SH

「Bitcoinロゴの誕生秘話とは?」フィル・ウィルソン氏が語るデザインの起源

Bitcoinのロゴには様々な秘密が隠されていることをご存知でしょうか。Bitcoinとの関係が深い数字やSF小説からの影響、なぜ縦棒が2本あるのか、なぜオレンジ色なのかという疑問に関して説明されています。是非ご覧ください。本記事は、フィル・ウィルソン氏(Phil Wilson)に寄稿していただいた記事「Bitcoin Symbol and Logo Origins」の内容を日本語へ翻訳し掲載したものです。原文の英語版はこちらをご覧ください。

Bitcoin Symbol and Logo Origins

Bitcoinロゴの誕生秘話

2010年2月24日にリリースされた初版のBitcoinの「B」のロゴは、私と他2人のクリエイターの会話から生まれました。図形の作成はPaint Shop Pro7で行いました。

世界的に有名な大企業のロゴというのは、作成手順の書いてある説明書に沿って作られています。これは正確な複製を可能にするためです。説明書があれば、テレビ広告、ウェブサイト、雑誌、Tシャツ、車のステッカーといったように、多種多様な媒体に全く同じロゴを使用することができるからです。

そこで我々が作るBitcoinのロゴにも説明書が必要だと思いました。ロゴの説明書を作る、つまりロゴを文章で作るためには、どうすればいいのか初めは見当もつきませんでした。しかしとにかくやってみることにしたのです。こうして誕生したのが、初版のロゴということになります。

Bitcoinロゴの説明書

しかし、一部の説明に関して、我々が希望していたほど正確に表現できなかったということで、初版の説明書が公開されることはありませんでした。

2010年10月の中旬を過ぎたころ、Bitcoinのシンボルのデザインを改善して、もう一度作り直す機会を得ました。ちょうどホワイトペーパーの発表から2周年を迎えようとしていました。

私は暗号通貨のコンテンツクリエイターであるBitboyに説明書を見てもらい、彼にとっても再現可能であるほど明確に書かれているかということを確認しました。

しかし彼は説明書を図形におこすのに苦労し、結局は完全に説明書通りの図形をつくることが出来ませんでした。

また、説明書に従って作業をするのに膨大な時間がかかったため、正確なものを作るのにもう一度やり直すということもしたくない、だから私が最初に作ったものをそのまま発表してもいいか、と打診されました。

しかし、そもそもこの一連のロゴプロジェクトの目的というのは、たとえコミュニティーに参加したばかりで技術のない人でも、生産的になることができるし役に立つことができる、ということメッセージを広めることでした。

したがって、たとえ細部が多少間違っていたとしても、説明書に従って自分の力で作成したものを発表するのがいいということになりました。

このロゴは最終的にある一定の角度に全体を回転させるデザインになっているため、ほとんどの人は細部の間違いを見破ることはできないだろうというところもありました。

しかし結局、2010年の11月1日に完成された新しいロゴの更新手順も、Bitboyにとって難しすぎたという理由でついに公開されることはありませんでした。もしも彼にとって難しかったのであれば、彼以外の多くの人も難しいと感じるだろうと思いました。

とりあえずもっといい指示の出し方が見つかるまで説明書はいったん保留にしておこうと思いました。しかし結局色々な事情が重なって再びロゴに触れる機会はありませんでした。

ロゴに隠された隠れ「B」

Bitcoinのロゴには、いたるところに「B」が隠されています。

例えば、全体の図形を作成する上で12.5%といった数値が多用されているのですが、この値は分数に直すと1/8になります。この「8」という数字は実は「B」の数字的な置き換えとして使用されているのです。

「B」というのはBitcoinとBlockの頭文字です。画像に新しい形が追加される度に12.5%という数値が使われるのですが、これは新しいブロックが追加されていく様子を象徴しています。

Bのロゴの下側の横棒の先端にも実は12.5度という角度がつけられています。8という数字を角度という表現を通して忍ばせることで、Bitcoinとブロックは常につながっているのだということを暗示しています。

8という数字は、Bitcoinのネットワークのポート番号にも使われているくらいBitcoinと関わりの深い数字です。Bitcoinのポート番号は「8333」です。このポート番号が選ばれたのは、やはり8がBitcoinとBlockの「B」に最も似ている数字だったからです。

また「8333」はBが4つ並んでいるようにも見えますが、これはブロックの連鎖をイメージした表現なのです。

Bitcoinのロゴとブロックチェーンとの共通点

Bitcoinのロゴは多数のブロックで構成されています。つまりこのロゴ自体が、まるでブロックチェーンのような存在なのです。このロゴは実際には量子文字列のようにねじられたブロックチェーンなのです。

また、このロゴの作成手順では画像に新しい形が追加される度に、追加された新パーツのサイズ変更が行われます。この手順というのは、ブロックがシステムの需要に合わせてサイズを変えているということを象徴しています。

