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「トランスヒューマニズムと暗号通貨」ゾルタン・イシュトヴァン氏にインタビュー ①

アメリカ大統領選で史上初めてBitcoinで政治資金を集め、トランスヒューマニストとして知られるゾルタン・イシュトヴァン氏(Zoltan Istvan)にインタビューさせていただきました。インタビューでは、トランスヒューマニズム運動やブロックチェーンを導入した選挙を支持する理由などについてお話を伺いました。是非、ご覧ください。

ゾルタン・イシュトヴァン氏

インタビュー日 : 2020年5月20日

トランスヒューマニズム運動とは

「トランスヒューマニスト: Transhumanist」とは、ラディカルな科学技術を通じて人間と社会生活をより良いものへと変革したい人のことを言います。そして、「トランスヒューマニズム : Transhumanism」とは、科学技術を利用して人間を根本から改変しようとする考え方で、何百万もの人々が参加する社会運動となっています。

これには、障害者が再び歩くことを可能にする外骨格技術(パワードスーツ技術)や、人工知能と直接交信することを可能にする脳インプラントのようなものがあります。遺伝子操作で3本目の腕を再生させようとするものもあり、常にラディカルな科学技術も存在しています。

  

Zoltan Istvan

それとは逆に、少なくともアメリカでは「人間の体は、神によって完全な形で与えられたものであり、如何なる変更も加えるべきではない」という非常に強い宗教的な考えがあります。アメリカには、トランスヒューマニズムが完全な悪であると考える人が多くいます。彼らは人間の体の形を変えるために科学技術を使うことに賛同していないので、トランスヒューマニズムとは正反対の考え方であると言えます。

メディアでは、「トランスヒューマニストは人間を別の何か違うものに変えようとしている本当に悪い人達だ」と主張する人々との対立が、よくニュースになっています。しかし、私達にとっては、人間の体を変えるというより、「完全な健康を実現するための最良の方法とは」「如何にして人間が死ぬことなく、より長く生活を送ることができるか」という問いに対して、医学とテクノロジーを利用しているだけに過ぎません。

現実の状況は、5年から10年ごとにますます急進的で激しくなってきています。最終的に、私達はロボットになり、酸素も食べ物も必要なくなるでしょう。いつの日か思考を持った自分は存在するが、全く異なる何かに変化していくことになると思います。 これは今から100年後に起こっていることかもしれませんが、それが私達が歩む進化のパターンだと思います。

私は、全てが変化すると考えています。それは、テクノロジー自体が変化していくからなのです。生命の仕組みは強力で、心臓は70〜80年後に動かなくなり、脳や思考が衰えてしまうのは、生命が永遠に続かないように設計されているからです。ただ、コンピューターなどのマシンについて言えば、適切な予防策を講じ正常に機能する場合、何千年もの間疲労することなく動き続けることができます。トランスヒューマニストが、自分自身と合成部品を融合させたい理由はここにあります。これらの部品は生物的なものではなく、人工的な合成部品、またはチタンやシリコンなどで作られた機器です。

億万長者は神にならない

トランスヒューマニズムの最大の目標は、科学技術で死を克服しようとすることです。よく私達に対して2つの批判があります。1つ目は、誰も死なない場合、世界の人口過多にどうやって対処するかという問題です。正直なところ、これは非常に良い批判であり、私達も100%の確信を持っているわけではありません。

この地球において、私達は過剰開発と人口過多によってこの惑星を破壊しているのかもしれません。誰もが超人間的な存在で、死亡することがなくなり、人口が200億人まで増えてしまうというシナリオは大きな問題です。それは非常に妥当な批判であり、私達もその解決策を考え出したいと思っています。

しかし、一方でよくある批判が、急進的な技術を超富裕層の人だけが享受でき、残りの人々が置き去りにされてしまう状態をどう防ぐかという問題です。世界中に民主主義が広がるこの時代において、マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツのような人達が、自分達だけが神となり他の人を置き去りにしたいということは信じられません。彼らは優秀なビジネスマインドによって、運良く裕福になった人達であり、今彼らは人々を助けたいと考えています。

