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「暗号通貨メディアでの経験」Bitcoin Magazine アーロン・ヴァン・ウィルドゥム氏 インタビュー ①

ブロックチェーンメディア、Bitcoin Magazineでテクニカルエディターを務めるアーロン・ヴァン・ウィルドゥム氏(Aaron van Wirdum)にインタビューしました。暗号通貨メディアで働いた経験について、記事を書く時の工夫、そしてBitcoinに対する考え方などについてお伺いしました。ぜひご覧ください。

アーロン・ヴァン・ウィルドゥム氏

インタビュー日 : 2020年10月19日

暗号通貨界隈でライターになるまで

私はBitcoin Magazineのテクニカルエディターです。オランダ出身で現在もオランダ在住です。Bitcoin Magazineのライター兼編集者を5年間しています。

Bitcoinについて扱うようになる以前は、オランダロッテルダムの地元の有名人にインタビューをしたり、音楽や映画のレビューなどをやっていました。しかし取り扱う内容に規則性はなく、行き当たりばったりなものでした。その当時はまだ、自分の専門分野や、興味のあるトピックを発見できていませんでした。

Bitcoinの存在を知った時、興味があるのはこれだと感じて、しばらくの間Bitcoinに集中したいと考えました。ちょうどブロックサイズに関する議論が白熱し始めた頃のことでした。はじめはフリーランスのライターとしてBitcoinに関する記事を執筆して、界隈で多少有名になりました。

それからしばらくして、モントリオールでBitcoinのスケーリングについてのカンファレンスがあり、私も参加しました。そこでBitcoin Magazineのチームに出会いました。それ以来チームの一員として働いています。

オランダ語のブログとニュースサイトの設立

私は2013年の後半に、自分でオランダ語のブログを立ち上げました。ブログを始めたのは、主流メディアによるBitcoin関連の報道に不満があったからです。

メディアはBitcoinや暗号通貨について、まるでネズミ講や詐欺であるかのように報道していました。しかも多くの記事が、Bitcoinは麻薬売買や犯罪利用においてしか訳に立たないと主張していました。とにかく否定的な意見ばかりでした。

Bitcoinが人々を惹き付けている理由は決して犯罪行為や麻薬ではありません。そこで、そういったネガティブな主張を否定し反論するために、ブログを立ち上げたいと考えたのです。

主流のメディア報道を論破する内容のブログシリーズ記事を書くことになりました。そしてしばらく後に、自分のオランダ語のニュースサイトも立ち上げました。1日に2~3本くらいの頻度で、暗号通貨界隈に関する記事を書きました。

2014年には国際的な出版社ともフリーランス契約をするようになりました。私をフリーランスとして最初に雇ってくれた企業はBitcoin Magazineです。他にもCoindeskやCointelegraph、今ではもう存在しないメディアも含め、様々なメディアプラットフォームで仕事をしてきました。その1年後にBitcoin Magazineに正社員として入社しました。そして現在はテクニカルエディターとして働いています。

私のブログやニュースサイトの読者は少数でした。当時はまだBitcoin界隈は非常に小規模なものでしたが、私はそれなりに注目されはじめていました。

当時、Bitcoinに関する内容を扱うオランダのポッドキャストにも招待されました。私はそこで自分の記事に、出典として私の名前さえ入れてくれれば、誰でも自由に記事のコンテンツをコピーして好きな場所で公開していいという内容の注意書きをつけました。

私の書いた記事は、有名なブログやウェブサイトに掲載されました。私は当時からコンテンツづくりために、日々欠かさずRedditとTwitterをチェックしています。これは私の朝のルーティンの一部であり、そこからインスピレーションを得ることもあります。

暗号通貨メディアでの経験

暗号通貨のメディアで働くのは面白い経験でした。私はBitcoin Magazineで5年間働いてきました。このうち何年かはとても面白い年でした。何度かの価格の急上昇や、スケーリングに関する論争の数々など、様々なフェーズを見てきました。

現在私はBitcoinの歴史家になりつつあります。このように、私は人として、そしてライターとして日々変化していますし成長しています。こうして様々な分野で活動できるのはとてもいいことだと思います。そしてBitcoin Magazineのチームは、興味感心の高い分野を追ったり書いたりする自由を与えてくれています。

人々の感情を左右する立場

Bitcoinのコミュニティには、非常に強い意見や感情を持っている人が多くいます。Bitcoinに情熱を注いでいるからこそです。Bitcoinコミュニティにいる人々は世界を変えたいと思っているのです。

