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「​銀行のお金に何が起こっているのか」投資アナリスト リン・オールデン氏 (全インタビュー記事)

投資アナリストとして人気を集めるリン・オールデン氏(Lyn Alden)に、現在のマーケットについてお話を伺いました。オールデン氏が毎週執筆するニュースレターは多くの投資家に読まれ、彼女を暗号通貨業界でも一躍有名にしました。今回は、暗号通貨におけるマクロ分析の重要性などについてインタビューしました。ぜひご覧ください。

インタビュー日 : 2020年10月13日

リン・オールデン氏 (全インタビュー記事)

Lyn Alden投資戦略サイトを運営しているリン・オールデンと申します。私はBitcoinだけを専門としてきたわけではないのですが、株式や債券、貴金属などを含む幅広い資産クラスを専門としていて、中にはBitcoinも含まれます。こういった様々な異なる資産クラスに対しての私のアプローチは、価値と成長の可能性がどこにあるのかを研究して見つけることです。私がBitcoinの記事を配信し始めたきっかけも、このアプローチの一環です。

私は2017年から、暗号通貨界隈で積極的に活動するようになりました。2020年の4月には、暗号通貨に対してかなり強気な姿勢をとるようになりました。

私は個人投資家と機関投資家の両方にリサーチを提供しています。記事と、無料のニュースレターを読者に提供しています。それから有料のプレミアム記事もあって、だいたい2週間に一度のペースで公開しています。

私は、マクロ分析と企業の個別分析を組み合わせて様々な要因を見ています。たとえば、失業率、流動性、財政刺激策などは、様々な資産を動かす主な要因になります。私は個別の企業を詳しくみて、マクロな背景を分析し、そして個々の投資と組み合わせます。

はじめて暗号通貨に出会ったのはいつですか?

Bitcoinの存在を知ったのは2011年のことです。自分のコンピュータを使ってマイニングをしている友人がいたのがきっかけです。当時は、とても需要のある素晴らしい技術だとは思いましたが、詳しい知識を学習したわけではありませんでした。

ただとても斬新に思いましたし、素敵な技術だと感じました。当時は残念ながらBitcoinを買わなかったのですが、その後も毎年、欠かさずに何回もチェックをし続けていました。

私がBitcoinを取り上げるようになったのは、2017年になって相場が急上昇してメディアでも注目されるようになってからです。私は読者から、Bitcoinを記事で取り上げて欲しいという多くのメールを受け取りました。

そしてBitcoinに関する最初の記事を書いていた際に、その価格は6000ドルから8000ドルになりました。

私はいくつかの異なる視点からBitcoinを分析しました。1つは交換の媒介として見ること、そしてもう1つは、価値の保存手段としてみることです。
Bitcoinは交換媒介としてはいささか過大評価されているようにも感じますが、価値の保存手段としては、かなり面白いものであると判断しました。

分析をはじめたのはいつですか?

はじめは、Bitcoinが買われすぎていたことと、熱気がありすぎたことから、とくにポジションも取らず、目先は弱気な見方をしていました。そしたら20,000ドルまで急上昇した後、4000ドル以下に暴落しました。

また、2020年の3月に他の資産も値下がりしましたが、再び5000ドル以下まで反発し、約1ヶ月後には6000~7000ドル台に戻っていたので、そこから分析を始めました。
その後、マクロ的な要素がだいぶ良くなり、低金利や大規模な不換紙幣の増発などもあり状況が変わりました。

Bitcoinが2020年5月に半減期を迎えようとしていたので、Bitcoinの半減サイクルをもう少し調べて、Bitcoinの価格スキームがどのようになっているのかを見てみました。
今では、半減期の開始から2年後には強気のトレンドがあり、半減期の2年前にはBitcoinは調整局面になる傾向があることがわかっています。

