「債券価格と金利の関係」クレジット市場アナリスト グレッグ・フォス氏 インタビュー ①

グレッグ・フォス氏(Greg Foss)はカナダとアメリカで32年間トレードクレジットを行ってきた経歴があり、クレジット市場に関する様々な分析を行なっています。フォス氏は、クレジット市場こそが最も重要なマーケットであると考えています。今回は債券価格と金利の様々な仕組みについて聞くことができました。ぜひご覧ください。

インタビュー日 : 2021年3月15日

クレジット市場の出す警告サイン

私はこれまでに何度も、クレジット市場の危機というものを経験してきました。クレジット市場が上手く機能せず危機に陥ると何が起こるかというと、まずは株式市場が崩壊します。これは様々な金融危機を通して何度も経験してきたことです。

クレジット市場は、危機に陥る前に警告のサインを出します。したがって危険が近づいているとうことが分かります。クレジット市場が大切なのは、たとえ株式市場が上昇しているような局面であっても、予兆となるサインを出してくれるからです。

「世界で最もリスクのない借り手」と呼ばれる米国債

クレジット市場を構成するものは様々です。政府の借入金、州や市町村といった地方自治体の借入金、住宅ローン担保証券、銀行ローン、そして企業など、ありとあらゆるもので構成されています。

一般的にクレジット市場というのは、国債市場からスタートします。アメリカの場合基本的な借り手は米国債ということになります。米国債は「世界で最もリスクのない借り手」と称されていて、他のあらゆる資産の金利は、米国債をもとにして設定されています。

常に需要のある債券市場 

債券市場が成長するのは需要があるからです。債券には年金基金などからの需要もありますし投資家からの需要もあります。投資家は、契約上の返済義務がある資産に自分の財産を投資したいと思っています。このように債券には常に需要と供給がありますが、債券の需要は一般的に金利として設定される価格に左右されます。

中央銀行による悪巧み

金利というのは、借り手が貸し手に支払う契約上の利息です。借り手として考えられるのは政府や企業などですが、政府と他の借り手の違いは、政府のバックには中央銀行の存在があるということです。

つまり、政府による借入金の金利は、中央銀行による市場操作が可能なのです。例えば中央銀行は米国債を買うことができますが、ここで問題となってくるのは、中央銀行が金利支払日を操作したり、リスクフリーレート(無リスク金利)として誤った借り入れ水準を設定したりできるということです。

中央銀行によるこのような操作は、様々な種類の債券市場や株式市場に影響を与えます。また債券の割引率も株式に影響を及ぼします。こういった市場操作ははっきり言って、中央銀行による悪巧みなのです。

借金スパイラルに陥る政府

借金スパイラルとはお金を借りすぎたときに起こる現象です。政府がこのような借金地獄下での経済をなんとか維持するには、3つの選択肢があります。

まず1つ目は増税をすることですが、これは一般国民には不評な選択肢です。2つ目の選択は支出を削減することです。しかしこの選択肢は政治家の間で不評です。3つ目の選択肢は非常に簡単で、お金を印刷することです。

14%から1%以下まで下がった米国債利回り

私がトレーディングの仕事を始めた1988年当時、米国債の利回りは14%でした。当時の米連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めていたポール・ボルカーは、インフレを止めることに固執していました。

インフレを止めるには金利を上げる必要があったため、一時は利回りが18%まで上昇したこともありました。しかし私がトレードを始める頃には14%まで下がっていました。

その後、1988年から2020年までの30年間で、米国債の金利は1%以下にまで下がってしまいました。実際には、0.6%で底を打ちました。金利が下がったことで債券のクーポンが減り、投資家の得られる利回りが減りました。結果として借り手だけが低金利の恩恵を受けたことになります。

借り手としては、低金利は嬉しいものです。しかし貸し手である投資家にとってはそうはいきません。もしも貸し手が、預貯金や債券ファンドからの収入を期待していた場合は、とんでもない被害を被ることになります。

債券価格と金利の関係 

金利が14%の時に債券を購入した人は14%のクーポンを得ることができます。金利が14%から10%に下がったとします。金利が下がると債券価格は上がります。そうすると、金利が14%の時に購入した債券の価格は上昇します。14%のクーポンの価値というは、10%で発行されているものよりもはるかに魅力的だからです。

債券とは、将来の一連のキャッシュフローの契約上の義務です。債券でキャピタルゲインが得られると思っている人がたくさんいますが、これは誤解です。債券を売却して実際に得ているのものはキャピタルゲインではなく、キャッシュフローの前倒しでしかないのです。

