ジョン・リギンズ氏(John Riggins)は、Bitcoin Magazineの親会社であるBTC Inc.の運営責任者です。大学時代からBitcoinに興味を持ち、暗号通貨メディアを運営することでこの業界に足を踏み入れました。今回のインタビューでは、Bitcoin MagazineとEthereumの創始者であるヴィタリック・ブテリン氏に関する話などを聞かせていただきました。
インタビュー日 : 2020年12月9日
Bitcoin Magazineのはじまり
私がBitcoinの世界に入ったのは2013年で、当時は大学4年生でした。友人同士のグループでの中でBitcoinの存在を知り、同時はリバタリアン志向が強かったのもあり、とても面白そうだと思いました。
大学卒業後は、アメリカの多国籍配送サービス会社であるフェデックスに就職しました。そして収益戦略グループで、世界中の国々のために、決済方法の代替オプションを開発する仕事に携わりました。
仕事のおかげでアジアにもしばらく滞在する機会に恵まれました。私は当時一緒に働いていたチームメンバーたちとAlipayおよびWeChat payを導入しました。中国で過ごした時間は特に、アジアがデジタル決済の面でいかに先を行っているのかを感じる機会よいとなりました。
それとちょうど同じ頃、大学時代からの友人のグループがBitcoinの世界にはまってBitcoinの会社を立ち上げました。
彼らは大学を卒業したばかりで、人脈も経験もまだありませんでした。それに加え、当時まだ黎明期だったこの業界に触れる機会もありませんでした。そこで彼らは、メディア業界を通じての参加することが最も簡単な方法だと考えました。
2014〜2015年頃は、Bitcoinersにとって、手に入る情報が著しく少ない時代でした。英語の情報がないとかいう次元の話ではなく、いかなる形の情報もなかったのです。
そこでBitcoin MagazineのCEO、そして共同創業者でもあるDavid Baileyは、チームメンバーとともにyBitcoinというメディアを立ち上げました。そして時を経て、Bitcoin Magazineを含む様々なブランドを追加しながら、Bitcoinのメディアとして確立していったのです。
Bitcoin Magazineチームの一員となった経緯
弊社のCEOは、より国際的なメディアグループを目指して事業を拡大したいと考えていました。
私は大学で北京語専攻で中国のビジネス市場での経験もあったため、私に声がかかったのです。業界のエリートたちと一緒に仕事をする機会を得られたのはとても幸運な経験でした。
2015年に上海オフィスを開設しました。開設にあたり、上海にあるFBSキャピタルという新しいVCから、少し資金を調達しました。そしてその後、韓国にも進出してパートナーと一緒にメディアブランドを立ち上げました。韓国語版の暗号通貨やBitcoinメディアを作り、展開することができました。
Bitcoin Magazineとヴィタリック・ブテリン氏
yBitcoinの立ち上げチームは、全米、そして全世界のカンファレンスに参加し、Bitcoin関連のあらゆる企業も訪問しました。ヴィタリック・ブテリン氏はこの頃すでにBitcoin Magazineを立ち上げていて、素晴らしい記事も執筆していました。
yBitcoinチームは、人脈や交流を通じてBitcoin Magazineのチームと知り合い、そしてBitcoin Magazineを買い取りました。これはヴィタリック氏がEthereumを作った頃のことでした。
こうしてデイビッド・ベイリーと彼のチームはBitcoin Magazineの管理者となりました。こうして我々のサイトは、展開するメディアビジネスの一部として成長していきました。
我々はヴィタリック氏からBitcoin Magazineを買い取ったわけですが、彼とはそれ以前から、業界内で同じことを目指して頑張ってきた仲でした。
私もヴィタリック氏も上海のVCのパートナーだったので、彼と上海で一緒に過ごしたこともあります。
彼が中国に来て、そして言葉も流暢になっていったのを目の当たりにして、私は非常に感銘を受けました。彼は本当に好奇心に満ちあふれていて、業界で尊敬されています。
ヴィタリック氏は大変素晴らしい人物です。Bitcoin Magazineの初期の記事の中から、Bitcoinの技術面について説明するヴィタリック氏の文章を読むと、彼のやり方よく伝わってきます。
彼の記事は読みやすく、様々な分野の知性が感じられ、技術に関する専門知識も深いということがよく伝わってきます。彼はBitcoin Magazineの初期段階にとって、非常に価値の高い数々の記事を書いてきました。
今では、Bitcoin MagazineはBitcoinのバイブルだと思っています。我々はこのメディアの管理者としての仕事を非常に真剣に受け止めていますし、この仕事は我々の誇りでもあります。
Ethereumについて
我々は当初、Ethereumに対して懐疑的でした。しかし現在Ethereumは、Bitcoinとはまた違う形の、可能性を秘めた巨大な多機能インフラへと発展しました。
我々は企業としては、何よりもBitcoin推しの立場ではありますが、ヴィタリック氏と、彼がBitcoin Magazineにしてくれたことには深い敬意を払っています。ヴィタリック氏は今でも我々の友人ですし、彼は今でもBitcoinのことを信じています。
ヴィタリック氏がBitcoinやそのテクノロジーについて、否定的なことを言っているとは思いません。彼はただ何か違うことがしたいと思ったからプロジェクトを始めることにしたのです。そして今でもそれを続けています。
Bitcoin Magazineとはどのような存在か
Bitcoin Magazineは、Bitcoinのバイブルとも言うべき存在です。業界の成功者によって執筆されたBitcoinの初期段階の文章も掲載されていますし、Bitcoin史の中でも最高級の、技術に関する古い記事もあります。
それから、私がBitcoinの最高のテクニカルライターの1人として尊敬しているアーロン・ヴァン・ヴィルドゥム氏は最近、Coindeskの編集長を長い間務めていたピート・リゾ氏と共同執筆で、“The Untold Story of the First Bitcoin War”(最初のBitcoin戦争に関する知られざる物語)という素晴らしい記事を書きました。
これは、Bitcoinに特化したライターの質の高さを物語っている記事のよい例です。また、超初期のライトニングネットワークに関しても、分かりやすい言葉で書かれた、信頼できるよい記事もあります。
ニュース記事のファクトチェックについて
我々にはジャーナリストのネットワークがあるので、一般的な情報源を持ち、ファクトチェックのプロセスもあります。
この業界は規模が小さく風通しもよいため、どんな論争であれ真相を突き止めるのはそれほど難しくありません。
しかしジャーナリズムの基本に則り、適切な人から話を聞き、正しくファクトチェックを行い、事実に忠実な分析を仕上げることが大切です。
チーム内でのコミュニケーションの質
我々に地理的な弱点はありません。本社はアメリカテネシー州のナッシュビルにありますが、アメリカ西海岸、東海岸、そしてヨーロッパやアジア各地など、世界中のあらゆる地域に社員がいます。
他のメディアプラットフォームに中には、早い段階で各地域にフランチャイズ展開するモデルを採用したところもあります。この場合、業界が成長するにつれて、コミュニケーションの質的な面を少し犠牲にする必要があったかもしれません。
こういったビジネスモデルのメディアでは、社内でより効率的にコミュニケーションができるように、調整や工夫をしていかなければなりません。
我々のモデルでは、世界各地の様々な地域から人が集まって働いていますが、フランチャイズを持ちません。チームメンバーが世界のどこにいても、お互いに密接に関わりあって仕事をしているのです。
インタビュー・編集: Lina Kamada
翻訳: Nen Nishihara
【免責事項】
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