半減期後のBitcoinの動き

【縦軸】価格/半減時の価格  【色】半減期後のブロック数

したがって、Bitcoinがうまくいって上がる時期とそうでない時期があります。私は今回、今まで以上に強気の予想をしていますので、Bitcoinをおすすめしていますし、自分も予想に従って動こうと思っています。

始める前に知っておくべきこと

私は工学の学位を持っているので一般的には技術的な観点から物事を見ています。コーディングをしたこともありますが、あまり得意ではないので、Bitcoinのソフトウェアを実際にみてみたことはありません。

私としては、技術者以外の人が押さえておくべき技術的なポイントというのは、技術がどのように機能するかについての、中心となるアイデアの部分だと思います。

たとえば、暗号化の仕組み、ブロックチェーンの仕組み、P2Pシステムの仕組み、発行上限が2,100万に制限されている理由、使用しているコンセンサスメカニズムなどの主要な機能を変更するにはどうすればいいか、などは押さえておくべきだと考えます。

技術者でなくても、この資産を理解するためには、技術的な側面を十分に理解する必要があるのです。

違う視点からみてみること

2017年の私の仕事の一部は、ハードフォークについて詳細を把握することでした。Bitcoinは何度か厳しい時期を経験したので、もしかしたら他の暗号通貨との競争で負け、市場シェアを失っているのではないかと懸念していました。

実際他の様々な暗号通貨に追い抜かれて、Bitcoinの市場シェアは40%台に落ち込んでいました。どの暗号通貨も希少性があり、そのコンセンサスプロトコルの方法に基づいて一定数しか存在できないにもかかわらず、誰でも新しい暗号通貨を作ることができます。

私は「もしも様々なコインが互いに価値を弱めあってしまったらどうしよう」とか、「市場シェアやネットワーク効果が最も大きいコインが一つもなかったり、個々のコインの価値が上がらなかったりしたらどうしよう」といったようなことを考えて心配していました。

ハードフォークの時に特に、ブロックサイズに関しての議論や、メリットとデメリットの議論など、あらゆる点で賛否両論の議論が繰り広げられました。私はただ静観するだけでしたが、最終的には議論が合意をむかえ、結論が出されました。

私は、あるブロックサイズが他のサイズよりも優れている理由を、外部の視点から、技術的に研究してきました。​そしてBitcoinは、たとえ何千もの他の暗号通貨が作られたとしても、価値を維持するのに十分なネットワーク効果があると確信しました。​

そしてBitcoinは、ハードフォークをはじめとする数多くの窮地をくぐりぬけました。Bitcoinはセキュリティ、ハッシュレート、シンプルさ、分散化など、私たちが求めているすべての重要な要素を備えています。​

技術者以外の人たちにとって、自分たちが何に取り組もうとしているのかを確実に知るためには、まずは技術的な側面について十分に学ぶ、というアプローチをとらなければいけません。

デジタルゴールドとしてのBitcoin

「ソフトウェアが世界を飲み込む:Software Is Eating The World」 という有名な言い回しがありますが、ソフトウェアはある業界から来て別の業界に行き、業界の現状がどうであれ侵食し続けます。

それと同じように、Bitcoinもある意味ではゴールドをデジタル化した、お金を浸食するソフトウェアです。​高い携帯性、没収しにくい性質、検証の容易さ、安価な取引コストなど、ゴールドよりも有利な点がいくつもある、貴重なデジタル資源だと言えます。​

Bitcoinのマクロ要因を理解するには、不換紙幣と比較するのがいいと思います。​たとえば銀行にお金を預けて、価値を維持しつつ、プラスの金利で価値を高めることができるのであれば、そのお金をやめて、代わりにゴールドやBitcoinを保有するインセンティブは低くなるでしょう。 

​銀行に預けているお金に何が起こっているのか

歴史的にみると通貨の切り下げが起きていて、政府がお金を印刷したり、金利がインフレ率を下回る期間が長く続くと、時間の経過とともにゆっくりと富が削られていきます。
このように、不換紙幣が切り下げられている時期においては、希少価値の高い資産が非常に良いパフォーマンスをします。