もしも購入時金利が14%だった債券を売却して再投資しようとすれば、14%よりも低いレートで再投資をすることになります。長年にわたり「債券でキャピタルゲインを得た」と言う人たちがいますが、実はただ金利が下がっていたというだけなのです。

金利が上昇したらどうなるか 

多くの人にとっては想像がつかないことかもしれませんが、米国債がデフォルトを起こす可能性はゼロではありません。

2021年の米国債金利は上がっています。1.25%だった米国30年債クーポンは2.72%相当まで上昇しました。逆に言えば、2020年に発行された債券は、翌年発行されたものよりも1%以上も金利が低いことになります。この金利上昇を経験した人たちは、たった1年で25%もの価値を失ってしまいました。

計算によると25%減ってしまった元本を取り戻すのには18年分のクーポンが必要になります。この考え方はデュレーション(平均回収期間)やコンベクシティと呼ばれるもので、債券に関する非常につらい計算です。クーポンの支払いは契約上の義務であり、その金利は債券の保有期間中ずっと固定されているため、このような考え方になるのです。

クーポンレートはどのようにして決まるのか 

クーポンレートを決めているのは市場金利です。米国財務省は定期的に30年債を入札していますが、クーポンはその時の市場の実勢金利によって決められています。

投資家はみんな高いクーポンを手に入れたいと思っていますが、市場金利に対して一定の高さでまでのクーポンレートしか出てきません。こうしてレートが市場によって決められてしまっているため、高いクーポンを手に入れることができないという仕組みになっているのです。

そもそもなぜ債券に投資をするのか

人々が債券市場に参加するのは、株式市場に100%参加することができないからです。投資アドバイザーが通常使うようなポートフォリオも、60/40モデルと呼ばれるもので、60%が株式、そして残りの40%が債券で構成されています。 

40%の債券の中には、国債や地方債や社債、そしてハイイールド債など色々なものがあります。ハイイールド債はデフォルト率が高く、リスクの高い債券です。デフォルトを起こしてしまうと、ほぼ確実に損をします。

しかしそんなハイイールド債でさえ、今では4%程度の利回りしかありまん。これはとんでもないことです。今までハイイールド債を扱ってきた経験のある私から言わせてもらうと、こんなものはハイイールドではありません。

デフォルトする政府

政府もデフォルトに陥る可能性があります。その場合は国民が付随する損害を受けることになります。政府はお金を印刷できるから債務不履行には陥らないというのは全くの迷信であり、決して事実ではありません。

ベネズエラやアルゼンチンなどの政府が実際にデフォルトを起こしています。これは歴史的な事実です。それから、私がちょうど債券投資をはじめたころの話ですが、ブラジルとメキシコもデフォルトに陥りました。

当時のアメリカ財務長官であったニコラス・ブラディ氏は、ブラジルやメキシコといった第三世界の国々に銀行が貸し付けた債務を立て直そうという計画を立案しました。私はそのプロジェクトの一員でした。

お金を借りる時というのはとても楽しいものです。お金を出してくれる人がいるので、プロジェクトを進めたり、雇用を創出したり、景気刺激策をとったりできます。しかしそのお金を返せないとなると、一転して困窮にあえぐことになってしまいます。

国がデフォルトに陥ってしまうと、国民の教育や医療が危うくなります。G7諸国では政府のデフォルトはほとんど見られませんが、実は他の国では日常的に起こっていることだったりします。

クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とは

クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とは、いわば発行体のデフォルトに対する保険のようなもので、基準となる資産がデフォルトした場合に守ってくれる保険の役割を果たします。

住宅保険や火災保険をイメージしてもらうと分かりやすいのですが、保険に加入すると毎年一定の保険料を払うことになります。デフォルトに対する保険(プロテクション)にも、市場や借り手のリスクに応じて設定された一定の保険料(プレミアム)があります。

例えばカナダはソブリン債を借りていますが、カナダの保険市場では国のデフォルトリスクに対するプロテクションとして、期間5年、年間0.37%というプレミアムが設定されています。

これはつまり、債券の購入者は約1,000万ドル相当の債務に対するプレミアムとして、年間37,000ドルを支払わなければならないということです。

保険販売者はこのように、プロテクションの売り手としてプレミアムを徴収するかわりに、デフォルトが起こった際には、保険金を支払う義務を負うというわけです。

さて、カナダは非常に高い格付けを受けているはずなのにもかかわらず、市場におけるプレミアムは0.37%と高額です。市場が格付けとは全く逆のシグナルを出しているということです。

