「Why Buy Bitcoin」の著者であるアンディ・エドストローム氏(Andy Edstrom)にBitcoinと行動心理学との関係や、Bitcoinに関するの懸念や期待についてお話をお伺いしました。また、インタビューの中では、人間の心に深く根付いている6つの道徳的基盤、「良いお金」を定義する14の特徴について説明されています。ぜひご覧ください。
インタビュー日 : 2021年2月10日
著作「なぜビットコインを買うのか」について
この本を執筆したのにはいくつかの理由がありますが、1つは自分のクライアントにBitcoinについて説明をするためでした。私はファイナンシャルアドバイザーであり、ウェルスマネージャーでもあります。クライアントのためにお金を投資し、彼らが収益を得られるようにするのが私の仕事です。
Bitcoinに出会ったのは2017年のことですが、これは実は3回目の出会いでした。それまでに2回Bitcoinに触れる機会があったのですが、最初の2回は無視していました。3回目にしてようやく、これはおそらく生涯で最も魅力的な投資だと認識したのです。このことを友人や家族やクライアントに説明をしなければいけないと感じました。
Bitcoinを理解するのは難しいか
たしかにBitcoinを理解することは難しいと思います。概念としてはシンプルな部分が多いのですが、その実態は「誰の許可がなくても使えるお金」というものです。これはとても数少ない稀なものです。
お金の本当の意味は、誰も教えてくれません。私はなんとか良い大学を出て、経済学の学位をとり、そして10年半投資関係の仕事をしてきたこともあり、お金とは何かについて知ることができました。
衝撃的だったのは、お金を扱う仕事をしている人でも、根本的にはお金のことを理解していないということです。
Moral Foundation Theory(道徳基盤理論)とは
心理学者のジョナサン・ハイト氏による「道徳基盤理論」という概念について、Peter McCormick氏と一緒に記事を執筆しています。
この理論は、人間の心に深く根付いている6つの道徳的基盤があるということです。その6つは以下のものになります。
- 保護と危害
- 公正と不公正
- 自由と抑圧
- 忠誠と裏切り
- 権威と破壊
- 神格化と降格
このような価値観をもつ人々は、おそらく長い歴史を通して、他の人々よりも成功をおさめてきたと言えます。
6つの道徳的基盤とBitcoinとの関係
①保護と危害については、環境保護主義に応用することができます。多くの人々がBitcoinは環境によくないと考えていますが、私は実はその逆で、環境に良いと考えています。
②公正と不公正については、Bitcoinの流通や分配と関係があります。たとえば、より早い段階にBitcoinを入手した人の方が遅い段階でBitcoinを入手した人よりも多くのBitcoinを持つ可能性がある、というようなことがあります。
③自由と抑圧については、これこそがBitcoinの最強の側面だと思います。Bitcoinは、過去の遺物的存在となった金融システムという枠組みの外での取引を可能にし、価値の保持を可能にします。まさに「自由のお金」なのです。
④忠誠と裏切は、金融業界でキャリアを積んできた私にとって親近感のあるものでとても大切なものです。金融システムというのは一般的に、システム自体の自己利益の追求するようにできています。
Bitcoinは真逆で、利益に挑戦する存在であり、利益に対して脅威的な存在だといえます。Bitcoinは、金融システムへの裏切りだと考えています。しかし金融システムは長い間人々を裏切ってきました。したがってBitcoinの裏切りというのは、正当なものであるといえるでしょう。
⑤権威と破壊というのは、反権威的な考え方と関係があります。ほとんどの人がお金を作るのは政府だと考えていて、ここに関して特に疑いません。しかしBitcoinはこの考えに挑戦するものです。
⑥神格化と降格というのはなかなか面白い考え方です。1ドル札や20ドル札を見ると、崇められている人物の肖像が描かれています。1ドル札にはアメリカを建国した人物の一人であるジョージ・ワシントンが描かれていて「神に信頼を」という言葉が刻まれています。これは、お金と神聖なイメージや概念を結びつけようとする試みです。
人間の行動心理学とBitcoin
Bitcoinをめぐる心理学は、議論されるべき重要な部分です。私は過去にBitcoinには経済的な価値しかないと人々に言って回っていた時期がありました。自分のこのような過去の過ちを認めるためにも、私はある記事を執筆しました。
記事は論理や計算に重点をおいたもので、他の様々な方法とは相対的なアプローチです。人々がBitcoinをどのように感じて、どのように理解するかというのは、今後Bitcoinがどのように使われるかという点に強く影響を及ぼします。
「良いお金」を定義する14の特徴