したがって、金や銀でも、株式や不動産でも、あるいはBitcoinでも、いずれの資産を考える場合でも、不換紙幣の切り下げの歴史を振り返り、なぜ特定の時期に切り下げが起こりやすいのか、起こる時期と起こらない時期の違いを知ることが重要だと思います。

10年米国債へ10,000ドル投資した場合の価格推移

 【青線】名目成長  【オレンジ線】実質成長

たとえば、ここ10年間の間だけで大幅な通貨切り下げがあったのはどうしてかを知ることで、たくさんのことが見えてきます。

​実質金利と名目金利の違いを理解し、金利単体でみるのではなく、金利とインフレ率の関係をみていくことで、銀行に預けている預金に、実際何が起こっているのかを知ることができます。
私の保有するソブリン債に何が起きているのかも分かるし、他の資産もみれば、なぜゴールドとBitcoinがこの環境で伸びていけるのか、知ることができるでしょう。

実質利回りマイナス時代

現在世界中のほとんどの国において実質利回りがマイナスになっています。つまり、預金利回りや債券利回りのほとんどが、インフレ率を下回っているということです。

実質利回りマイナス時代は、その経済システムの中にどれだけ多くの負債が含まれているかによって、かなりの期間続く可能性があります。

経済システムにおける負債蓄積サイクル

私の行っているマクロ研究の一部は、長期的な負債サイクルのもたらす影響についての研究でよく知られているGreg D’Aleo氏の影響を受けています。

我々はパンデミック以前から大きな負債問題を抱えていたものの、パンデミックはこの問題をより一層悪化させました。

多くの国の短期的な景気循環を見てみると、システムに負債が蓄積されていく好不況の循環(Boom And Bust Cycle)があります。負債が蓄積されていくと、自然の力あるいは政府の力によって、経済に負の影響を及ぼすようななんらかの変化が訪れます。

いったんそうなると今度は負債削減と景気後退の期間に入ります。つまり中央銀行が介入して金利を引き下げる一方で、財政当局が経済刺激のためにお金を使うのです。

負債削減は部分的に行われるため、不良債権を抱えた企業や家計は債務不履行に陥ります。金利の引き下げも同時に行われているため、全体的に負債削減措置をすることはないのです。

おそらくは政府は金利の引き下げにより半分ほど負債削減をした後、またそこから負債の蓄積をはじめるのでしょう。なぜなら政府としては、不況の時期をなるべく短く押さえて、人々にさっさと仕事に復帰してほしいと考えているからです。

したがって負債削減はあくまで短く部分的で、またすぐに蓄積がはじまります。

好不況サイクルの特徴このような景気循環を複数回繰り返すと、長期的な負債サイクルが発生します。金利がどんどん低くなり、GDPに占める負債の割合がどんどん高くなっていくのです。

そして金利が0になった時すべてが頭打ちになります。中央銀行の金利政策がそこで尽きるからです。

特にアメリカではこの「好不況サイクル」にとても大きな特徴があります。金利が0になり中央銀行の策が尽きてそれ以上なにもできなくなると、財政当局が介入してきてお金を大量に使うようになるのです。

対GDP比の負債割合(青色)と短期金利(オレンジ色)の推移

Zerobond long term debt cycle:ゼロ金利地点

負債軽減の本当の意味アメリカの歴史を振り返ってみると、前回、金利が0になったのは1930年代でした。この局面は最終的には、預金利回や債券利回りをインフレ率以下に抑えた大規模な財政支出によって解決されました。

この財政政策は大きなインフレを起こしました。ソブリン債(政府や政府機関が発行または保証を行っている債券)は名目上はすべて返済されましたが、人々の購買力は落ちてしまいました。

