は教科書以外の、一般的な本はあまり読んだことがありません。トレードに関してはプロのトレーダーから教わりましたが、レベルでいうと初心者から中級トレーダーになろうとしているところだと思います。

おすすめできる本があるとすれば、Saifedean Ammous氏の、『Bitcoin Standard』という本です。この著者はBitcoinの歴史に関するとても素晴らしい本を出しています。『Bitcoin Standard』は14章で構成されていて、最初の11章はお金の歴史について書かれています。最後の3章はBitcoinについてです。

Bitcoinは唯一の長期投資

私の唯一の長期投資はBitcoinです。それは私にとって、今後10年から15年の間唯一信頼できる投資です。その他のものはすべて、私にとってはトレーディングです。

すべての卵を1つのバスケットに入れてはいけないのですが、Bitcoinのバスケットに関しては信頼しているので、リスクをとることができます。

短期間〜中期間のトレーディングと、投資との違いが重要だと思います。私は長年、YouTubeチャンネルや他のプラットフォームで、適切な投資としてアマゾンやテスラの株について話してきました。

私はテスラへの投資家ではありませんが、テスラが短期的に上昇すると思った時はテスラ株を取引しました。しかし最近の高騰については懐疑的で、信じられません。

2013年はBitcoinにとって重要な年

印象に残る瞬間というのは必ずどの年にもあるものです。暗号通貨界隈での印象深い出来事といえば2017年の価格高騰ですので、2017年は誰にとっても記憶に残る1年だったことでしょう。

しかし個人的に最も印象深かった年は、自分がBitcoinをはじめた年である2013年です。2013年には2回のバブルがありました。1つ目のバブルは、Bitcoinが10ドルから250ドルまで上昇した時です。私はこのバブルが終わる頃に、ようやく真剣に取り組みはじめました。

そして同じ年の終わりに、価格が1300ドルまで上昇しました。これはマウントゴックスが崩壊した時です。またクラウドソフトの閉鎖があったのもこの年です。さらに、私がBitcoinに没頭するきっかけとなったキプロスでのイベントがあったのもこの年でした。

2013年はBitcoinの最初の半減期があった年でもあります。Bitcoinが数分間ダウンする事件が起こり、少しフォークが発生するという事件も起きました。2013年は重要な出来事がたくさんあった年です。

2015年〜2017年の重要な出来事

他に一つだけ触れておきたい出来事があります。それは2015年に起こったギリシャの金融危機で、Bitcoinのライフサイクルにおいても非常に重要なイベントとなったと思います。

2017年はBitcoinのコードがアップグレードされました。SegWitが含まれるようになり、ライトニングネットワークも統合されました。一方で、プルーフ・オブ・ワークの仕組みや、最も長いチェーンの仕組みなどを理解していない人たちは、Bitcoinの模倣品をつくろうとするようになりました。

これらの年に起こった事件やイベントが、今までのところBitcoinにとって最も重要な出来事です。2021年には、まだどんな出来事があるかわかりません。しかし2021年も非常に印象深い年になると信じています。

数々のプロジェクトへの取り組み

私は現在、多数のプロジェクトに取り組んでいて大変忙しいです。そして新しいプロジェクトにも着手し続けています。普通1年のうち10ヶ月はイベントに費やしているのですが、現在は新型コロナウィルスのため行き詰まっている状態です。

主要なプロジェクトは相変わらず教育関係です。高校の教師としての仕事は合わなかったのですが、大学の教授の仕事は少ししました。教えることは好きなのですが、学ぼうとしない人に教えることは嫌いです。

私のプロジェクトはイベント形式です。我々はラスベガスで開催されている「Unconfiscatable Conferene」というBitcoin全般に関するカンファレンスを主催しています。

また「Understanding Bitcoin Confernece」というカンファレンスもあります。このカンファレンスでは、開発者などのBitcoinの技術に通じている人たちが、開発者ではない人々向けに、最高の実習や、Bitcoinブロックチェーンの使用方法に関する教育などを提供しています。

それからfiancialsummit.comという金融サミットも行っています。これは、トレーダーや投資家、ヘッジファンドなどのための1週間にわたるイベントです。

私はトレーディング関係のイベントも行っていて、教育的なブートキャンプやウェビナーを開催しています。ウェビナーでは、リスク管理に焦点をあてたトレーディングの仕方を教育しています。最後になりますが、私のYouTubeチャンネルと、たくさんのポッドキャスト番組もあります。取り組みたいことばかりなのですが、時間が十分にありません。私は以前「Crypto Scam」という番組をやっていました。暗号通貨界隈のあらゆるプロジェクトを批判的な視点でみて、進行する悪事を暴くという内容の番組です。この番組を復活させてほしいという人がたくさんいます。

一部のポッドキャストはYoutubeでも視聴することができます。また、カンファレンスもどれも非常に素晴らしい内容となっていますので、開催地のお近くに住んでいらっしゃる場合は、ぜひ参加してみてください。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

    

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