私の著作「Why Buy Bitcoin(なぜビットコインを買うのか)」におけるキーポイントの1つは、「良いお金とは何か」に関する解説です。この概念は、学校ではまず教えてくれないことです。
「良いお金」を定義する特徴は14個あると考えています。この14の特徴をすべて上手く満たしているお金というのはなかなかありません。14の特徴は以下となります。
- 識別可能であること
- 耐久性があること
- 分割可能であること
- 高密度であること
- 譲渡可能であること
- 希少であること
- 短期的に安定していること
- 長期的に安定していること
- 代替可能性があること
- 重要な目的のために必要であること
- 強力な存在に支えられていること
- 検閲に強いこと
- 没収されないこと
- プライベートであること
様々なお金の形態があり、これらのお金はすべて異なる長所と短所をもっています。ほとんどの人が何が「良いお金」なのかということを理解していません。したがって物事を論理的に比較することができていないのです。
お金の「良さ」を測るには
本の中では、前述の14の特徴について0から5までの尺度を使って評価しています。米ドル、ゴールド、そしてBitcoinについてこの尺度を使用して点数をつけ、評価をしています。
Bitcoinのトータルスコアはゴールドよりも高くなっていますが、まだ米ドルより低いです。しかしトレンド的には、Bitcoinが有利です。ゴールドの状況に関しては、特に変化がありません。米ドルといった法定通貨に関しては、印刷される速度がどんどん速くなってきているため、希少性が低くなってきています。
一方Bitcoinは希少性が高くなってきているので、この部分に関する点数が高くなってきています。さらに色々な観点から詳しく評価するために、他の特徴と尺度も使っています。
この方法によって算出された点数でいうと、米ドルは52点、ゴールドは46点、そしてBitcoinは47点となります。しかし将来的には、Bitcoinは57点まで上がる可能性が高いです。Bitcoinはすでにゴールドより優れていますが、将来的にはドルをも凌駕する可能性があるということです。
Bitcoinの弱点
14の特徴の中にある「短期的な安定」という項目において、Bitcoinの点数はもっとも低いです。つまりBitcoinのお金としての弱点は、短期的な価値の安定性だということです。
しかしこれは改善されてきている部分です。時間が経つにつれ、Bitcoinのボラティリティが低下してきているということからも、変化がおきているのがわかります。今後Bitcoinのボラティリティはさらに下がっていくと予想しています。
しかし我々は、途中で大幅な価格下落が起こる可能性を頭にいれておかなければなりません。また、Bitcoinに関して影響力のある人々の発言が価格に直接的な影響を及ぼすということも考慮しておかなければいけません。
クライアントにBitcoinをおすすめするには
クライアントは既に私の著書を持っていますので、まずは著書を目を通していただきます。読むのをためらっているような方には、「ぜひ読んでみて、Bitcoinと出会ってください」と声をかけています。今までこれで成功してきましたし、Bitcoinの保有を勧めて断れたことは一度もありません。
Bitcoinについて執筆している様々な著者
様々な著者が、Bitcoin界隈の重要なトピックを色々とカバーしています。とてつもない仕事量です。カバー範囲があまりにも広いため、著者同士の競争というのはあまり見られないように思います。
Bitcoinについて興味をもつほとんどの人は、複数の本を読みたいと思っています。なぜなら全ての本にはそれぞれの提供価値があるからです。私の本の提供価値は前述の通り「良いお金」を定義する14の特徴について述べられていることです。この枠組みは、私の本独自のものです。
この本は、私の投資論文でもあります。投資資産としてのBitcoinをどのように評価すればいいか、Bitcoin投資の潜在的なリスクと利点についてを論じています。
すばらしい編集者であるBeth Rashbaum氏サポートを得ながら、多くの人に手に取って読んでもらえるように執筆しました。彼女はスティーブン・ホーキング氏の本や、アリス・シュローダーの著書「スノーボール:ウォーレン・バフェット伝」も編集しています。本作はアメリカの資本家ウォーレン・バフェットの伝記の中でも最も人気のある一冊です。
企業のバランスシートに入るBitcoin
投資資産としてゴールドを利用しているのは主に個人投資家です。機関投資家が投資することもありますが、企業がバランスシートのためにゴールドに投資することはほとんどありません。テスラやMicroStrategy社が、Bitcoinをバランスシートにのせ始めたのは新しい展開です。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
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