つまり、現金を保有している人やソブリン債を保有している人はお金は取り戻せたのですが、同量のドルをもっていても、その購買力は大幅に減ってしまったということです。

歴史的にみると、通貨を操れる国はこのようにして大きな負債バブルから抜け出してきたのです。

1930年代半ばから1970年代半ばまでのおよそ40年間、10年米国債などの資産は非常にお粗末な投資対象となってしまいました。この期間に戦争で負けた国々にいたっては、状況はもっと悲惨でした。

10年米国債金利(青色)と米国内インフレ率(オレンジ色)の推移

アメリカは実際のところ通貨切り下げが少なく、だからこそ強国でした。アメリカで起こったことは世界規模であり、その影響は一国のみに留まるものではありません。

米国債は1940年にその購買力の3分の1を失い、1970年にまたさらに購買力の3分の1をを失いました。GDPに占める負債比率の低下とは、つまりそういうことだったのです。

他の国でもこれと同じようなことが、あるいはもっとひどいことが起こっているのです。

負債バブルから抜け出す方法として、国家には2つの選択肢があると考えています。1つ目は債務免除(Debt Jubilee)、つまりは中央銀行がソブリン債務の履行を免除することです。これは金融工学を用いれば実現が可能です。

2つ目は、しばらくの間インフレ率を下回る金利を維持することです。ただしこれは、時間の経過とともに債券や預金を保有している人の購買力を削ることになります。

ゴールドの保有が違法化された時代

コンピュータやインターネットがなかった時代は情報の伝達がかなり遅く、インフレ率や金利をオンラインでリアルタイムに確認することも出来ませんでした。情報量が圧倒的に少なかったのです。

市場に目を光らせていた人でさえ新聞から情報を得るだけで、多くの人は情報を追うことさえしていない時代でした。

そんな時代の中、具体的には1930~1940年代ですが、富を維持するための一つの方法がゴールドでした。ゴールドを保有すれば、通貨の切り下げから自分の富を守ることができるというわけです。

これをさせないためにアメリカを含む多くの国では、ゴールドの所有を違法にしたのです。しかし、そもそも当時の人々はリアルタイムで情報を確認することすらできなかったので、ゴールドを購入する必要性も感じていませんでした。

今の時代を生きる我々は、歴史を通じて政府がどんなことをしてきたのか知ることができます。しかもリアルタイムで情報を見ることができ、インフレ率や金利といったレートを直接知ることができます。

こういった知識があるおかげで、代替資産を見つけようとする人々の意欲も高まっていると思います。このことは現在の株式市場にもよく反映されています。

大恐慌以来の史上最悪の経済ショックともいえる状況の中、多くの国々の経済は、ここ数十年の中で最も深刻な不況となっています。しかしそれとは裏腹に株式市場はかなり好調です。

これは人々が「景気刺激策のことを考えると、銀行にお金を預けておくよりも、株を持った方がいい」ということに気づき、「キャッシュフローを生み出している会社の株式を保有した方がいい」と考えるようになったからです。

Bitcoinとゴールドについても同様で、ここ2年間よい上昇傾向が見られています。

分散投資の利点

分散投資はテールリスク(想定外の暴落リスク)を軽減するのに役立つと考えています。

富の全てを1種類の資産に集中させた場合、30~40%の割合で下落等のリスクが発生しやすくなりますが、分散すれば富をある程度守ることができます。

すべての資産が一斉に下落するような、想定外のリスクもあります。2020年の3月に起きたのもこのような特殊なケースです。しかしそれぞれの資産はその後、異なるレートで徐々に反発して価格を戻してきます。

価格の戻り方や戻る早さは資産によってばらばらです。ゴールドやBitcoinは債務を含まない商品であるため、すぐに価格が戻りました。一方、銀行株やエネルギー株は下落によるダメージが大きく、価格がそれほど戻りませんでした。

短期的なボラティリティを無視することができれば、分散投資を行って富の大きな損失を避けられます。

株や不動産投資については外国のもの含めて検討すべきです。私は欧米と日本の株式に加えて新興国の株式も持っています。特定の市場や財政政策に縛られないように、分散させることを心がけています。

