ロシア語圏最大の暗号通貨メディア「Forklog」のCEO、アナトーリ・カプラン氏(Anatoly Kaplan)にインタビューさせていただきました。ロシア語圏の暗号通貨コミュニティの現状ついてお話を伺いました。ぜひご覧ください。
アナトーリ・カプラン氏
インタビュー日 : 2020年9月3日
Forklogのはじまり
2014年に、私が住んでいたウクライナで革命が起こりました。革命が起こったのはウクライナに住みはじめてから2年が経った時で、革命が終わると今度は、戦争がはじまろうとしていました。状況が悪化して経済危機になり、IT企業に勤めていた私は職を失いました。
ウクライナの通貨フリヴニャは、1ドル=8フリヴニャから1ドル=27フリヴニャにまで下落しました。一時は1ドルが50フリヴニャまで落ちたと時もあり、状況はさらに悪化しました。しかしその後すぐに政府の救済措置によって27フリヴニャまで回復しました。
苦労して稼いで貯めたお金の価値がこんなにも下がってしまうのをみるのは、本当につらかったです。私は23歳の時のこのようなインフレを経験しました。 社会人になったばかりの若者には痛い打撃でした。
その時から、ウクライナに住むロシア人として、これからどうすればいいのか、と自問自答するようになりました。そして経済に関してはもちろん、お金に関して、そして通貨に関しても、もっと勉強するようになりました。
Bitcoinの話は2013年に聞いたことがありました。しかしそれは革命が起こる前のことでしたし、暗号通貨については、何やら狂ったような混沌とした話題だという印象を抱いていたので、特に注意を払いませんでした。
しかし経済危機を経験した後に、私は暗号通貨に非常に興味を持ち、研究するようになりました。研究すればするほど興味を持ったので、暗号通貨に関するロシア語のちょっとしたブログを運営することにしました。
ブログは情報共有のためだけではなく、暗号通貨について情報収集して、自分がより多くの知識を得るための手段でもありました。こうして、自分自身のノートのようなブログとして、Forklogは始まりました。わずか1年でどんどん人気が出てきて、現在では暗号通貨界隈で最大級のメディアプラットフォームとなりました。
人気のある記事のカテゴリー
人は良いニュースを好みます。良いニュースはBitcoinに関するニュースなので、Bitcoin関連が最もクリックされているカテゴリーの1つです。
もう1つ人気があるのが、調査・研究に関するカテゴリーです。これはForklogをはじめた時から、我々の仕事における特殊な面でした。
2017年にICOブームがあったため、今でもこの仕事の必要性を感じています。調査記事は映画の話のように読めますし、人々はそういうストーリーが大好きです。
我々のホームページが次に目指している部分は教育です。教育に関して基準としている点は主に2つありますが、そのうちの1つは、記事の短さに厳密にこだわると同時に、簡単な説明の記事を提供するということです。
我々は短くて簡単な記事を掲載するセクションをもっています。経験から分かったのは、長くて学術的な教育記事よりも、短くてシンプルな記事の方が、Bitcoinの新規ユーザーからの評価が高く、より理解されやすいということです。
一方、YouTubeチャンネルでは、より難しいトピックを扱っています。例えばプログラミング言語や有価証券について、それから技術的な相違点の話や、お金の話、経済学のオーストリア学派の話などについて説明しています。
世界のBitcoinコミュニティ、そして暗号通貨コミュニティは、オーストリア学派に関連している部分が大きいというのは有名な話です。
読者の利便性を追求する取り組み
我々のホームページのフォーマットはCoinDeskやCointelegraphと似ていますが、主にロシアのコミュニティのために作られているので、ロシアのコミュニティに合わせています。
我々は常にウェブサイトの改良に取り組んでいて、現在は読者がより便利で手軽にアクセスできるように、スマホ用の新しいアプリを準備している最中です。我々はアジアのスーパーアプリに非常に触発されていて、そういったアプリのもつ特徴を取り入ていきたいと思っています。
Forklogの働き方
Forklogの構成はとてもシンプルです。色々な部署があって、それぞれの部署で仕事をしています。我々は常にイノベーションの展望を持っていて、いつも新しい製品や新しいアプローチを試しています。それからAIコンテンツの実験も行っています。
メディアやジャーナリズムは、クリエイティブな文章の上に成り立っています。ロボットになりたいとは誰も思わないし、ロボットと一緒に仕事をしたいとも思いません。誰もが、クリエイティブな人間と一緒に仕事をしたいと思っています。そしてそれこそが、我々が実現したいことなのです。
2018年から完全リモートワークを始めました。その前の2年間はオフィスがありましたが、現在は全員がリモートで働いています。我々のチームメンバーは世界各国にいます。ウクライナにいる人もいればベラルーシにいる人もいますし、他にもヨーロッパの様々な場所にいます。人数は現在およそ30人です。
ロシア語圏のメジャーなSNSは?
ロシアで最もよく使われているメッセンジャーアプリはTelegramです。Twitterのユーザー層は、より対外的なコミュニケーションや、グローバルなコミュニティに参加したい人が中心です。
LinkedInはロシアでは人気がないため、FacebookがLinkedInと同じような使い方をされています。そして我々の使っているような多くの暗号通貨関連のチャネルは、主にTelegramにあります。
また、ロシア語圏でメジャーなVK.comと呼ばれるSNSもあります。これはTelegramを立ち上げたのと同じ人物であるパーヴェル・ドゥーロフ氏によって創設されたサイトです。VKはFacebookによく似ているのですが、UX/UIも機能も、Facebookよりもはるかに優れていると思います。
2020年1月1日からVKが政府所有のサイトになるということがニュースになりました。政府公認のSNSになることが公表されたわけですが、サイトは今もなお元の創設者の人達が適切に管理されていることは知られていますし、一般的な目的で好きなように使用することができます。
その他にも、Odnoklassniki.ruという、もう1つの主要なSNSプラットフォームもあります。そのサイトの使い方もVKと同様ですし、それらのサイトより高度なプライバシーや安定したサービスがいいのであれば、別のサービスプロバイダーを探すと良いでしょう。
ロシアのインターネットインフラはRunetとも呼ばれますが、スペインやドイツのものと比較しても、はるかに安定しています。ドイツのインターネットインフラが数十年前のものだと知った時は大変衝撃を受けました。
Runetは2000年代初頭から、企業や家庭内で様々な形で利用できるようになりました。たとえばダイヤルアップ、ケーブル、DSL、FTTH、モバイル、ワイヤレス、サテライトなどの形態を通して使うことができます。
2013年には、ロシア語はインターネット上で2番目によく使われる言語になりました。アジア版のLINEやWeChatようなスーパーアプリが、近いうちに登場してきてほしいと思います。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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