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「インドの暗号通貨と国家主権」ナッピナイ氏 ②

インドの最高裁判所で法廷弁護士として活動し、憲法、刑事、知的財産権、サイバー法などを専門としているN・S・ナッピナイに、インドでの暗号通貨の現状をお聞きしました。是非、ご覧ください。

N・S・ナッピナイ

インタビュー日 : 2020年3月12日

インドの暗号通貨と国家主権

インドでは、暗号通貨に対する国の方向性を決定するために2つの政府委員会が作られました。1つ目は法制化のための委員会で、そこでは暗号資産法案(Crypto Asset Bill)が提案されました。2つ目の委員会では、単に全てを禁止するべきだとの声があり、そこで提案された法律は暗号通貨禁止法(Banning of Cryptocurrency Act)と呼ばれました。インド政府には、2つの対立するレポートが存在しており、暗号通貨に関して世界がどこに向かっているかを調査した資料も多くあります。現在、政府が決定を下さらなければならない問題は以下の通りです。

  1. 暗号通貨は許可されるべきか
  2. 許可される場合、暗号通貨は決済システムであるか、あるべきか
  3. コモディティとして扱われるか、扱われるべきか
  4. シンガポール、日本、アメリカ等と同様に、暗号通貨取引所は当局によって規制されるか、されるべきか
  5. いかにして政府はブロックチェーン業界を促進し、信頼を与えることができるか

これらの問題を決定するとき、既に世界中に存在する多くの前例を参考にできるという点で、インドは非常に良い立場にあると言えます。ITの分野では、インドがトップにいるので、他の分野でも主導することができればと常に私は望んできました。しかし、現況では、インドが世界の後を追っていくという立場にあります。また、暗号通貨が全体的に制限されたという苦い前例もインドにはあります。暗号通貨に関する最初の委員会が国で行われる前、私は政府に対して提案書を出しました。その中で、暗号通貨の禁止は非常に近視眼的な措置であると伝え、ルールの整備を行うことで問題を改善できると述べました。また、暗号通貨の悪用や違法行為に対しては、取引所を通じてルール整備を行うことにより、インドを強くできるということも主張しました。

この主張は根拠は、次のような点です。暗号通貨はバーチャルな資産であるため、その存在や使用状況をインド政府が監視することはほぼ不可能となります。また、暗号通貨取引は禁止した瞬間に地下に潜ってしまい、そこで悪用される可能性があります。どのように暗号通貨が使用、または悪用されるかという問題は、法定通貨でも起こります。法定通貨で犯罪は起こり、マネーロンダリングも同様なのです。なので、これらは暗号通貨のみに限られている問題ではありません。唯一の問題は、それが通貨を決定する国家主権に対する脅威と映ってしまうことなのです。私が感じていたのは、暗号通貨を決済システムとして使用することは、この国家主権に反すると捉えられ、反発に直面する可能性が常にあるということでした。   
           
私が政府に完全に同意できるのは、暗号通貨は法定通貨ではなく、法定通貨には決してなり得ないという点です。 私達は国家主権を保護し、規制を通して、それらが明確に法定通貨ではないという認識をユーザーの間で深めていく必要があります。 若い世代の人々が、新しく魅力的なものに手を出すことは止めることができないので、 暗号通貨が何であり、どこまで使用して良いのかを説明する必要があります。中央の権力が及ばないとアピールすれば、若者は素晴らしいと感じるからです。

テクノロジーを理解する弁護士

テクノロジー法のどこに興味を持ったのかはわかりませんが、私はブロックチェーン技術や他の新しいテクノロジーの発明に関する法律分野にかなり情熱を注いできました。 ただし、正確に言うと私はテクノロジー法の専門家であり、テクノロジー自体の専門家ではありません。 他の弁護士と私の違いは、テクノロジーがどのようにどのように機能するかという事ついて基本的に理解できている点だと思います。 私がよく言うのは、「車を作ることはできないかもしれないが、そこに何が入っているか、どのように運転するのかということは理解できる」という言葉です。

私は、裁判官や警察に対する研修の中で、ブロックチェーンと暗号通貨に関する問題を非常に長く扱ってきました。この技術を誰も理解していない時期もありましたが、教育を続け、少しでも理解してもらおうと努めてきました。暗号通貨自体に情熱を持っているとは言えませんが、ブロックチェーンがここまで発展してきたことに関しては非常に惹きつけられます。 これからのテクノロジーが、どのように成長していくかを理解することで、現在の問題を乗り越えられることを願っています。

N・S・ナッピナイ (N.S. Nappinai)

  

インドの最高裁判所で法廷弁護士として活動。憲法、刑事、知的財産権、及びサイバー法が専門。弁護士として1991年に実務を開始し、29年以上の経験を持つ。サイバー法の知識を普及させるため「サイバーサーチ:Cyber Saathi」を創設。また、性的児童虐待や女性への暴力的な動画をネット上から削除するためのアドバイザーなども務める。

インタビュー・編集: Lina Kamada

     

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