我々の現在の置かれている環境下では、ゴールドとBitcoinをポートフォリオに組み入れるのはとてもいい選択だと思います。歴史的にみるとゴールドは実際の産業と反比例して動くという傾向があります。

逆に、銀行の預金金利がインフレ率よりも高いような環境下では、例えば年利2%とかであれば、現金を保有するのがいい選択です。ゴールドはこのような環境ではあまり役に立ちません。

しかし、インフレ率が1%で預金金利が0.5%だとしたら、銀行に金を預けると徐々に損をすることになります。このような環境では、ゴールドやBitcoin、適正価格の不動産投資、コモディティなど、希少性のあるものがかなり持ちこたえる傾向があります。

このように、状況に応じて様々な資産に分散投資をすることで、損をしてしまう危険性をある程度軽減することができるのです。

高まるBitcoinの需要と魅力

自国の株式市場がないような国では、Bitcoinなどの代替資産を購入しようとする意欲がより高まる傾向があります。通貨の弱体化は人々をBitcoinに導く強い要因です。しかもBitcoinは最もアクセスしやすい資産の一つでもあります。

これはBitcoinがゴールドよりも優れている点でもあります。インターネットに接続することさえできれば誰でもBitcoinを手に入れることができます。Bitcoinを手に入れることで、自国通貨の購買力を失わずに、活用することができるのです。

マイニングを推進している国の例としてイランが挙げられます。国によって姿勢が異なるのも面白いところです。例えばロシアや中国はBitcoinに反感をもっていますが、イランやトルコのような国では、Bitcoinに対してよりオープンです。

このように国によってBitcoinへの対応は様々ですが、一般的には途上国に住む人々の方が、自国通貨の価値が下がるという経験を多くしてきています。したがって彼らは先進国の人々よりも、Bitcoinやゴールドなどの資産価値をはるかによく理解しているのです。

実質金利マイナス時代の投資

実質金利がマイナスの時は、稀少資産に投資しようとする傾向がより高くなります。世界中の実際の産業に注意を払うことが大事です。人々が代替資産を考える時に重要となってくるのは実際の産業の状態だからです。

長期的な不況で実質金利がマイナスの時、人々はゴールドやBitcoin、あるいは農地など、基本的には希少価値の高いものを購入する方向に動きます。

しかしこういった資産の中には、リターンの得られない、高い機会費用がかかるだけのものもあります。ですので、もしも預金やソブリン債などでプラスのリターンが得られる投資があるのなら、銀行に預けるなどしてリターンの得られる方法で保有しておくべきです。

しかし預金などの貯蓄性商品でプラスの利回りが得られない場合もあります。そのような場合は、たとえ低利回りでもプラスの利回りをもつ、良質な資産が魅力的になってきます。

そのような資産からリターンを得ることができるかもしれません。たとえばインドのゴールド債券なんかがいい例です。他にも、Bitcoinからのリターンを提供している会社などもあります。

経済にとってのデフレとは

経済にとっての理想的な状態はデフレです。なぜならデフレになったほうが自分の保有するお金の価値が上がるからです。

私はJeff Booth氏という方と何度か一緒にポッドキャストを配信したことがありますが、彼の主張は「テクノロジーは、それ自体にデフレ効果がある」というものでした。

テクノロジーは我々の生産性を向上させコストを削減してくれるので、色々なものの値段を安くしてくれるという側面があります。つまり、我々の保有するお金で、より多くのものを買うことができるようになるということです。

しかし、現状の経済は、負債があまりにも肥大化しすぎています。GDPや所得やマネーサプライに対して負債が多いため、デフレが長期化しないのです。この状況は最終的に組織的な崩壊を招くことになります。

