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「なぜ16億ドル以上のBitcoinを購入したのか」MicroStrategy CEOのマイケル・セーラー氏にインタビュー ①

今年、16億ドル以上のBitcoinを購入したことで話題になったMicroStrategy社のCEOであるマイケル・セイラー氏(Michael Saylor)にインタビューさせていただきました。暗号通貨に興味を持ったきっかけや、インフレとは何か、なぜBitcoinはシステムとして優れているのかなどについてお伺いしました。ぜひご覧ください。

マイケル・セーラー氏(MicroStrategy CEO)

インタビュー日 : 2020年12月8日

大学での勉強とMicroStrategyの創設について

私はMITで宇宙工学を学びましたので、航空宇宙工学の学位を持っています。科学史、それから科学革命についても勉強し、それが経済や社会にどのような影響を与えるかについて学びました。

MITを卒業してから、1989年にMicroStrategyという会社を立ち上げました。これは24歳の時です。それ以来31年間にわたり、MicroStrategyのCEO兼筆頭株主を務めてきました。MicroStrategyはビジネスインテリジェンス製品を販売する会社です。我々は世界中のあらゆる場所で、法人向けに事業の製品と技術を販売しています。

暗号通貨界に入ったきっかけについて

私は2020年の3月までは完全に外部の者としてBitcoinの世界を観察していました。思うことは色々とあったものの、あまり詳しくはありませんでした。私は2013年に「Bitcoinの時代は終わった」という内容のツイートをしています。そして、7年間Bitcoinについては何も考えることはありませんでした。

2020年3月になってから大変興味を持つようになり、一生懸命勉強するようになりました。パンデミックと、それに対する財政対策を目にしたのがきっかけです。貨幣供給を見てみると、2010年から2020年までの間に、欧米ではM2の貨幣供給量が約5.5%拡大しています。マクロ経済学者はこういった事実に敏感ですが、私は気にとめていませんでした。

実際にインフレ率がたった1%だと思っていたわけではありませんが、政府はインフレはないと言っているにもかかわらず、買いたいものはすべて20%から40%も高くなっているということに気づいたのです。

実際のところ「インフレ」というのはインチキだと思います。中央銀行はインフレを「食料、エネルギー、資産を含まない商品やサービスのマーケットバスケットの価格変化率」と定義しています。つまり政府が行ってきたのは、定義上だけでデフレに陥っているマーケットバスケットを作ったことになります。食料やエネルギーを含むマーケットバスケットを定義すれば、もっと早くインフレが起きていることになります。

海岸沿いの土地などの不動産や、価値の高い珍しい美術品といった希少資産を含めれば、もっと早くインフレになるでしょう。つまりインフレはベクトルであり、いろいろな種類のインフレがあるのです。

債券のインフレ率は20%、株式のインフレ率は8%、食料やエネルギーを含まない消費財のインフレ率は1%以下です。デフレになっているものさえたくさんあります。間違ったところに焦点を当てると、間違った結論が導かれてしまうのです。

メディアの報じるインフレ

メディアは、中央銀行の指示する、食料やエネルギーを含まない消費者バスケットに基づいてインフレ率を公表しています。したがって皆安心してしまっているのです。例えば日本では、日銀が資金供給を増やしているにもかかわらず、インフレはしていないと言われたことがあります。

ところが、インフレしていないと言われているにもかかわらず、日本では良い不動産を購入することができません。東京の不動産は世界中で最も高価であり、超高額だというのは有名な話です。それなのに、それをインフレとだとは言おうとしないのです。

それでも「インフレはない」と言う政府

実は政府は「欲しがってはいけないもの」「買ってはいけないもの」というのを決めていて、それを熱望したりしない限りは、インフレなど起こらないのです。私はこれを理解することができなかったため、今まで特に注目してきませんでした。

2020年の3月から注目し始めたのは、政府がインフレはないと主張している間に、自分の欲しいものがどんどん値上がりしていったからです。M2の貨幣供給の拡大は、「資本コスト」とも呼ばれる、いわば資産のインフレです。

単にインフレと呼ぶこともできますが、そうすると食料、エネルギー、資産を含むマーケットバスケットについて再定義しなければならなくなるので、ここでは「資本コスト」と呼ぶことにしましょう。

気がついたら資本コストが3倍になっていました。以前は5%だったのが、今では15%になっていたのです。こうなると、保有している全ての投資のうち、利回りが15%以上にならないものは価値を失うとことになります。債券の利回り、株式の利回り、さらには持っている不動産の家賃の利回りにも当てはまります。

市場に出回っているどんなビジネスだろうと、年に15%以上のスピードでキャッシュフローを成長させなければ、価値を失うのです。たとえば保有する不動産で、家賃利回りが15%以上になっていないものがあれば、家賃が15%以上にでも上がらない限り、その不動産には価値がないということです。

このことについて理解すれば、世界中の300兆ドル相当の法定通貨の資産は、すべて価値を失いそうだということに気がつきます。これらの資産は、今から46ヶ月、あるいは48ヶ月の間に、価値のおよそ半分が失われる可能性が高いです。