さらにこのロゴでは、追加された全ての図形がロゴ全体においてくまなく使用されています。これは、地球全体の隅々までブロックチェーンのデータが分布している、ということを象徴しています。

「B」の縦棒はなぜ2本あるのか

お金のシンボルである「$」のマークですが、ほとんどのフォントでは1本の縦棒がマークの上から下まで真っすぐに通っているような形となっています。

縦棒が1本である理由は、初期のフォントが作られた頃(1970年代~80年代)のコンピュータ画面の解像度が低かったためです。

このような理由があり縦棒は1本しか表示されなかったというわけです。初期より後のフォントでは、解像度の問題はなくりました。しかし昔の名残で同じスタイルを踏襲したのです。

Bitcoinのロゴでは縦棒は2本です。これはディズニーの「$crooge McDuck」のコミックに描かれている、本来の縦棒が2本あるバージョンを採用しているためです。

縦棒がBを貫通していない理由

「B」の文字の上と下にしか縦棒を表示しないことで、まるで「B」が「$」の上に上書きされているかのように見えます。これは、世界の基軸通貨である米ドルがBitcoinに取って代わられるということを象徴しています。

それからこの形式はTrebuchetというフォントの「$」マークにも由来しています。このフォントは、ArialやVerdanaといったWebサイトの作成に適したフォントとよく似ているフォントなのですが、このフォントのお金のマークは縦棒がSを貫通しておらず、上と下だけにあるのです。

Trebuchetのフォントの「$」を採用した理由は、私がTrebuchet(トレビュシェット、平衡錘投石機とも呼ばれる固定式の攻城用兵器の一種で)が好きで、マイクロソフトの「Age of Empires」というゲームの中で城を攻撃するのにもよく使っていたという背景があるからです。

縦棒のさらなる秘密

実はBitcoinのロゴの「B」の上下の縦棒は、ロゴを構成する他の線よりもあえて少しだけ細くしています。これは比喩的に「$」は「B」の後方にある、ということを示すためです。

つまり、縦棒を一回り細くすることで、その縦棒が実は「B」一部ではないということを表現しているのです。縦棒はあくまで「B」の後方にある「$」の構成要素です。Bitcoinの「B」のシンボルの後ろに実際に「$」があってそれが「B」によって押しつぶされている、という風に想像するとわかりやすいかと思います。

なぜオレンジ色なのか?

色に関しては、Webサイトと印刷媒体の両方で使用できるものである必要がありました。したがって印刷業会で使用されているCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の値を用いて特定の色を指定する必要がありました。

そこで、誰もが覚えやすい値となるような数字の組み合わせを選ぶことにしました。このロゴのオレンジ色のCMYKの値は0、50、100、0です。国際的に通用するシンボルカラーとなって欲しいという願いを込め、このように万人に覚えやすい組み合わせを選びました。

CMYKの値が0、50、100、0のオレンジ色は、他の色と比べても最も目に映える色でした。実は他の色も候補にはあったのですが、オレンジ色が一番目立っていたので、注目を集めるのにもこの色がベストだと思いました。

このオレンジ色というのは、多くの人が見慣れている典型的なセーフティーオレンジの色に非常に近い色でもありました。遠くからでもとても目立つ色だったのです。このような理由から、様々な候補の中からこの鮮やかなオレンジ色が選ばれました。

「B」を囲む◯円形の理由

ロゴの「B」を囲む図形を決める際には、様々な図形が人々に与える印象について考察しました。

例えば四角形や星形といった図形は、見る人の注意を引くことができます。これは尖った角の効果によるものです。人は鋭い角が視界に入ってくると、無意識にそれに着目してしまうのです。

我々の周辺視野というのは周囲に動きがあるとそれに注目するようにできていて、鋭い角の方を見るよう注意を促します。これは実は狩猟採取時代の名残です。かつては獲物を捕まえたり天敵から逃れたりするために、周囲の危険に素早く気が付く必要があったのです。

尖った角を認識すると周辺視野から脳へと運動信号が送られ、我々の視線は角の方向を向きます。この仕組みを上手く利用しているのが、例えば歩行者用の道路に引かれているジグザグの線等です。角を取り入れたデザインにすることで、人々に注意を促して警戒させることができるのです。

しかし、Bitcoinが人々に警戒をされるような存在になって欲しくはありませんでした。警戒されてしまっては困ります。したがって角が立ったものよりも円の形の方が温かみがあって親しみやすいということで、円形を採用しました。

円は連続性、無限、そして永遠を象徴します。これはまさにBitcoinと同じ性質であり、Bitcoinに相応しいと思いました。

ちなみに円形を二つ並べると無限を表す「∞」という記号になりますが、これはちょうど数字の8を横にした形です。ここにもまた「B」を象徴するように、8という数字が隠されているというわけです。

