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「保守的な暗号通貨 vs 革新的な暗号通貨」オードリー・タン氏にインタビュー ④

台湾のデジタル担当大臣である、オードリー・タン氏にインタビューさせていただきました。国家は暗号通貨を法定通貨として採用すべきかどうか、ブロックチェーンから着想を得たという台湾の投票システム「総統杯ハッカソン」、NFTの価値はどこにあるのか等、暗号通貨技術をめぐる様々な疑問や話題について語っていただきました。ぜひご覧ください。 

インタビュー日 : 2021年7月9日

サトシ・ナカモトの出現について

サトシ・ナカモトの影響力についてどのようにお考えですか?もしもサトシ・ナカモト本人が再び現れ、新たなコインを作ったとするとどういったことが起こるでしょうか。

サトシの影響力や、彼が新しいコインを作った場合の影響力というのは、サトシが一体誰なのかによって変わってくると思います。

サトシが一個人ではなく集団で、政治的な権力や科学的な権力、あるいは軍事力を行使できるという可能性も考えられます。このように、我々はサトシの正体を知らないので、サトシ関連の質問に答えることは不可能だとも言えます。

我々の知る限り、サトシはBitcoinを多少もっているというだけの存在ではありません。彼は実際にはおそらく、非常に才能のある開発者であることに加え、最先端技術へのアクセスもあるのです。

サトシという存在だけが大切なのではなく、彼の属しているコミュニティーやソーシャルネットワーク、つまり彼の壮大な実験をサポートしてくれた組織も重要になってきます。したがって我々は、この組織の正体を知らずしてサトシについて何か言うことはできないと考えています。

保守的な暗号通貨 vs 革新的な暗号通貨

不変性こそが本質的な価値であると信じられているBitcoinという保守的な暗号通貨がある一方で、新しい機能をどんどん取り入れ続けて変化しつづける革新的な暗号通貨もあります。より強くシンパシーを感じられるのは、どちらでしょうか。

私はあらゆる立場の暗号通貨を支持しています。なぜなら、保守的な側面と進歩を体現した革新的な側面、この2つがどちらも存在している状態こそがベストであり、金融政策的にも変動範囲が広い方がより望ましいからです。

保守的な暗号通貨というのは、ブロックチェーン技術のいわばセーフティーネット的存在であり、この技術の根本的な価値を証明する確固たる砦として機能するものです。それに対して実験性の高い革新的な技術というのは、たとえば気候変動問題の解決や二酸化炭素排出量の削減といった、より進歩した価値を追求することができます。

実験には失敗がつきものです。実際、多くの革新的な試みは過去に失敗に終わりました。しかしオープンソースなプロジェクトにおいては、失敗もすべて全員に公開されています。したがって人々は、これはうまくいかなかった、あれもうまくいかなかった、というように学びを得ることができるのです。

そうして何回にもわたる試行錯誤をくり返した後、もしかすると、うまくいく何かを見つけることができるかもしれません。この新しい発見はBitcoinコニュニティーに利益をもたらしてくれるでしょう。

Bitcoin自体、過去の度重なる試行錯誤から恩恵を受けつづけてきたので、もうサトシが生み出した当初のままの姿というわけではありません。しかしもちろん、その根本的な価値は誕生時から何も変わっていません。不変の砦というのは、それ自体美徳があるものです。

これと同じように、新たな世界を切り開くことにもその美徳があります。最高のエコシステムというのは、変わらないものと新しいもの、こういったすべての素晴らしいものがあらゆる面で存在しているようなシステムだと思います。

ブロックサイズ論争について思うこと

暗号通貨の界隈では、ブロックサイズを増やそうという意見が何度も繰り返されていますが、スケーラビリティ論争に関してはどのようにお考えでしょうか?

この問題に関しても、私としてはどちらかを一方を支持している立場ではありません。どちらにせよ個人的な利害関係もないので、だからこそ様々な新しい試みや設計が発展していくのを見たいという気持ちがあります。

何と言っても、この技術は全ての人にとって真新しいものです。だからこそ、最適解を持っている人はまだ誰もいないのです。結局のところ、現在わかっている特定の構成や世界の成り立ちがあって、我々はその構成において可能性のある解に向かって群がっているに過ぎないのです。

もしも人類の計算能力がもう一桁上がれば、また別の構成が見えてくることでしょう。たとえば台湾では、ブロードバンドインターネット接続は人権なので、微々たるキロバイトの転送量に対しては基本的にコストがかかりません。これもまた一種の構成、一種の世界の成り立ちだと言えます。

 

   

インタビュー・翻訳: Nen Nishihara

     

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