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「暗号資産の発行元がコインを保有するモラルの問題とは」Litecoin創設者のチャーリー・リー氏にインタビュー ①

Litecoin創設者のチャーリー・リー氏(Charlie Lee)にインタビューさせていただきました。暗号資産の発行元だけが事前にコインを取得するプレマイニングの問題点についてお話ししていただきました。ぜひご覧ください。

インタビュー日 : 2020年12月2日

初期アルトコインの問題点

私がBitcoin市場に参加したのは2011年の初め頃です。2011年中旬から後半にかけて、ちょっとしたアルトコインブームがおこりました。

Bitcoinのコードをフォーク(分岐)させることで新たに作り出されるコイン、アルトコインが人気になりはじめたのです。

初期の頃、アルトコインにあった主な問題は、クリエイターの欲が非常に大きかったことです。彼らはコインをローンチ(公開)する前に、自分たちのために多くのコインをプレマイニング(開発者自身や指定した団体のみが新規発行コインを受け取れること)していました。

つまりコインのジェネシスブロック(最初のブロック)で、何百万枚ものコインを自分のアドレスに割り当てていたのです。そして後で自分たちのコインを宣伝し、コインが成功すれば大儲けというわけです。

Litecoinの誕生まで

初期の頃のアルトコインの一つに、Tenebrixというコインがありました。Tenebrixは「Scrypt Proof of Work」という、CPUによるマイニングを可能にするマイニングアルゴリズムを採用した最初のコインでした。

これによって再び、CPUマイニング可能なコインがでてきたというわけです。Tenebrixの作成者は匿名でしたが、700万枚分のコインを自分のためにプレマイニングしていました。

その後Tenebrixはローンチされて、かなりの成功を収めました。しかしコミュニティは、プレマイニングされたコインに対して不満に思っていました。

そこでコミュニティは、Tenebrixを公平な仕組みへと修正したバージョンの「Fairbrix」というコインを作るように働きかけました。私はそのコインの技術面を担当しました。

FairbrixはTenebrixとよく似たコインでしたが、プレマイニングされたコインは1枚もありません。しかし、ローンチの際に何点か問題に直面してしまい、結局Fairbrixはローンチできませんでした。

私はこの失敗を経験した後、新たなコインを作ることにしました。プレマイニングされるコインのない、公平なものを作るように心がけました。自分自身にコインを与えず、他のコインの良い点を全てとりいれるようにしました。

例えば、より安全で高速なトランザクションを可能にする、Scrypt Proof of Workのマイニングアルゴリズムのような、今までのコインの良い特徴を積極的に取り入れ、新たなコインをローンチしました。

これがLitecoinです。私は、BitcoinがゴールドならLitecoinはシルバーのような存在だと思っています。そしてこれ以外のアルトコインは、単に歴史の一部に過ぎないと思っています。

自己開発したコインを保有するモラルは?

自分のコインを保有するのが、モラルに反しているとは思いません。

たしかにLitecoinを作った時、私は自分にコインを分配しませんでした。しかし人々が何と言おうと、Litecoinは私の創造物なので、たとえコインを自分に分配していなくとも、Litecoinとは運命共同体なのです。

もしもLitecoinが成功すれば、私にとっては良いことです。金銭的な利害関係だけが、作り手とコインの関係ではないということです。

自分のコインを保有してしまうと、作成者にとっては、かえって自分とコインの利害が食い違ってしまう可能性さえあります。

例えば自分の利益のために、フェイクニュースを流して価格を押し上げれば、それはコインの成功のために良いことではないので、コインの利益になりません。

自分のコインを保有するということ自体は、モラル的に何も問題はないと思います。モラル違反かどうかは、何をしているかによると思います。自分の作成したコインを持つかどうかよりも、コインの作成者として、どういう行動をしているのかの方が重要なのです。

