アメリカ大統領選で史上初めてBitcoinで政治資金を集め、トランスヒューマニストとして知られるゾルタン・イシュトヴァン氏(Zoltan Istvan)にインタビューさせていただきました。是非、ご覧ください。
ゾルタン・イシュトヴァン氏
インタビュー日 : 2020年5月20日
最初のBitcoinによる政治献金
私は、2016年のアメリカ大統領選挙の時に、トランスヒューマニスト党のためにBitcoinで政治資金を集めました。選挙運動自体は2014年から始めていて、2015年にBitcoinで政治資金を受け入れた最初の候補者の1人となりました。当時としては非常に画期的で、Bitcoinはトランスヒューマニスト党へと献金されました。
私達は科学技術の政党として、暗号通貨を支持しています。暗号通貨もラディカルな科学技術の一部であり、これは価値を交換することのできる全く新しい方法です。なので、私のチームにとっては、それを受け入れたことは非常に自然なことでした。
当時、私達のチームにはしっかりとした暗号通貨の専門家が一人もおらず、他のコインに関してもあまり知りませんでした。政治資金を受け付けたのは、Bitcoinが急上昇する前の2015年でしたが、それを採用したのは非常に良いことだったと思っています。
価格が大暴落する2018年以前に手に入れたBitcoinですが、正直に言うと当時は管理が不十分でだったことが原因で、Bitcoinの一部を失ってしまい、二度と取り戻すことができなくなってしまいました。ただ、その価値は2万ドルぐらいだったので、金額としては大したものではありませんでした。
Bitcoinを資金調達の方法として活用するのはそれが初めてでした。非常に迅速かつ効率的に送金を行うことができ、プライバシーも守ることができる素晴らしい手段であると思いました。トランスヒューマニストは、シンプルかつ効率的で迅速な手段を探し求めています。暗号通貨のこの機能性こそ、私達が求めていたものでした。
極端なリバタリアン
私は、リバタリアニズムという思想に賛同しています。リバタリアン(リバタリアニズムの主義者)は、自分の行動に対する他者からの干渉を認めないという点で、暗号通貨やブロックチェーンの大きな支持者であると言えます。
これは非常に素晴らしい考え方であり、私は長い間リバタリアンであり続けてきました。リバタリアン小説の中で非常に人気になった「The Transhumanist Wager」という本では、私の考え方について解説しました。
ただし、リバタリアンの中には自由への願望が度を越してしまう人もいます。私は、そのように行き過ぎたリバタリアンではなく、その中間の考えを持っています。民主的な投票が行われ、そこに透明性がある限り、政府が存在することは良いことだという考えです。
運転免許証や信号機も必要ないというリバタリアンの人達を何人か知っていますが、そのような考え方は度を越していているのだと思います。私自身のイデオロギーは、リバタリアンとそうでない人達の真ん中にあります。
現実的に考えれば、暗号通貨が完全な自由放任の状態になった場合、ハッキングなどの盗難が起きないことを誰も保証できなくなってしまいます。
ほとんどの場合、たとえリバタリアンであったとしても国の管理組織や警察は必要であると考えられています。消防士があまり必要ないという人も中にはいますが、私は必要だと思っています。
人々の最大便益をサポートするためには、基本的なレベルでいくつかの行政サービスが必要となります。重要なことは、透明性を維持し、人々の声に応えられることだと考えます。
人間拡張は現実社会に
人間拡張(ヒューマン・オーグメンテーション)という言葉があり、これが何を意味するかは場合によっては異なると思います。状況が変化し続けているので、何が人間拡張であるかを正確に言い表すのは難しいですが、現在、多くの高齢女性が人工股関節を付けたり、矯正治療が行われるなど、人間拡張はある程度の人気があります。これは、技術的には人間拡張と呼べるかと思います。
特に、高齢者の4人に1人が体の中に金属板のようなものを入れているという状況を考えると、私達は人間拡張という一線を既に飛び越えてしまっています。
ただ、この人間拡張は選択的であるべきです。例えば、私の手にはチップが埋め込まれていて、玄関のドアを開けたり、自動車のエンジンを動かしたり、Bitcoinをトレードしたりできます。
これは医療目的でもなく、私自身がチップを埋め込むという選択したからです。こちらの方が少しだけ人間拡張という言葉には近いかもしれません。私自身は、身体に物を入れ、自分自身を拡張するというアイデアをとても楽しんでいます。多くのトランスヒューマニストは、これが人間拡張であると考えると思います。
