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「ユダヤ教の価値観からみたBitcoinとは」ユダヤ教ラビのマイケル・キャラス氏にインタビュー

マイケル・キャラス氏(Michale Caras)は、児童が簡単にBitcoinについて学べる絵本を出版し、次世代のためのデジタル教育を行っています。また、キャラス氏はユダヤ教指導者のラビでもあり、主に中高生にユダヤ教の教科を教えています。今回は、「Bitcoinとユダヤ教」という宗教的な観点からみたお金のお話などについて伺いました。

インタビュー日 : 2021年2月9日

子供でもBitcoinについて学べる絵本

私はシンプルなものが好きです。Bitcoinに関する様々な説明は、ここ数年でかなり進歩して良くなってきてはいますが、それでもどうしても色々な専門的な技術用語が登場するので、人々は慌ててしまいます。

技術的なバックグラウンドがない人にとっては、たとえば私もその一人ですが、とても理解しにくいことのように思えます。だからこそ私は、分かりやすいようにたとえ話なんかも織り交ぜながら、簡潔な説明をしたいと思いました。

自分の子供にもこのように教えています。長女は現在9歳になりますが、私が児童書を執筆した当時は7歳でした。私の書いた本は、当時の長女にとって十分理解できる内容でしたので、7歳の子でも読んで理解できる内容です。

児童書を書いた狙いとしては、大人から子供へのプレゼントとして買ってもらうことです。親もBitcoinについて分かっていなければ、親子で一緒に読んで一緒にBitcoinについて学ぶことができるというわけです。

たとえばどこかのBitcoinerが親戚の子供の誕生日かなんかにプレゼントする、なんていうシチュエーションが狙いです。

またお年寄りに関しても、私の周りにもテクノロジーのことを全く理解していない年配の方が多くいます。そういうシニアの人たちは、自分の知ってる誰かから話を聞かない限り、Bitcoinについても理解してくれません。

そんなところに児童書があれば、Bitcoinが何なのか理解してもらうのに役立つはずだと思ったのです。

伝えるべきポイント

Bitcoinとは、まさにテクノロジーを使った経済発展だと思っています。私の書いた本でもここに焦点を当てていて、本当に簡単な経済学の観点からBitcoinを説明しようとしています。

Bitcoinの背後にある技術的な仕組みなどについては要約してまとめてしまっています。なぜなら、たとえばWi-Fiの仕組みや、スマホがどのように機能しているのかを知らなくても問題がないのと同じように、ここでは重要なポイントではないからです。

大切なのは仕組みではなく「スマホを使えばおばあちゃんと顔を合わせることができる」というところです。Bitcoinについても、これと全く同じことが言えると思います。

ユダヤ教からみたBitcoinとは

私は、シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)や青少年グループ、それから大学生などに向けて「Bitcoinとユダヤ教」と題したプレゼンテーションを行うことから始めました。

プレゼンテーションでは、ユダヤ教の聖書であるトーラーを読み解き、お金についての宗教的、法的、倫理的な観点とは何か、ということについて話しています。そしてそれらのことを「なぜBitcoinがさらなる進化のための方法となれるのか」ということと関連づけて考えるのです。

お金は聖書の中で、様々な形で登場してきます。古代よりお金は、家畜、そしてゴールドやシルバー、それから宝石、といったような形をとってきました。それが近年では法定通貨という形に発展しました。そして現在、デジタル通貨という形を通じて、お金はさらに発展しています。

そんな中、人々は「お金とは何か」という一般的な考えを持ってはいます。しかし、まだまだ全体像を捉えきれていないのです。つまり人々は「なぜクレジットカードがお金なのか」ということについては分かっていないのです。

私の本は美しい図鑑のようになっていますが、これはグラフィックデザイナーでもある妻のおかげです。彼女は他の人に依頼されて、本やイラスト本をいくつか出版しています。彼女が、私の単なるアイデアをこのような美しく素晴らしい形にしてくれたのです。

ユダヤ教の価値観とお金

価値の貯蔵庫、交換の媒体、勘定の単位、といったのものは聖書の様々な節に登場します。

ユダヤ人にとっては、様々な宗教的な習慣などと同じように、お金について色々と細かい具体的な話もあります。

しかし私は、もっと広くて一般的な説明をしています。私は、お金とはテクノロジーであると説明しています。

ある時代においては牛などが、また別の時代にはゴールドやシルバーの鉢などが、お金として使われてきました。今日ではドルや円が使われています。

お金とはテクノロジーであり、たとえば薬なんかと一緒です。古代の薬は現代の人々にとっては役に立たないものです。現代の我々にとって役立つ技術があるのであれば、もちろんそちらに目を向け、その技術を使います。