しかしそれと同時に、多くの人にとっては金銭的なインセンティブが強く、だからこそBitcoinの成功を望んでいます。これはいいことにも、時には悪いことにもなり得ます。

人々に求められるコンテンツを作成した場合は、好かれるライターになれます。暗号通貨界隈に惜しみなく貢献している聖人のような存在になり、感謝されるようになります。

逆に、人々が嫌がるような話題を書くと嫌われ者になります。皆がBitcoinのことを気にしているからこそ、どの立場にも強い感情や意見があるのです。

記事を書いて学んだこと

技術的な話題を書き始めたばかりの頃は大変でした。特に人々の意見が食い違う問題について扱うことは相当なストレスでした。自分の仕事と技術の理解に対して、強い自信を持つことを学びました。

私は専門家ではありません。機能や特質について説明する必要がある時は、書きながら自分で勉強しなければなりませんでした。記事を書くことは、自分にとって色々な意味で学びになりました。

また、全ての人を満足させることはできないので、科学的に正しい記事をつくるよう心がけています。そうすれば批判をより少なくできると学びました。もしも科学的に正しい記事であるにもかかわらず、人々に反発されたり怒られたりしたら、それはそれで仕方がないことです。

最も評価された記事

ライトニングネットワークについて分かりやすく説明する内容の記事を2016年に書きました。この記事はかなり評判になりました。その頃はまだライトニングネットワークに関する情報源がありませんでした。少数の開発者たちを除けば、ライトニングネットワークの仕組みを知っている人はほとんどいなかったのです。

インターネット上で見つけられる情報といえば、ホワイトペーパーと、ラスティー・ラッセル氏のブログ記事だけで、技術的で理解しにくいものでした。

しかし、ライトニングネットワークはスケーリングの論争にとって重要になりつつありました。そこで分かりやすい説明を試みることにしたのです。

ところが数日間取り組んだところで、自分の手には余るものをはじめてしまったことに気づいて、自己嫌悪に陥りました。複雑で入り組んでいたので悪戦苦闘し、単純化するために図を描くことにしました。

図を描くことで理解が深まったので、記事にも図を入れることにしました。この記事のおかげでライトニングネットワークを理解できるようになったとよく言われます。

Bitcoinのスケーリングに関する論争

スケーリングに関する論争は、Bitcoinがどのようにスケーリングすべきか、Bitcoinコミュニティ内で見解の不一致があったことからはじまりました。

より多くのトランザクションに対応するために、ブロックサイズを大きくしたいと考える派閥がいました。しかしブロックサイズを大きくすると、技術的には他の部分を犠牲にしなければいけません。例えば、フルノードの実行が困難になる、マイニングが中央集権的になってしまう可能性がある、といったことが挙げられます。

そこで他の派閥は、ブロックサイズを大きくするという解決策を好まず、ライトニングネットワークのようにレイヤーによる拡張をすべきだと考えました。このような意見の相違が、大々的な論争に発展しました。

最終的には、SegWit(セグウィット)が妥協案として提案されましたが、この案も全員が賛同したわけではありませんでした。しかしどうにかして、Bitcoinerの大多数の支持を得ることができたのです。

Bitcoinは自由でオープンなお金

Bitcoinについて学ぶ前に興味をもっていた分野は、金融、銀行、貨幣システムなどです。とくにこれらの分野の問題点について興味がありました。問題点に対する解決策を持ち合わせてはいなかったのですが、もしかするとシステム自体に問題があるのではないか、ということは考えていました。

それからソフトウェアの自由化とオープンソースを求める運動にも興味をもちました。新しい形の経済の概念的な話に、とても魅力を感じました。

自由であること、そしてオープンであることが溶け合った、全く新しいお金の形であるBitcoinが生まれました。Bitcoinは、自由でオープンなソフトウェアプロジェクトなのです。Bitcoinについてもっと多く知りたいし、より理解したいと思いました。

Bitcoinがうまくいかなかったら社会はどうなるか

Bitcoinが上手くいかなければ、残念ながら我々は、生活と金融活動が監視されているファシズム的な未来にまっしぐらです。Bitcoinが失敗するようなことがあれば、それは築き上げられた信頼を根底から揺るがす出来事となり、今後同様の技術が発展する可能性にも、完全に歯止めをかけてしまうでしょう。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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