円形のさらなる秘密とSF小説との関係

また、この円の形というのはアメリカのSF作家アイザック・アシモフの「ファウンデーションシリーズ」というSF作品からも着想を得ています。

この物語の中に「宇宙は円形のようになっていてその円周に沿って一周すれば始まりの地点に戻れる」と考えた登場人物がいました。

このSF物語の中では、「第二ファンデーション」という存在の捜索が必死に行われていました。「第二ファウンデーション」に所属する人々は真の支配者となる可能性があると言われており、これを恐れた他の人たちが、所在地不明で謎に包まれた「第二ファンデーション」を探し求めていたのです。

「第二ファウンデーション」は、銀河系の端である「星界の果て(at Star’s End)」にあると言い伝えられていました。ある登場人物はこの言い伝えから、「第二ファウンデーション」は実は最初から自分たちの知っている「ターミナス」という星の上にあるのではないかと考えました。なぜなら「ターミナス」は「銀河系の端の惑星」と言われる星だったからです。

宇宙は平面的な円であると考えていたこの登場人物は、円周上をずっとたどっていくと最終的には元の場所である「ターミナス」に戻ってくるはずであり、「第二ファウンデーション」も同じところにあるはずだと考えました。

しかしこの登場人物は間違っていました。銀河系は円ではなく螺旋状になっていて、螺旋の中心、つまり螺旋の一番奥が「終わり」なのです。また「第二ファウンデーション」とは物理的な存在ではなく、社会的な構造でした。

結果としてこの登場人物は、円の始まりであり終わりだと考えていた「ターミナス」上で「第二ファンデーション」を見つけることはできませんでした。

さて、2010年末の我々の世界の話になりますが、ここでも「第二ファウンデーション」を探し求めるように、Bitcoinの制作に関わった者たちの捜索が行われていました。

しかし我々の世界の探し手たちも、「宇宙は平面的な円である」という考えにとりつかれてしまっているかのごとく、全く違うところを見ています。探し手たちは、Bitcoinの技術を生み出したのは数学者や暗号学者、経済学者といった学者であるという考えに取りつかれ、一向に答えにたどり着けていません。

こういうわけで、Bitcoinのロゴを囲む円というのは「皆が宇宙を平面的な円だと思っていて違うところを探しているゆえ、探したいものはいつまでも見つからない」という状況を暗喩しているのです。

最後になりますが、円形というのは伝統的なコインの形です。BitcoinのBを円形に刻み込むことで、コインであるということを抽象的に表しているというわけです。

円は控えめな図形なので、人々の目を引くのは鮮やかなオレンジ色の役目です。このような様々な理由から、Bitcoinのロゴにはシンプルで無地のオレンジ色の円が選ばれました。

ロゴ全体を14度傾けた理由

14という数値は、以下のようにして求められました。

12.5 + 1.25 + 0.125 + 0.0125 + 0.00125 + 0.000125 + 0.0000125 + 0.00000125 + 0.000000125 + 0.0000000125 + 0.00000000125 + 0.000000000125 …

「B」を表す8という数字をベースにして割り出された12.5%(1/8)という値、これを10で割り続けて後ろにどんどん足していくのです。このプロセスをどんどん繰り返していくと、約13.888…という数値を得ることができます。

描画プログラムを使用して図形の作成を行うと、近似値の14度という角度が適用されます。この角度をつけたのは、上の数式のように、ブロックチェーンが永遠に未来へと進んでいくということを表したかったからです。

オレンジ色の円形の大きさに隠された秘密

オレンジ色の円形は「B」の525%の大きさです。この数値は12.5×42で求められれたものです。42という数字は、「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」として知られています。

Bitcoinの技術はまさに「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」であるはずです。したがってロゴのどこかに42という数字が使われていなければならないと思いました。実は2本の縦棒の長さに関しても、42という数字を使用した倍率となっています。

複数の楕円を組み合わせて作成したBの穴 

Bの穴を作成するために複数の楕円を組み合わせる作業手順は、各ブロックをチェーンに埋め込むために必要なプルーフ・オブ・ワークの作業を表現しています。

使用した各楕円は毎回、直前の楕円から直接派生するような方法で作成されています。つまり、各楕円は前の作業なしには決して存在できず、楕円を1つだけ抽出したりという行為はできないということです。

サイズ調整作業が正しい手順でなされないと、楕円の形が正しく反映されなかったりして、必要なプルーフ・オブ・ワークが行われなかったということが誰の目にも明らかになるような仕組みになっています。

翻訳: Nen Nishihara

     

【免責事項】

本ウェブサイトに掲載される記事は、情報提供を目的としたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。また、本記事は執筆者の個人的見解であり、BTCボックス株式会社の公式見解を示すものではございません。