世界のあらゆるものは、それぞれの人が自分の目的を果たしてよりよい世界を作り、お互いに助け合うために存在している、というのがユダヤ人の中心的な価値観です。したがって、生活をより良くできるような技術やお金をより良い価値保存手段にできるような技術があれば、それに従うべきです。

300部のBitcoin児童書をアメリカ議会にプレゼント

マーク・ザッカーバーグが議会でLibraについて証言しなければならなかった時、ほとんどの議員たちはブロックチェーンやデジタル通貨技術について、何も理解していませんでした。議員たちは、Bitcoinが何なのかをよく理解しているようには見えませんでした。

私の本は、決して彼らを困らせる内容ではないと考えましたので、大統領あてに本を送りました。これが自分にできることだと思ったからです。

その後より多くの公聴会が行われるにつれ、議員たちに本を送るコストをカバーするのに、スポンサーをしてくれる人はいないだろうか、と考えはじめました。

すると驚いたことに、数週間の間に多くの人々が私の問いかけに応答してくれて、私のアイデアを支持してくれました。これらの支持のおかげで、議員たちに300部の本を送ることが可能となったのです。

トランプ前大統領をはじめとし、何人かの上院議員や他の議員たちからは手紙が届きました。しかし本を受け取っているはずのほとんどの人からは、特に何も反応がありませんでした。

おそらくは議員たちが本を手にする前に、アシスタントの人たちが本を一掃してしまったのではないかと推測しています。一掃された本が、最終的によいところに落ち着いてほしいとは思います。しかしながら、300部の本を送ったのは本当に素晴らしいプロジェクトでした。

Bitcoinを理解する政治家

現在の議員たちの中にはBitcoinについてよく知っている人も多くいます。たとえばワイオミング州の上院議員であるシンシア・ルーミス氏のように、本格的なBitcoinerである議員もいます。彼女はBitcoinを自己管理しています。彼女と同じように、Bitcoinを支持している議員がまだまだいるかもしれません。

Bitcoinに対する一般的な理解は大きく変化してきています。ビジネスの世界だけではなく、政治の世界においても大きな変化が訪れています。

大富豪のイーロン・マスクも、15億ドル分のビットコインを購入しています。しかしBitcoinについて十分に理解していない人は、Bitcoinの勢いはこの辺りで止まるだろうと考えています。

Bitcoinを説明する必要性すらなくなる?

年配の人たちが自然にBitcoinを理解できるとは期待していません。しかし若い人たちはできるのではないかと思っています。若い人たちは、Bitcoinに対して、年配の人々が抱いているような疑問は抱きません。

彼らはデジタルネイティブ世代で、デジタル通貨も身の回りにあるという環境で育ってきました。この世代に生まれた赤ん坊は、本を手にとれば表紙をスクロールしようとします。

私はかつて、近所に住む年配の女性のためにWi-Fiの設定を手伝ってあげたことがあります。その際にやり方をどこで覚えたのかと聞かれたのですが、こういったことは覚えたわけではありません。もともと知っている環境に生まれたというだけのことです。

したがって、若い世代の人たち、特にBitcoinの発明以降に生まれた子供たちにはBitcoinを説明する必要はないと思います。iPhoneを説明する必要がないのと同じです。このように、Bitcoinの敷居というのはやがてなくなっていくでしょう。

少数のエリートだけが得する経済システム

私は慈善活動を強く支持しています。人々は互いに助け合い、気遣い合う義務があると思います。世の中には苦しんでいる人や助けを必要としている人がいます。したがって、互いに助け合うことは人間にとって必要不可欠なことだと思います。

お金の供給システムが中央政府によって恣意的に運営されるべきではないと思います。カンティロン効果という考え方があります。お金の効力、つまりお金の価値は、作られたところから近ければ近いほど高いという考え方です。

分かりやすく言うと、中央銀行がお金を刷れば、その最も近くにいる人々が最も得をするということです。結局はお金へのコネのある人々のところにお金が与えられるのです。しかし本当に必要なのは、お金がすべての人々のもとに等しく行き渡り、すべての人々を助け、経済全体を助けるということです。

実際には、最もコネのある人々が常に助けられて世話をされています。私はこのことを分かりやすく説明するために「お金の印刷場所にいる人は新品でピカピカのお金が手に入るから嬉しい」というたとえ話をよく使います。

