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「サトシ・ナカモトが現れるとどうなる?」マサチューセッツ工科大学 DCI タデウス・ドライジャ氏 ③

マサチューセッツ工科大学のDCI(デジタルカレンシー・イニシアティブ)で、暗号通貨の開発と研究を行うタデウス・ドライジャ氏(Tadge Dryja)にインタビューさせていただきました。ドライジャ氏は、2015年にLightning Networkのホワイトペーパーを共同で執筆しました。Bitcoinの開発を行う企業Lightning Labsの共同創設者としても知られ、様々な場所で開発のサポートを行っています。

タデウス・ドライジャ氏

インタビュー日 : 2020年6月9日

Lightning Networkを考案したきっかけ

2014年私はBitcoinとスマートコントラクトの仕事をするためにサンフランシスコで暮らしていました。Bitcoinのミートアップがたくさんあり、そこで出会った仲間と交流して一緒にピザを食べたり、テクノロジーについて語りあったりしていました。

Joseph Poonと出会ったのもそこで、我々はマイクロペイメントとBitcoinについて語り合いました。彼はHDLC(データ伝送制御の手順)に関するアイデアを持っていて、とても素晴らしいものだと思ったので、彼とそのアイデアに一緒に取り組むことにしました。

私はデータが継続して更新し続けられるチャネルというアイデアを思いつきました。それが今日のライトニングネットワークです。2014年の終わりから2015年の始めにかけてそのアイデアを一緒そのアイデアをまとめて、サンフランシスコのBitcoinイベントで発表しました。

反応はとてもよく、聴衆の間で話題になりました。その時Elizabeth Stark氏(Lightning Labs 現CEO)が我々のもとにきて「これをただの論文で終わらせるわけにはいかない。これは必ず実現するべきなので、スタートアップを立ち上げましょう」と言ってくれました。

それで我々は会社を立ち上げてソフトウェアを開発しました。今では、ライトニングネットワークの企業やアプリがたくさんあり、多くの人が取り組んでいます。

サトシ・ナカモトが現れるとどうなる?

これは私もすごく気になっていることなのですが、サトシ・ナカモトがどこへ姿をくらませたのか、その行方を知る人は誰もいません。

しかしBitcoinの開発者たちは、サトシ・ナカモトの行方を追ったり、サトシ・ナカモトとは誰なのかを気にしたり、詮索したりはしません。

サトシ・ナカモトが自分自身の身分を証明するのはとても簡単です。その気にさえなれば、ネット上で何通かメッセージを送るだけで済みます。しかしその気はないようですし、今も行方をくらまし続けています。

行方をくらまし続けた期間があまりにも長いので、もし仮にサトシ・ナカモトが戻ってきてBitcoinは自分が発明したと主張し、正式な書類なんかに署名したりしたとしても、誰もその話に耳を傾けたり従ったりはしないでしょう。たとえばサトシ・ナカモトがBitcoinに変更を加える話をしても、みんなノーと言うでしょう。

私はJoseph Poonと一緒にライトニングネットワークを考案、開発しましたが、今となっては誰も私の言うことなど聞くことはありません。それと同じです。

私が何か提案したとしても、現在それに取り組んでいる人は他にもたくさんいますし、誰が最初に発明したかとか、誰が開発者なのかとかはもはや関係ないのです。Bitcoinとサトシ・ナカモトにしても同じです。

Bitcoinを必要とする国、必要としない国

日本は、Bitcoinへの関心が低下している国の1つです。

逆にBitcoinへの関心が高まっている国もあります。詳しい理由はわかりませんが、国の現状のシステムがうまく機能していないような時には、Bitcoinやその他のテクノロジーが使われやすい傾向があります。

しかしその観点でいくと、アメリカは大変興味深いです。アメリカにはしっかりと機能している金融システムがあって、クレジットカードや銀行振込、小切手といった仕組みも機能できているので、Bitcoinがそれほど必要なわけではないと思うからです。これは日本も同様です。

他の国は、おそらくもっとBitcoinを必要としていると思います。

Bitcoinへの関心が薄れた理由

Bitcoinが日本でいまいち人気がない理由としては、2017年以降市場に面白い新技術があまり出てこなかったからということもあるかもしれません。2017年は突然ICO案件がたくさん出てきので、メディアはこの業界が放っておきませんでした。それでBitcoinが流行りすぎてしまい、業界は仕事になりませんでした。

マサチューセッツ工科大学にいる人でさえも皆インタビューを受けていました。テレビでも業界のことがたくさん取り上げられ、誰もがBitcoinについて知りたがっていました。

