「ブロックチェーンは貧困を解決するか」ノースカロライナ大学 ニル・キシェトリ教授 ①

発展途上国でのブロックチェーン活用について研究されているノースカロライナ大学のニル・キシェトリ教授(Nir Kshetri)にインタビューさせていただきました。キシェトリ教授は、これまでにウォールストリートジャーナルやブルームバーグなどで、150以上の記事を執筆し、2018年には貧困との戦いにおいて暗号通貨が果たす役割についてTED Talksでスピーチを行いました。また、アジア開発銀行や国連機関でも発展途上国の問題などに取り組んでこられました。

ニル・キシェトリ氏

インタビュー日 : 2020年6月11日

私の名前はニル・キシェトリです。ノースカロライナ大学グリーンズボロー校 (UNC Greensboro)のブライアン経営経済大学院で教授をしています。生まれはネパールですが、21年前にアメリカに移り住みました。

私は、発展途上国におけるビジネスと経済、そして如何にしてテクノロジーを通じて恩恵をもたらすことができるかついて研究を続けてきました。また、アフリカ諸国の政府と協力を行い、国連のプロジェクトにも取り組んでいます。より多くの新技術を仕組みの中に取り入れ、発展途上国の状況を改善するために努めています。

Nir Kshetri

私はネパール出身ですが、この国だけにフォーカスしているわけでなく、世界中の全ての発展途上国でプロジェクトを行っています。

ブロックチェーンの可能性

多くの先進国、国際機関、民間組織が、開発途上国の人々の生活水準を向上させるために多くのお金を費やしています。しかし、汚職や管理体制の不備、仲介者手数料が原因で、開発途上国をサポートするべきお金の約35%が消えてしまっています。

そのような場合にブロックチェーンを活用すれば、仲介人や政府を介することなく、送金した10ドルを困っている人が直接受け取ることができます。

私は暗号通貨よりも、ブロックチェーン技術についてより多くの研究を行っていて、将来的には、特に発展途上国でブロックチェーンが多くの問題を解決する大きな可能性を秘めていると信じています。

人々がより高い教育を受け、コネクティビティー(接続性)が向上するにつれて、それが実現できる可能性があります。例えば、アメリカや日本などでは、識字率が90%を超え、4G、そしてもうすぐ5Gが利用可能となります。

これらの状況を、リテラシーが高くない最貧の開発途上国と比較すると、大部分の携帯電話ユーザーが依然として第2世代のネットワークに依存しています。また、身分証明書を持っているということは、教育や金融サービスを受ける上で非常に重要となります。

機能不全のマイクロクレジット

インターネットを介して開発途上国の低所得者にレンディングを可能にする非営利組織のサービスを利用する場合、それがどのような仕組みになっているのかを大部分の人が知ることがありません。

このようなサービスを通じて、カンボジアの低所得の起業家や農家に25ドルを送金したい人がいるとします。しかし、ここで融資を受けた相手が利息を支払う必要があり、25ドル全部は送金されないこと、この事を送金した側が知ることはありません。

ほとんどの場合、これらの組織の反対側には、送金金額の70%〜80%の利息を要求する提携先がいます。通常、アメリカのマイクロクレジットの金利は2〜3%の間なので、この金利は極端に聞こえるかもしれません。しかし、メキシコでは60〜90%もあり、インドでは通常100%より高い金利に直面しているため、農民は最も大きな打撃を受けています。

なぜそのような問題が起きるのかというと、そこのガバナンスが機能せず、法律が存在しないためです。この問題を解決するために、取引所などの機関は、ブロックチェーンプラットフォームの活用方法を人々に伝える必要があると思います。もっと多くの人々が自分の身分証明書とアカウントを手に入れることができれば、ブロックチェーンの普及が大きく押し進められ、機能不全に陥ったシステムの代わりとして利用され始めると思います。

ネパールと暗号通貨

現在、ネパールでは暗号通貨は違法となっています。ネパール中央銀行は、暗号通貨の使用を禁止し、許可されていないものとして扱われています。ネパールから生まれたブロックチェーンのプロジェクトも、この分野に取り組んでいる人達もあまり見たことがありません。

隣国のインドを見てみると、ソフトウェア開発者は約200万人もいますが、ブロックチェーン技術について理解している開発者は、わずか0.25%となっています。これは、インドが暗号通貨に対して不利な政策をとってきたためです。

ある意味で、ネパールはインドをロールモデルとして捉えています。インド準備銀行も暗号通貨を禁止してきたので、ブロックチェーン技術に取り組んでいた人々は国外の暗号通貨にフレンドリーな場所へと出て行ってしまいました。

現在、インドはブロックチェーンを推し進めていますが、残念ながら現時点で南アジアで大きなブロックチェーンプロジェクトはまだ出てきていません。なので、他の国もより積極的な方向に進んでいくことを期待しています。

ブロックチェーンが機能しない環境

開発途上国のブロックチェーン開発を妨げる主な問題の1つはコネクティビティー(接続性)です。開発途上国では、多くの人々がインターネットにアクセスすることができません。既に多くの人が携帯電話を持っていますが、2000年代の簡易型の携帯電話がほとんどとなっています。

国連が出したデータによると、後発開発途上国の地域では73%の人が電話を所有していますが、国際電気通信連合(ITU)の最新データでは、インターネットにアクセスできる人達は12%未満となっています。

途上国リストの中で上位の中国やインドなどを見てみると、状況は少し異なります。これらの国には多くの労働力があり、可能性を秘めた国ですが、それでも実際にインターネットにアクセスできる人々は47%未満となっています。

電話は皆が持っているのかもしれませんが、インターネットにアクセスすることはできません。そして、そのインターネットにアクセスができなければ、どの様なテクノロジーも使うことができません。国の半分以上の人々がインターネットにアクセスできないという状況では、ブロックチェーンのようにより高度なソリューションを使うことはできません。

ブロックチェーンは、先進国の人々にとっても非常に複雑なものなので、コンピューターを見たことがない人や、未だに2000年代の携帯電話を使用している人が、この概念を理解するとは想像もできません。

アフリカの多くの国では、皆がATMのカードを持ち歩いています。現金を持ち歩くと、強盗に遭ってしまうからです。しかし、ATMカードで使用する4桁のPINコードでさえも、パスワードに慣れていない人にとっては記憶するのが困難なようです。そのパスワードを記憶こすることができないため、多くの人がATMカードの裏面に4桁のPINコードを書き込んでいます。

なので、4桁のコードすら記憶することが非常に困難な環境では、ブロックチェーン、つまり暗号通貨などに期待することはできないと思います。これらの技術は概念が複雑で理解することが困難であるため、大きな課題となっています。

次回のニル・キシェトリ教授のインタビュー記事②では、発展途上国のデータプライバシーや身分証明書発行における課題について説明していただきます。

インタビュー・編集: Lina Kamada

     

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