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「暗号通貨は法定通貨として機能するか 」オードリー・タン氏にインタビュー ③

台湾のデジタル担当大臣である、オードリー・タン氏にインタビューさせていただきました。国家は暗号通貨を法定通貨として採用すべきかどうか、ブロックチェーンから着想を得たという台湾の投票システム「総統杯ハッカソン」、NFTの価値はどこにあるのか等、暗号通貨技術をめぐる様々な疑問や話題について語っていただきました。ぜひご覧ください。 

インタビュー日 : 2021年7月9日

国家が暗号通貨を禁止する理由とは 

暗号通貨と政府の関係についてお伺いしたいと思います。大国の中には、たとえば中国のように暗号通貨の使用や取引を禁止している国があります。大国が暗号通貨を規制する主な目的はどこにあると思いますか?

暗号通貨を成り立たせている分散型台帳技術(DLT)というのは、ある一定のデータに対して多元的な統治を可能にするための基本的な技術だと考えています。これは言い換えれば、問題解決に必要な全てのデータ、つまりデータの全体像を把握している1人の人間、というのはどこにも存在しないということになります。

人々にはプライバシーの問題や、データを悪用されるのではないかという懸念があります。したがって、関係が相互信頼の上に成り立っているということを理解していない限りは、誰も自分のデータを他者と共有しようとは思いません。

「相互信頼」というのは元々は政府や国家の管轄下に存在するものです。つまりどういうことか簡単に言うと、既存の方法で統治されている人々というのは、リーダーを信頼したり、統治機関を信頼したりすることを前提とされているというわけです。

ところが分散型台帳技術というのは、合意形成のアルゴリズムを信頼することを提案しています。アルゴリズムを信頼することができれば、この新しい技術を通して相互信頼を生み出すことができる、ということです。そうすると、従来のいわゆる垂直的な統治モデルとはまったく異なる統治モデルが生まれます。

そしてこの新しいモデルというのは、ちょうどインターネットの世界に初めてエンドツーエンド原理が登場してそれまでの仕組みに脅威をもたらしたのと同じように、従来のモデルに脅威をもたらすものだと思います。

新モデルは、検閲やコミュニケーションの独占という考えに基づいて構築されたあらゆる体制にとって脅威となるため、規制しようということになります。

暗号通貨は法定通貨として機能するか

エルサルバドルがBitcoinを法定通貨に制定しましたが、国は積極的に暗号通貨を採用していくべきだと思いますか?また、暗号通貨は法定通貨として機能しうるのでしょうか。

分散型台帳技術でいろいろと試行錯誤してみたいと望む国は、自由に実験してみるべきだと思っています。Bitcoinというのはオープンソースのプロジェクトですので、サトシにロイヤリティを払う必要がありません。もちろん、たとえ払いたくても、一体どうすればサトシにロイヤリティを払えるのかも分かりません。

オープンソースのプロジェクトであるということは、いつでもプロジェクトをフォークして、たとえばDogecoinやLitecoinなどを作ることができるということです。つまり、どんな主権国家でも自分たちの法定通貨をCDBC(中央銀行のデジタル通貨)といったような形で分散型のデジタル銀行券に実際に変換することができるということです。

暗号通貨は法定通貨としても十分機能できると思っています。もちろん、人々が起こっていることを理解しているという前提は必要になってきます。

台湾には「フィンテック・サンドボックス」と呼ばれるものがあります。これは、リスクを取ることに同意した人たちを集めて、ある一定期間、新しい技術を試してもらうというものです。たとえば5,000人の人に6ヶ月間新しい技術を試してもらうことによって、その技術が社会の期待にどれくらい適合しているのか、といったことを知ることができます。 

たとえ実験の結果、その技術が上手く行かなかったという結論になっても、5,000人の人たちが我々みんなのために授業料を払ってくれたといういことで、彼らに感謝して彼らの経験から学ぶことができるでしょう。逆に技術が上手く適合するという結論に至れば、当局が技術を導入することになります。

 

インタビュー・翻訳: Nen Nishihara

     

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