現在の短期景気循環では、毎回中央銀行が介入して金利を下げ、不況をなるべく短く押さえようとしています。中央銀行の介入は金利が0になるまで続けられます。

しかし理想的なのは、当局が市場に介入して短い景気循環を生み出す、という流れをやめることです。

景気を循環をそのままにしておけば、財政支援はできても債務の増加を促進することはできなくなります。そうすると、デフレにより人々の通貨の購買力が高くなります。

現時点では、今陥っている負債バブルから抜け出す方法を考えることが先決になります。この負債バブルは、このまま行けば、より一層深刻なインフレへと発展してしまうからです。

アメリカで株式投資が盛んな理由

数十年前までは、企業が個人のために年金を提供するのが一般的でした。しかしそれは変わりました。時間が経つにつれ、人々は「401K」という投資用口座に移行し始めました。

401Kの口座はシステムアカウントであり、雇用主から従業員に提供されます。従業員は自分の賃金のうちの何%かを拠出して、401K口座に入れることができます。

401K口座にいれた分に関しては課税されません。通常は、従業員が自分の賃金から拠出した資金の一定割合を、雇用主が「マッチ(match)」として給付します。この給付金も、直接従業員の401K口座に組み入れられます。

例えば従業員が自分の賃金の5%を拠出すれば、雇用主も5%を従業員の401K口座にいれるといった具合です。

401K口座内のお金は税制上の優遇が受けられます。また口座内のお金は投資に回すことができます。提供されている選択肢の中から、自分で任意の資産を選んで投資します。

選択肢の中には、たとえば株式、債券、ETFなどがあります。運用中は非課税で、退職した後などに401K口座からお金を引き出して使い始めると、その時に税金の支払い義務が発生するという仕組みです。

401Kは、人々のための投資だと言えます。アメリカでは株式市場への投資が盛んに行われていますが、これの一つの理由としては、401Kという仕組みがあるからです。401Kと似たようなものでRoth IRAというのもあります。このように、我々には株式の所有を奨励する多種多様な口座が提供されています。

こういった仕組みは全て、株式に重きを置く傾向があります。だからこそ、ヨーロッパや日本に比べると、アメリカ人は純資産の多くを株式に投資しているという傾向があります。

投資家とトレーダーの違い

私の保有期間は数年単位ですので、そういう意味では投資家です。私は危ない賭けにはでません。

トレーダーはアルトコインに興味をもつ傾向があります。アルトコインはボラティリティが高いからです。ボラティリティを重視したトレーディングは、資金が3倍になる可能性もある一方で、一晩で半分の資金を失ってしまう可能性もあります。

これに対して投資家は、より長い時間の枠組みで物事を考えていく必要があります。例えば「Bitcoinの時価総額は今後の3~5年の間に伸びる可能性があるのか」「Bitcoinの価値をより高められる動因としては何があるか」「どのようなリスクがあるのか」といったことを考えなければなりません。

トレーディングが好きでテクニカル分析をしているような人であれば、今日、来週、来月、といったような短い時間の枠組みで物事を考えます。つまり、トレーダーと投資家では、時間の枠組みの捉え方と、目的が違うということです。

完全非中央集権のBitcoinと、まだ中央集権的であるその他の資産

ゴールドトークンは、技術を上手く応用したいい例です。ゴールドに流動性を求める人たちに、より高い流動性を提供することに成功したのです。しかもETFに比べると中央集権への依存度も少し低くなります。

しかしそれでも、ゴールドに裏付けされている各種資産と、完全に分散化されていて中央管理者不在のBitcoinとでは、大きく異なります。

ゴールドに裏打ちされた暗号通貨や、ゴールド関連のETF、そしてゴールドトークンなどは、まだ中央管理者によって保有されています。

したがってこれらのもので取引をしようとする我々は、中央管理者の主張を「信用」しなければならないのです。

中央管理者が「埋蔵量を確保できている」「検証できている」「政府の干渉はない」と言ったら、これらの主張を「信用する」ということを求められるのです。

中央管理者のいるトークンは、様々な分野に応用できる技術だとは思いますが、それでもBitcoinとは別物なのです。

高騰する手数料を抑えるには

暗号通貨の業界はまだまだ発展途上です。以前よりも効率的になってきてはいるものの、それにともない手数料も高くなってきている状況です。ライトニングネットワークといったセカンドレイヤーが、手数料を押さえる役割を担っていると思います。