もしも保険の売り手が大手ヘッジファンドなどで、5倍のレバレッジをかけていたとします。5倍のレバレッジを使えば、プレミアムとして徴収した0.37%を、およそ2%の利回りで運用することができます。

2006年、リーマン・ブラザーズのクレジット・デフォルト・プロテクションは0.09%で取引されていました。リーマン・ブラザーズの1000万ドル分の債務に対するプレミアムとして9000ドルを払うという計算になります。 

その後リーマン・ブラザーズはデフォルトに陥り、9000ドルのプレミアムは600万ドルもの価値になりました。

保険料率は、資産のデフォルトリスクに応じてどんどん上昇し続けます。リスクが高くなればなるほど、より高いプレミアムが課されるようになるのです。

信頼とは何か 

例えばカナダへ融資をしている外国人がいるとします。この人は、カナダドル建ての債券が大量になりすぎていることに気付けば、プレミアムを支払うことでプロテクションを手に入れ、少しでも損失可能状態を軽減したいと思うはずです。

このような場合は、市場にいるプロテクションの売り手から、デフォルト・プロテクションを購入することができます。売り手としてはマーケットにおける巨大なプレーヤーたちが考えられます。例えばゴールドマン・サックスといった大手グローバル投資銀行などです。

このようにして、市場において様々なリスク・プレミアムが開発されて調整されます。こういったプレミアムが取引されているという状況が起きているのは、自信や信頼といったものが疑問視されているからです。信頼というのはとても難しい言葉です。実は本当に管理が必要なものは信頼ではなく、リスクなのです。

一般市民は、政治家がお金をたくさん借りているのは、市民のためのことなのだと思っているかもしれません。しかし貸し手側からしてみれば、お金を貸せば貸すほど、その国の債券リスクは高くなります。つまり、もしも国が、蛇口をひねって水を出すかのごとく借金を続ければ、その国の債券リスクはどんどん高まるのです。

クレジットスプレッドとは

クレジットスプレッドとは資産のデフォルトリスクを示すものです。ある資産の金利を国債金利と比較した時に、リスク度合いの違いからくる利回りの差がクレジットスプレッドとなります。デフォルトリスクの高い資産になればなるほど、クレジットスプレットは大きくなります。

米国債(国庫短期証券や5年債、10年債、30年債券など)を無リスク資産として、これを基準にリスクフリーレート(無リスク資産の金利)が設定されます。

例えばアメリカのイリノイ州の財政状態が悪く、リスクが高いとします。そうすると、イリノイ州の発行する債券は米国債と比較してデフォルトリスクがはるかに高いということになります。このような場合、イリノイ州のクレジットスプレッドは大きくなります。

債務超過に陥った銀行 

私はカナダ最大の金融機関である、カナダロイヤル銀行でキャリアをスタートさせました。現実をお話ししますと、カナダロイヤル銀行は1988年、債務超過に陥っていました。

ブラジル、メキシコ、ベトナム、それからタイといった第三世界の国々に貸し付けていた債権が問題でした。これらの債権を償却することで吸収しなければならない累計損失が、資本の簿価を超過していたのです。

カナダ最大の金融機関にとってこれは恐ろしいことでした。この状況は、ニューヨークのマネーセンターバンクの数々の銀行と何ら変わらないものでした。この状況を何とかするために、ニコラス・ブラディ財務長官が、いわゆる「ブラディ・プラン」を打ち出しました。

銀行は「巨大すぎて潰せない」

世界中にある大手グローバル銀行の秘密は「巨大すぎて潰せない」という事実上の仕組みでがあるということです。この「巨大すぎて潰せない」という概念の存在に、遅かれ早かれ人々は気が付くでしょう。

銀行にはいざという時のためのバックネットが存在し、これは投資家にとって暗黙の了解となっています。国の提供する預金保険に加入している銀行の預金者にとってもそうです。銀行に投資しているこのような人々は「銀行は巨大すぎて潰せない」と考えているのです。

暗黙の了解のバックネットとはずばり政府によるお金の印刷です。政府はいざとなったらお金を印刷して銀行を保護することができます。政府による法定通貨の印刷によって生み出されている一連の状況は、とても疑わしいものです。しかも非常に長期間にわたって続いていることです。 

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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