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「Cointelegraphでより深いリサーチを」Cointelegraphリサーチディレクターのデメルザ・ヘイズ氏にインタビュー ②

暗号通貨メディアのCointelegraphで、リサーチディレクターを務めるデメルザ・ヘイズ氏(Demelza Hays)にインタビューをさせていただきました。ヘイズ氏はフロリダ出身で、現在はリヒテンシュタインで研究を行われています。是非、ご覧下さい。

デメルザ・ヘイズ氏

インタビュー日 : 2020年8月26日

ハッシュレートとBitcoin価格の関係

私はフィディリティ・デジタル・アセットグループの研究者に会ったのですが、Bitcoinの価格はハッシュレートの上昇に伴って上がる、と主張する研究者がいました。私は彼の主張には反対でした。

私は彼とは逆に、ハッシュレートの方がBitcoin価格に応じて上昇すると考えていたので、我々は互いに議論しました。2人とも統計学が得意だったため、価格のデータとハッシュレートのデータを引っ張ってきていろいろと検討することで、2つのデータの関係を解明しようとしました。

結局、一方が他方を引っ張るのではなく、互いにもう一方の動きを引き起こす、相互の関係をもつことがわかりました。たとえばBitcoin価格が0まで下がれば、マイナーはマイニングする意味がないので、ハッシュレートも価格を追って0まで下がります。

逆にハッシュレートが上昇すれば、ネットワークの安全性が高まることを意味します。安全性が高まると人々はより多く投資をするので、価格の上昇につながります。しがたってこの場合は、ハッシュレートが上がればBitcoin価格が上がると言えるでしょう。

マイナーの意思決定は何ヶ月も前に行われる

このような関係性について、統計学を応用して本質的な関係を見つけ出す方法はいくつかあります。まずはBitcoin価格とハッシュレートの値をもってきて、それぞれの変化の傾向を見ます。そして価格とハッシュレートが、時間の経過とともにどのように変化するか、両者の間の相関性を調べます。そうすると、変化にはほとんど相関がないことがわかりました。

不思議なことに、日足だとほとんど相関関係が見られませんでした。私はフィデリティの研究者に連絡をとり、自分の観測結果を送りました。しかし後でよくよく考えてみれは、マイナーは当日価格に基づいて意思決定をするわけではないので、私の観測結果は理にかなっています。

マイナーはマイニング戦略を9ヶ月前には立てなければいけません。機器を入手したり、設備を整えたりするのに時間がかかるからです。たとえマイニングを開始してから価格が下がりはじめたとしても、一旦はじめたマイニングをやめると損をしてしまうので、価格がかなりのところまで下がらない限りマイニングをやめるわけにはいかないのです。

最後に、当日のハッシュレートと9ヶ月前のBitcoin価格の間に相関性があるか確認するために、ラグ変数というものを使って調査をしました。毎月調査をしたのですが、どうやら当日のハッシュレートともっとも相関の高いBitcoin価格は、11ヶ月前の価格だということが分かりました。

2種類の別々の変数が互いに影響し合ってはいるのですが、両者の間に明確な因果関係があるというわけではありません。これが我々の最終的な観測結果でしたので、これからこの結論を学術的な論文にまとめていきたいと思います。

新しい読者層への働きかけ

今の新しい仕事はとても気に入っています。立場的にも幅広い表現の自由がありますし、アイデアがあれば提案することができて、採用される可能性がある、というところも気に入っています。

現在目標としているのは、調査レポート記事の執筆です。Cointelegraphは小さめのニュース記事をたくさん扱っていますが、より専門的なトピックを取り扱った、10ページ以上にわたるような深い内容の記事はありませんでした。

そこで新しいウェブサイトの制作に取り組みはじめました。そのサイトには、より深い内容のレポートを掲載していく予定です。レポートは主にDeFiや機関投資家関連になります。このウェブサイトを通して読者により多くの教育的な内容の論文を届けていきたいと思います。

Cointelegraphはニュース読者の層を中心に親しまれてきましたが、より学術的な記事の読者や、専門的な投資家などの層にも、シェアを広げていきたいと考えています。

学術論文の見つけ方

私は日頃から難しめの文章を読んできたからこそ、リサーチの部署は大変有意義なものだと考えています。普通のニュース記事は短すぎるので、普段は読みません。

私が好きなのはファンダメンタルズや、長期的にみた価値の変遷に関することなどです。しかしCointelegraphに入社してからはCointelegraph上の記事もたくさん読んでいます。中には驚くほど良い内容の記事もありました。

