SH

「投資におすすめの本」アレッシオ・ラスターニ氏 著名テクニカルアナリスト ②

著名テクニカルアナリストのアレッシオ・ラスターニ氏(Alessio Rastani)にインタビューをさせていただきました。ラスターニ氏は、トレーダーとして10年以上にわたり金融市場の研究を行い、株式市場のテクニカル分析、暗号通貨、外国為替に関して、レポートやYouTube動画などで情報発信をしています。また、ロンドン、米国、オランダ、香港など多くの場所で講演を行い、TEDtalkでもスピーチを行っています。

アレッシオ・ラスターニ氏

インタビュー日 : 2020年6月29日

法律からトレーディングへ

私は法学部出身だったので、金融とは一切関係ありませんでした。法律の仕事から、株取引とチャート分析の仕事をするようになったのは偶然でした。ゴールドマン・サックスに勤める投資家の友人いましたので、市場のことや株取引について学ぶきっかけになりました。

今振り返ってみると、元々の職業である法律をやめて本当に良かったと思います。法律の仕事を楽しんでいたとしても、長期的にこの仕事を続けていくのには向いていなかったと思います。

投資におすすめの本

チャートの読み方を学び、トレードをする上でおすすめな本は、スティーブ・ニソン「陰線陽線:日本式ローソク足チャート術(Japanese Candlestick charting Techniques)」です。

日本のローソク足のパターンを全て知っている必要はありません。私が最もよく使うのは、ハンマー、流れ星、強気の巻き込みパターン、そして弱気の巻き込みパターンです。先ほどご紹介した本は、手始めに読むのに最適です。

私のお気に入りのトレーダーの1人にLinda Rashkeという方がいるのですが、彼女の「トレーディング・サーディンズ(Trading Sardines)」という本もおすすめです。

それから、マーク・ダグラス「トレーディング・イン・ザ・ゾーン(Trading in the Zone)」も好きです。トレーディングの心理学を理解した人に一押しの本で、大変おすすめです。

1つの使えるアイデアがあれば十分

読んだ本の中にあるヒントやアドバイスをすべて使用するわけではありません。本を読むと、一つの頭に残るアイデアを見つけることができ、それがやがて役に立つでしょう。

たとえばですが、私は日本のチャート分析書にのっているパターンを使いません。数式分析を読みすぎると分析マヒになってしまうので、必要ないと思いますし、役に立つとも思いません。何の意味のないところまで深く分析しすぎてしまうかもしれません。

私が初めてチャート分析やトレードを学び始めた頃、ゴールドマン・サックスで働いていた友人が、お気に入りの分析術をいくつか伝授してくれました。彼のが気に入っていてよく使用していたローソク足のパターンは、流れ星とハンマーのパターンでした。

私たちはチャートに書き込み、彼は分析術を披露します。「まずは市場で価格の上昇トレンドを待つ。次は21日移動平均線のような、価格の低下を支持する特徴を探す。それからハンマーのローソク足パターンを待つ。ハンマーのパターンが形成されると、そのパターンをブレイクしたら買い。流れ星のパターンの場合はハンマーのパターンと逆。」

彼の教えてくれたこのような分析術が長い間ずっと役にたっています。

チャート分析を学ぶには

Bitcoinに関しては何冊か良い本があります。Dominic Frisbyの書いた本もいいのですが、数年前のものになるので少し古いです。

Bitcoinと暗号通貨の業界に入りたいのであれば、業界に没頭する必要があります。チャート分析をしたり価格の動向を確認したりすることで没頭することができ、また反復練習をすることができます。

市場とトレードについての勉強は終わりがなく、常に学び続ける必要があります。しかも市場は昔も今も刻々と変化しています。決まっていたパターンすらも変化します。新しいパターンを学習したり、市場がどのように進化しているのか、学んでいく必要があります

アルトコインの可能性

私はBitcoinだけではなくアルトコイン信者でもあります。アルトコインの専門家であるとは言いません。私よりも詳しい人はいます。しかし、Ethereumの市場をはじめとして、マーケット状況も見てきましたし、XRPとNEOも好きです。

一部の人がこういったアルトコインを嫌っていることは知っていますが、私はBitcoin至上主義者ではありません。アルトコインも可能性を秘めていると思っています。視野を広くもっておくべきなので、私は何種類かのアルトコインの動きも追っています。