また、多くの高齢者が体の中にポンプやバルブのようなものを付けている事も非常に興味深いことで、これも一種の人間拡張と言えます。
脳で義肢を動かすサイバー・オリンピック
パラリンピックの世界は、すでにトランスヒューマニストの時代へと移り変わっています。例えば、ブレード(競技用義足)を使用している短距離走者は、普通の人とほぼ同じ速さで走ることができます。
おそらくは、今後5年間で彼らは通常の人よりも速く走ることができるようになるでしょう。その点では、既に一線を超えてしまっています。
現在、サイバスロン(Cybathlon)と呼ばれる競技はパラリンピックの一部となっています。サイバスロンは世界初のサイバー・オリンピックであり、頭にヘッドセットを装着した身体障害者が自転車を動かす競技などがあります。
彼らは足がなくても、脳で考えることによって自分たちの義足を動かし、トラックを駆け巡ることができます。私も最近、これに関する記事をニューヨーク・タイムズで書きました。これは新しいタイプのオリンピックであり、パラリンピック以上のものであると考えています。
このようなサイバー・オリンピックと呼ばれる競技には、膨大な種類のテクノロジー、特に自分の脳波と義肢を結び付けられる科学技術が必要となります。
それを使用することで、自分の足ではなく、脳内の活動を通してロボットの足を動かし、走ることができるようになります。これは非常に魅力的なテクノロジーで、腕や脚を動かせない人など、多くの人達がこのテクノロジーを必要としています。
サイバー・オリンピックなどのイベントや競技は、これらの技術開発を後押ししています。これよって、大きな事故に遭ってしまった人が自由に移動できるようになり、通常の生活を続けることができるようになるのです。
アメリカの植民地資本主義
ある時点で、現在の経済システムは大きく崩壊してしまうと考えています。2008年には、ローンによる崩壊を目の当たりにしました。そして、現在のコロナウイルスの後に何が起こるかは誰もわかりません。
アメリカでは、マイナス金利や紙幣の増発などについて話し合われています。お金は食料、住宅、原料などの価値を反映するべきものであり、単にそれを印刷し続けるだけではいけません。本当の価値が必要とされていると思います。
紙幣は印刷すればするほどインフレが起こってしまい、多くの問題が発生します。現在の通貨システムは偽りですが、紙幣の増発以上にシステムを堕落させているのは、誰もが守るべき平等なルールに従わない大資本家が多くいるという植民地主義が存在していることです。
そこには、超富裕層の人達が市場を支配するという悪循環が存在しています。例えば、トランプ大統領は大企業にお金を与え、それを受け取った大企業はまた他の大企業へとお金を回していきます。最終的に、不平等が拡大するにつれて人々が反乱を起こすこととなり、そこに暗号通貨の出番が来ると思っています。
熊手を持ち出して超富裕層に対抗するようなものではなく、巨大な銀行や製薬会社に頼ることなく、自分達で生き抜いていけるような選択肢を得ることができると思います。リバタリアンの様な人々がBitcoinを支持しているのは、経済システム全体が歪んでいるからなのです。暗号通貨を使用することで、資本主義に繋がれた鎖から自分自身を解放できるという感覚があります。
私は資本主義が好きですが、アメリカにあるのは本当の資本主義ではなく、植民地資本主義であると考えています。それは、富裕層のあるグループが別の富裕層のグループにお金を渡すような寡頭制になっています。そして、アメリカでは48%の人々が何らかの支援を政府から受けています。
現在、ここカリフォルニア州や他の州などでも、コロナウイルスによる外出制限があります。労働者は職場に戻るように呼びかけられていますが、働かずに家にいる人の方が実際に働いている人よりも多くのお金を政府から受け取ることができてしまっています。このようなシステムは機能しません。
一生懸命に働けば暗号通貨が手に入り、誰もそれを奪うことができないような仕組みが必要です。そのような公平性がなければ、システムは必ず崩壊してしまうでしょう。
インタビュー・編集: Lina Kamada
【免責事項】
本ウェブサイトに掲載される記事は、情報提供を目的としたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。また、本記事は執筆者の個人的見解であり、BTCボックス株式会社の公式見解を示すものではございません。