例えばある銀行から別の銀行に送金したいとします。これには多くの時間と費用がかかります。いちいち全てのトランザクション、特に少額のトランザクションなんかには、膨大な時間と費用はかけたくありません。

小規模なトランザクションについては、たとえばPaypalといったような、迅速に送金ができるグローバルなプラットフォームがいくつかあります。また、各国もそれぞれ、自国で使えるプラットフォームをもっています。

Bitcoinによるトランザクションも効率的です。時間は多少かかりますが、手数料は安価です。Bitcoinがよりスケーラブルになるにつれて、ライトニングネットワークをはじめとする、セカンドレイヤーの重要性より増してくると思います。 

これらのセカンドレイヤーでは、トランザクションの一部を一旦チェーンからはずして効率的な処理をほどこし、そしてまたチェーン上にのせる、ということが行われています。 

0%よりも1% 

暗号通貨業界に参加すべきかどうかを考える私なりのアプローチに「0でないようにするためにはどうすればよいか」というものがあります。

このアプローチは「Bitcoinに大きく賭けるべきかどうか」という議論ではありません。私は「なぜ0%よりも1%の方が良いのか」という考え方に主眼を置いています。

例えば、ポートフォリオの内の1%~2%をBitcoinに投資すると、リスクとリターンの非対称性が発生します。つまり、Bitcoinにポートフォリオの全てを投資したり、ポートフォリオの20%を投資したりするよりも、ポートフォリオに、より多くのものを追加することがきるということです。

もちろん中には、この分野をよく研究し、業界に精通していて、確固たる信念をもっているため、Bitcoinにより多く投資ができる人もいます。

Bitcoinの時価総額をみてみると、まだ世界中の富の内の約1%の割合です。世界の富のほんの一部なのです。このことについてはよく理解して頭に入れておくべきです。

もしも自分の富の1%をBitcoinに投資しているのであれば、すでに時代の先を行っているといえると思います。この業界における自分のスペースを、すでに確保できているということだからです。

Bitcoinの値動き

暗号通貨業界に参入してBitcoinを買うべきもう一つの理由は、Bitcoinの価格です。ログチャートを見てみると、Bitcoinの値動きが指数関数的に上昇しつづけているだけではない、ということがわかります。

一定の期間ごとにピークが訪れたり、数年間にわたりもみ合い相場がつづいたりしてます。Bitcoinの値動きは半減期のタイミングにかなり影響を受けていると言えます。

Bitcoinの平均市場価格推移

もみ合い相場→更なるもみ合い相場→小さな強気相場→大きな強気相場→調整局面ともみ合い相場、というの一連の流れが、次の半減期までのサイクルです。

ここ2~3年の間は弱気相場が続き、Bitcoinは新たな高みに達していません。したがって業界の活気も弱まりました。ユーザー数が増えていないのも当然のことです。

ログチャートの値動きは人々の関心を集め、人々を興奮させる作用があります。とはいえ、ログチャートをみるのはとても参考になります。もしも再び強気相場が戻れば、人々の関心もまた戻ってくるでしょう。

年次レポートの内容

私は毎年、年次レポートを発行しています。このレポートは約30カ国の経済動向を追うもので、全ての情報を1箇所に集めた仕様のレポートとなっています。その中でも特に一握りの国々については、さらに詳細な考察を実施しています。

私は、アメリカ、ヨーロッパ、日本、中国、インド、ロシア、そして南米全体を一つの大きなグループとして見ています。これが私にとって鍵となるグループで、このグループに関しては、より集中的に見るようにしています。こうして集中するこで、今後の動向の可能性を検討しています。

たとえばS&P500に乗っているような上場企業をいくら分析しても、競合に対して優位性を保つことはできません。これらの企業を分析しているアナリストが多すぎるからです。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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