批判を受けることにも価値がある

私がYoutubeを始めたのは偶然でした。元々は旅行ブログを作っていて、一部の旅行を動画にしていたのですが、旅行のコンテンツは不得意だと気がつきました。そこで、他のコンテンツの動画に取り組みたい思い、それ以来チャート分析についての動画を投稿し始めました。

Bitcoinが暴落すると予測して動画を作ったのですが、その時のBitcoinの価格は10,000ドルくらいでした。Bitcoinが1週間や2週間で10,000ドルから20,000ドルになるなんて想像もしていませんでした。私は驚きましたが、そのレートも長続きはしませんでした。

Bitcoinの崩壊前に動画を投稿した時は、バブルが崩壊すると言ったことで、多くの人に怒られました。しかし最終的には崩壊しました。YouTubeで大衆の予想とは逆のことを言うと、多くの反感を買うということに気づきました。

「狂っている」「間違っている」などと言われたり、一部の人にひどく怒られたりするでしょう。それはよく理解しています。しかしそれでも、人々の予想と反対のことを言う価値はあると思います。

多くの人が「君は間違っている」と言って攻撃的になるのは、本当はそれが正しいかもしれない、という恐れがあることを示しているのです。

屈辱的な気分を味わうこともある市場分析

市場は1日、1週間という短い期間で変化します。1人のトレーダーとして、市場分析を行うことは非常に困難です。 1週間前に言ったことは、翌日、または次の週になると間違っていることが証明されて、屈辱的な気分を味わうかもしれません。

この仕事は自分にとって、今まで経験した中で最も難しい職業の1つです。チャートアナリストやトレーダーになりたい場合は、様々な可能性を受け入れておく必要があり、どのような予測にも、確信を持ちすぎてはいけません。速やかに気持ちを切り替え、そして戦略を変えるためにも、オープンに考えておくことは重要です。

この仕事に向かない人というのは、何かを変えたり、自分の間違いを認めたりしたがらない人です。テレビでみかけるプロたちは、残念ながらエゴにあふれていて、考えが間違っていることが市場によってすぐに証明されてしまう、ということに気づいていません。

この職業で大事なのは、謙虚になることです。もしも予想が苦くも不利になったとしても、個人的な感情でうけとめずに、ただ前に進むべきなのです。

通貨制度の不確実性

ここから先、金融システムがどのように進化していくかはわかりません。近い将来に金融危機が起こると予測してきたエコノミストたちは正しいと思います。数年のうちに危機が起こると思います。

2020年の3月の暴落は、誰もが予想していた通り、最大の暴落でした。3月の暴落を受けてマーケットは一旦底に到達しましたが、これは私たちが予測していた、通貨制度の金融危機ではありませんでした。もっと大きな暴落が、先に控えています。

未来は暗号通貨とデジタル通貨

本当に暗号通貨を信じている人たちは、暗号通貨は人類の未来に向けての、一世一代の世代交代を担うものだと考えています。私も同意見です。この交代には根本的な策が必要であり、たとえば法定通貨だけでなく、金、銀、暗号通貨などの、より最先端をいくものに関与していく必要もでてくるでしょう。

Bitcoinの価値がいつかゼロになるという人もいますが、それについては懐疑的です。そんなことは起こらないと思います。可能性がまったくないわけではないのですが、低いです。政府は最終的にはBitcoinを排除するよりも、共存する道をとるはずです。

暗号通貨とデジタル通貨は間違いなく我々の未来でしょう。しかしこれらの通貨が、他のあらゆる通貨を凌ぐほど優れているのかと言われれば、それはわかりません。

Bitcoinが一番優位となるかもしれません。Bitcoinでなかったとしても、少なくともなんらかのデジタル通貨が優位となるでしょう。

20年前に、インターネットとその関連ビジネスが世界を変えたのと同じように、Bitcoinでも今同じ現象が起こっています。このようにしてBitcoinが一世代の文明の変化を巻き起こしているため、私はBitcoinの将来について、強気の見通しをもっています。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

【免責事項】

本ウェブサイトに掲載される記事は、情報提供を目的としたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。また、本記事は執筆者の個人的見解であり、BTCボックス株式会社の公式見解を示すものではございません。