したがって、富や購買力を維持したいのであれば、自分が買えるような希少価値の高い資産を探し出さなければなりません。これを探すことで、最終的に私はBitcoinへとたどり着きました。

Bitcoinは完璧な貨幣ネットワーク

Bitcoinの最も重要な特徴は、熱力学的(Thermodynamically)に健全なシステムあるという点です。Bitcoinは、2100万枚以上のコインが存在しないという、閉鎖的な熱力学システムです。コインを失うということ以外で、コインを新たに追加したり削除したりすることはできません。

これはつまりデフレ的なシステムなので、そこにエネルギーを足すことか、エネルギーを奪うことしかできません。温めるか冷やすかのどちらかしかないのです。Bitcoinの強みは、史上初の健全な貨幣ネットワークであるということです。

私はこの仕組みを、「貨幣エネルギー」のネットワークだと考えています。このネットワークは、パワーを損なうことなく、貨幣のエネルギーを収集・貯蓄して流すことができます。エネルギーというのは、お金を10年あるいは100年の間、保存しておけるということを意味します。

しかも、非常に効率の良い貨幣ネットワークであり、例えばゴールドといった他の貨幣エネルギー源に対して、1000分の1、あるいは10,000分の1のエネルギーしか必要としません。だからこそ有力なのです。

なぜ有力なのか理由を挙げるときりがないのですが、たくさんの理由を挙げすぎても要点を見失ってしまいます。Bitcoinの一番のポイントは、エネルギーネットワークの中でも初となる、設計された貨幣エネルギーシステムだという点です。

このシステムは、どんな形のエネルギーでもお金に変換することができて、逆にお金をあらゆる形のエネルギーに変換することもできます。だからこそ貨幣エネルギーの最高の形態なのです。

他のあらゆる貨幣ネットワークは欠陥品です。たとえば貝殻は、このようにうまく機能しません。日用品、タバコ、金、銀、銅も同じです。これらのものはすべて欠陥があるので、時間の経過とともにエネルギーが流出していってしまうのです。

ゴールドは最も有名なお金ですが、ゴールドは毎年2%採掘されています。したがってゴールドにエネルギーを蓄えた場合、少なくとも年間2%のエネルギー損失となります。つまり他のあらゆるものが100年間変化していないと仮定した場合、100年間の時の中で80%以上のエネルギーが失われているという計算になります。

それでもBitcoinよりもゴールドを選ぶ人がいるのは、Bitcoinのことを知らないからです。だからゴールドは唯一最高のエネルギーシステムであり、その代替手段は法定通貨のネットワークになってしまうのです。

ゴールドという通貨ネットワークにおける年間のエネルギー損失レベルが2〜4%なのに対して、法定通貨におけるエネルギーの損失は毎年5~25%です。これはゴールドが優れているというわけではありません。紙幣のネットワークがあまりにもひどいのです。

貨幣エネルギーの損失率はものによって様々です。例えば、アルゼンチン、レバノン、ベネズエラ、トルコなどの国々では、通貨インフレ率が5%をはるかに超えています。したがって、毎年2〜4%しか価値が失われないゴールドにお金を入れることができれば、年間10%もの価値を失うネットワークなんかに比べたら、はるかにいい選択でしょう。

このように、ゴールドは法定通貨に比べるとよく見えるかもしれませんが、「全く価値を失わない」ものの前では、ひどいものに見えるかと思います。Bitcoinは100年よりも長く、全ての資産の価値をそのまま維持することができるのです。

Bitcoinに投資するのはリスキーではない

もしも今持っているお金の半分を失うことになれば、私は間違いなく、Bitcoinのバスケットに残りの全ての卵を入れます。資産を自国の通貨という形で保有するのではなく、過去10年間、毎年必ず値上がりし続けたものに投資しておくのがいいでしょう。

自国の通貨が90%の確率で値下がりすると知っているのにもかかわらず、その通貨を保有し続けるのは、果たして賢いと言えるでしょうか。資産を分散させる手段として、Bitcoin以外に一体何が考えられるでしょうか。

通貨が値下がりした場合、不動産や株式、債券と行った他のあらゆる法定通貨の金融商品も、かなりの価値が失われます。このような状況下でBitcoinを知らなかった場合は、まずゴールドをとるでしょう。

しかしBitcoinを知るとすぐに、ゴールドを売りBitcoinを買うでしょう。Bitcoinは不安定でリスクが高いため、資本のごく一部しか入れるべきではないという従来の見解は正しくないと思っています。Bitcoinは、あらゆる面でゴールドよりも優れているように設計された安全な資産です。まさに財を蓄えるのに理想的な資産だと思います。

資産を現金で保有し続けているとその半分を失うということをわかっていて、しかもゴールドよりも優れた設計の資産があるのであれば、それに投資するのは決してリスクが高いとは言わないでしょう。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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