例えば、ビルゲイツ氏はソーシャルワークに取り組み、自分の財産を投じて人類を救っています。彼が、私達全員を置き去りにして、偉大な神になりたいということは絶対にありえないと思います。そのような批判があれば事実ではありません。非常に裕福な人達は、残りの人々を助けるという義務を負っているのだと思います。恐らく100年前には違う世界があったと思いますが、現在はテクノロジーで億万長者になった人達やトランスヒューマニズムの分野にいる人達は、人道的なことにある程度の関心を寄せています。

トランスヒューマニストはBitcoin支持者

大部分のトランスヒューマニストは、暗号通貨を支持しています。私は2016年のアメリカ大統領選挙にトランスヒューマニスト党から出馬し、政治資金をBitcoinなどの暗号通貨で集めた最初の大統領候補となりました。暗号通貨は、とても魅力的で素晴らしいものだと思いますし、私自身もいくらか保有しています。

しかし、私にとって暗号通貨よりもさらに重要なのはブロックチェーン技術であり、この技術が世界に革命をもたらすと考えています。それは、結婚許可証、パスポート、不動産取引からお金の処理まで、あらゆることが可能になります。このブロックチェーンを導入する企業が増えていくことで、社会に変革がもたらされるでしょう。この技術により、全てをスクリーニングし、物事をより安全で機能的に動かすことができます。そして、私達が望むあらゆる種類のものに、より簡単に信頼できる方法でアクセスできるようになります。

最終的に、どのコインが勝ち残るのかはわかりませんが、ある時点で暗号通貨が米ドルに置き換わるか、少なくとも米ドルに直接紐づけられる可能性は十分にあります。それらはデジタル化され、より機能的で速く安全になっていくでしょう。そのため、私はこのようなテクノロジーを強く支持しています。政治的な視点から見れば、特に世界を大きく変えることができるのは、ブロックチェーンであると考えています。

2024年の選挙までには、少なくともアメリカにおいて、大統領選挙にブロックチェーン技術を導入する必要があるかという議論が行われる予定です。このような技術がすぐに大規模に受け入れられるかということを考えると、恐らく最初は行政の下のレベルの役所などで導入され始めていくと思います。

しかし、実際にはテクノロジーが既に存在しており、その安全性は証明されているという事実があります。今、本当の問題になっているのは、この技術を如何にして他の人達に信頼してもらうことができるかということです。アメリカでは、人口の半数が高齢者となっており、彼らは紙に何かを書きたいと思っています。実際に紙が見えなければ怖いという気持ちもあり、インターネットやブロックチェーンのように全く新しいものに対しては、さらに大きな不安があります。

あまり理解されていないのは、ブロックチェーンには選挙をより安全に行える可能性があるということです。1枚の紙と同じように、ブロックチェーンも信頼することができます。インターネットは信用できないかもしれませんが、ブロックチェーンは大きく異なります。それは事実上ハッキングが不可能であり、私達がそこに投票の仕組みを構築できれば、それは選挙への信頼性という点で大きなうねりになると思います。

現時点で、ロシアにせよアメリカにせよ、行われた選挙の公正性や、何が起こっているかを確認できる方法がありません。しかし、ブロックチェーンを利用することで信頼は向上し、この候補者が選挙で勝利したということを、その台帳を見ることで確認することができるようになります。

ゾルタン・イシュトヴァン(Zoltan Istvan)

カリフォルニアで生まれ。コロンビア大学で哲学と宗教の学位を取得し、ナショナルジオグラフィックで記者を経験。野生動物保全団体「WildAid」理事などを歴任。世界銀行、世界経済フォーラムなど様々な国際フォーラムでスピーチを行う。これまでに「The Transhumanist Wager」「Futureisist Cure」などの著書があり、近著「Upgrading America」はAmazonの政治カテゴリーで1位となった。トランスヒューマニスト権利章典(Transhumanist Bill of Rights)の起草人であり、AI、遺伝子操作、技術政策を専門とする。起業家としても複数のビジネスで成功を収め、現在は医師である妻、2人の娘とサンフランシスコのベイエリアに住む。2020年にリバタリアン党の副大統領候補として出馬した。

  

インタビュー・編集: Lina Kamada

     

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