自分の作成したコインに真摯に取り組み、コインの成功を目標に行動しているのであれば、コインの価格も、その行動に沿ったものになるのです。

Litecoinはどういう存在か

「Bitcoinがゴールドであれば、Litecoinはシルバーである」とはじめから言ってきましたが、この主張は今でも変わりません。

Litecoinの目的はお金として機能させることです。Litecoinは、価値の貯蔵庫としての役割、そして価値の交換手段としての役割を担うことができるコインで、このネットワークでは、これまでに約5千億ドル分の資産がやりとりされてきました。

Litecoinのネットワークは過去の9年間ダウンすることもなく、何の問題もなく完璧に稼働しています。EthereumやBitcoinを含む、他のほどんどのコインが成し遂げられなかった偉業です。

しがたって、価値の貯蓄のためのツール、そして送金のためのツールとして申し分なく、非常に優れたコインだと言えると思います。

Litecoinのプライバシー面 

プライバシーは、最近私が取り組んでいる領域の一つです。お金にとって必要なのはプライバシーです。つまりコインに同一性があり、それぞれのコインを区別できないということが重要になります。

1枚ごとに少しずつ価値の異なるコインを、どのように使用すればよいのかということを考えなければならないないのは、利用者にとって不都合です。

言い換えると、8400万枚あるLitecoinの1枚1枚は、全く同じコインでお互いに区別がつかないようでなければなりません。しかし残念ながら、今のところはそうではありません。ここが、私の現在取り組んでいる問題です。

そこで「MWEB」というものを研究しています。「MWEB」とは、ミンブルウィンブル拡張ブロック(Mimblewimble Extension Blocks)の略です。

拡張ブロックというのはサイドチェーンのようなもので、メインチェーンに付属するものです。Litecoinのブロック1つに対して、1つの拡張ブロックが存在します。

コインを送るのにMWEBプロトコルを使用することで、秘匿化されたトランザクション(Confidential Transactions)が可能になります。これは、送ったコインの枚数を誰にも知られないようなトランザクションです。

さらに、MWEBは非常にスケーラブル(拡張可能)です。ブロックチェーンのスケーラビリティ(拡張可能性)を維持しつつ、プライバシーを強化できる、非常に珍しいプライバシー強化方法なのです。

LitecoinとBitcoinの違い

BitcoinとLitecoinの主な違いはマイニングアルゴリズムです。Bitcoinが「SHA-256」というアルゴリズムを使用しているのに対して、Litecoinは「scrypt」というアルゴリズムを使用しています。

敢えて違うアルゴリズムにしたのは、LitecoinマイナーとBitcoinマイナーの競合を避けるためです。もしもBitcoinと同じアルゴリズムを使ってしまうと、Litecoinはネットワークを支配しているBitcoinよりもハッシュレートがずっと小さいので、Bitcoinマイナーに簡単に攻撃されてしまうのです。

BitcoinGoldが「SHA-256」のマイナーに攻撃されたり、Ethereum ClassicがEthereumのマイナーに攻撃されたりするのを、我々は実際に目にしてきました。

これは、小規模なコインの方がハッシュレートがはるかに小さく、ネットワークもはるかに小さいがゆえに起きてしまうことです。

そこで、小規模なネットワークのマイナーが、簡単に攻撃を受けてしまうという事態を避けるために、別のアルゴリズムを使用することにしたのです。

CPUがあれば誰でもマイニングできるコイン

scryptを選んだもう一つの理由は、CPUマイニング可能なアルゴリズムが、この時点ではscryptしかなかったからです。 コインの初期段階では、コミュニティが基本的にマイナーのみで構成されていることが非常に重要です。

コインの作成者としては、誰でもCPUさえあればネットワークに参加してコミュニティの一員となり、Litecoinのマイニングができるようにしたいと考えました。そしてマイナーもそうでない人もみんな参加して楽しめるような、そんなコミュニティを目指して作りました。

その後に、GPUが登場してソフトウェアを動かすようになりました。現在のLitecoinはscryptネットワークによって保護されていて、scryptのマイニングネットワークの中では97%を占めています。なので、Litecoinを攻撃することは非常に困難となっています。

インタビュー・編集: Lina Kamada

翻訳: Nen Nishihara

     

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