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「Bitcoinを政府から隠すことはできるのか」Block Digital Corporation サンティアゴ・ベレス氏 インタビュー ②

ブロックチェーン開発企業「Block Digital Corporation」の共同設立者兼研究開発部門リーダーであるサンティアゴ・ベレス氏(Santiago Velez)にインタビューしました。原子力エンジニアとしての経験をもつベレス氏は、暗号通貨の分野を、コンピューティング、経済、金融、そして人間関係の交差点だととらえています。インタビューでは暗号通貨の価値の表現手段としての側面についてお伺いしました。

インタビュー日 : 2021年2月12日

政府はBitcoinを没収できるか

Bitcoinやその他のデジタル資産を差し押さえる権限は政府が持っていると思います。我々が差し押さえを免れるような契約は今のところないからです。

例えば犯罪を犯せば、自由を奪われます。住宅ローンを支払わなければ、家を差し押さえられて強制退去させられます。このように、我々は既に国家が様々な契約や法律を通して差し押さえる権限を持つ社会に慣れてしまっているのです。

このような社会の中で、Bitcoinやデジタル資産が特別な立ち位置を占めているとは決して思いません。逆にもしそうであるならば、政府にとっては実存的なリスクがあるということになります。

このようなリスクは政府の存立を脅かすものであり、政府が機能しなったことで社会が成り立たなくなるかもしれないという危機を孕むものです。

そこで我々市民にとって大切なのは、市民として政府に積極的に働きかけて、責任のある差し押さえや、公正な法律を求めることだと思います。こうすることで、自分の所有物に対して権利を持つことができるようにするのです。

Bitcoinを政府から隠せるのか

アメリカ市民として、我々には憲法で定められた一定の権利があります。したがって政府が我々市民の資産を差し押さえようとする際には、一定のルールに則らなければなりません。

しかし、もしも政府から財産を隠せば、没収こそされなくとも、使用することもできなくなります。

私の出身地であるコロンビアには、パブロ・エスコバルという大物麻薬密売人がいました。彼は現金を隠すことについて、「ジャングルに大量の現金を埋めておけばさすがに政府は没収できないが、今度は使えなくなる」というように話しています。

たとえ現金を政府の目の届かないどこかの穴の中に隠したとしても、何か他の財産と交換したり、商品やサービスを購入したりといった、意味のある価値表現をすることが出来なくなるのです。

つまり、お金は法律の枠組みの中でしか存在できないのです。Bitcoinを政府から隠して世界中を駆け巡り、どこか司法的に受け入れてくれる場所を探すというのは、亡命しているも同然の行為です。

しかも、Bitcoinは今までに存在してきた中でも、最も透明性の高い台帳と言っても過言ではありません。それを隠そうなどというのは、非常によくない考えだと思います。 

規制される前に挑戦する

アメリカ人は、してはいけないという法律がないことはしてしまいます。一方日本人は、権力者や社会に敬意をはらうという傾向があるのかもしれません。

これはある意味とてもいいことだと思います。社会や制度に敬意を払っている場所に住んでいるというのは、幸運なことであるということに気付くと思います。

しかしこのような社会は、進歩を遅らせるという可能性もあります。せっかく価値を引き出せるようなものも、プロセスが遅れしまっているということがあります。たとえば日本におけるライトニングネットワークの状況なんかがいい例です。

一方アメリカは日本の真逆で、法律がまだないという部分に付け込んで、規制がかかる前にできるだけ突っ走って色々なことを試そうとします。このようなやり方が、シリコンバレーのモットーです。

政府に主張していくこと

我々にとっての主権者は政府です。少なくとも民主主義国家では、その国の民主主義を体現しているのはその国の政府だからです。民主主義国家の政府に不安を感じるということは、Bitcoinとは全く別次元のより根深い問題があるのだと思います。政府に対する不安感というのは、先ほども出てきた自国の機関に対する信頼危機と関わりが深いです。

もしも政府が適切な対応をしていないと考えるのであれば、自分の財布を心配するよりもまず、他に優先してやるべきことあります。それは、政府がどのように運営されるべきなのかということを、しっかり主張するということです。

決して政府を恐れてはいけません。政府は我々や、我々の家族や友人を代表すべき存在だからです。政府が責任に問われないからといって政府を恐れ始めてしまったら、もはやBitcoin云々の問題だけではなくはるかに大きな問題になります。

暗号通貨は国家に対する試練

ドルは今でも世界中の全取引の70%を占めています。したがってすぐにはなくならないでしょう。しかし、通貨どうしの競争においては、暗号通貨がより重要な役割を果たすようになってくると思います。

BitcoinやEthereumのような超国家的通貨は、地域的な通貨とは全く異なっていて、価値を国際的に表現する能力を人々に与えます。だからこそ中央銀行は、かつてなかったような判断を迫られるでしょう。

暗号通貨はいわば旧来の国家に課された一種の試練です。国家はグローバル市場の制約の中でその機能を問われることになるのです。

とりわけ米ドルは、世界の基軸通貨として機能してきたので、他の通貨にはない様々な特権を享受してきました。したがって、失うものが最も大きいのはやはりドルとうことになります。現在享受できているような特権が享受できなくなってしまうからです。

購買力を増すデジタル資産

住宅や株式、それから債券といった資産の真の価値を評価することは非常に困難です。現在の市場には流動性が溢れているため、何が有益かを見極めることが非常に難しい投資環境となっているのです。