ICOに数十億ドルのお金が投入されましたが、特に何も生み出されませんでした。誰もが次にくるBitcoinの波に乗りたいと思っていたからこそICOが推し進められたのですが、その波は来ませんでした。

2017年と比較すると関心は減少したかもしれません。しかしそもそも一時的なバブルのような関心だったので、そこが本当に関心のピーク地点だったのかどうかもわかりません。

個人的な見解としてはこれから先に、新しいテクノロジーに取り組んでいる学生や、現在論文を執筆中の学生たちから、どんどん面白い発表があると思っています。ですので2017年よりも、今後の方がより面白いものがたくさん見られるのではないかと考えています。

Bitcoin活用のポテンシャルを秘めている国

Bitcoinで決済システムが改善される可能性がある国としてはインドが挙げられると思います。インドは何度か訪れたことがありますが、インド人の多くはゴールドが好きであるということに気が付きました。

最初にインドに行ったとき私はすぐに、どうやらこの国ではゴールドが重要視されているようだ、とピンときました。インドで訪れた店の中で一番良かったのも、ゴールドを取り扱う店でした。インドの人たち曰く、「私たちは政府や通貨を信用していない」とのことでした。

インドには技術と可能性があります。インドのベンガルールのような場所にはたくさんのテック系のスタートアップがあり、膨大な労働力を生み出しています。国の更なる発展と安定のためにBitcoinが導入されれば、非常にいいエコシステムになるのではないかと思います。

マウントゴックスの悲劇から学べること

私はマウントゴックス事件による暴落が起こった少し前に日本を離れました。多くの人が多額のお金を失ったため大変残念に思いましたが、それと同時に、自分のお金を何に投資しているかについては知っておかないといけないとも思いました。

明らかにダメだとはじめからわかりそうなものに投資するべきではないのです。たとえば、マウントゴックスのあるトランザクションでは2608BTCが失われ、このことはネットでも騒がれました。やがてマウントゴックスのトップがでてきて、「ユーザーには埋め合わせをする」と述べました。

そもそもこの時点で、マウントゴックスはお金を預けるのには適していない取引所だということを示すサインがたくさんあったのです。

2011年に日本にいた時、私は自分のアパートの部屋でBitcoinをマイニングしていました。しばらくしてから「日本は電気代が高いのに、なぜ私はアパートでマイニングしてるんだろう」と思いました。

しかしマウントゴックスを見て「あんなところにお金を送るつもりはない」と思いました。

そして2013年の夏になると「出金できない」「自分のBitcoinもお金も引き出せない」と人々が文句を言いはじめました。マウントゴックスはこれに対して、何ヶ月にもわたって言い訳を続けました。

これはちょうどBitcoinの価値がだんだん高まってきた頃の事件でもあり、皆が興味を持ちはじめていました。

私はマウントゴックスを使うなと皆に伝えようとました。こういったことは技術的な側面から注意深く観察すればリスクが見えてくるものです。

信頼できる取引所とは

取引所のGeminiに一度お邪魔したことがあり、その際にスタッフの方の様子を拝見しました。スタッフの方たちはスーツを着てネクタイを締め、その雰囲気からも、真剣に仕事をしているということが感じてとれました。

彼らは人から預かったお金を大切にしていましたし、自分たちがもしもヘマをすれば何百万人もの人のお金に響くのだということを知っていて、だからこそ責任を持って仕事をしているのだと感じました。

詐欺師やあくどい取引所の従業員もネクタイをつけることはできますが、私が訪れたオフィスの雰囲気は、そういったものや、多くのスタートアップなんかとも一線を画していて、明らかに異なって見えました。

私の見たオフィスとそこで働くスタッフたちは、早まって物事を台無しにしてしまうようなタイプの会社には全くみえませんでした。

しかしほとんどの人は、実際に取引所に行ってみてみることはできません。ですので取引所のことを知るのは難しく、自分で色々と調べる必要があります。ただ取引所にお金を置いておけばいいというわけではないのです。

友人にどの取引所を使えばいいかと聞かれた時はGeminiと答えています。彼らは自分の仕事をしっかりと分かっているからです。

取引所の信用性を検証するためには、その取引所の所在地や、どこの国の取引所なのか、インターネットのページが更新されているかどうかを必ず確認してください。そこのスタッフを見てみるのも良いでしょう。

選択肢が限られている場合もあります。例えば特定のアルトコインを購入したいのに怪しげな取引所でしか買えない時などです。そのような時はどうすればいいのでしょうか。

一つだけ言えるのは、投資しすぎないように注意すべきだということです。注意深く見極めて、仕事に対する姿勢が真剣で専門家や弁護士も関わっているような、信頼性のある取引所を使用するようにしてください。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara 

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