私は10ページ以上にわたる長編の学術論文を読むのが好きなのですが、優れた論文はGoogleScholar上で見つけることができます。GoogleScholarでマイニングやMakerDAOについて検索すれば、スタンフォード大学やMIT、チューリッヒ大学といった大学から出ている優れた論文がたくさん見つけられます。

しかもこれらの論文は、セキュリティの弱点やエネルギー消費についてなど、ありとあらゆるトピックをカバーしています。掘り出し物を見つけることができるので、よく興味のあるトピックをGoogleScholarで検索しています。

一般的な読者におすすめの調査レポート

コンピュータ科学者、経済学者、起業家など、実に様々な分野の人々が、暗号通貨に興味を持っています。

ここ2年くらいの間に、一部の企業は調査レポートを発表し始めました。これらの企業では、人々の教育につながるものをつくるために、専門家が調査レポートに取り組んでいるのです。

しがたって学術的な調査レポートというよりは、一般の読者も理解しやすいようなテンプレートでつくられています。グラフも非常にきれいで、複雑すぎず、ビジュアル的にも美しいものが多いです。

近々Cointelegraphのウェブサイトに、調査レポート専門のライブラリが登場する予定です。良質な情報源から収集した、あらゆる種類のトピックに関する最新のレポートをお届けしていきます。

我々のチームは、学術論文を一般的なCointelegraphの読者が理解できるレポートに変換しています。分析や数式に関しても、その意味の説明やチャートを読者に提供します。

さらに、特定のトピックについてより詳しく知りたいという人向けに、我々の持つ情報源から論文を直接引用しています。こうして、トピックを掘り下げたい人が学術論文にたどり着けるように誘導しているのです。

Cointelegraphでの働き方

Cointelegraphの記事の閲覧数は月800万回です。組織は数百人の社員と、さらに数百人のフリーランスからなる、巨大なチームです。Cointelegrapfは組織として非常に分散化されているのですが、そこが私の好きな点です。

我々はいくつもの小グループに分かれていて、各グループがそれぞれの担当分野に関して意思決定を行います。たとえばスペイン語やポルトガル語、英語といったようなグループや、YoutubeやTwitterといったSNS関係のグループ、そしてこれら以外にも様々な部門のグループがあります。

私はリサーチ署のディレクターをしていて、7人のメンバーがいます。日々のやりとり、タスクに関する話し合いは全てリモートで行っています。ニューヨークや香港など社員が多く集まっている地域では、共同ワークスペースを利用してオフィス感覚で仕事をすることもあります。しかしほどんどの社員はリモートワークです。

Cointelegraphでより深いリサーチを

Cointelegraphで働く前は銀行のために調査レポートを書いていました。銀行の様々な質問に対して答えを用意する仕事です。例えば、「なぜHuobiとBinanceはお互いにチェーン上でこんなにお金のやりとりをしているのか」といったような質問があります。

お金のやりとりをしているアドレスはチェーン上で確認できます。同じようなトピックも研究しつつ、より深く掘り下げてレポートを作成しなければなりません。

今後はますます多くの銀行が、より深い内容のリサーチに関心をよせるようになります。したがって、Cointelegraphのように独自の研究中枢をもつリサーチグループの存在が一層重要になってきます。Cointelegraphでは非常に多くの女性が働いていて、マーケティングをはじめとし、戦略やデザインなど、様々な仕事を担当しています。Cointelegraphは女性を採用することに前向きなので、才能があって働く意欲のある人なら受け入れると思います。

リサーチ部は新しく出来た部署なので、そのディレクターとなるのも私がはじめてです。我々は年間を通して複数のレポートを作成するのが目標です。そして、自然にゆっくりとしたペースで成長してきた暗号通貨と同じように、口コミなどを通して、時間の経過とともに着々と伸びていくだろうと予想しています。

我々の出す調査レポートは、株式や債券のアナリストたちに需要があります。アナリストは市場の月間の動きについてまとめられたレポートなどを求めているからです。我々は投資家やアナリストたちに慣れ親しまれている方法で情報を提供したいと思っています。

暗号通貨市場はこれからどんどん成熟していきます。そして暗号通貨もゆくゆくは他の資産と同じように、アセットの1種として扱われるようになります。我々の部門は、暗号通貨市場の成長とともに、明るい未来に向かっています。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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