お金を印刷しその行き先を決める権力が少数のエリートによって掌握されているべきではありません。自由市場であるべきです。税金も善意も皆で負担し合い、互いを養う義務を負うべきです。

Bitcoinとの出会い

私は様々なオーストリア経済学に関する著作、それからミルトン・フリードマンやピーター・シフといった人達の著作を読んできたのもあって、経済学の一般的な考え方に興味を持っていました。

また私は、いわゆるテクノロジーに囲まれて育った世代ですので、CDプレーヤーでもコンパックコンピュータでもiPod touchでも何でも、とにかく常にガジェットに手を出していました。

はじめてBitcoinのことを知った時は、それはもう大変興味を持ちましたが、実は2017年まではBitcoinをゲーム通貨と同じようなものだと考えていました。それまではデジタル通貨というと、ビデオゲームの通貨というイメージが強かったのです。

たとえば、MMORPGやWorld of Warcraft、それからNeopetsといったものイメージしました。これらのゲーム通貨で取引ができるということも知っていました。

私にBitcoinのことについて教えてくれたのは兄でした。兄はイスラエルでハイテク分野の仕事に従事しています。彼がBitcoinを紹介してくれてからというもの、私はすっかりはまりました。

しかし私は暗号通貨業界で働いているというわけではありません。仕事ではないのですが、この業界に対して大変情熱を持っています。だからこそ多くの時間をかけて、多くの人と暗号通貨に関することを共有したいと思っています。

Bitcoinの宗教的価値

宗教家的な観点からみても、Bitcoinには好ましい特徴がたくさんあります。そのうちの一つは、貯蓄と長期投資を奨励しているという点です。

私には6人の子供がいます。家族の将来のためには投資が必要です。肉体的なものであれ、精神的なものであれ、金銭的なものであれ、どのような投資をしていくべきか、考えなければなりません。

ドルは購買力を失いつつあるので良い投資だとは思えません。それに対してBitcoinは、長期的な貯蓄ができそうだという点で見込みのある技術なので、積極的に関わりたいと思えます。

これこそがBitcoinの価値で、決してニュースの見出しとかによくあるような、犯罪や悪いことのために存在しているのではありません。Bitcoinはごく普通の人がごく普通に、家族のためにより良い将来の計画を立てるためにあるのだと思います。

たまたま、テクノロジーを否定的な目的のために使う人がいる、というだけのことです。これはどのようなテクノロジーにも言えることです。

現在の制度について

現在の制度は、政治的に力のある人物とのコネクションを作ることが目的となっています。したがって本質的に不公平なシステムだと思います。

現在の制度の目的は、生産を増やすことでもなければ、最高の製品をつくることでもありません。製品を安い価格でつくることでもなければ、多くの雇用を提供することでもありません。

ロビー活動に費やされているお金、そして中央銀行とのつながりを確保するために費やされているお金というのは、とてつもない金額です。このような国家による中央集権的な体制は、決していい制度とは言えません。

学校教育や教育などに関しては、もっと地方に分散したシステムにした方がいいと思います。現在の制度の下では、お金と権力の結びつきがあまりにも強すぎます。お金の管理は、皆自分でするべきだと考えています。

ゴールドの失敗の歴史

法定通貨には、ゴールドより優れている点があります。ゴールドは持ち運びが不便で分割することもできません。売りにくく、場所をとりますし、送金もうまくいきません。ゴールドでコーヒーを買ったりはできないので、交換媒体にも不向きです。

聖書の中においても、ゴールドは主要な交換媒体ではありませんでした。ゴールドと比べてはるかに安価で分割も可能なシルバーの方が、優れた交換媒体でした。したがってヘブライ語でもトーラーでも、お金を表す言葉は「ケセフ」という語句で、これは「銀」という意味です。これは今でも変わりません。

このようにゴールドには欠点があり、完全なお金ではありません。というわけでBitcoinが発明される前は、現代の銀行システムもあって法定通貨の方がゴールドに勝る利点がありました。

しかし今日では、Bitcoinはゴールドと法定通貨の両方に勝る利点を持っています。ゴールドは、1930年代には保有していると没収され、1970年代には金本位制からはずされ、お金の裏付けとしての役割を果たせず失敗してきたという歴史があります。

ゴールドにはこのような失敗の歴史があるので、たとえ戻ってきたとしても、その地位を維持できるとは思いません。

これに対してBitcoinは自己管理が可能で、検証可能、分割も可能、そして携帯性にも優れています。Bitcoinは今まで行われていたゲームのルールを完全に変えてしまったのです。また、Bitcoinは柔軟性に優れているという点で、法定通貨よりも利点があります。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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