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「NFTの価値はどこにあるか」オードリー・タン氏にインタビュー ②

台湾のデジタル担当大臣である、オードリー・タン氏にインタビューさせていただきました。国家は暗号通貨を法定通貨として採用すべきかどうか、ブロックチェーンから着想を得たという台湾の投票システム「総統杯ハッカソン」、NFTの価値はどこにあるのか等、暗号通貨技術をめぐる様々な疑問や話題について語っていただきました。ぜひご覧ください。 

インタビュー日 : 2021年7月9日

NFTの価値はどこにあるか

唯一無二のデジタルデータとしても認知されているNFTですが、たとえばブロックチェーンの分岐が起きた場合など、唯一無二でなくなってしまったとしても価値があると思いますか?NFTの真価はどのようなところにあるとお考えでしょうか。

私にとってNFTの価値は、金銭的なところよりもステータス的なところにあると思っています。ステータス的な価値というのは、NFTは何かを象徴するシンボルとしての価値があるということです。

シンボルとして価値のあるものの多くは、その価値証明をタイムスタンプ(電子データがある時刻に確実に存在していたことを証明する電子的な時刻証明書)という不変の印に依存してきました。これはつまり、「あることを一番最初にしたのは誰か」というのが大切であり、そこに価値があるということです。

たとえばあることの難易度が将来的に大幅に下がり、誰でも簡単に、そして無料で行えるようになったとします。しかしそれでも、あることを最初に行ったという記録には価値があります。これは言ってみればギネス世界記録にのっているような記録に価値があるのと同じ原理です。

今まで誰も作れなかったようなすごい建物をつくったとしても、将来的には誰しもが同じような建物をつくれるようになります。しかしそれでも、一番初めにつくられた建物には、一番初めにつくられたという価値が宿ります。公式記録にも、一番はじめにつくった人の名前が載ります。NFTの価値もこれと同じようなものだと思っています。

NFTには投資対象としての価値があると思っている人もいますが、現在の私の個人的な見解では、投資対象としての価値よりもステータス的な価値の方が高いと思っています。

著作権から考えるNFT

NFTの価値は、紐づけられているデータ側の方にあると主張する人がいる一方で、そのNFTを誰が所有しているのかという事実、つまり所有権の方が重要だという人もいます。NFTの所有権の価値についてどうお考えですか?

私は自分の著作物に関するあらゆる著作権を放棄しているので、NFTの所有権といったものに価値があるとは個人的には思っていません。たとえば私が書いたものを誰かが勝手に自分の名前をつけて出したとしても、私は気にしません。その行為によって、アイデアの伝達性が高まるからです。

しかしこのような考え方というのは、著作権を所有している人の考え方、あるいはアイデアや表現の所有権を特許や著作権という形で捉えるような考え方とは根本的に異なります。つまり言いたいのは、知的財産権に価値があると思っているか否かによって、所有権の価値に対する考え方は全く異なってくるということです。

もしも知的財産権に重きを置いているのであれば、もちろん所有権はとても重要で価値がありますし、その上でNFTは「自分の著作権を他者に譲渡する」ということを表明できる手段の一つです。

しかしその一方で、私のように知的財産権の所有を重視しておらず、アイデアの豊富性の方に重きを置いている人もいます。私の考え方は、人はアイデアの媒体であり、アイデアを広めたりミックスしたりするための役割を担っているというものです。

このように、アイデアを共有することに価値があるという考え方を持つ人にとっては、アイデアは共同体から奪われて個人に属するべきではなく、共同体にあるべきです。こういった視点から考えると、NFTの所有権は、アイデアについて排他的な機能を持つという点において、価値があまり高くないと言えます。

インタビュー・翻訳: Nen Nishihar

     

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