また、金利が非常に低いため、投資をする人々はリスク曲線を大きく取ろうとする傾向があります。これは市場の本来の在り方を歪めてしまっている要因です。

中央銀行が金融政策で過度に緩和してしまうとシステムの中で流動性が高まります。そうするとその流動性はデジタル資産に流れてインフレが起こります。Bitcoinの値段が上がるのはこのためです。

人々が突如として法定通貨のネットワークから離れようとするのは、Bitcoinネットワークにおける所有権のほうが、要するにBitcoinのほうが異常に強い購買力を持っているからです。

暗号通貨は法定通貨ネットワークへの牽制

また、Bitcoinネットワークにおける所有権は、法定通貨の潜在的なインフレに対するヘッジとしても機能します。このヘッジ機能というのは、実は中央銀行の景気刺激策への抑止力にもなっています。中央銀行が経済を活性化されるために好き勝手な政策を行うことを抑制しているのです。

つまり、例えば法定通貨と暗号通貨のように異なるネットワークが併存している場合、法定通貨のネットワークが自国内で恣意的な行動をとることは出来なくなるのです。

法定通貨ネットワークの管理者である中央銀行や政府の財政担当者は、競合ネットワークである暗号通貨ネットワークによって価値が吸い上げられてしまうのを防ぐため、過剰な通貨印刷や過剰な低金利をやめざるを得ません。

さらに、価格発見をめぐる問題の解決も迫られます。このようにより規律のある行動を取らざるを得なくなるということを考慮する必要があるのです。

今我々の世界に不足しているのは資源や解決策ではなく、優れたリーダーシップです。大勢の人が苦しんでいるのはこのためだと思います。

問題がどこにあるのかということを、物事の根本的な仕組みを理解し、そこから突き止めるような視点を持っていて、そして人々をよりよい未来に導いてくれるような勇気を持っている、そういう人が不足しているのです。

その結果、現存制度に対する信頼が失われ、制度や機関は信頼低下の危機に瀕しています。暗号通貨の登場は、ある意味この危機を示唆するものです。暗号通貨の世界に入ることはきわめて政治的な主張だと思っています。そして政府もこのことを理解しはじめていると感じています。

ミレニアル世代の考え方

人口統計学的な視点でみると、暗号通貨というのは、インターネット上の人間関係と地理的な人間関係の違いを理解しているデジタルネイティブたちの関心に沿ったものです。デジタルネイティブではない人々にとっては、ミレニアル世代がなぜこのようなシステムに引きこもるのかを理解するのは非常に難しいことです。

ところがミレニアル世代に関して言えば、例えばですが、アメリカの大学を卒業した平均的なミレニアル世代は、何千ドルもの借金を背負っています。家の価格は、本来あるべき価格の5倍まで膨れ上がっています。

つまりミレニアル世代の人々が先人から受け継いできた環境というのは、もはや機能していないのです。こう考えると、暗号通貨を購入する人々が過激派なのはなんら不思議ではありません。彼らにとって古いシステムはもう使いものにならないのです。

スマートコントラクトの複雑さ

スマートコントラクトとは、問題解決のためにプログラミングをするというもので、いわばエンジニアリングの交差点です。また、ある意味では法律に成り済ましているものだとも言えます。

アプリケーションを構築し、サービスや商品を提供し、仲介者を排除し、物事をより効率的に進めます。これらのことを可能にするスマートコントラクトは、インターネットの次の段階を象徴しているようなものだと思います。

この技術は、専門知識を必要とするネイティブ言語を有し、高い透明性があります。したがってスマートコントラクト上で動作する、例えばDeFiといった複雑な金融商品に従事する人々は、重大な脆弱性を抱えているのです。しかもこの脆弱性の全貌は明らかになっていません。

スマートコントラクトにはまだ特定されていないリスクが存在する可能性があるので、ここが問題だと思っています。リスクを特定するために、まずは高度な専門性を養成するところから始めなければいけません。

私はスマートコントラクトは投資対象のようなものだと思っています。適切に作動する構造を構築するためには、よい基盤、適切な材料、そして労働力が必要になるからです。

価値の正体とは

価値とは人間が創り出した抽象的な概念であり、要するに時空を超えて何かをしやすくするためのものです。

例えばドルというのは、過去にある仕事をしたということを、非常にシンプルに象徴する存在です。ある仕事をしたということは、一定のエネルギー等の資源を要したということです。したがって、その時要したものを将来的に別の何かに変換できるようにする必要があります。

この際の交換手段として、社会的に相対的な価値が認識されているものが必要になります。例えば通貨というのは、自分と自分の努力を、他人の努力と相対して表現することができる手段なのです。

通貨というのは非本質的なもので、あくまで抽象概念であるということを知っていれば、これをインターネット上のコードに落とし込むことが可能です。これが暗号通貨になります。

スイッチングコストの低下が続いていくと、ネットワークが需要と供給によってどのように制約されるかということに対して、単一の通貨単位があまり意味を持たないような方法で価値を表現できるようになっていくと思います。

日本の読者へのメッセージ 

デジタル資産のエコシステムにせよ、法定通貨のエコシステムにせよ、システム内の全ての主張を一旦疑ってみることをお勧めします。

できるだけ多くの声に耳を傾け、できるだけ多くの本を読み、何が起こっているのかについて真実を知り、自己学習をするというのが最善の方法です。この業界はまだまだ未開の地であり、多くの落とし穴のある無法地帯だからです。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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